キセキの忠臣蔵   作:あるく天然記念物

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第十話 年明け

 

 次の日。

 俺は道場で一夜を明かしたのだが、数右衛門が寝相が悪く、俺にのしかかってきていて俺の息子を握りつぶそうと画策していたのでバックドロップをかまして起床。

 そのまま安兵衛の屋敷に向かい、内蔵助たちと共に以前の待ち合わせとして利用した蕎麦屋にて朝食兼道場で伸びている数右衛門を待った。

 

「のう直刃? 何故数右衛門はこうも遅れておるのじゃ?」

 

「さぁ? 寝相が悪くて頭から地面に叩きつけているんじゃないか?」

 

「………なぜそのようなことに」

 

 それからしばらくしてかなりのダメージを受けた数右衛門がやってきた。

 数右衛門、次に寝相が悪かったら筋肉バスターも辞さないつもりだぞ。

 その後俺たちは泉岳寺に向かい、殿の墓前の前で、数右衛門の藩復帰の儀を執り行い、それにより数右衛門は無事赤穂藩に復帰。

 その帰り道で清水一学って女に喧嘩ふっかけられたけど俺が殺気を飛ばして退散させた。

 何だったんだろう? まぁいいや。

 それからは山科に戻るだけなのだが、なにやら数右衛門はやることがあるだのなんだので江戸に残り、俺と内蔵助の二人だけで山科に戻ることになった。

 

「直刃ぁ~疲れた~」

 

「で、どうしろと?」

 

「おんぶー!」

 

「……………はいはい」

 

 なんか、遠足で疲れた園児を相手している気分がするのは気のせいだろうか?

 まぁそれでもいい訓練になると思い、行きと同じく俺は内蔵助を背負い、山科へと戻っていった。

 

……………

 

………

 

 

 生きていく上で、日にちというものはあっという間に過ぎていく。であるからこそ、光陰矢の如しなどという言葉が生まれるのだ。

 山科に戻ってから日にちは幾つか進み、気がついたら年を跨いでいた。

 元禄十五年、一月一日。

 

「主税? 直刃? 明けましておめでとう」

 

「おめでとうございます」

 

「おめでとさん」

 

 俺が江戸時代にタイムスリップした日は元日。つまりはこの時代にきてちょうど一年がたったという事だ。

 もう、一年がたつんだな。

 まさか、現代に戻るどころか、年を越すとは思っていなかった。

 今頃、姉貴たちはなにやってんだろうな?

 現代に思いを馳せてみたが、不思議と悲しみはなかった。

 おそらく、俺がこの時代での生活が当たり前になったからだろう。

 

「直刃? 今年もよろしくな?」

 

「あぁ、ぼちぼちとな」

 

 正月らしい挨拶をお互いにやりあう。

 年を越す前の先月、元服を済ませた松之丞は名を主税に改めた。

 これで晴れて主税も大人の仲間入りというわけだ。 正直性格やら見た目やら何にも変わってないけど。

 

「のどかな正月じゃの~」

 

「そうですね。昨年までの正月は年始の挨拶などで忙しい身でしたものね」

 

 図らずもゆったりとした正月を満喫できる内蔵助は、ここぞとばかりに正月を楽しんでいる。

 だが、俺はそんな内蔵助とは打って変わり、この正月をあまり楽しめないでいた。

 というのも、今年が元禄十五年という年だからだ。

 正史では、吉良への討ち入りは今年の十二月。

 それまでに俺は、答えを見つけられるだろうか。

 この時代で何をしたいのか。

 何故こんな事になったのか。

 一度は考えた、本当に現代に帰りたいのかどうかを。

 

「直刃?」

 

「ん? あぁ、どうした、内蔵助?」

 

 声をかけられては気がつくと、目の前に内蔵助がいた。

 

「いや、先ほどから声をかけているのに返事が無かったからどうしたのかと思ってな。それと主税が餅がいるかどうか聞いておったぞ?」

 

 どうにも深く考えてたようだ。

 考えを一度中断する。

 

「別に何でもないさ。それと、俺も餅は貰っておくか」

 

 俺は心配ないとばかりに笑いかける。

 まぁ、まだ時間はある。ゆっくり考えるとするさ。

 それまでは、歴史通りに動くとするか。

 

 だが、このときの俺は気づいてなかった。

 テストに出ない知識であるが故の見落としによっていとも簡単にそれはかわってしまったのだ。

 より具体的には、江戸で安兵衛との試合で勝ったことにより、有名であった山科会議が無くなったことに。




歴史がどんどん変わってゆく~
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