SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
新章突入です。
概ね原作に沿っていきます。
「今日の献立は何にしようかなぁ」
今日あたしはアルトさんが用事で不在のため、1人で街に出ています。というのも、せっかくなので食材を見つけようと思って森に出たらなんだかよくわからないけど、レア食材が手に入っちゃいました。美味しそうなお肉なので、きっとアルトさんも喜んでくれるかな。そうとなれば、何か付け合わせも欲しいのでこうして野菜の市場に来ています。でも、アルトさん今日は何の用事なんだろう?なんか、朝からあからさまにコソコソしてたのが気になるけど、帰ってから聞けばいいよね
「まいどーー!」
ニンジンが手に入ったし、あとはジャガイモかなぁ。でも、SAOの中でちゃんと買い物してるなんて不思議だなあ。もともとは、そんなに料理得意じゃなかったけど、やっぱり、食べてそれで美味しいって言われると嬉しいから。アルトさん、喜んでくれるかなあ………………
「ど、どうでしょうか、アルトさん……」
「うん、おいしい」
「ほんとですか!」
「でもな、シリカ……」
席を立ったアルトさんはあたしの両肩をつかみ、あたしを引き寄せ、お互いの鼻の頭がぶつかりそうなくらい顔を寄せた。
「ア、アルト…さん?」
彼は普段よりも、一層落ち着いた、甘い声でささやく。
「俺はシリカをごちそうになりたいな……ダメか?」
「そ、それは……ダメというわけではないというわけじゃなくて……って、いや、そうじゃなくて、あわわわ!!」
「顔がリンゴみたいになってるぞ、ふふ……そんなところがかわいいんだけどな」
「アルトさん……」
「シリカ……」
二人の唇が徐々にその距離を縮めていく………………
って、あわわわ!!!!!
あ、あたしはなんていうヒドイ妄想を!で、でも、これはコレでありのような……
いけないわ、気を取り直して早く帰ろうっと。あたしはまっすぐに転移門に向かって歩き出した。すると、前の方から白い制服に身を包んだ目つきの悪い男が辺りをキョロキョロしながら、誰かを探しているそぶりで歩いてきた。あたしは、ぶつかりそうになったので、少し道を譲ったのだが、向こうは前を見ていなかったこともあり、少し身体がぶつかった。
「イタっ」
あたしは、よろめきながらなんとか体勢を整えた。もう!ちゃんと前を見てくださいよ!でも一応礼儀で謝っておこう。
「ごめんなさい……」
すると、向こうはあたしを一瞥するとあからさまに機嫌か悪そうに、つまりとても感じ悪く
「ふん、気をつけろ、ガキが」
な、なんですって!コッチが避けなかれば事故だったのに!そ、それに、ガキって言われた!!あたしは言い返してやろうと衝動に駆られたが、頭の中に不意に彼が思い浮かんだ。
『くだらない相手にイチイチ構うな。そうゆうときは、何も言わないのが紳士淑女のたしなみさ』
そう、頭の中で彼が語りかけた。あたしは、相手の男の顔を見て、少し頭を下げて、踵を返した。
そうだね、アルトさんならきっとこうするだろうし。今日のところは、見逃してやります!!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「エギル、例のブツは……」
「ああ、アルト……用意できてるぜ」
スキンヘッドの大男が取り出したのは漆黒のスーツケース。それを受け取った鋭い目つきの若者は、中身を確認する。
「たしかに……取引成立だな……約束通りの謝礼だ」
そう言って、若者は素早く操作してコルを大男に渡す。
「まいど…手に入れるのに苦労したんだから、ちゃんとやれよ」
「ふん、ヘマはしないさ……」
男は不敵に笑みを浮かべながら、その怪しいスーツケースをアイテムストレージにしまい込んだ……
「いつまでやってんのよあんたたちは!」
バシッと頭を叩かれた若者……もといアルトは口を尖らせて、暴力の発生源に文句を言う。
「いいじゃないか、こうゆうのやってみたかったんだよ」
「あんた、紳士を自称していなかったかしら?これじゃあ危ない人同士のヤバイ取引じゃない」
「はーどぼいるどみたいじゃないか?」
「ハードボイルドよ!腑抜けた言い方すぎるわよ!」
「ここらへんで正義のヒーローが登場してだな……」
「そんな都合のいい話あるわけ……」
ガチャリ、黒の格好に身を包んだ少年が来店してきた。
「おーい、エギルちょっと、これ見て欲しいんだが」
「「来ちゃったよ!!!」」
「はい?」
キリトが突然俺とリズが叫んだことに驚きを隠せないでいる。タイミング良すぎるだろう主人公さん!
