SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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もう11月ですか。

この小説も2ヶ月続いたことになりますね。

さて、今回は結構盛り込みました。

やりすぎたかな?

ご覧ください。


Fourth section⑥〜狂人の叫び〜

 

仮面の素顔を見て俺は頭の中で電気が走った。

 

「仮面……おまえは、あの……」

 

言いかけたときだった。シリカに支えられて起き上がったアスナも同じことを考えていたらしい。

 

「思い出したわ…第三層のボス攻略のときの、あの二人組なのね……」

 

そうだ。俺も眠っていた記憶が今よみがえった。すると、シリカが不思議な顔をした。

 

「三層?あの二人組?」

 

シリカの疑問に答えたのはアスナだった。

 

「シリカちゃんは、知らないのね……

まだ、攻略の序盤、三層の、ボス攻略のときだったわ。私たちは、連携がうまくいかなくて、正直苦戦してたの。そのとき、突然不思議な男女のペアが現れたの。あっかんだったわ。まるで演劇をみているみたいだったのよ、その二人の戦いぶりは。

あっという間にボスを倒してしまったの。その二人は名乗りもしなかったし、その後、二度と表舞台には出てこなかったの」

 

「ご名答、あのときは失礼しましたね。『おねいさん』」

 

アスナはそのセリフを聞いてくすりと笑った。

 

「あんなに、私を怒らせたのはあなた以外にキリト君くらいしかいないわ」

 

俺そんなに怒らせたカナア。

って、そんなこと言ってる場合じゃない。

《仮面》……たしか、シリカがアルトとか言ってたな。アルトは剣を収めると膝をついて崩れ落ちていた女に話しかけた。

 

「……なあ、POH、俺はわからないんだ」

 

POHはその場を動かない。下から聞こえてくる喧噪がほとんど消えていた。その場の空気は張り詰めている。

 

「……おまえは、なぜ、PKに走ったんだよ、納得できないんだ、どうしても」

 

女は振り向きもせずに答えた。

 

「さっきも、言ったでしょう、『おもしろい』と思ったからだよ」

 

おもしろい?何を言ってるんだ、こいつは。俺はその言葉に過剰に反応してしまった。

 

「……そんなことで、人の命をもてあそんだのか?」

 

「……黒の剣士さん、答えは言わずともわかるでしょ?」

 

「ふざけるな!」

 

おもわず声を荒げてしまった。アスナが少し肩を震わせた。

 

「お前の面白さのために、これまで何十人もの人が苦しんだんだ!いや、それだけじゃない、残された人たちだって、どれだけ悲しんだことか……」

 

「だから?」

 

「だ、だからって……」

 

POHは突然こちらを振り向いた。

 

「あんたに……何がわかるっていうの……『苦しみ』?『悲しみ』?そんなの、どうしてあなたに分かるの?」

 

彼女は徐々に声を荒げていく。その眼はいつもの不敵な笑みなんか忘れさせるような、厳しい目つきだった。

 

「あなたに、わたしの何が分かるのよ……」

 

俺はそのとき、何もわからなかった。どうして、この女はこんなに悲しげな眼をしているのだろう。悲しい、いや、何かに怯えているのか。ラフコフの首領としての面影はそこにはなかった。先ほどまで、全てを飲み込むような、皮膚をこえて、血液を一瞬で凍らせるような不気味な笑みを浮かべた女はそこにはなかった。怯えるウサギではないか、これでは。

すると、ようやくアルトが口を開いた、その調子は淡々としていた。

 

「……そうか、わかったよ」

 

アルトは懐から青い結晶石を取り出した。

 

「……POH、この世界が終わるまで、牢獄でしばらく大人しくしていることだな」

 

あれは、転移結晶か。たしか、仮面の手口だと、このまま黒鉄宮の牢獄に犯罪者を葬り去るんだった。

アルトの足取りは重かった。ためらいながら彼女に向かって進んでいく。

すると、少女が突然口を開いた。

 

「待ってください!」

 

それは、シリカだった。

アルトは足を止めた。

 

「……POHさん、あたしは少しわかるんです。あなたの言いたいこと」

 

「……」

 

