SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
夢の対決というものが目の前で繰り広げられている。男と男のガチンコ勝負というものは見るものの心を揺さぶり、自分のことよりもその行方に心拍数が上がっていくものだ。もちろん、当の本人たちはいうまでもないのだろう。だが、今回の場合観衆であるはずの俺とシリカだけはどうも、こうした高揚とした緊張感というよりも、ただただ、運命に身を任せて勝負の行方を見るしかできない、無力さが募ってくるのだ。
「アルトさん」
「ん…」
「あたしたち何か悪いことしましたっけ?」
「ん〜〜」
「少なくとも今回はあきらかに不慮の事故ですよね」
「うん」
「じゃあ、どうして……」
そうだな。まず今わかっていることは2つ。1つはキリトとヒースクリフがデュエルをしていること。もう1つは、この試合によって、キリトのみならず、俺とシリカも巻き添いを食らうハメになるということ、すなわち、キリトが勝てばアスナの血盟騎士団一時脱退が認められ、ヒースクリフが勝てば、キリトと俺、シリカが血盟騎士団に強制入団させられるということだ。いや、正確に言えば俺とシリカは血盟騎士団に協力させられるそうだ。
諸君、世の中には思ってもいなかったのになぜか巻き込まれることがあるのだ。それを俺は今ヒシヒシと実感している。
説明がほしいだろうか?だったら、少しかいつまんでここまでの流れを振り返ってみようじゃないか。
「どうしてこうなった!」
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例のウサギ肉を美味しくいただいた次の日のことだ。これは人づてに聞いたことなので、俺はちゃんと現場にいたわけではない。
キリトとアスナがどうやらパーティを組んで迷宮区に入っていたらしい。そしたら、軍のやつらがボス部屋に突入する暴挙に出てあえなく全滅状態に陥った。キリトが暴走して、新たなユニークスキル二刀流で華々しくヒーローになった。けれど、危険を冒したからアスナが泣く。すると、自然と二人の距離が縮まる。心を動揺させたアスナが血盟騎士団の一時離脱を申請する。
ここまでは、皆さんも自然に理解いただけるであろうか?決して決してその工程をしゃべるのが面倒なわけではない。さて、俺たちが関わってくるのはここからだ。
それは、二刀流スキルが公になってパパラッチに追われたキリトの潜伏先を訪れた時のことだ。
「いやー今回は大変だったな、キリトと」
「アルト……お前内心では全然心配してないだろ!」
「あたりまえだ!よかったじゃないか、気になるあの子との距離もぐっとちかくなったんだろ?」
「んな……!!」
「アルトさん!おめでたいことでも、こうゆう時は自重しなきゃダメです。キリトさん!吊り橋効果はカップル成立にはもってこいですよ!だから安心してください」
「フォローになってないどころか、むしろ悪化してないかシリカ!?」
「ハネムーンはやっぱり海外がいいと思いますよ」
「なんの話!?」
「こらこらシリカ!」
「おお、アルトちょっと、シリカの暴走を……」
「海外に行こうにも今は無理だろう」
「そっちーーー!?」
キリトが叫んでいる。よし、もう一声。
「キリト……」
「な、なんだよ」
「前にも行ったけど、新婚祝いは何がいい?」
「また、その話かい!」
そんなバカなやり取りをしていると、突然バタンとドアが勢いよく開いた。その先には顔面蒼白のアスナが息を切っていた。
「キリト君、大変なことになっちゃった……」
大変なことねぇ、そりゃ大変だ。ここいらで俺たちは退散しようかね。と思って部屋を出て行こうとして、なぜかアスナに肩をつかまれた。
「その、アルト君とシリカちゃんも……関係があるの……」
「「えっ?」」
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全面ガラス張りの壁、円形のその部屋はドラマで見た大企業の会議室のような、威圧感をヒシヒシと感じるところだ。特にこの真ん中の椅子に腰をかけている老成した男の目からは全てを見透かされているかのような、そんな緊張感をはからずも抱いてしまう。
「お別れの挨拶に来ました」
キリッとした目をまっすぐにその男に向ける美少女は淡々としたソプラノの声で宣言した。男はかすかに苦笑しながら、
「そう結論を急がなくてもいいだろう……キリト君、君も困ることをするね、大事な人材を引き抜かれるのは私としても了承できないな」
全身を黒で包んだ少年は堂々たる口調で返答をする。
「そんなに言うなら、護衛の人選には気をつけるべきだろ」
「……すまないね、クラディールには謹慎させている。しかし、それでも、アスナ君を失うのは惜しい……条件をだそうじゃないか。そこの二人、つまりアルト君とシリカ君がアスナ君の代わりに血盟騎士団へ貢献してもらおう
ちょっと、待て待て待て。どうして、この状況で俺たちになるの!俺は慌てて食らいついた。
「ちょっと待て、いくら友人のためでもそれは困……」
「あ、あたしはアスナさんのためならいい気が……」
シリカが苦く笑いながら俺の抗議を遮った。ちょっと待って、ちょっと待って、シリカちゃん!!お前、どんだけアスナ慕ってんのよ。すると、ヒースクリフが口を開いた。
「それと、もう1つ、キリト君が私と剣で戦う。勝てば、友人とアスナ君は君の自由だが、君が負ければ……」
「いいさ!アルトとシリカを勝手に血盟騎士団なんかにいかせないさ。俺がこの《二刀流》でお前を倒す。それですべてかたがつく」
キリトくん!?かっこよく言ってるけどそれって、バクチだよね!?僕たちの自由は完全に君の手のひらの上だよね?
