キセキの忠臣蔵   作:あるく天然記念物

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これは始まりなのだ


第二十五話 終わりの始まり

 あれから五年。

 内蔵助たちを助け出した俺は、討ち入り以前に世話になった山科の屋敷で内蔵助や主税そして、新しい家族と共に生活している。

 

「父上ー! 父上ー!」

 

 再び住みなおして家業となっている畑作業から戻ってきた俺に、半泣き状態の女の子が突撃してきた。

 ちなみに畑作業と言っても甘く見るなよ?

 現代の知識をフル活用したどチート万歳ってレベルの畑作業だぜ。

 おかけでそこらの商人より豊かに稼がして貰ってるよ。具体的には以前内蔵助が赤穂に建てていた屋敷を取り戻せるほどに。というかこっちで建設できるぐらいに。

 いやー。本当に海斗の膨大な知識と赤司様の頭を併用したら何でもできる気がしてきた。

 おっと、話が脱線したな。この突撃してきた女の子こそ、俺と内蔵助の間にできた新しい家族だ。

 

「おー、どうした直音?」

 

 名前は深海直音。

 名前の由来は、まっすぐに、それこそ音が進むように前へと生きてほしくて付けた名前だ。

 まあそんな名前をつけるときにも少し騒動があったな。

 名前を付ける当初、どうしても内蔵助が俺たちの名前を両方入れたいと強く願っていたが、内蔵助って名前をどうやって女の子に組み込めばいいのか分からず、とりあえずはもじりやすい俺の名前を入れたというわけ。

 その時の内蔵助の落ち込みっぷりは三日三晩も続くほどだった。

 そんな愛娘である直音を抱きしめ頭をなでつつ話を聞く。

 

「聞いてくれ父上! 姉上が意地悪してくるのじゃ! 私が将来芸者になりたいと申したら、お前は武士としての誇りはないのか! などと言って稽古を厳しくしてきたのじゃ!」

 

「ほぉ、直音は将来芸者になりたいのか」

 

「はい! 日の元一の芸者になりとう御座います!」

 

 はてさて、これは芸者になりたいと思ってしまった直音に悲しめばいいのか。

 それともそんな事を思ってしまった俺たちの育て方を恨むべきか。

 まっ、どちらにしても。

 

「夢を持つことは素晴らしいぞ。たとえそれが他人にとってみれば認められないものでもな」

 

「それでは父上は認めて下さるのですか!」

 

「まっ、理由は知らんが直音が決めたんだ。親である俺はその夢を応援するさ」

 

「わーい! 父上が認めて下さった!」

 

 その場で飛び回り、嬉しさを全身で表現する直音。

 うむ。こういった表現力の豊かさはある意味芸者に向いているのでは?

 

「全く、相変わらず娘には甘いのだな、父上?」

 

「あぁ主税か。当たり前だろ、親だぜ?」

 

 屋敷から直音に続いて主税がやってきた。

 この五年で更に女に磨きが掛かってきたな。

 

「だからと言って娘の言うこと全て認めていたら我が儘に育つだろ」

 

「そこら辺は大丈夫さ。俺だって限度くらいは知ってるさ」

 

「だといいが───おい! 直音! もう休憩の時間は終わっているぞ!」

 

 主税の声に直音は身体をビクッと震わせる。

 休憩の時間を超えていたのかよ。

 俺と同じさぼり癖まで遺伝したのだろうか。

 だが、さすがは俺の娘、失態をみせても只では起きない。

 

「!? そ、その声は、行き遅れの姉上!」

 

 返し早々鋭い言葉のカウンターを主税に放っただと!

 

「誰が行き遅れだ!」

 

「いや、一概には否定できんぞ」

 

「直刃! それはどういう意味だ!」

 

 言葉道理ですとも。

 むしろ他にどんな意味が?

 というか、お前何時まで独り身なんだよ。

 

「直刃!」

 

「なんで地の文にツッコミを入れるんだお前は。エスパーか」

 

「なんじゃ? なにやら騒がしいが、何かあったのか?」

 

「あっ! 母上!」

 

「母上……」

 

 娘達と俺の喧噪に誘い込まれたのか、屋敷から今度は内蔵助がやってきた。

 おぉ、思わないところで一家勢ぞろいだな。

 

「直音。一体主税に何をされたのじゃ?」

 

 母親の登場に直音は俺の元から離れ───ることなく、俺に抱きついたままことの顛末を話し出す。

 というかおいおい、何やら内蔵助の表情が凍っていくのは気のせいか?