シリカは静かに、柔らかな調子で続けた。

 

「きっと、甘えたかったんです」

 

「…………ろ」

 

「簡単ですよ。見ててもらいたかったんです」

 

「…………やめろ」

 

「あたしも、幼稚園のときについ、やっちゃいました…大好きな先生に、かまってほしくて、それで、ワザとイタズラして怒られたんです」

 

「ちがう、ちがう、ちがう……」

 

「小学校のときにいましたよね?好きな女の子にワザと意地悪する男の子。女の子に、ちょっかいかけてアピールする子です」

 

激しく動揺する女をまっすぐ見据えた少女ははっきりと断言する。

 

「あなたは、アルトさんに見えもらいたかった、それがあなたの1番の動機なのでは?」

 

「デタラメいうな!!あんたなんかに、弱っちい子猫なんかに、わかってたまるか!!!」

 

アルトが眼を見開いて驚いていた。

POHの目には涙が溢れていた。

 

「わたしは、自分のために、自分の満足のために、殺したんだ!!レットなんて……こんな男なんか関係ない!わたしは、わたしは……」

 

シリカがPOHの元に近づいていく。

 

「く、くるな!!!」

 

POHが懐から鋭いものを投げつけた。

 

「シリカちゃん!」

 

だが、それは当たらない。シリカは避ける仕草もせずに女の元へ進む。

あわれな女は次々に、短剣を投げつける。

 

「くるな、くるな、くるな!!!」

 

だが、それらはシリカをわざと避けているかのように空回りしていた。

シリカがPOHの前に膝をついて、短剣を投げるその手を握った。

 

「は、はなせ……」

 

「あたしも、わかります。POHさん。アルトさんに見てもらいたいって気持ち。自分はこんなに強くなったんですよ、好きな料理を作ったら喜んでくれるかな、一人前だって見てくれるかな、って」

 

「…………」

 

アルトは何も言わずに聞いている。

 

「……でも、POHさん。あなたは、関係のない人まで巻き込んだんです。それは、ダメです。あなたも、いえ、あたしだって人間です。自分のエゴのために人に迷惑をかけることだってあります。でめ、それには節度がなければいけません。迷惑をかけて、謝れば済むことはあっても、もう二度と謝れなくなったらどうしようもないんですよ」

 

「……子猫ちゃん。わたしは……わたしは……」

 

「だから、償うんです。取り返しのつかないことをしてしまっても。心の底から

、後悔して、苦しみ、悲しみ、もがくんです。……それが、あなたの罪に対する、罰です」

 

「……う、ううっ…」

 

POHはシリカの胸に崩れ落ちた。わずかにもれる慟哭が俺の耳に入ってきた。

 

「……シリカ」

 

アルトが重い口を開く。

 

「……すまない」

 

シリカはわざと作り笑顔をした。

 

「アルトさん、ズルいですよ。逃げるなんて……」

 

「ああ、ズルいな、卑怯者だ、おれは」

 

アルトは目頭を押さえながら背を向けて言った。

 

「POH……聞いてくれるか……」

 

「……なに、よ」

 

「ごめんな、俺、わかってたんだ。お前が、おかしくなったこと」

 

アルトは声を途切れさせながら辛そうに声を振り絞った。

 

「気づいてた、のに、何もできなかった、苦しんでた……それなのに……こわかったんだ、変わるのが、お前が、変わっちまうのが、何よりも……ばかみたいだろ?それで、仮面なんか、つけて、正義ぶってんだ、神様がみたら、大笑いだ……俺も、甘えたかったんだ、いつも、笑ってて、突拍子もないことばかり言って、強くて、カッコイイ、俺の『相棒』に……」

 

アルトは息を大きく吸う。それを一気に吐き出す。

 

「すまない……苦しませちまって……罰せられるのは俺の方なんだ……」

 

「レット……」

 

POHはそう呟くと、シリカの胸から起き上がり、男の元に駆け寄る。

 

