冬場というのは暇である。
農民であれば内職で暇を潰すようなこともあるし、巫女に転職した私もお守りをほそぼそと作って冬から夏にかけての低所得を凌いでいる部分もある。
が、いくらなんでも毎日も黙々と同じ作業を続けていればそのうち飽きる。
昨年まではまとまった時間ということで先代博麗の巫女さまから集中講義を受けていたりしたのだけど、一人前として独立した現在では特にやることがないのである。
冬眠中のお二方の床擦れを防いだり御身体をお拭きしたりと定期的にお世話をしているのではあるが、それだって一日中付きっ切りというわけでもない。
私が在中しているのは田畑のど真ん中にあるお社である。
冬野菜を育てている農家なら別だが、秋がメインの農家で冬場の田畑に用のある人なんて稀だ。
毎日参拝に来てくれる咲夜ちゃんがいなければ私までダウナーになっていたかもしれない。
なんというか、人恋しいのである。
ここのところ咲夜ちゃんとしかお話してない。
お社は無駄に頑丈だし、何も植わっていない農地の価値なんて薄いので自警団の人たちもこっちには余り見回りには来ないのだ。
よし、市街地に行こう。
と思ったところですぐには行動に移せない現実があったりするのだが。
繰り返すようだが今の季節は冬である。
秋という季節が終わって祭神も就寝中の今、私にかかっている加護の力はゼロに近い。
自称も他称も八百万分の一とはいえ、神さまの加護の有無で私の戦力は桁違いに変わる。
元が低すぎるのである。特に防御力が比較にならない。
そして一応里の一部とはいえ、お社のある場所は郊外、見回りも薄い上に数の少ない人里への道で妖怪の待ち伏せを受ける可能性はというと、正直楽観できるほど低くはないのだ。
そうなった場合、妖怪に追われたまま里に逃げ込むわけにも行かない。お社に逃げ帰ったらそのまま包囲される恐れすらある。うかつに出歩くことなんてできはしない。
というわけで翌日まで待って咲夜ちゃんとおでかけである。ビバ他力本願。
咲夜ちゃんは自分の用事があるのらしいで里に付いたらすぐにお別れである。
帰りは自警団に送ってもらうことにしよう。
そんなこんなで若干閑散とした商店を冷やかしながら久々に人とのふれあいを楽しむ。
あれ、会話するのってこんなに楽しかったっけ。なんかぼっちこじらせてきてる気がする。
咲夜ちゃんには手間をかけさせちゃうけど、これからも積極的に外出しないとダメな子になってしまいそうだ。
ひそかにそんな決心をしながら歩いていると、なにやらポスターのようなものを発見した。
なんでも公民館で大々的に人形劇をやるそうだ。
何度か繰り返し日程が組まれているらしく、今日のお昼過ぎにも上演があるらしい。
そういえば定期的に人形劇を開いてる人がいるって聞いたような覚えがある。
なにかとタイミングが合わなくて見たことはなかったのでちょうどいい機会である。
冬場に暇が増えるのはどこの家庭でもさほど変わらないのか、人形劇は満員に近い結構な人気のようである。
特に親子で見に来ている人が多いようだ。緑色の髪と蛙帽子が見えた気がしたけどスルーである。気にしてはいけない。
そのつもりだったんだけど向こうから捕捉された。むしろ絡まれた。
うん、巫女服って着てる人が極端に少なくて目立つからね。仕方ないね。
話を聞いていると何度か見に来ているらしい。
ネタバレとかされたらたまらないので積極的に距離を置くことにする。
蛙幼女の神さまと談笑している尻紅葉がちょっとだけうらやましくなったのは内緒だ。
人形劇の内容をあんまり覚えていないのは、楽しそうなあいつらに視線が向いちゃったからとかはないのである。