「アルトとリズか。どうしたんだ?今日はシリカがいないみたいだけど」
「ああ、それはだな……」
「待ちなさい!!」
リスが慌てて俺の口を封じた。もがもがもが。すると、リズは俺の耳元で厳しい口調でささやいた。
「せっかく秘密でやってんだから、キリトに話して巡り巡ってバレたらどうするのよ」
「モゴモ、モゴモゴ(一理あるな)」
「はっはっはっ、仲がいいなお前ら」
「そうかな、俺はこの前なんか……」
「ふんっ!」
リズはキリトに見えないように俺の腰に一撃を入れた。
「イタイイタイイタイイタイ!!!」
「さてと、キリト、あんたは何しに来たのよ」
「ああ、ちょっと珍しいものが手に入ったからエギルにみてもらいたくて」
「なんだ?キリト、見せてくれ」
「お前らここにケガ人いるんだぞ!!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「こ、これは……」
「す、すごい……」
あれれ?おかしいぞ〜、俺だけ状況が掴めてないなんて、うーん、どうゆうこと?
「あの〜何がすごいんだ?」
「はあ?あんた、コレ見てわからないの?」
「はあ……」
「ラグーラビットって言ったら、レア食材の中でもプレミアがつくほどの激レアよ!」
「うまいのか?」
「あたりまえじゃない!舌もとろける絶品らしいわよ!」
「らしい?」
すると、エギルが説明してくれた。
「言っただろ?レア食材なんだから誰も簡単に食べられるわけじゃないんだ」
「ナルホド」
キリトは困った顔で、悩んでいた。
「うーん、俺は料理スキルを上げてないしな……どうしよう」
「リズはできないのか?」
「あたし?……そ、そうね〜鉄鉱石と一緒にあぶるとか??」
「はい、わかった、わかった。それ以上は言わなくていいぞ……」
「な、なによ!あたしだって、頑張ってるのよ……だいたい、あんただって料理はてんでダメじゃないの」
「ふっふっふっ……反論するまでもないぞ」
「いやいや、何か抵抗しろよ」
キリトがあきれ顔でつっこんだ。でも、お困りですね、せっかくの高級食材なのに。
と、そのときにまた、店の戸をたたく音が聞こえた。
「キリト君いる?」
「あら、アスナじゃない」
「リズに、アルト君に、キリト君……なんでみんないるのかしら?」
アスナがキョトンとしていた。すると、後ろの方からニョキッと目つきの悪い背の高い男が出てきた。すっごく、不機嫌そうな顔ですね。
「この人は私の護衛よ。私は要らないって言ったのに、幹部は付くことになっちゃって」
まあ、物騒な世の中ですからね。でも、ことアスナに関しては必要ないでしょう。鬼に金棒というが、この人の場合は鬼に金棒と鉄球がついてるみたいなもんだから。
「もうすぐ攻略戦だから、キリト君の安否確認に来たのよ」
またまた、そんなこと言って〜〜素直じゃないですな〜
「それで、何をしてるの……って」
「シェフ確保」
キリトが嬉々としてアスナの肩をつかんでいる。
「アスナ、これを見てくれないか」
「これ?……コレってまさか」
アスナが例のウサギ肉を見て目を丸くしていた。キリトはニヤリと笑って彼女にもちかける。
「もし調理してくれたら4分の1を分けてもいいぞ」
すると、閃光の副団長はギロリとキリトをにらんでこう宣言した。
「は・ん・ぶ・ん!!」
デスヨネー。あっ、まって、もしかしたら俺もこのウエーブに乗っておそすわけを
「アスナさ〜ん、ぼくもウサギ肉……もごもごモゴモゴ」
またもや、リズに妨害された。再び彼女がキツイ口ぶりで俺の耳元で言葉を発した。
「あんたね〜せっかく二人きりになれるんだから、邪魔するんじゃないの!」
「ええ〜お前はそれでいいのか〜」
「今日のところは友人の肩をもってあげるのよ!」
「でも〜ウサギ肉〜〜」
「あんたはどこの海賊団の船長よ!」
「英国紳士にオレはなる!」
「ならなくていいわよ!」
そんなやりとりを繰り広げているとキリトが苦笑いをしていたが、アスナは護衛の男に御役御免を告げるところだった。
「おつかれさまです。今日はもう帰ってもらって結構です」
