SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
「生きている?POHが??」
はいっ?どういうことだ。
だって彼女は確かにあのとき、
不思議がっているのはどうやら俺とシリカだけらしい。アスナもキリトもアルゴも済ました顔をしていた。
「俺が説明するよ」
解説役に名乗り出たのはキリトだった。
「たぶん、これはアルトだって知ってるはずだ。ただ、違い点があるとしたら、俺たちは実際に見て、アルトたちは頭の中でしか知らないってことだ」
俺たちは頭の中でしか知らないって…………もしかして、
「気がついたか?そうだ、彼女はまったく同じ手口でまんまと俺たちを欺いたんだ」
俺は口を開いた。
「『圏内事件』のときと同じってことか……」
「そのとおり!」
くそっ、なんだ、そういうことだったのか。バカみてえじゃねえかこれじゃあ!
「俺も最初は動揺して気がつかなかった。でも、少し後で引っかかったんだ。何か既視感がある、デジャブみたいな感覚になったんだ。それで、急いでアルゴに頼んだんだ」
アルゴがニヤニヤしながらバトンタッチした。
「オイラはキー坊の依頼を聴いていてもたってもいられくてナ。すぐに第一層に行ったんダ。そしたら、どうダ!POHという名前はしっかりのこっていたんダ!もし死んだとしたら名前に線が引かれるのは知ってるダロ?でも、それがない。だとすれば、答えはひとつ、彼女はどこかにのがれていたんダ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
シリカが慌てた様子で割り込んできた。
「そうだとすると、彼女が危ないじゃないですか!だって、ヒースクリフさんはたしかに殺意をもって……」
「その心配はないわ」
アスナが腕を組みながら言う。
「……正直、今回の団長の行動は行き過ぎな部分もあるわ。どうゆう、心変わりかはわかないけど、あの後の処理のときに、団長ははっきり私にこう言ったのよ。『今後は、一切の犯罪者の処理から手を引く』って。正直、意図がまったく読めないわ。だけど、直ちに彼女に危険が及ぶことはまずないわ」
ちっ、あの団長め、コロコロコロ態度を変えやがって。わからないな……しかし、それでも俺としては早く彼女を見つけたい。
「……アルゴ、POHの行方はわからないのか」
アルゴは目を伏せて首を横に振る。
「さっきも言ったとおりダ。残念ながら、彼女の足取りは不明だ。……彼女は特殊なスキルをもっていてね、そのせいもあって、痕跡が残らないみたいなんダ」
「それは、やっかいだな…」
しかし、アルゴはチッチッチと指を鳴らしながら
「もちろん、オイラは情報屋の端くれサ。あの子を見つけてみせるよ!」
なんとも、頼もしいものだなあ。
と、思ったとき、奴は突然不敵に笑みを浮かべた。
「そういえば、聞いたゾ。アルトとシリカちゃんのアツーーイやりとりのこと……」
……なぜだろう、心臓がばくばくするぞ?い、いかん、ここは深呼吸をしなければ。
「イヤー〜、こういう展開になったけど、でも胸熱だったみたいだナ〜〜。シリカちゃんのセリフなんて聞いてキュンキュンしちゃったゾ♫」
おい、誰だこいつに話したのは……キリト、どうして今目をそらしたんだ!
こっち見ろよ、コラ!
「アルト……つい、うっかりな」
「ごめんなさいね、アルゴさんと話していると何故かいろいろとしゃべってしまうのよ……」
アスナさん!?あんたも共犯者ですか!
どうするんだよ、俺の黒歴史。穴があったら、その穴を掘り下げて地球の中心まで行って、高熱で蒸発してしまいたい気分だよ。見ろ!シリカなんて、さっきから、様子がおかしいぞ。顔真っ赤っかじゃないか!
「あ……う、うう〜〜……」
もう見ていられないよ。どうしてくれるのこの空気!
「あはは〜〜」
アルゴ、お前はなに能天気に笑ってるんだよ。むかつくな、このやろう!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「それで、アルト、お前はこれからどうするんだ」
どうする?ええと、とりあえず、今日は帰って飯を食って、寝たいな。
「誰が、今日の予定をきいたんだ!《仮面》としての目的を終えた今、どうするかってことだよ」
「だってよ、シリカ」
「そこで、あたしに振るんですか!ええと…………と、とりあえず、今日の献立は酢豚なんてどうですかね?」
「どうして今日の晩御飯なのよ!」
アスナさん、いいツッコミですね。俺としては、今日の飯は気になるが…
俺は腕を組んで、うーーんと悩む。
一応、ラフコフは討伐したものの、肝心の問題はな……
「実は、私としては、あなたたちに、お願いしたいことがあるの」
そう言ってアスナさんは(さっきから敬語なのは気にしないでほしい。俺はこの人には逆らわないと誓ったんだから!)
紙切れを取り出して、俺に見せた。
「……これは、ラフコフのメンバーですかい?」
「そうよ、この前の討伐戦でほとんどを牢獄送りにできたけど、取り逃がしてしまったメンバーもいるの。だから、……」
ナルホドね、これはこれは腕かなるな。
「正直、私たち攻略組は対プレイヤーとの戦闘は慣れていないの。討伐戦でも、そのせいで犠牲が少なからず出てしまったし。だから、本当に心苦しいのだけれど、あなたたちにこのまま、犯罪者の取り締まりをお願いしたいの」
「もちろん……」
「もちろんです!アスナさんの頼みなら、断る理由がありませんよ!!ねっ、アルトさん」
ここにも、アスナ信者がいた〜。シリカが目をキラキラさせながら、俺の方に迫ってきていた。さっきまで、赤面していたのはどうしたんだよ。
「まあ、断る理由はないだろ。……正直、攻略に関わりたくないし」
「そうね、そう言うと思ったわ……」
「お気遣いありがとうございます」
「それじゃあ、交渉成立ってことだナ!」
そう言って、アルゴは席を立ち上がった。
「オイラは、ちょいと用があるから、お先に失礼するゾ。じゃあな、アーちゃん、キー坊、シリカちゃん」
あれれー、もしかしてハブられましたか?