「ゴメンね、わたしのせいで、ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

俺はこの2人のことは知らない。どんなことがあったのかなんて、よくわからない。俺が知っているのは、第三層で最強のコンビ技をみせた、愉快な二人組、そして、今のこの2人だ。でも、言えることがある。きっと、このふたりは、初めてお互いのことを、正直に腹を割って語れたのだろう。そうじゃなきゃ、こんな空気は作れない。なんだろう、不謹慎だけど、少し羨ましいなこうゆうの。

俺はアスナの方を見ると俺と目があって不意に目をそらして頬を赤らめた。不思議に思ったが、シリカのほうを見ると彼女は彼女で、彼らを、優しい表情で見守っていた。ただ、少しやきもちをやいているように見えるのは俺だけだろうか。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「レット、牢獄に行く前に一つだけ言い残したいことがあるよ」

 

ようやく、落ち着いたところで、POHは冷静な声で言った。

 

「……なんだ」

 

「この世界の秘密って言ったら、どう?」

 

おいおい、なんだそれは、興味あるなぁおい。

 

「キリトくん、かおに出ているわよ」

 

「あれ、そ、そうかな??」

 

そんな様子を見て、POHは クスリと笑った。

 

「黒の剣士さん、それと、閃光のおねいさん、あと、子猫ちゃんも聞いてほしいな。……このことは、多分、知っちゃいけないことだからね。ココだけの秘密ってことでね。後を頼みたいの」

 

「アルトさん、この人の言うこと、信用できるの?」

 

アスナがきつい声で言った。アルトは、わざと大きく手を振っていった。

 

「さあね、でも、こいつはつまらない嘘はつかないような奴だよ」

 

「そっ……じゃあ、聞いても悪くないわね」

 

「うふふ〜オネイサン、わかってるね」

 

なんだか、徐々に調子を取り戻しつつあるな。うーん、やっぱり変な女には変わりない。

 

「これは、私が……」

 

POHが語りを始めようとした、その時だった。

 

「その女の話に耳を傾ける必要などないよ」

 

ちょうど、背後から聞いたことがある渋い声がした。

 

「ヒースクリフ……」

 

POHは威嚇の目をする。団長様は対照的に落ち着いた雰囲気だ。

 

「アスナくん、キリトくん、それと仮面の2人、ご苦労だったね。その女の始末は私が引き受けよう」

 

な、なにを言い出すんだこの男は。

反応したのはアルトだった。

 

「団長さん、それはないんじゃないか、ぽっと出の脇役にあげる手柄なんてないし、そもそも、こいつは牢獄に送るんだ」

 

「……そうか、それなら」

 

その時、一瞬何もできなかった時間があった。その男が動き出した瞬間、俺は身動きが取れなかった。

 

ドス!!

 

気付いた時、ヒースクリフの剣がPOHの胸に突き刺さっていた。

 

「…………!?」

 

なにがおこった!?

 

「……き、クソっ」

 

POHが、何とか胸から剣を引き抜こうとする。無情な団長は何も言わずに剣を引き抜いた。

 

「さて、これで、もう体力はないだろう」

 

「……おのれ!」

 

POHが思わず、後ずさりをした。

 

「これで終わり……!!!」

 

まさに、神のイタズラだったのだろう。

女は後ろを見ずに後方に下がった。だが、ここは言ってしまえば柵のないビルの屋上だ。

 

「……!!!」

 

足を踏み外した時はもう遅かった。

彼女の身体がぐらりと後方に倒れていく。

 

「POH!!!」

 

とっさに、アルトが彼女のもとに駆け寄ろうとする。だが、すでに彼女の姿は消えていた。

 

「キャーーーーー!!」

 

アスナの悲鳴が聞こえる。シリカはその場に立ちすくんでいた。俺も何が起こったかわからなかった。

ここはビルの10階くらいの高さがある。さっきの一撃で体力が削られるとすると……

 

ドスン!

 

鈍い音が下から響いた。ようやく動けた俺は落下地点を見下ろしにはしった。

 

 

女は仰向けのまま、地面に倒れていた。

右手を震わせながら伸ばしていた。

だが、それも束の間だった。

 

次の瞬間、彼女の身体は青いボリゴンとなって砕け散った。

 

アルトは悲痛な声で叫ぶ。

その声は無情にもこだましていた。

 

 

 

 

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