SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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Fourth section④〜階段の先に〜

 

 

ラフコフ討伐!?

それはいったい……

 

「オイラも詳細はわからない!でも、今なら間に合うはずダ」

 

アルゴは攻略組の向かった先を教えてくれた。

 

「キー坊もアーちゃんも事実上、拘束されていて、君たちに伝えられなかったんダ」

 

「いったい、誰が言いだしたんだ?」

 

「あの団長様だヨ」

 

ヒースクリフか。まったく次から次へとなんなんだいったい。

シリカは口をつけようとしたカップを持ったまま呆然としていた。

ようやく一息つこうと思っていたのに腹ごしらえもできないのか。

だったら、仕方がない。これだけでも腹の中に収めておこうじゃないか。

俺はヤケド承知で熱いお茶を一気に飲みほした。

 

「アチッ!」

 

そりゃそうだ。

でも、やっぱり淹れたてだと深みまでよくわかる。

 

「……これは美味い茶だな」

 

「えっ……は、はい」

 

シリカが驚いた顔で俺を見た。すると、彼女も対抗心が生まれたのであろう。

俺に負けじとグッと飲みほした。大丈夫か?猫舌じゃなかったのか?

 

「平気です!」

 

よし、それなら話がはやい。

 

「シリカ、すぐに向かうぞ」

 

「わかりました!」

 

「ここから先は今までの中でもっとも危険かもしれない……それでもいいか?」

 

シリカはまっすぐに見据えた目で大きくうなづいた。

 

「任せてください!!」

 

これなら連れて行ける。ここで万が一彼女が怖気付いたら俺はここに置いていくつもりだったが、そんな心配は必要なさそうだ。シリカは強くなった。今なら太鼓判を押せるぜ。アレだな、スポーツの大会に選手を送り出す監督というのはまさにこの心境なのだろう。こいつなら大丈夫!それが俺の不安を見事にかき消してくれた。

対して、一報を知らせてくれたアルゴは心配そうに俺たちを見つめていた。

 

「……死ぬなヨ、アルト、シリカちゃん」

 

その声はいつもの調子よさがまったくなかった。なんだよ!アルゴ、らしくないぞ。普段だったらケラケラと笑い飛ばしてくれるのだがな。仕方ないだろう、こんな状態で笑えるヤツはいないからな。彼女を少しは安心させたい。俺はアルゴの前に立つと彼女に、目線を合わせて、彼女の頭に手をそえた。

 

「あたりまえだ」

 

彼女は突然頭に手をやられて、驚いていたが、すぐに調子を取り戻して、いつもの鼠になった。

 

「ふふふ、オネエさんの体に触れるなんて、高くつくヨ」

 

それでこそ、アルゴだ。このセリフを聞くと緊張感がほぐれる感じがした。

 

「参ったな、いくらだ」

 

アルゴはニタッと白い歯を見せた。

 

「君たちが無事に生還することダ」

 

それは高いな。お金よりも何十倍も支払いが大変だ。そもそも価値の換算ができないからな。まったく……

 

「いい商売しているよ」

 

シリカもクスリと笑いをこぼした。

すると、肩の上に乗せているピナと何やら話をした。そして、アルゴに向かって話しかけた。

 

「アルゴさん、ピナを預かっていただけますか?」

 

「キュる!」

 

ピナはご主人様同様に、強気な様子で鳴いた。アルゴも優しく微笑んだ。

 

「ふふふ、もちろんだよ」

 

ん?ちょっと待ってくれ

 

「おいおい、シリカには請求しないのかよ」

 

「あたりまえダ!シリカちゃんはオイラの友達だからナ」

 

友人には金を請求できないってとこか?

 

「君は悪友だからナ」

 

へいへい、いつまでもぼったくられてやるよ。

さあ、そろそろ出発の時間だ。

準備体操?

走っているうちに身体があったまるだろ。

 

「行ってこい!あの子を頼むヨ」

 

任せとけ!

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

俺たちは、《仮面》をキッチリと身につけてホームを飛び出した。留守番はアルゴとピナに頼んだので心配はないだろう。

 

「とにかく転移門に向かおう」

 

「はい!」

 

闇夜の中を突っ走る。森の中では、動物たちが眠りを妨げられて抗議の声を上げている。でもそれに構ってはいられない。幸いにも22層のフィールドはモンスターが現れない。そのまま、転移門までたどり着くと、目的のエリアに飛んだ。そして、夜の主街区を抜けると、まっさきに、ラフコフの拠点とやらに向かった。

 

「攻略組はもう、到着しているはずだな」

 

「アルトさん、その洞窟行ったことあるんですか?」

 

俺は胸を張って高々と宣言した!