すると、良識の女神が反論に出てくれた。
「ちょ……私は少しの間ギルドを離れたいということで、シリカちゃんたちまで巻き込むわけには……」
そうだそうだ!勝手に決めるな!!
だが、キリトはキリッと顔を決めるとまさに主人公のセリフを決めた。
「ヒースクリフ!デュエルで勝負だ!」
そんなカードゲームやるみたいなノリで言わないで〜〜〜!!
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そうゆうわけで、俺たちは今、アインクラッドトップ2のガチンコ勝負の行方を眺めているわけだ。
「でも、あの二人すごいですね、キリトさんの激しい間髪容れない攻撃もそうですが、それを完璧に防いでいる団長さんも普通じゃないですよ」
「あたりまえだ。あれは化け物なんだよ。俺たち一般ピープルにはついていけるわけない」
「ですよね〜」
「いや、あなたたちも十分普通じゃないわよ」
アスナがなんか言っている。
「なあなあ、シリカ、男が自分のために命を削って争う姿って女の子からするとどうなんだ?」
「そうですね〜。やっぱり、あれですよ。『私のために、争わないで』っていうテンプレのセリフが浮かびますね」
「そうか、じゃあちょうどここにモデルがいるから、言ってもらおうか」
「言わないわよ!もう、アルト君もシリカちゃんもちゃんと試合を見ようよ!私が言える口じゃないけど……」
そう言われてもですね。ほら?実況中継とか面倒じゃん。でも、まあ見てみるか。ええと、キリトが八連撃を食らわせると、さすがのヒースクリフも引き下がっている。でも、勝負をつけるほどのダメージは食らわせていないようだ。なにより、ヒースクリフの顔が余裕に満ちているからな。
「……素晴らしい反応速度だな」
「そっちこそ堅すぎるぜ」
はいはい、しゃべってる暇あったらさっさとケリをつけようね。再び両者が動き出す。ヤレヤレ、いったいいつになったら終わるのかね。
俺は、ふっと視線をズラして大勢の観客の方に向けた。多いね、1000人はいるんじゃないの?たしか誰か入場料とってたけど、これは儲かりそうだね。さっきからキヤーキャー言ってるのは多分キリトのファンだろうな。逆に過激な言葉で煽ってるのは男が多いね。そんな人の集団を眺めていたとき、ふと見覚えのある顔があった。……!!黒のフード、幼い顔立ちなのに、雰囲気はミステリアスな少女。もしかして!
だが、そのとき一斉に観客が悲鳴混じりの歓声をあげた。みると、決闘の勝負がついていた。結果は……キリトの負け。
でも、俺はそんなことに構っていられなかった。俺はもう一度観衆のなかから彼女の姿を探した。だが、勝負がついて興奮した人の集団がうねりを見せていたため、もう彼女を見つけるのは不可能だった。
「アルトさん?」
シリカが首を傾げていた。アスナはというと結果を見て呆然としていた。
「シリカ……」
POHがこの場に姿を現した。それは1つの確信と1つの疑問を生んだ。彼女はたしかに生きている。だが、ここにきたのはなぜか。俺にわざと顔を見せたのか、はたまた、自分を殺しかけた男の決闘を見に来たのか。
しかし、もう1つの事実に俺は気付いた。
「今の気分を簡潔にあらわすなら、春休みが終わって明日から新学年なのに、新学級のメンバーに自分の知り合いがいなくて明日からの自分の身の置き場に悩む学生の気分だ……」
「たとえが長い上によくわかりません!」
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同刻、某所にて
「ハーちゃん、どこに行ってたんダ?」
「ん〜ちょっとね〜〜」
「……まさか本当に決闘を見に行ったのカ?」
「大丈夫よ!レットと目が合ったけど、他の人にはバレてないわ」
「……」
「アルゴ?」
「もうバラしちゃおうかナ〜〜」
「ちょっ!ダメよ、まだ早すぎるのよ」
「まったく!オイラもまだ教えてもらってないんダゾ!いったい何をしたいんだよ君は」
「ふふふ、いつかわかるわ……今日の件で確信を得たもの」
彼女は心のなかでつぶやいた。
「最高のショウタイムの日はね……」
とりあえずキリトとアスナのゴールインまでは突っ走ります
次回もお楽しみに