天狗の号外でも私の妊娠が報じられていた。
しかし穣子さまの御子ではなく、静葉さまと穣子さま御二方の力が混ざり合った結果ということになっていた。
里の人たちにはそうやって周知されているし、NOUMINたちもそれならそれでということで納得してしまっている。
みんな優しくしてくれるのはいいのだけど居心地が悪すぎる。
季節は既に秋に入っている。
秋の加護は日に日に強まっているのだけど、私の衰弱はまるで止まらない。
生薬を飲まなければまともに動くこともままならない始末である。
さすがに静葉さまは何かがおかしいということに気付いていらっしゃる。
穣子さまは先日まで子供の名前を考えていらっしゃったけど、今では頻繁に倒れる私を看病してくださることが多い。
本来なら私が御世話をしなければならないのに、歯がゆいばかりである。
そんな体調になっても、私は神楽の練習を止めることはなかった。
診察のときにさり気に言われた、秋の収穫祭が過ぎた頃、という言葉が気になっているのもあるし、何より御二方の巫女は私しかいない。
神楽を奉納するのは……うん、代理を頼めば何人か完璧にやれそうな人はいるけど、それでも仕える者としてのプライドがある。これだけは譲れない。
体が絶不調なせいか、それを補うように日に日に神楽を舞う際の集中力が増しているのが自分でもよく分かる。
このまま練習を続ければ、たぶん立つことさえできるのなら当日何の問題もなく舞うことができるだろう。
綱渡りのような体調のまま日々は巡り、収穫祭がやってくる。
体調は前々から予想していた通り、最悪の状態を華麗に更新している。
もう自力で立ち上がることもできはしない。誰かが支えていてくれるおかげで倒れていないけれど、誰が支えてくれているのかも分からないくらい意識が朦朧としている。
それでも不思議と静葉さまと穣子さまの御声は聞こえてくる。
御二方の言葉を聴く限り、誰かが神楽をやめさせようとしているのだろう。
だけど、御二方は決して頷かない。ただ私たちの巫女を信じていると言って下さるのだ。
そしてついに、神楽が始まる。
寄りかかっていた誰かに感謝の言葉を言うほどの余裕も無い。
舞台の真ん中に辿り着くのも遠く感じる。
だけど、ああ、この神楽に失敗はありえない。
神さまさえ信じてくださった御神楽が、成功しないわけがない。
意識を集中するまでもなく、身体が勝手に舞い始める。
ただ信仰の赴くままに、崇める神に舞を捧げる。
気付けば神楽は終わっていた。
残心が解け、崩れ落ちそうになる体を穣子さまが支えてくださり、静葉さまがよく頑張ったわね、と御声をかけてくださる。
成功ね、と誰かがつぶやいたのがどういうわけか耳に響き、致命的な何かが引き千切られる音が聞こえた。