SAO『罪と罰』 〜何故彼は力を手にしながら表舞台に現れないのか?〜   作:トアール凡人

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First section⑨〜最後の望み〜

 

 

どんなものにも名前がある。特に、人間の場合は誰もが自分自身を他人と明確に区別するために名をもっている。人の短い歴史の中で一体いつからこの概念が生まれたかはわからないが少なくともこの慣習は今後も当たり前のこととして続けられるのだろう。ネットゲームの世界でもハンドルネームとかユーザーネームというものをもつ。むろん、この世界のプレイヤーはみなリアルとはちがう(一部には本名を使う奴もいるだろうが)それぞれの識別信号をもっている。

俺だってマトモに呼ばれることはないが

たしかに目の前のカーソルには自分のプレイヤーネームがあった。そう、あったのだ。いま、そこはブランクが空いているつまり、いま現在俺にあったプレイヤーは、直接あるいは人づてに聞かない限り、俺のことを何て呼べばいいのかがわからないのである。それはこの事態の原因となったハニーも同じだ。今はどっかに行きやがったが……

名をつけることを命名という。もしかしたら、あの名前がない幽霊のNPCも

名がないからこそこの世界で成仏できていないのかもしれない。だが、今最優先にすべきことはなんとかして、幽霊から

名前を返してもらうことに違いない。のだが…………

 

「困ったもんだナ〜オイラの情報網でも今んとこ有力な情報がないんダ」

 

「……あれからもう3日も経つのに手がかりがないなんてな皮肉なもんだな情報屋さんも」

 

「ム?ムムムム!!そのセリフはオイラに対する挑戦かナ?暗がりと幽霊嫌いのオニイサン♪」

 

「悪かった。謝るからお前までそれを言わないでくれ」

 

どうして俺の知ってるヤツは人をおちょくるのが好きなのだろうか。相棒のハニーといい、ここにいる鼠やろうといい……よく考えてみると俺の知り合い

この2人くらいしかいなかったな。自分の対人交際能力の低さに気付いたとともにじゃあ、どうしてこんな連中としかつきあえないのかという問題が新たに浮上した。……難問だな

たが、いま彼はそれ以上の奇問を抱えていた。ユーレイ女のおかしなクエスト発生以来いろいろと手を回してみたものの

いっこうに解決の足がかりが見つからず

正直、はじめのころに感じていたあせりが今では疲労に変わっていた。第三層で行けるところは可能な限り探索したもののユーレイのクエストに関連するような有益な情報を得られなかった。というのは、実は彼とハニー以外のプレイヤーでこのユーレイと遭遇したものが1人もいないのだ。実際にアルゴ自身が彼らが霊に会ったところに行ってもそこには霊どころかモンスターも出ないというのだ。これではもはや詰みとしかいいようがない。

 

「……こんな時なのに、あいつはどこをほっつき歩いてんだ。ったく。いつも何しに行くのかも言わないでどっかに飛び出していくし…」

 

「おやおやーもしかして気がかりなのカ??ハーちゃんがいなくて寂しいんダナ。うんうん、オネイサンはよーくわかるゾ。」

 

「……別にさびしいとかじゃない。手のかかるガキが1人で勝手に家を飛び出してみろ。親としては事故とかにあわないか心配するだろ?特にそのバカが普段から思いつきで行動するような女だとなおさらだ」

 

「へーー♪」

 

なんでこんなにニヤニヤしてるんだこいつは。ああ、いつものことか。その時、店のドアが開いて外の風が入ってきたそろそろ本格的な冬になるためリアリティーが追求されたこの世界でも体を吹き抜ける冷気を感じるのだ。どうやら入ってきた人間はこちらに気づいたようだ。

 

「レット、アルゴー!!私を置いて2人で密談かい?レット、わたしとは遊びだったのね!」

 

「いちいち、猿芝居をするのはやめろ」

 

「ハーちゃん久しぶりだナ」

 

「おひさ〜〜♪」

 

人の話を聞けよ!オニイサン無視されると心細くてないちゃうよ?他の仲間がいなくてぽつんとしていた小学校のウサギみたいに。ほんと……かわいそうだった……

一息ついたところで話題は例のユーレイクエストになった。

 

「アルゴでも収穫0なのは辛いね〜」

 

「そのわりにはハーちゃんあんまり危機感をかんじないゾ。」

 

「ん〜♪半分楽しくて半分困ってるからね〜」

 

「そうなのか、ハーちゃんらしいナ」

 