 

「聞いて下され母上! 姉上が私の夢を認めずにいじめてきたのじゃ!」

 

「その位置に思うとこがあるのじゃが。それと直音よ、その歳で夢を持っておるのか。して、どんな夢じゃ?」

 

「はい! 私! 将来は芸者になりとう御座います!」

 

「ほぉ、芸者か。私もよく楽しんだりしたなぁ。それに私に似て可愛らしい直音ならきっとなれるじゃろう」

 

 なんと自画自賛。

 まあ否定ができないところがなんとも。

 

「誠ですか母上!」

 

「母上までそんな事を。武士として生まれたらからには武士しかないでしょうに!」

 

 武士になってほしいと力説する主税に対してやれやれといった感じに内蔵助は肩をすくめる。

 

「しかし主税よ。私たちはもう武士ではないのじゃぞ」

 

「うぅ………それは、確かにそうではありますが」

 

 さて、この武士ではないという言葉について説明しておこう。

 これは俺が内蔵助たちをどうやって助け出したかに関係してくるからな。

 俺がどうやって内蔵助たちを助け出したのか。

 簡単な事さ。

 俺は内蔵助たち赤穂浪士を世間からは死んだことにしただけ。

 つまり、命は助け武士の名は殺したというわけだ。

 内蔵助と別れた俺は将監に報告した後、上方に行って朝廷に味方になるよう頼み込み、その後朝廷を背後にして江戸幕府と交渉し、内蔵助たちを助け出したってわけだ。

 朝廷をどうやって味方に付けたかって?

 いろいろと現代の知識を餌にして見事、朝廷を味方になってもらえるよう釣り上げに成功した。

 ちなみにこれには将監も大きく関わっている。

 俺が将監と別れるとき、内蔵助たちを助け出すと口にしたら、将監はいきなり俺に詰め寄ってきて『その話、詳しく聞かせろ』って言ってきてな。

 それで計画を全て話したら全力で手を貸してくれる事になったんだ。

 その理由がまた傑作でな、『死に急ぐなと申すものこそ死に急ぐなと言ってやらねばならないからな』って事らしい。

 面白い人だ。素直に生きてほしいとは言えんのか。

 そんで将監の上方でのツテを全部利用して朝廷と話すことができたってわけ。

 まあ朝廷さえ味方につければ後はこっちのもの。

 江戸幕府との交渉は欠伸がでるほど余裕だった。

 要求が認められなければ日の本の民全員に松の廊下での事件の真相や呪いについて全部話した上で世を再び朝廷に握らせるって脅したら、あっさり認めてくれたからな。

 いつの世も権力者ってのは保身に走るから助かる。

 そんでそん時の荻生徂徠たちの顔なんか最高に傑作だったぜ。

 何しろこの世の終わりみたいに醜い醜態をさらしていたからな。

 それに俺はコケにされるのが大嫌いだ。

 この俺を呪いに巻き込んだのなら、それ相応の恐怖で脅すか仕返すに決まってるだろ。

 後悔もなければしてやったりとしか思わないな。

 ちなみにこれらを行う上で、赤穂藩士だとなると朝廷は飛び火を避けるためにまず持って取り合ってもらえない。だからこそ、俺は内蔵助に赤穂藩士ではないと告げた訳になる。

 

 まあそんなわけで、俺は無事に同士四十六人を救ったってわけだ。

 助けたときに驚いたのが、誰一人として恨みつらみが無かったことだ。

 安兵衛を初めとする根っからの武士道の奴らには少し怒られると思っていたが、自分たちが主のために仇討ちしたように、最愛の人のために行動したということや、結局は自分たちの為に行動してくれたとして感謝されたのだ。

 身勝手で助けた身としては、少しむず痒くて仕方がない。まあなんであれ、みんな助けられてよかったぜ。

 さて、助け出した同士のその後を書くとしたら、殆どが名のある大名に仕官したな。

 安兵衛を肇とする浅野内匠頭以上の主君はいないとしてる人たちは、実家で剣術道場を開いたりしてるな。無論、俺がある意味で迷惑を駆けたのだ。金銭面での支援はしっかりさせて貰ってる。

