夏のある日、博麗の巫女がお社を訪ねてきた。
何でも神社テロが流行っているらしいから気をつけろとのこと。
博麗神社は標的にされて倒壊してしまったらしい。
それはわかったのだけど後ろでうごめいているものは一体なんなのだろうか。
私には簀巻きにされて青痣までこさえているのに悦んでいる変態に見えるのだけど。
頑丈らしいわ、とのことだけど久々に戦慄を覚えた出来事である。
とりあえず田畑に落とさないようにしてくださいとだけ告げてお引取り願う。
博麗の巫女さんはお山の三馬鹿にも注意を促しに行くらしい。
本人には悪気はないのだろうけど脅しに行くようにしか見えないのが最高である。
三馬鹿にはいい薬だろう。いいぞ、もっとやれ。
しかしあの少女もよく生きていたものである。
神社が倒壊したということは博麗の巫女にガチで喧嘩を売ったということだ。
本気の彼女を敵に回して命があるあたり、尋常ではない頑丈さを持っているのは間違いない。
ま、私には関係のないことだ。
今日のおやつはスイカである。静葉さまは何でもお食べになるけれど、穣子さまは農薬や化学肥料を使って育てられた作物には一切手をつけることがない。
さすがに自動耕作の有無までは分からないが、農薬の有無の判別であれば祝福をもらった私にも可能である。
それを駆使してお社では穣子さまの加護に耐えうるクラスの無農薬作物だけが食卓に上がるのだ。
ちなみに加工食品に関しては割と適当だったりする。
まんじゅうはこわくない。くずもちおいしいです。
しかしこうやってお仕事に出かけているお二方をおやつやお食事を用意して待つのって、なんだか新婚さんみたいである。
……それで思い出したけど、私、完全に行き遅れてないだろうか。
巫女に選ばれた三年前の時点でもギリギリアウトだった気がする。
今度あっきゅんに聞いてみよう、そうしよう。
静葉さまと穣子さまにも相談したほうがいいだろう。
なのでその日の夜、早速相談してみることに。
返ってきたお答えは、考えてもみなかった。うん、そうですよね。
なんか逆に納得できて落ち着いた。
そもそも幻想郷には博麗以外の巫女は数百年いなかったのだ。
神さま側も人間側も、まともなノウハウなんてあるわけがない。
というわけで案を出してみる、一つは当然ながらみんなが知ってる博麗式である。
才能のある人を次代の巫女に任命して、それを育てることで継いで行くという形式。
世代交代したら返俗して結婚するのもありという実例もある、分かりやすい形である。
そしてもう一つ、非常に癪ではあるのだが、お山の三馬鹿に力を借りるという方法。
当然ながら場の空気は凍る。私だって言い出したくはないのだけど、思いついてしまったのだから仕方ない。言うだけ言ってみろという空気を感じたので言葉を続ける。
あいつらはあれで外の世界で何代も続いている宗教の家系である。諏訪信仰とか私だって知ってるくらいだ。
なので博麗式ではない、血で信仰を継いで行くノウハウは間違いなく持っているはずなのである。
場を小さな沈黙が包む。
ないわ。ないね。ないですね。
そういうことになった。
幸いなことに博麗式の巫女継承にしても、ハードルはあちらほど高いわけではない。むしろ低い。
その子がお二方を信仰していて、お二方がその子を気に入れば巫女としての条件は十分なのだ。
今でこそ信仰していると胸を張って言えるけど、当時の私のしょっぱい信仰心でも巫女にしていただけたくらいなのだ。敷居の低さは折り紙つきである。
ともあれ、先代博麗の巫女さまも引退してからしっかり家庭を築いている。
何事も努力しだいということだろう。