SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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幕間⑤〜超機密事項〜

 

 

血盟騎士団の本部の中の一室。ここが私の居場所だ。現実世界でも、無味乾燥な研究室にいることが多かった私にとってこの冷たい建物は落ち着くのである。

私がこの世界で興味を抱いたのは5人だった。1万人いる総プレイヤの中で私の関心を引きつけたのは0.05%に過ぎない。それは確率的には極めて貴重なように聞こえるが、私からすればそれは必然的だ。

たとえ、わずかな可能性でも0%ではないかぎり、それは起こりうることなのだ。可能性の低さゆえに論証を見逃すのは愚かである。すべては偶然ではなく、必然的に起こるのだ。科学とはすべてそうてきている。だから私も興味をもってこの世界に入ったのだろう。もちろん他にも理由はあるが。

アスナ君は優秀な副官だ。彼女は知性、統率力、行動力、どれをとっても才能的に秀でている。血盟騎士団を立ち上げる時にも、まず彼女に声をかけたのはそういった私なりの評価によるものだ。作戦指揮のほとんどを彼女に一任しているがめざましいほどの活躍を見せている。はじめは、熱が入り過ぎていていたが、最近は少し落ち着いてきたようだ。男に惚れると女性とはますます、魅力を増していくのだろう。彼らの様子を見ているとそう思える。

《仮面》……アルト君もおもしろい。彼は正義感が非常に強い。それに、実力と知性もある点で、犯罪者にとっては目の敵だろう。彼の現実でのプロフィールを見たが、ただのネットゲームプレイヤーとは思えないような男だ。そういえば、大学時代に違う学部だったがたしか総務省に入った男がいたな。あの男とも通じるものものがある。キリト君とは対称的な才能をもっているのだろう。この世界でそれを発揮するときがあるのかはわからないが。

キリト君はおそらく、この世界で最強プレイヤーに成長するだろう。ユニークスキルも彼には目覚めたようだし、今後が楽しみだ。ソロプレイヤーでありながら、このまで生き延びてきた実力と戦いの才は私も驚いた。そもそも、ソロでは活動しにくいような世界であるのに、それを凌駕する力と運で生き抜いているのだからおもしろい。現実世界では、工学的な才能も潜めているようだし、彼には期待ができそうだ。

シリカ君は、突然めざましい成長を遂げたプレイヤーだ。アルト君に鍛え上げられたこともあるが、いったい彼女の原動力はなんなのだろうか。私には解析不能だ。彼女は精神的な強さに秘めているといえる。一介の中層プレイヤーがここまでのし上がってきたのは、普通ではありえない。私が理解できないのは極めて、腹立たしい一方で、探求のしがいがあるともいえる。

さて、5人の中でも一番厄介なのが、POHというプレイヤーだ。

別にこの世界でPK行為をするまでは許容ができた。そもそも、私のやっていることと、通じることがあるからね。アルト君には高慢な態度をとったが、自分の欲求に正直な彼女は非常に厄介だ。自分の理想のために他人を気にしない、あの姿勢はまるで自分を見ているようで変な気がする。……だが、問題は彼女が思いもよらないユニークスキルを身につけたことだ。私の設定にはないものを、この世界は彼女に与えた。解析不能だ。……不快なのは、彼女が意図的に私に突きつけてきたメッセージだ。

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

血盟騎士団の幹部の一人が入ってきた。ちょうど、例のものだろう。

 

「コレが例の一連の事件の報告書になります。しかし、事件は解決したのに、どうしてのこのリストを?」

 

「まあね……ご苦労。下がっていいよ」

 

「はい」

 

幹部が部屋を出たのを確認して、書類に目を通す。

 

ーーラフコフ討伐報告書ーーーーーーー

 

1.背景

 

ラフコフ首領による、一連のプレイヤー襲撃事件の被害者を簡略に説明する。

当初、被害者は女性に限定されていた。

クリス

『天の海』副長

 

ヒルダ

『イカロス団』リーダー

 

イリア

『碧楼』幹部

 

エリス

『聖霊騎士団』副代表

 

フローラ

『ドラゴン•ハンターズ』、『フローラ 武道具店』店主

 

オリビア

はじまりの街で『食料調達組』代表

 