すると、男が食い下がった。
「アスナ様!こんな輩を家に招くのですか!?コイツは攻略でいつも独善的な行動をするビーターですよ!それに、よく見れば胡散臭いあの仮面もいるじゃないですか、こんなヤツらと付き合うのはよした方がいいに決まっています!」
あれれ、もしかして、おれも悪口言われちゃってるの?これは参ったな。すると、男の暴言にリズが口を開いて抗議をしようとしていた。俺はすかさず彼女の口をふさぐ。
「もがもがもが!!」
リズが何か言っているがさあ、なんだろうね?代弁者は男の上司だった。
「クラディール、これは命令です。今日のところはもう下がりなさい」
「し、しかし……」
それでも、男は見苦しく引き下がろうとしないのでアスナがギロッと冷たい視線を浴びせる。すると、不満げな顔のまま、護衛は店のドアを乱暴に開けると外に出て行ってしまった。
「二人とも、ごめんなさい……」
「いや、大丈夫さ。よくあることだし」
キリトが気まずくそうに言う。
「そうそう、紳士たるもの、自分のことで平常心を失うべきではないからね」
アスナはそれでも申し訳なさそうな顔をしていた。
「うちのギルド……もとは団長が一からメンバーに声をかけて作ったのに、最強ギルドって呼ばれるようになって、なんかおかしくなっちゃった……」
彼女は悲しそうな目で遠くを見つめていた。ナンバー2でありながら変わりゆく組織に対して無力な少女の姿はその日の俺の目によく焼きついた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
コトコトコト……
うん!いい具合に煮えてきたな〜〜
アルトさんまだかな?
「ただいま〜〜。おーいい匂いがするな」
ちょうどアルトさんが帰宅した。
「アルトさん!おかえりなさい!今日は美味しい食材が手に入りましたよ」
「へえー、何を手に入れたんだ?」
「ええと、『ラグーラビット』っていう肉です」
「ウサギ肉!!」
アルトさんが仰天しながらあたしに駆け寄ってきた、と思うとギュッと抱きしめられた。
「シリカ!でかした!ダイスキ!!」
な、なんでこんなに喜んで……って、ええええ!だ、ダイスキ!?
「ア、アルトさん少し苦しいです」
「うんうん、うちにも優秀なシェフがいたことになんで気づかなかったんだ、俺は!いやーユカイユカイ、ハレハレしてるな!」
な、何か知らないけどスゴく、喜んでもらえたみたい。あ、あと、今日の妄想が叶ったのはちょっとうれしいの、かな?
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
アルトさんは食事中終始、無我夢中でシチューを口に運んでいた。いつもは落ち着いて食べてるのに、今日ばかりはしょうがないよね。
「俺としたことが、かなり取り乱しちまったよ」
「そうですね、まさかこんなに喜ぶとは思ってもいませんでした」
「あたりまえだ!こんなに美味しいメシを食べれて幸せじゃないヤツがいるもんか!」
「し、しあわせ……」
「そうだな、毎日こんなにおいしいご飯にありつけるのはこの世界じゃほとんどいないさ」
「そ、そうですか……」
あたしはアルトさんのほめ言葉で胸がいっぱいになってしまった。うれしいなぁ、あたしも幸せだなあ。
「シリカは本当にいいお嫁さんになりそうだな」
ピキッ
あたしの中で何かにヒビが入った気がした。でも、今日ばかりは嬉しさが大きかったので我慢することにした。この人はなんだかな……わかってるようで、肝心なところでわかってないんですよね。
「そういえば、どうしてアルトさんはそんなにウサギ肉に反応していたんですか?」
「ああ、今日たまたまキリトとアスナに会って……」
へえ、キリトさんも同じ獲物を手に入れたんだぁ。偶然もあるんだな。
「そういえば、アスナといえば護衛がついたとかでな。それがまた厄介な男でね……」
「わかります、いますよね。そうゆう人って。あたしも今日街を歩いていたら、そんな感じの人と……」
そんな話題も織り交ぜながら、その日の夜は過ぎて行きました。