SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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Fifth section⑦〜舞う、踊る、終焉〜

「愉快か……それがキミの行動源力なのは知っていたが、ここまでやられると怒りを覚えるね」

 

「うふふ〜〜いいね、あなたが怒ってるところなんてめったに見れないでしょうからね〜」

 

俺は心底後悔している。どうしてこの二人をまた対峙させちまったんだろう。どちらも方向ベクトルは違えど、変人あるいは狂人、よくいえば天才にちがいない。一人でも厄介なのに二人集まったらもはや収拾がつかないではないか。俺は警戒を緩めないようにしながらもヒースクリフ……もとい茅場に提案をする。

 

「あー団長さん。俺たちも俺たちでお前の正体を突き止めたんだ。それで提案だ。俺たちとも勝負してほしい」

 

「ほう……」

 

「まあ本当なら一対一が正当だろうが、それは無理な話だ。キリトみたいな化物じゃない限りな。俺とハニーは共同戦線をとる。……最近のゲームでは、魔王に勇者一人で挑むよりも、複数パーティで挑戦するのが普通だろ?」

 

我ながら無理がある論理だ。けれども、相手はそうではなかったらしい。

 

「ふむ、POH……いやハニーくん?というのか、それでいいのか?」

 

「ええ、その方が楽しめるでしょう?あなたも」

 

「ならば……準備はいいかね?いざ……」

 

おー怖い怖い、殺気立ってるよ。多分、内心じゃかなり激おこなんでしょうね。まあそれでも、俺たち脇役が最終決戦に挑めるなんてめったにないことだ。でもクリア後に馬車の中のサブキャラだけでラスボス撃破なんてやり込み要素としてははずせないだろ?

俺はハニーと目を合わせる。

 

(おい、結構久しぶりだけど、大丈夫か?)

 

(私はオッケーよ、キミこそ大丈夫なの?不器用な男はダメよ)

 

今、その指摘が必要だろうか。まあ、いい。

 

「それでは、行かせてもらいますよ」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

あたしは再び火蓋が下された戦闘を片目にアスナさんの腕を離さないようにしていた。すると、ヒールを終えたキリトさんが少し身体を引きずりながらこちらにやってきた。

 

「キリトくん……」

 

「アスナ…ゴメンな、カッコつかなくて」

 

「いえ……そんなことないよ……」

 

アスナさんはようやく抵抗の力を緩めてくれた。そのままキリトさんに支えられるようにして座り込んでしまった。

 

「後はあの二人に任せましょう」

 

「シリカちゃんはいいの?行かなくて」

 

あたしはアスナさんの素朴な疑問に作り笑顔で答える。

 

「悔しいけど、アルトさんの隣で戦うのはあの人の方がまだまだ上手ですから……」

 

「まあ、仕方ないサ。オイラだって何度も同じこと思ったもんダヨ」

 

キリトさんとアスナさんが、いつの間にいたんだよ、という顔をしているが、実はアルゴさんも一緒に走ってきたのだ。同じことを考えていたってどうゆうことなんでしょうか?

 

「……不思議ダロ。あの二人はね、ずっと離れたとしても、ああして自然なくらい息を合わせられるんダ」

 

アルゴさんが見つめる先には大きな敵と戦う2人の役者の姿があった。アルトさんが斬りかかり、それと同時に死角からPOHさんが援護攻撃をする。それでも敵は瞬時に判断してまずアルトさんの攻撃をかわしながら、POHさんのほうへと焦点を合わせ、長剣を入れる。だが、POHさんがあえて大きく体を左に動かして避けることで、茅場にはアルトさんが死角にはいる。それを狙って一撃を入れれば……

 

「すごい……」

 

どんな攻撃にもすぐに盾と剣で対処できた敵は、あきらかにほんろうされていた。アルゴさんが語りをつづける。

 

「なんでだろうナ。オイラだってあいつらと一緒にいる時間は長かったけど、それでも踏み込めないところがあるんダ。……悔しいよ、アルトの隣にいるのはいつも違う女の子だからね」

 

アルゴさんが今見ているのは誰なのだろう。アルゴさんはその人をどうゆう立場で見ているのだろう。友人、親友、腐れ縁……あたしに言えることは一つだけ。彼女は今、情報屋でも、鼠でもない。彼女は今女の子として存在しているのだ。でもその女の子は少しの沈黙の先に消えてしまった。いや、消されたのだ、意図的に。アルゴさんは再びニヤりと笑いながら振り向いた。

 

「オネイサン、たとえシリカちゃんでも、容赦はしないからね……さあ、そろそろフィナーレの時間ダヨ」

 

その言葉通りだった。

 

「うふふ〜〜アルト、最後のシメはあれだね」

 

「はあ?……ったく手加減してくれよ」

 

アルトさんはそう言いながらも少し楽しんでいるようだった。

二人は合図とともに茅場を中心とする円を描くように、ちょうど茅場を挟んで真向かいに位置し、茅場の周りを高速で回転し始めた。加速を増していく、2人の姿は早すぎてどこにいるのかがつかめないほどだった。茅場は冷静に剣を構えていた。

