静葉さまと穣子さまが冬眠からお目覚めになられた頃、人里では妙な噂が流行していた。
曰く、UFOを見た。未確認飛行物体が確認されたのだ。
しかし未確認じゃない飛行物体なら四六時中あちこちで飛び回っているし、どうやって区別しているのだろうか。
同時期にダウジングで何かを探す鼠の妖怪も目撃されるようになったらしい。
それはそれとして間欠泉の異変がまだ片付いていないのだけど大丈夫なのだろうか。
微妙に妖精や妖怪が活気付いているからUFO関連も異変であることは間違いないのだけれど。
まあこちらにできるのはいつものように警備を強めるのと、田畑にミステリーサークルができないよう見回りを強化すること。
それからご近所に墜落してこないことを祈ることくらいである。
博麗の巫女が間欠泉の方にかかりきりということで、何故か尻紅葉がUFOの探索に乗り出したらしい。火事場泥棒が好きな連中である。
いや、異変の解決に乗り出してくれるのはいいんだけど尻紅葉は頼りになるのだろうか。
お尻に紅葉を咲かせて四つんばいになってる印象が強すぎて不安しか湧かない。
祭神の二柱が力のある神だというのは知ってるけれど、そういえば本人の能力なんて気にしたことがなかった気がする。
まあ、命までは取られることもないだろうけど、一応無事くらい祈っておこう。
どのみち力もない私には誰かが異変を終わらせることを待つしかできないのだから。
最近、能力の発動が安定しない。年初めにフルパワーで発動してしまったのが原因なのだろうか。
今年に入ってから徐々に不安定になってきたし、巫女パワーや素の身体能力には変化がないので、他に原因が思い当たらない。
元々私の能力は足腰に強く効果が出ていたため、そのせいでよく転ぶようになってしまった。走ろうとするとまず間違いなく転ぶ。かなり不便である。
能力に詳しいあっきゅんに調査をお願いしたけれど、即答しかねるという意外な返答をもらった。
歴代の幻想郷縁起をひっくり返して似たような例が過去になかったか調べてくれているそうだ。なんだか申し訳ない。
そんなわけで絶賛神楽の練習中である。
転びやすいなら転びやすいで、転ばないように今から体を慣らしておく必要がある。
秋の収穫祭はまだまだ先だけど、大舞台ですっころぶなんて恥をさらすわけにはいかないのだ。
舞を終え、残心を置く。
不意に拍手が聞こえたのでそちらに振り返ると、お社の庭に鼠の妖怪が立っていた。
とりあえず礼を述べてお茶の用意をする。
仮にも神域に妖怪がどうやって入り込んだとかは考えるだけ無駄である。
お茶菓子を出す際に、一応何か食べられないものはあるか聞いておく。
どうにもチーズが苦手らしい。鼠妖怪のイメージが崩れる。
茶請けで出すような代物ではないが、妖怪の食性というのは未だによく分からない。
態々苦手なものを出して顰蹙を買うつもりもないし、普通に羊羹で対応する。微妙な顔をされた。何故だ。
改めて用件を聞くと、どうも探し物の気配がこのお社の中から漂ってきているらしい。
最近それっぽいものを拾わなかったかと問われる。雰囲気から察するに、ここにあることは確定しているようだ。
田植えの際に田んぼから発掘された謎物質を持ってくると、鼠妖怪の目の色が変わる。
こちらにしてみればゴミでしかないし、普通に差し上げることにする。
なんか慇懃無礼で尊大な態度が見え隠れし始めるが、謎物質は既に彼女の手に渡っているのだ。
なのでこちらも遠慮なくにっこり笑って貸し一つと遠まわしに伝えておく。
土下座外交で恩の押し売りをするのは木っ端な神さまが誇る唯一の交渉術である。
人を見下すような妖怪は基本的にプライドが高いので、貸し借りの話に持って行くと大抵うまくいくのだ。
まあそれでも人間如きとの約束事なんて踏み倒す輩もいるけれど、そのときはそのときだ。
他の誰かに潰される原因を作るような妖怪なんて放っておけばそのうちいなくなる。態々気にするような相手ではない。
鼠妖怪はおかわりまで要求して羊羹を全部平らげて帰って行った。
腹いせにしてもやることが小さい。
鼠は燃費が悪いって聞くし、単にお腹が空いていただけだと好意的に解釈しておこう。