「らしいなで済ませることじゃないだろ……」

 

いつも1人相手するだけでも大変なのに

今日は、それが二人となると手を焼くどころじゃない。

 

「……とにかく、この層で行けるところは全部行ったんだ。他に手の打ちようがないわけだぞ。ハニーわかってるか?」

 

「……ひとつだけ行ってないとこあるよね〜♪」

 

「一つだけカ?ウーーん??アー……」

 

俺はその時まさかと思った。自分には全く関わることもないところだと、思い込んでいたからだ。むろんそれはハニーも同じなわけで。

 

「あとは、ボス部屋だけだね♪」

 

このとき、俺と彼女は第三層ボス攻略戦への飛び入り参加が決定したのであった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

とはいえ、真正面からボス攻略に挑むのも芸がないのである。

 

「キミは『LA』って知ってる〜?」

 

「『ラストアタックボーナス』だろ?」

 

「That's right ‼︎わたしの思うにそれが怪しいと思うわけなのだよ〜」

 

「そうか?タダの特典にすぎんだろ」

 

「それでも、やってみなきゃわかんないよ〜。私たちにはもうコレしか望みがないわけだし〜」

 

一理はある。だが、アルゴ曰くそれは難しいらしい「キー坊が今んところLAはかっさらってるからナ。」しかも、従順に攻略組に加わったところで、少数派で新米の俺たちには大事な戦闘は回ってこない可能性も高い。せいぜい、ボスの周りにいる手下を片付けるくらいがいいとこだろう。

 

「んふふ〜♪そこで〜〜」

 

というわけで、俺たちは今まさにボス攻略に向かっているのである。正規の攻略組を尾行しながら……

 

「作戦は、まず、攻略組に適当なところまでボスの体力を削ってもらって〜」

 

そして、いい感じのところでボス部屋に割り込み、ラストアタックをして、特典をかっさらうというわけだ。こんなことしたら、確実に悪者だろ。

 

「気にしない気にしない。……攻略組となんかこれっきりなんだから。付き合いもないんだから罪悪感もないし、問題ないさ〜」

 

まあそんな感じで今俺とハニーはまさに攻略組のみなさんが必死になって戦っているところをボス部屋の入り口から隠れながらその模様を眺めているわけなのである。まあ、ここんところ順調に攻略が進んでいるから、今回のボスも難なく蹴散らしてくれると思っていたのだが、少々、様子がおかしい。

 

「んー、イマイチ連携がうまくいってないみたいだね〜。こんなんじゃ時間がかかってしょうがないよ〜」

 

「二大派閥が、我先にとアタックしてるからな。あんなんじゃボスの攻撃をくらって、回復、また突撃して回復の繰り返しだ。なんでこんなときにまた仲悪いんだよ。」

 

たしかに、現在攻略組でもっとも規模的に勢いがあるのがアインクラッド解放隊と聖竜連合の二大ギルドだ。もともと、性格が合わないのがあるが攻略の主導を握ろうとしてお互い紛争が絶えないらしい。

 

「この層の攻略でも一触即発になるようなことがあってね〜。いやはや、困ったもんですな〜〜」

 

ハニーがやれやれとポーズをとる。

 

「ほぉ。そうなのか?そんなこと聞いてはいないけどな俺は。」

 

「えっ?…………」

 

ハニーがキョトンとした顔をしたがすぐにいつもの調子に戻って

 

「あー〜アルゴに聞いたのよほらこの前一緒になったときに」

 

「そうか、いずれにしよ厄介だな」

 

権力争いをするのはいいがそれが一般のプレイヤーに迷惑を被ることになると別だ。ボス攻略が遅れるのはすなわち、全層攻略に支障をきたすことがある。政治家もそうだが、権力争いは内部でさっさと終わらせて大事なことに影響を及ぼすのはよしてほしいな。うん、実に庶民じみたコメントができた。

 

「はあ〜もう飽きちゃったな〜〜」

 

すると、ハニーはすっと立ち上がって屈伸を始めた。十二分に準備体操を終えると剣に手をやる。

 

「……おい、まさか」

 

「乱入して、さっさと終わらせよっか♪」

 

「まじかよ……」

 

どうやら、おてんぱお嬢さんは見物に飽きたらしい。リングの上に乱入するような客は普通はお断りだろうが。

 

「しょうがないな、やるか」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

二人は剣を抜いてボス部屋の中へ走っていった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「なんだ?これは?」

 

キリトは驚愕した。突然、二人のプレイヤーが現れたと思うと鮮やかなまでの機敏な動きでボスに対して攻撃を与えていく。

 