ふうか

『アインクラッド解放軍』25番部隊 副隊長

ケイト

元『ブラット•ナイツ』副代表、『アインクラッド解放軍』所属

 

オルガ

『テミストクレス・イポテス』副長

 

ビアンカ

第26層で『ティエール•レストラン』経営

 

イリカ

ギルド『ハロウ騎士団』副団長

 

サラ

第46層居住。

 

しかし、その後は例外事項が増えてきた。

 

クライン

『風林火山』リーダー

 

さらに、我が血盟騎士団の一員が次々に狙われた。

 

アラン、ヤスコ、アベル、ベネット

 

そこから、犯人が絞りこめ、ラフコフの犯行と発覚した。これを受けて団長以下攻略組精鋭によるラフコフ討伐部隊が緊急編成された。そのさなかに一方が入り、事実上最後の被害者がでた。

 

アルゴ

『情報屋』アインクラッドで様々な情報提供を行う。

 

我々はラフコフの拠点を襲撃し、構成員を捕獲、投獄し……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

POHは意図的に襲うプレイヤーを決めていた。これに気付いたとき、私は眉をひそめた。いったい、どうやってこのことを知ったのか?

 

被害者の名前を襲撃順に並べてみよう。

 

クリス

ヒルダ

イリア

エリス

フローラ

オリビア

ふうか

ケイト

オルガ

ビアンカ

イリカ

サラ

クライン

アラン

ヤスコ

アベル

ベネット

アルゴ

 

ここで、被害者の名前のイニシャルを考えると、おもしろいことになる。

 

クリスC

ヒルダH

イリアI

エリスE

フローラF

オリビアO

ふうかF

ケイトK

オルガO

ビアンカB

イリカI

サラS

クラインK

アランA

ヤスコY

アベルA

ベネットB

アルゴA

 

つまり、こうなる

 

Chief of KoB is Kayaba

 

「KOB(血盟騎士団)のトップはカヤバ」

 

ここで生じる疑問がある。

なぜ、彼女はこの暗号をわざわざ示したのか。私に知られる危険をおかしてまで、この世界のプレイヤーに示す必要性はあるのだろうか?

そもそも、被害者の名前まで把握しているのは攻略組の中のごく少数にすぎない。

そこがわからない。

彼女は今でも行方がしれない。

管理者権限を行使しても、彼女のユニークスキルが邪魔をしているためわからない。

コレはこれはおもしろいことではなかろうか。

ただ、今はゆっくりと待とうではないか。彼女たちがこれからいったいどういう動きを見せるのかを……

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

はあ、やれやれ、ポーカーフェースを貫くのも難しいもんだな。おまえはいつもニヤニヤしているダロって?

いやー、それがオイラの言うポーカーフェースなんだナ。アルトにはああ言ったけど、やっぱり嘘をついているのは、心苦しい。でも、仕方ないからナ。

ようやく自分のホームに着いた。後ろを振り返って確認する。よし、つけられてはいないな。これは情報屋のクセだ。商売上恨まれることもあるから家に入る前の習慣は欠かせない。でもなあ、中に入っても、厄介なんだナ〜

家の中に入る。本来は無人のはずの部屋の中からコーヒーの香りが漂っている。

リビングに入ると、彼女がソファに転がっていた。

 

「やあやあ、アルゴ〜おかえり〜〜」

 

「ただいまハーちゃん。くつろいでるナ」

 

「いいじゃない、はい!アルゴの分のコーヒーだよ〜」

 

「あ、ありがとう」

 

見てのとおりダ。全国指名手配犯をかくまっている人の気持ちがしれないよ。まったく、失踪中のはずの彼女がこの家にいるなんておかしな話だ。

 

「アルゴは優しいからね〜。本当に感謝してるよ〜」

 

「はあ、やれやれ〜〜」

 

少しさかのぼってみよう。アルトたちがラフコフ討伐から帰還した後、オイラは一旦ホームに戻った。一息ついて、キー坊の依頼に行こうとした時だった。突然、ドアを叩く音がした。不思議に思い、警戒してドアを開いた先に、なんとこの子がいたのだ。

 

「……ハーちゃん!!、いったい、どうして……」

 

「やぁ、アルゴ。ちょっとヘマをしてね〜。お願いがあるんだ」

 

彼女は、なんでもないように装っていたが、かなり焦った様子だった。そりゃそうだ、さっきまで殺されかけていたのだから。

オイラは彼女を中に入れて事情を聞いた。

 

「……ナルホド、それは大変だったナ。

でも、その『秘密』ってなんなんダ?」

 

そう聞くと、彼女は困った顔をした。

 

「うーーん、それは、言うのが難しいな〜」

 

むむ、此の期に及んでまだ隠し事をするのか!