 

「一度もないぞ!」

 

「そこは自信をもって言うところではありませんよ!」

 

「なぁに、なんとかなるさ」

 

「ここに来てノープラン!?」

 

しょうがないだろ、急だったんだから。そうこうしているうちに、目的の洞窟に着いた。

 

「入るぞ」

 

「はい……」

 

中はやはり暗がりになっていたが、奇妙なことに1分くらい走り抜けると、明かりが見えた。そこには、ど真ん中の高々とそびえる円状の20メートルくらいの塔を中心として同心円状に広がった広場があった。

ただ、目の前は地獄絵図だった。

ラフコフと攻略組が激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「へへへ!殺せ殺せ」

 

「うわーーーー!やめてくれ」

 

「ウオーーー!!」

 

「ギャァーーーー!!」

 

「おい、しっかりしろ!おい!!」

 

「ヒーーーー!!」

 

すると、中から屈強なスキンヘッドの男が俺たちを見て叫んだ。

 

「おい、キリトとアスナは上に向かったぞ!お前も行け」

 

「かたじけない」

 

俺は、スキンヘッドが指差した階段に向かって走った。

おそらく、この塔の上に向かうのにはいったん、広場を奥に抜けてそこから、まわり道をしながら、上がっていくのだろう。たしかに、塔の上を見ると、細い通路で向こう側の壁とつながっていた。

 

「おいおい、逃がしはしないぜ」

 

チッ、ラフコフのメンバーに気づかれた。こいつ、たしか圏内事件の時に会った奴だな。

 

「アルトさん!ここはあたしに任せてください」

 

シリカが敵の前に出た。

 

「大丈夫か?」

 

「このくらいの相手に負けるようでは修行した意味がありません。アルトさんは、親玉のところへ……」

 

「わかった……」

 

俺は彼女の横を抜けて、先に向かった。

 

 

「おいおい、嬢ちゃん、パートナーがいっちまったぞ?」

 

 

 

「あなたの相手はあたしです。覚悟!」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

俺は階段をひたすら登っていく。途中で倒れている奴がいたが、それを無視して、上に向かった。すると、また少し開けた空間に出た。

 

「《仮面》か!!」

 

「キリト!副団長様は!?」

 

キリトがラフコフのナンバー2と戦っていた。たしか、こいつは創設当時からの古参だったな。

 

「上だ!、そこに親玉もいるはずだ!

アスナが危ない、頼む先に向かってくれ」

 

「へっへっへっ、仮面のニイちゃんもいるとは豪勢だな〜」

 

ナンバー2が俺に気づいた。

 

「お前の相手は俺だ、道化師野郎!」

 

キリトがすかさず斬りかかる。それを奇妙な服装をした(多分ピエロを意識している)男はそれを受けるのに精一杯だった。俺は、その隙をついて、さらに階段向かって走った。

かなり、走ったと思う。もう、途中にプレイヤーは一人もいなかった。

そして、ようやくてっぺんに着いた。

橋のような細い道の向こうには、黒いフードを被った女が塔の下での死闘を眺めていた。その側にアスナが倒れていた。

仰向けの体勢で少し離れた距離にレイピアも転がっている。

 

女は下を眺めながら俺に背を向けて口を開いた。

 

「安心して、これで眠らせているだけ」

 

女は懐から瓶を取り出して俺にほうり投げてきた。《ポインズンオブスリーピング》ようするに睡眠薬ってとこか。

 

「しばらく、この子には眠っていてもらいたいからね」

 

「そうか……」

 

その言葉は本当なのだろう。こいつは、そうゆうヤツだから。

 

あれからどれくらい時間が経ったのだろう。こいつが殺人ギルドを立ち上げて、俺が逃げ出して、アルゴに怒られて、鍛錬をした。初めてオレンジギルドを壊滅させたときは怖かったな、でも意外にもあっさりといけた。それから、森の中でシリカに出会った。彼女を助けてそれでおしまいにしたのに、彼女は俺のホームにまでやってきた!それで、居候することになった。たくさん、剣の稽古をつけた。彼女もまた凛々しい美しい剣士になった。元気な鍛冶屋にも出会った。彼女には散々叩かれたが、いい武器をもらった。そして、キリトやアスナとも再開した。もちろん、まだ正体は明かしてないけどな、そしてついに……

 

 

俺は落ちないように道を歩いていく。円状の塔の頂上は意外にも広く、これなら激しい戦闘でも下に落ちる心配はないだろうと思えた。俺はわざと音を立てながら、剣を抜いた。

その音に気づいたヤツは後ろをゆっくりと振り返った。

 

「怖い顔しないでよ〜。《仮面》のナイトさん♫」

 

「相変わらずの調子で安心したよ、POH」

 

ついに、俺はこの女との決戦を迎えることになったのだった。

 

 

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