「おにいさん、ちょっとどいててね〜」

 

「いくぞ、○○○」

 

キリトと同じくらいの年に見える男が少し子供じみた少女に合図を出すと、二人はまるでフィギアスケートのペアの演技のような華麗な連携で一糸乱れず、ボスの体力を削っていく。キリトもアスナと一緒に連携をとることもあるがそれを凌駕したワルツをこの2人はその場にいる他のプレイヤーに魅せているのだ。

 

「キリトくん見て!」

 

すでに、ボスの体力ゲージは一つになっている。ここまでで、時間の流れを感じさせない早さにキリトは見惚れてしまった。

 

「お〜〜そろそろフィニッシュだね〜

○○○!背中かして〜」

 

「お前返すつもりないだろ」

 

言うと、男は少しかがみこみ少女が彼の背中を踏み台として高く舞い上がり敵の脳天めがけてその鋼色の剣をさしこめた。

 

「おーしまい♪」

 

少女がそう呟くとボスは巨大な青いポリゴンとなって消え去った。あの2人だけで、フロアボスにとどめを刺したのだ。

その姿を、呆然としてみていると最初に我にかえったのはアスナだった。

 

「……あなたたち、いったい何者なの?」

 

すると、LA(ラストアタックボーナス)の景品を手にした少女がケタケタ笑いながら言った。

 

「んふふ〜♪私たちはさすらいの旅人なのだよ〜キレイなオネーサン」

 

「さすらい?ふざけないでちょうだい。

誰なの?あなたたち」

 

アスナの表情は険しい。きっと質問をはぐらかされたからだろう。アスナに対して軽口を叩くとは恐れを知らない子だ。

 

「やだな〜そんなに怒ったらせっかくの

美形が台無しだよ〜」

 

やばい、アスナ様が鬼神になりそうだ、と思っていると、男が少女に近づいていった。

 

「あまり、人に失礼なことを言うな

みろ、顔が鬼神みたいだぞ」

 

「わあーこわいね〜こうゆう時はどうすればいいのかなあ〜」

 

「人災は防げても、天災に対しては

人間は無力だろう」

 

「そだね〜〜」

 

少女をなだめるかと思ったら男も恐れ知らずだった。次から次へと怒りのマグマが供給されてゆく。いけない、鬼神様の噴火警戒レベルはMAXだ!

 

「まあまあ、アスナも落ち着けって」

 

俺はこのままだと血が流れると思い神様の怒りを鎮めに行く。すると、ギロっとこちらをにらんでくる。俺は何も言ってないよね、ねぇ

 

「ん〜〜私たちはここいらで退散としますかな〜。さ、行こっか」

 

「まあ、そうゆうことだ。後は任せたよ。キー坊さんとやら」

 

キー坊?どうしてその呼び名を知っているのだろうか。よく男の方を見るとプレイヤーネームが空白になっていて名前もわからないなんでだ?

 

「きーりーとーくーん?」

 

いけない、怒りの矛先がなぜかおれに向かっている。その隙に二人組は急いで4層への階段を駆け上がっていった。もう、姿は見えない。不思議な奴らだった。また会えるのだろうか?キリトは少し微笑むとすぐに身に迫る危機に悪寒を感じた。

 

「なにを、笑っているのかな?キミは」

 

その後、彼の身に何が起きたかは表現の範疇を超えていた。

 

 

 




〜ある日常の一コマ〜

キリト「ううーーひどい目にあった」


アルゴ「あーちゃんは怒らせるとこわいからナ
キー坊ももう少しは言葉をえらばないとナ」


キリト「今回は俺別に悪くないぞ」


アスナ「……悪かったわよ。つい、我を忘れちゃって」


キリト「まあ、いいさ。そういえばアルゴ、今回の二人組のことなんか知らないのか?」


アルゴ「(レットには口止めされてるんだけどナ)」


アルゴ「うーん。どうしてもっていうならナ」


キリト「何をすればいいんだ?」


アルゴ「たとえば、あーちゃんのお風呂に入ってるところを収めた写真とか?」




キリト「んなことできるか!」




アスナ「きーりーとーくーん?」





キリト「まて、誤解だ俺はそんなことしたことなんて…」





「ギャーーーーーーー」






アルゴ「ケンカするほど仲がいいとはこういうことをさすんだナ♪」






「「ちがう!」」




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

あとがきでくだらないこと書くの好きです

感想と評価お待ちしています


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