SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜 作:トアール凡人
小人族の族長宅を出た彼らは化け物のいる『光ゴケ』採掘場に向かっていた。
「はぁ…めんどうなことになった」
彼はため息をついた。なんやかんやで化物退治をすることになり、二人だけで倒せるモンスターなのか、どんな属性でどんな攻撃をしてくるのかをもっと調べたかったが、相方の少女は「ん〜なんとかなるよ♪」といって迷いなく彼の前を歩いていた。なぜ、この状況でスキップをしているのだろうか?
ヤレヤレと手をおでこに当てながらふと洞窟の天井を見上げると、ところどころに散りばめられているホビットの太陽こと光ゴケがある。彼ら曰く、怪物の発生で以前よりも暗くなりつつあるそうだが、こうこうとフロアを照らすその照明はついさっきまで暗闇の中を手探りで進んでいた彼からすると十分すぎるものであった。アマテラス様!白熱電球の父エジソン!バンザイ‼︎ここにきて改めて明かりが人間の心を平静にしてくれることに感謝していると、どうやら採掘場の入口に着いたようだ。
「……ここからまた暗い中を歩くのか」
彼は少々暗いところが苦手になったようで、自然と足取りが遅くなる。すると前を歩くハニーはニッと笑いながらこちらを振り向いた。
「大丈夫♪♪じゃじゃ〜〜ん‼︎」
「なんだソレは?」
「さっき、あのおじいちゃんの屋敷にあったのをくすねてきちゃった〜〜♪」
彼女が取り出したのはカンテラのようにみえるが、よく観察すると燭台のところにあのコケが生えている。通常の火よりも格別に光を放つそれは暗い洞窟を約数メートルは照らしてくれるようだ。
「ん〜なんかキミさっきからビビりまくってたからね〜♪コレで安心だよ〜〜」
「別にビビってはいない……生物的本能が危険と恐怖を察知しているだけだ」
「それをビビってるって言うんだよ〜」
正直その通りだったので彼は返す言葉もないまま彼女の前を進んで行くことにした。なぜか?そんなの決まっている。どうも顔が熱くなっているようで、そんな表情をイタズラ好きの相棒に見せたくないからだ。
「ふふふ〜♪」
彼女はきづいているようだが。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
しばらく、退屈な洞窟を進んでいるとまた目の前が明るくなった。辺りを見るとみわたすかぎり金色に染められている。どうやら現場に着いたようだ。
「さてと〜例の怪物くんはどこかな〜?」
ハニーは背伸びをして辺りをうかがっている。ノーテンキにみえるが警戒はおこたってはいない。すると、左手側のほうからこの地下世界にやってきてはじめて
不快な気配を感じた。
「グオオ…」「ムアア…」「ムシャムシャ……」
3つの影が黄金色の壁をかじっていた。
どうやら彼らはコケが好物のようだ。
「みーーーっけ♪」
すると向こうもこちらに気づいたらしい。影が実態となって近づいてきた。
「おおーきたきた〜〜。えーっと、たつのおとしごとみたいなの2匹と……うわーカエルだよ、デカイし……」
みたところ、カエルが親玉みたいだ。たつのおとしごはオマケってとこか。
「ゲオーーーーー!!!」
カエルがカエルのように叫んでいる。いや、カエルだからそのとおりなのだが。
「レット、レディはあいにくカエルが苦手なの〜だ・か・らよろしく〜」
言うが早いか、ハニーは手下のたつのおとしごに斬りかかっていく。それにつられてカエルもそちらの方を向くが、その隙をついて彼も剣を振りかざしていた。
「お前の相手は俺だよ」
彼は連続してカエルの背中を切りつけた
敵も杖のような武器で反撃をするが、どうもカエルのわりには振り返るのが遅い。
「遅い」
すかさず敵のふところに入り込みいかにも弱点にみえる白い腹を切り裂いていく。
「グガーーーーー!」
だが、簡単にはやられない。カエルは巨大な杖を振り回してレットをなぎ払った。
「おっとっとっと……危ないなあ」
言葉がわかったのだろうか?怒り狂ったカエルは腹に力を込め始めた。どうやらブレス攻撃もできるらしい。
「ブワーーーーー!!!」
