は? え、え? いや、えっと、え? にん?
妊娠してるわね。
私まだ処女です!
思わずそんな言葉が口に出るほどに、私の混乱具合は過去最大級のものだった。
半ばパニックになった私をなだめてくれたのは一家に一人パーフェクトメイド、信頼と実績の咲夜ちゃんである。
ふかふかのお胸に包まれるだけで安心感がハンパない。なんだか妙に手馴れているように思えたのは気のせいだろうか。
気もしっかり取り直したところで、先生に詳しい話を聞いてみることに。
実りをもたらす祝福をもらったのに受粉しなければ不具合でも出るのが当然である。
なんでも穣子さまが秋の収穫物への豊穣の加護を人である私に無理やり祝福としてかけた結果、なんやかんやしてどうこうなって想像妊娠みたいな状態になっているらしい。
能力が不安定になったのも、擬似的とはいえ体の中に別人がいるような状態であるために、自身の肉体にかかるタイプの私の能力はうまく機能しなくなっているのではないかということだった。
(想像)出産予定日は秋の収穫祭が過ぎた頃で、それが終わればたぶん元に戻るだろうということである。
なんか、どっと疲れた。
思わずふにゃりと倒れこみそうになったところを咲夜ちゃんが支えてくれた。
とはいえ体が弱っているのに変わりはないので、先生は体力回復の栄養剤を処方してくれた。
こっちの信仰にも配慮してくれた自然由来の生薬である。生モノなのでウサギさんが定期的に届けてくれるそうだ。
お礼を言って永遠亭を後にする。
趣味でやっているようなものだし、珍しい症状を看ることもできたから御代は結構とのこと。
そして帰りがけに、頑張ってねと言葉をかけられる。
ウサギさんに案内されての里への道の途中、咲夜ちゃんがサボっている門番の人を補足したらしく、そこで別れる。
顔見知りではあるけれど、友人知人というほどの仲ではないウサギさんと二人歩く。
それきり会話もないまま里に到着し、ウサギさんに次のお薬配達の予定を聞いて別れを告げる。
口に付くのはため息一つ。
大妖怪並みかそれ以上の御歴々に意味深に頑張って、などと言われたのだ。
どう考えても利用するから覚悟くらいはさせてやるという向こう側からのお慈悲である。
わざわざ教えてくれたあたりまだ善良なほうと言えるだろう。
力の無い人里の民にとって、大妖怪というのは天災のようなものだ。
対処法は頭を下げて通り過ぎるのを待つか、博麗の巫女が退治するのを祈るか、諦めるか、その三つしかない。
名指しで注目までされているのだ。現実というのは何時だって非常である。
お社に帰ると、なんか知らないけどお祭り騒ぎになっていた。
中心になっているのは穣子さまで、盛り上げているのはNOUMINたち。
静葉さまは隅の方で酒を煽っている。
え、なにこれ。
私の帰宅に気付いたのか、穣子さまがこちらに飛んでくる。
瞳がきらきらと輝いている。秋以外でこんなにハイテンションな穣子さまは初めて見る。
私の子供ができたって本当!? え、はいと思わず肯定してしまった。
歓喜の声を上げて飛び上がる穣子さま。
天元突破するNOUMINのテンション。
静葉さまの自棄酒は進む。
もはや否定できる空気ではない。
しかし情報が早すぎる上に微妙にゆがんでいる。誰から聞いたのかと問いかけると、突然やってきた妖怪の賢者が教えてくれたのだという。
え、妖怪の賢者が伝令に走るような事態なの?
……なんだか、私の想像以上に大事になっている気がする。
ここまで来るとただ利用されるだけでは終わりそうにない。先行きが不安である。