「うふふ〜、冗談だよ、じゃあな、アルト!」
ケラケラ笑いながらアルゴはその場を後にした。
「さて、俺たちもそろそろ退散するかな。でも、中途半端な時間だな」
まだ、正午を少し過ぎただけだ。すると、シリカが元気よくアスナの方を向くと
「アスナさん!この後、おヒマですか?」
「え?ええ、今日はオフだし……」
「それでは、一緒にお買い物でもどうですか!実は、スゴくおしゃれなお店があって……」
「そ、そうなの。じゃあ、行こうかしら」
「それでは、行きましょう!!アルトさん、夕方までには戻ります!!!」
ハイテンションのシリカがアスナの手を引っ張って、外に出て行く。
テンション高いな〜〜
「ははは…何か吹っ切れたみたいだな」
「いいじゃないか、まだまだ女の子なんだから」
残された男二人はただ、唖然としているしかなかった。
「そういえば、キリト……」
「ん?なんだ??」
「カップルにお似合いの新居があってな、紹介しようか?」
「んな!!……でも、少し興味があるな」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「いらっしゃーい!あら?来たのね」
「うーす、修理をお願いしたい」
「見せて……これは、また派手にやったわね。どういう使い方をすればこうなるのよ」
アルトの剣はとても、傷んでいた。すごい戦闘をくりぬけたみたい。
「仕方ないだろ……バケモノみたいな女と戦ったんだから」
「バケモノ?ああ、例の女の子のこと?」
「知ってるのか?」
「アスナとアルゴとも知り合いなのよ?嫌でも耳に入ってくるわよ」
「そうか……(そういえば、バケモノといえばこいつも化物級の鍛冶屋だったな、これは一本とられたな!)」
アルトがいつもの癖で悪い顔をしている。
「なーに、失礼なこと考えてんのよ!」
「別に〜〜それより、なんとかなるのか」
「うーーん……」
結構耐久度も落ちているのよね。正直、新しいのにしたほうがいい気がするけど。こいつもこの剣には思い入れはあるだろうし……
「まあ、なんとかするわ」
「助かるよ、さっすが最強の鍛冶屋だな!」
「おだてても何も出ないわよ」
「ちっ……」
この男は……変わらないわね。あたしはジローと彼をにらみつけた?
「な、なんだよ……」
「あんたが、こう生意気だからかな……最近、シリカも少し小生意気になったのよ」
「それ、俺のせいか?」
「そうだと思うけどね。まっ、あんたの失礼さよりはかわいいものよ」
「そうですか……っと、いけない!シリカ待たせてたんだった!すまん、リズ、よろしく頼むぞ」
「はいはい、りょーかい!」
アルトは急いで店を出て行った。なんやかんやで、シリカとの仲も良好そうで何よりだわ。これで、シリカの気持ちが伝わってるんならいいけど。まだ、無理そうね。
あたしはさっそく、アルトの剣を修理しようと、作業場に移動しようとしたが、そのときに、店の戸がまた開いた。あたしは、きびすを返して営業スマイルをする。
「いらっしゃーい!リズベット武道具店にようこそ!」
入ってきたのは知らない顔だった。へぇ、結構久しぶりね、はじめてのお客さんなんて。しかも、女の子だし、珍しいわ。
「今日はどういったご用件で?」
「ん〜〜。ちょっと、剣が壊れちゃって〜。ここは腕がいいんでしょ〜」
なんだか、不思議な喋り方の子ね。でも、評判を聞いて来てくれたんて嬉しいわ、
「ありがとうございます!」
「いや〜、敬語なんてやめようよ〜硬いのはダメダメ」
「そ、そうなの?」
「Yes!オンナ同士なんだしね〜さっそくだけど、これをお願いできるかな〜?」
彼女から受け取ったのは、少し剣先が短い剣だった。これまた、さきほどのアルトのみたいに、激しい損傷だった。
「はあ……結構、ひどいわね」
「まあね〜〜、すんごく強い相手だからね〜」
「へぇ、それって化物みたいな?」
「Exactly!よく、わかったね〜」
「ええ、さっきも同じような客がきたからね。……偶然ね」
「世の中、そんなものだよ〜〜。それで、どう直りそう?」
「なんとかするわ……それで、あなたの名前は?修理したら、連絡したいし……」
「『ハニー』とよんでくれたまへ♫」
「それは本名なの?」
「少なくとも、そう読んでくれてくれると人はいたわよ〜」
変な奴もいるわね。ハニーって……夫婦でもない限り呼ばないわよ。
「それじゃあ、お願いするよ〜〜」
「ええ、また……」
嵐のような少女は手を振りながら、去っていった。
少なくとも、この時点であたしはこの子がどんな子はよくわかっていなかったのが皮肉なものだが、それでもこの時のあたしの印象としては、何か吹っ切れたような感じで、とっても真っ直ぐな女の子だったわ。それは保証できるわ。
「よし!それじゃあ、やるか!」
あたしにできることはプレイヤーの武器をメンテナンスすることなんだから、そんなこと、気にしてられないわ!
4章はひとまずここで区切りになります。
次回は幕間⑤「超機密事項」
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