カエルの口から炎の柱が発生し彼を焼き尽くそうとする。なんとか、それを避けながら彼は壁の方向に向かって走っていく。敵もすかさず追ってくる。壁を背にした彼は逃げ場を失ったが……
「トドメよろしく」
「レディに汚れ仕事させるなんてよくないな〜〜」
彼に気を取られていたカエルの背後をついて、とっくに手下をポリゴンとしたハニーが斬りかかった。
「ゲ、ゲローーーーー!!!」
「最後だけ、カエルっぽかったな」
「ん〜やっぱり苦手だな〜〜」
青い結晶と化した姿を見届けて二人は剣を収めた。
「まあ、なんとかなったからよかったな」
「キミ、結局あんまり仕事してなくない?ズルいな〜」
そう言いながらも彼らは片手をあげて
互いの手のひらに向けてハイタッチをした。クエスト完了だ。
その後、翁の屋敷に行って怪物退治を報告するとあっさりと族長は「おぬしたちは我が一族の救い主だ。すぐに地上への道を開放しよう」ということで集落の北に案内された。
「ココには仕掛けがあってのお」
翁は洞窟の壁を探りながら「ここじゃここじゃ」と言うと一気に壁を押し込んだ
すると、壁面が約二メートル四方奥に引っ込んで、新たな道がひらいた。
「忍者屋敷みたいだね〜」
「ここを行けば女郎蜘蛛の洞窟を通って地上に出れるじゃろう。さらばじゃ」
というわけで、今彼らは地上目指して暗がりの中を歩いている。
「なんか、今日はイロイロあったね〜
ちょっとお疲れだな〜」
「同感だ。元はと言えばお前が森に行くと言い出したのが原因だがな」
「えへへへ〜〜♪でも、キミのことを少し知れた気がするよ〜」
彼は首を傾げた。何か発見でもあったのだろうか?
「レットって意外にビビりなんだもん、かわい〜〜〜♪」
「お前それを言いふらすなの特に……」
「今度、アルゴに話そうっと♪」
「おい……」
彼はまた鼠に余計な情報が……特に今回は自分自身の恥部をさらすことになると思うとアタマが痛くなった。
口止め?
そんなのできるわけがなかろう。
ユラーーー
「?」「?」
誰かいるのだろうか。何かが通った感じがした。
「なんだ?モンスターか?」
「どうだろうね〜」
ユラーーー
「……いま俺はそれがモンスターではないとわかった」
「……そだね〜」
「……だが、プレイヤーとも言い切れる確信がない」
「……そだね〜♪」
ソレはたしかに人のようであるが人間ではなく……
「幽霊って出るんだな……」
「そだね〜〜〜♪♪」
隣の少女はどうやら疲れが吹っ飛んだらしい。鼻歌を歌いながら幽霊に近づいている。一方彼は先ほど感じていた疲れが吹っ飛んだはいいが、それと入れ代わりでとてつもない悪寒がした
『……わたしの、わたしの名前は』
なんか言ってる。どうやら女の霊らしい
実に雰囲気があってよろしい。
『……あなたたち、名前ある……わたしの名前……ない…………ずっと……』
どうやらクエストらしい霊の頭にクエスト開始のカーソルが出ている。
「へぇ〜〜なんだろうね、えいっ!」
ハニーは迷うことなくクエストを受けるらしく、受注が完了した。
『……わたしの名前……探して……』
「名前ねえ〜〜多分この層に手がかりがあるんだろうけど〜」
『……それまで、あなたたち……わたしが……名をもらう……』
「「はっ?」」
気づくとカーソルに表示されていたプレイヤーネームにブランクが空いていた。
「おい……これって……」
ハニーは柄にもなくカタカタと肩を震わせながら、口を開く。
「……これってクエスト完了まで私たち名無しってこと?」
彼は首を縦に動かした。やっとのことで脱出できたと思った矢先、今度はとんでもないものを盗まれてしまったのだった。
「それは〜〜あなたのココロです!!
アタッッ……」
無邪気に名ゼリフを言う彼女の頭をはたいた。とうやら、面倒ごとはまだつづくらしい。
〜ある日常の一コマ〜
アルゴ「あれれーレットとハーちゃんどこに行ったん ダ?」
ア「……まああの二人のことだからダンジョンでヘマをするわけはないよナ」
ア「………………」
ア「おっ!!ハーちゃんからのメールがきタ」
ア「……レットは暗闇が苦手?なんのことかわかんないけど
これはおいしいネタだナ♪♪」
ア「……ん?続きがある……DV被害を受けた?まーたハーちゃんよけいなこしたんだなナww」
ア「本当にキー坊とアーちゃんといい、面白いもんダな♪」