 んで数右衛門がまた特殊でな。見聞を広めたいとか真面目なこと言って旅に出たんだ。ただ旅に出るなら問題は無かったんだが、あいつ、乗る船間違えて密航紛いに南蛮船に乗って行ったんだよ。いつかは気づくとは思うが、大丈夫だろうか。

 とまぁ、これが同士たちのその後だな。

 

 思考を戻し、現在に目を向けるとそこには、楽しそうに笑う内蔵助や主税、直音の姿。

 

「して主税? 行き遅れではないということは、誰かよい人でもできたのか?」

 

「う………ま、まだです」

 

「やっぱり姉上は行き遅れだ!」

 

「す~ぐ~ね~?」

 

「にゃー!? ごめん! ごめんであります姉上!」

 

「そう言えば直音ぇ? 随分と直刃にべったりじゃった気がするのは気のせいかのぉ? 母上に教えてはくれまいか?」

 

「は、母上? 女嫉妬はちと醜いかと………」

 

「直音ぇ! 今なんと申した!」

 

「ひぃ!? ごご、ごめんなさーい!」

 

 少し違ったか? 

 まあこんな日常も悪くはないな。

 気がつくと自然に笑みが零れていたのに気がつく。

 俺も丸くなったもんだ。

 

「なぁ内蔵助」

 

「? なんじゃ直刃?」

 

「今、幸せか?」

 

「……………」

 

 俺の問いに内蔵助は少し考える素振りをし、そして、

 

「直刃が今すぐに抱きしめてくれたら幸せじゃな!」

 

 まるでいたずらっ子のように言い切った。

 やれやれ、嫉妬深い妻というのはいかがなものかねぇ。

 

「すーぐーはー?」

 

 おっと、これ以上余計なことを考えたらマジで機嫌が悪くなる。

 俺は機嫌をとるため内蔵助の元に向かった。

 こんな日が、ずっと続けばいいな。

 

 

 

 

 

 

 さて、結構前になるのだが、相対性理論について説明したことを覚えているだろうか?

 なぜ今その話をするのかというと──────幸せというのは長くは続かないということ俺はこの後、それを改めて体感したからだ。

 

「──がぁっ!?」

 

 突然走り出す胸の痛み。

 ここ五年、呪いが終わったと思い忘れていたあの痛みだ。

 他人から無理やり心臓を掴まれたような痛みが全身を駆け巡る。

 一体………何…が……起きたんだ。

 その痛みに立っているとができず、地面に倒れ伏してしまう。

 

「……あぁ───ぐぅ──」

 

「す、直刃!?」

 

「直刃!? どうしたんだ!」

 

「ち、父上!?」

 

 気を失いそうになるほどの激痛に耐え、なんとか目を開けると俺を心配する三人の姿が見えた。

 大丈夫だって、心配すんなよ。と、軽口の一つや二つでも言って安心させたいが、どうにも口すらまともに動かせそうにない。

 というか、もう目すら開けるのもしんどい。

 

「内………蔵助」

 

「す、直刃! 喋ってはならぬ。今主税に医者を呼ばせに行かせた。じゃから、それまで踏ん張るのじゃ!」

 

「父上! 大丈夫ですよね! ね!」

 

 ヤバい。二人が一生懸命に何かを伝えようとしてるのは分かるのだが、何を言っているのか聞き取れすらしない。

 だけど、これだけは言いたい。

 いや、言わなければ。

 激痛に苛まれながらも、俺は意識を可能な限り保ち、口を開き言葉を紡いだ。

 

「俺は……お前に会え…幸せ………だ…ぜ」

 

 その言葉を口に下のと同時に俺は意識を手放した。

 

「直刃? 直刃ーー!」

 

 愛する人の叫び声が届くことはなく。

 俺は、再び激動の時代に赴くこととなる。

 

 

 

 キセキの忠臣蔵 

 大石内蔵助編 終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………

 

………

 

 

「ふふ、さすがの私もこの結末には焦ったわ。まさか誰一人呪いにかからず白蛇を倒しきるんですもの。でも、それを補正するくらいは訳ないのよ。さぁ、次の世界で絶望しなさい。私の愛しい───深海直刃」

 




最後のは一体全体誰なんだ!
ちなみに更新までほぼ三ヶ月はかかります。ご了承下さい。
というのも、最初から見切り発進で投稿するぐらいなら一応章ごとに投稿した方がやりやすいことに気がついたので。
ではでは、感想やヒロインの提案、さらには今後の展開希望などは採用されるかは分かりませんが募集もしております。では、第二章 堀部安兵衛編でまたあいましょう!