その時、回転する竜巻の中から一つの影が茅場には向かって飛び出してきた。アルトさんが剣を茅場に突き刺す。

だが、それを茅場は見破っていた。アルトさんの剣は綺麗に弾き飛ばされた。

 

「……残念だね、アルトくん」

 

「それはこっちのセリフだよ」

 

その時に回転していたはずのもう一つの影が突然アルトさんの後ろから現れた。2人は回転している間に、徐々に一点に集まるようにして、茅場の目をごまかしていたのだ。あたかも2人の人間が向かい合っていたかのように。

そして、POHさんはアルトさんの体をあと少しで貫いてしまいそうなくらいのギリギリのラインで茅場に最後の一撃を食らわせた。

 

「……チェックメイト♫」

 

「……見事だ」

 

そう笑いながら、茅場の姿は消えていった。

 

ーゲームはクリアされました。ゲームはクリアされました……

 

世界の終焉を告げるナレーションが響き渡り始めた。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

いつもは店を開いている時は中にいるのだけれど、今日はなぜか外に出たくなった。

 

「……大丈夫かな、みんな」

 

攻略に向かった友人たちのことを今日はどうしても気になってしまう。あたしにできることは彼らに武器を提供すること。それだけしかできない。だから祈るしかないのだ。

 

リーンゴーン、リーンゴーン……

 

突然空からけたたましい鐘の鳴る音がする。なんだろう?これは?

他のプレイヤーも異常に気づいて空を眺める。そのとき、あたしは直感的に思った。この鐘はデスゲームのはじまりを告げたものと同じだった。だとすれば、今この鐘が鳴るのだとしたら

 

「あいつら、やったんだね……」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

ここはどこだろう。目を開いたとき、あたしはボス部屋にはいなかった。光がまぶしい。1日の終わりを教えてくれるような夕日の光があたしのまぶたを通して伝わってきた。

あたしは周りを見渡した。すると後ろには彼らがいた。

 

「……シリカ、見てみろ」

 

見る?どこをでしょうか。

 

「ほら、あそこよ♫」

 

彼女は笑いながら指を指す。その先を見ると、見覚えのある巨大な建造物がまさに崩壊をはじめていた。

 

「アインクラッドが崩れていく……こいつは見ものだな」

 

「あたしたち、どうしてここにいるんでしょう?」

 

POHさんはケラケラ笑いながらいった。

 

「あはは〜〜もしかして、何かの手違いであたしたち死んじゃったのかしら」

 

POHさん……それは冗談ですよね?あたし、死んでないですよね!ちょ、ちょっと何でアルトさんもご愁傷様みたいな顔なんですか!

 

「……君たちは最後までそんな調子なのだね。あの二人とは大違いだ」

 

聞いたことのある老成した声だ。その先には……白衣を着た20代半ばくらいに見える青年が立っていた。

 

「ほお、創造主さん自らお見送りに?」

 

「創造主?」

 

「……私が茅場晶彦だ。君たちから言わせれば、創造主あるいは悪魔、マッドサイエンティストというのかな?」

 

アルトさんが驚いたような顔でいた。

 

「へえ、自覚はあったんだな」

 

そこですか……

 

「ねぇ、私たちってどうなっちゃったの?もしかして本当に御臨終??」

 

POHさんは手を合わせて臨終のポーズをとった。

 

「じきに君たちの意識は現実世界に戻るはずだ。……この世界もすぐに消去されるからね」

 

「お前はどうするんだ?」

 

「さあ?どうだろうね……」

 

茅場はふっと笑みをこぼした。

 

「先ほどキリト君とアスナ君を見送ってきたよ。あの二人と、それと君たち三人には別れを言いたくてね。……特に、君には最後に言いたいことがある」

 

「私?」

 

「……君はさっきこう言ったね。『愉快』と、人生の年長者として一つだけ忠告してあげるよ。……楽しさを追求することは創造を生むとともに、失うものも多い……それでも君を認めてくれる人がいるのなら、決して彼を失ってはいけないよ……それでは、さらばだ」

 

茅場晶彦は手を振りながら電子世界の中に消えていった。

 

「ふーん、まさかあいつにこんなこと言われるなんてね〜〜」

 

POHさんは腑に落ちないようだ。気づくと鉄の城はほとんどが崩壊し終わっていた。あたしたちの体も徐々に光の分子となっていた。

 

「アルトさん!」

 

「なんだ、シリカ」

 

彼はあいも変わらず平然とした口調だった。

 

「また、会えます、よね……」

 

「さあ、どうだか?」

 

「さ、さあって……」

 

「こらこらレディに意地悪はいけないぞ〜〜!」

 

「冗談さ……大丈夫、安心しろ」

 

「あ、あたしの本当の名前、現実世界での名前は『綾野圭子』っていいます」

 

「圭子……なるほどそれでシリカね……いいなまえだね。俺の名前は……」

 

あたしはその名前を頭の中に何度も繰り返して記憶に焼き付けた。

絶対、絶対に会いに行きますからね。

 




次回、『罪と罰』


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