翌朝
「ふぁ~っと、いい朝だぜ」
色々と溜まっていた物を吐き出してかなりスッキリとした態度で俺は起床した。
やっぱ溜めすぎは毒だな。
「お、おはよー……なのじゃ」
対する内蔵助はかなり疲れた様子だが。
あの後、詳しくはR指定なので語れないが、徹底的にやりあった。それこそ内蔵助が気絶するまで何度も激しくやって真っ白な色に染め上げるくらいに。
やりすぎた感が半端じゃなかったな。
「お、おはようございます……」
と、奥から主税がやってきた。
なにやら寝不足のように見える。
「よぉ主税、おはようさん。ところでどうした? なにやら寝不足に見えるが?」
「そうだな。どこかの誰かが近くでまぐわった声が聞こえて眠れなくてな」
おふっ、まさか主税に筒抜けだったとは。
そう言や、襖一枚でしか遮られてなかったな。
「なんと、聞こえていたのか?」
内蔵助の確認に主税は顔を紅くしながら首を縦に振る。
「つ、筒抜けです」
そんな反応の主税に内蔵助はさらなる追い討ちを仕掛けた。
「なんじゃ~! 聞こえておるなら、主税も一緒に混ざれば良かったのに!」
「な!?」
「おいおい、母親としてどうよ」
まさかの母親が娘に対しての親子プレイ推奨だ。
うん。正気じゃねぇな。
しかし、そんな和やか──なのか? とにかくそんな雰囲気も、唐突に終わりを告げることとなる。
「ご城代!」
数右衛門が血相を変えて部屋にやってきたことにより。
「数右衛門、どうした? なにやらただ事ではなさそうだが?」
「あぁ。ご城代、探索方からの連絡が入りました。吉良が屋敷に在宅する日が判明したそうです」
「!?」
「……ようやくか」
数右衛門の言葉に、部屋中に緊張が走る。
とうとう、ここまで来たのか。
それからはその情報を元に討ち入りの最終確認が行われることとなった。
……………
………
…
深川八幡
この夜。深川八幡のとある料理店に赤穂の同士が密かに集合した。
その数、五十人弱。
「おう! 直刃~!」
「ん? あぁ、唯七か、随分と久し振りだな。この物語的にも」
「はぁ? 相変わらず何言ってるかわかんねぇが久し振りだぜ!」
なんでも唯七は江戸で探索の任についていて吉良邸の内部を調べ回っていたようだ。
ついでに屋根から落っこちた挙げ句足をくじいて泣いたみたいだっが。
それから少し話をして唯七と別れる。すると、
「直刃しゃん!」
「あぁ次はエモシチか。本当に久々のセリフだな」
「? ど、どういう意味なのでしょうか?」
「まあわかんねぇならいいさ。無事に着いたようで何よりだぜ。仇討ち、頑張ろうな」
「はい! 直刃しゃんも元気そうで何よりです。私も仇討ちの一員として精一杯、頑張るつもりです!」
「あぁ、その意気だ」
エモシチも十分やる気のようだ。
若干戦闘力てきには不安が残るが、それでも赤穂の一員として役目を果たせるだろう。
少なくとも、目を見た限りはそう俺は感じた。
それからエモシチと取り留めのない話をして別れると今度は、
「直刃」
「安兵衛か。てか安兵衛、お前何気に出番多くないか? ぶっちゃけ一緒に住んでいた主税よりも喋っていた気がしたんだが?」
「? 直刃、何を申しているのかさっぱり理解できないのだが」
「まぁ気にしなくていいさ。主税が少し可哀想なだけだし」
「は、はぁ、それより直刃、いよいよだな?」
話の流れ的に仇討ちの事だな。
「そうだな、まっお互い全力を尽くそうじゃねぇか」
「あぁ。オレを上回るその腕前、仇討ちでも期待しているぞ」
「まっ、適当に頑張るさ」
「相も変わらずだな。では直刃、また後ほどな……」
安兵衛と話し終えたと同時に、内蔵助がやってきた。
いよいよ、作戦会議が始まる。
会議では五日に吉良が屋敷にいるとされていたが、何やらその日は江戸に綱吉ことバカ将軍が江戸の町を散策するらしく、決行日は史実通り十四日となった。
歴史の背景ってこんな風になってたのか。
んでもって布陣だが、
「直刃、お前には当日やってもらいたい仕事あるから、遊撃隊を頼む」
「了解した」
俺はどこにでも対応できることから遊撃隊に抜擢された。
まあ堅苦しく役職を決められるよりは楽だから俺にぴったりだな。なんか仕事があるっぽいけど。
最後に内蔵助が同士一同に激励の言葉を残した。
「思えば、殿が無念の死を遂げてから約二年……突然の訃報。そして、お家断絶。数多の苦難が我らを襲った」
「………………」
「………………」
「………………」
内蔵助の言葉に全員が耳を傾ける。
全員が、内蔵助の言葉に思うところがあり、自分と照らし合わせているのだろう。
路銀が底をついてひもじい思いをした人もいれば、生き恥をさらすような生活を余儀なくされた人。中には志はあれど手にした微かな平穏に身を移してしまった人も。
しかし、そんな人の中でも、ここにいる人は耐え忍び切った強者どもだ。
必ず、仇討ちは果たせる、と。
「よいか! 皆の者! 我らが狙うは唯一つ! 不倶戴天の仇! 上野介の御首を頂戴すること! それが、亡き殿の御無念を晴らす唯一の手段! そして、それこそが!」
内蔵助は一旦言葉を切りあげる。
そこで同士一同の顔を見渡した後、最後の言葉を言い放った。
「我らの悲願であるぞ!」
それを聞いた同士は皆一様に身震いし、涙を浮かべる。
だが、この涙は決して悲しみからくるもんじゃない。
「………うぅ………」
「…………っ…」
「………………」
それは、皆の顔を見れば一目瞭然。
突然主君を失った日から。
誰もが仇を討つと決めたあの日から。
長く。
長く待ち続けていた本会が、今ようやく叶おうとしている。
その充実感からくる涙なのだ。
よもや、こんなすげー集団の一員である日がくるなんて、思ってもみなかったな。
誰かのために戦う…か。その思いだけはいつの時代も変わらないものよ。
この言葉を最後に話し合いは終わり。
同士たちは店を出て、静かに夜の闇に姿を消していった。
だが、この後に再び脱藩する者が出てきて、残った人数は四十七人。
これまた歴史通りの人数。
こうして、最後まで残った赤穂浪士は、紆余曲折を経て、歴史に名を刻み込む吉良邸への討ち入りを目前に控えたのだった。
さーて、あと四、五話で第一章は完結かな