 

「ちがうよ、コレを知っちゃうと、アルゴにまで危険が及ぶかもしれないでしょ?それは、イヤだから……」

 

「ヤレヤレ、情報屋を前にしてそれを言うのカ。それで、どうしてこのに来たンダ?」

 

「あのねえ〜すんごく、図々しいのはわかってるから、ここに泊めてもらえないかな〜〜」

 

彼女は、大学生の、今日はお泊りしてもいいよねーみたいなノリで言った。おい、ちょっと待て!

 

「はあ!?どうして、オイラのところなんだヨ!」

 

「お願い!アルゴしか頼る相手がいないのよ」

 

「そうはいってもダナ……」

 

「ダメ……?」

 

やめてくれ、そんな小動物みたいな懇願しても、オイラには響かないぞ!そうゆうのはアルトにやれば効くんじゃないか。

でも、ここまで、頼んでくるしナ。それに『秘密』とやらも気になるし……

 

「し、しかたないナ。め、めいわくかけたらすぐに突き出すからナ!」

 

「ありがとう!アルゴ、大スキーーー♫」

 

「や、やめてくれ、抱きつくナ!」

 

「ええ〜〜昔はよくこうしたでしょう〜〜」

 

「き、記憶にないゾ」

 

そんなわけで、彼女を泊めることになったわけだ。

 

「ごめんね、アルトにはこのことを知らせないで欲しいのよ〜〜」

 

と、言うので、結局、アルトたちにもこのことは秘密にしているわけだ。

 

「アルゴ!!そういえば、あなたが言ってた武道具店に行ってきたわ!」

 

「はい!?ほんとうに、行っちゃったのカ?リズベットにばれなかったのカ?れ

 

「だって、あの子に私の顔は割れてないし〜〜」

 

「あきれたもんだナ……」

 

「まあね、それに……」

 

彼女は不敵な笑みをわざも見せた。

 

「まだまだ、やらなきゃいけないことはあるし……」

 

「まったく、オイラはせめて、君がもうおかしなことをしないように願うばかりダヨ」

 

「大丈夫、もうそんなことはしないわ」

 

彼女はあの一件以来、なんだか真っ直ぐになった。わざと、自分にかぶせていたベールを脱いで、本来の彼女になったようだ。それなのだろう、いつも見せていた、不気味な笑顔が消えていた。それと対照的に、まっすぐな笑顔を見せるようになった。

 

「さあ!アルゴ、そろそろ夕食にしようよ〜」

 

「そうだネ。ええと、なるべく下層のレストランに……」

 

「ええ〜上層の美味しい店にしようよ〜」

 

「キミはばれてもいいのカ!」

 

「でも、その分スリルも味わえて、一石二鳥だよ〜」

 

「んな……なんだか、昔のアルト……いや、レットの苦労がわかった気がするゾ」

 

「うふふ、いつか、彼とも食事できる日がくればいいけどね」

 

彼女の瞳は好奇心旺盛な子供そのものだが、サッパリした笑顔が見て取れた。

彼女のやったことは許されないことだ。でも、彼女を知る人間として、オイラはこうして彼女のそばに今はいることにしよう。なぜなら、彼女はオイラの友人なのだから。世間が彼女を拒絶しても、私は彼女の最後の理解者として存在しよう。それが、私の罰でもあるのだから……

 

「さあ!行こうよ、アルゴ!!」

 

「ああ、ハーちゃん!」

 

 

 

 

 




アルゴの心の広さに感動!
さて、そろそろ物語は佳境に入ります
予定ではあと8話くらい

そろそろ、くっつけましょうか
キリトとアスナを……

それでは次回もお楽しみに

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