オマケ 主人公の追加設定というか設定解説

●才能の進化 

自分の持つ才能を信じ切ったため、人が行ったという事実があればそれを模倣することができる人間へと進化を果たした。

●持っていた刀の名前は?

名刀虎鉄

実家に眠っていた刀。とりあえず名刀という名前が付くくらいだから凄い刀かと思えば単なる普通の刀。長助さんが露天商に騙され購入して元服祝いに直刃に渡された。名前でも分かるようにパチモン臭が半端ではない。しかし、その真の姿は────あるのか? とにかく謎の多い刀である。切れ味は寸胴一人抜きが限界と思われる。

●討ち入り時の格好はどんなの?

攘夷志士時代の高杉晋助の格好だが、カラーリングは火消し装束と同じ白地に黒の模様が施されている。一人だけ格好が違う理由は男だから。

●どうして最終戦でここまでの失態を見せつけてしまったの?

とりあえず白蛇戦は化け物だからと話は付けられるが、大体は全て呪いのせいで片が付く。黒幕が直刃が化け物だと察して、原作以上に強化された。一学はひとりで赤穂最強の二人をあしらっているため、内蔵助ではほぼ勝てない。白蛇に至っては原作より体長は1.5倍は大きくなり、俊敏性も高くなってしまった。ぶっちゃけこの設定で原作に行ったら赤穂浪士全員ゲームオーバーは必死である。それと、呪いが強化されたのは今後に多大なる影響がががががが………

●なんで主人公は最後でしか才能を信じ切れなかったの?

前回の人生で俺つえええええええし過ぎた結果

●主人公の娘の名前ってなんて言うの?

すぐね

●どうやって助けてくれない朝廷と取引したの?

お前もう一回天下取れるぜ? と言ったらあっさり上手くいく。

●どうして主税は独り身なの?

原作の主税編を見れば分かる! というのは冗談で、武士気質で男勝りな結果だと推察される。

●もし内蔵助と直刃の子供が男だったらどんな名前?

蔵雨止 くらうど。雨をしのぐ蔵のように堅牢な男であって欲しいと思い内蔵助が思いついた。直刃としてはその名前だと、将来「興味ないね」が口癖の何でも屋になってしまうのではないかと危惧している。

●数右衛門のその後は?

密航者だとバレてしまい、海に落とされ長崎県の離島である対馬に漂着。その後剣の修行しつつ北上していく。

●新八とか出てきますか?

多分出てくるかと思われる。ただ現時点だと最初から本気で行ったとしてもアイアンクローからのフェイスクラッシャーを即座にカウンターさてれ負けるのは必死。

●今後はどのように展開するの?

ぶっちゃけまだ決まってない。ただ、武士の鼓動に繋げるために必死に構成ちゅう。第二章に至っては最初すら完成してない。というか原作以上にがっちりとした堅牢な精神の主人公をどっやって江戸に向かわせればいいのか聞きたいくらい。だけど最後のジャンプ的熱いノリの展開あるラストにしたいと考えている。

●将来直刃は弾丸掴みとかできるの?

この時代だと矢になるが、北斗の拳第二話のケンシロウように「その片目をいただく」といったカウンターができちゃう。火縄銃は一応掴み取れると思われる。

●主人公ってどれくらいの堅牢さなの?

十トントラックに轢かれる程度なら、まだ生きていけるレベル。もはやXmenである。

●映画アイアンマンやアベンジャーズに出てきたらどんな役目?

日の本を代表するサムライとしてやってくる。群がる敵に炸牙をバンバンお見舞いする動く砲台。ワイバーン戦だと特に活躍する。

●なぜ原作より主人公がループするまでの期間が長かったの?

それは作品の最後でわかります。

●なんで娘の名前が松之丞でないの?

作者がこれを作成したときには武士の鼓動を終わらせて無かったのと、武士でないからという理由につきます。
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