東方弱霊夢   作:こまつな

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#5

雪が止まない。冬が終わらない。

三月には今年の冬は長いなぁで済んだ。

四月には何かがおかしいけど博麗の巫女が何とかしてくれるだろうと楽観的だった。

五月、あちらこちらで葛餅のような幽霊を見かけるようになる。

更に博麗の巫女が全く動いていなかったことが発覚。

高々と声を上げるような人はいないけれど、博麗の巫女に対する不満は高まっているだろう。

 

昨年の夏の異変の解決にかかった時間を考えると、もう今年の田植えには間に合わない。

農家連合の話し合いでは今年の米の生育は諦めて芋を増産することが決まったらしい。

八百万の神々がおわす幻想郷では滅多なことでは飢饉なんて起こらない。

食物の自給自足に関しては何気に外界よりも遥かに優秀である。

 

だけど、燃料に関してはそうもいかない。

化石燃料が産出されることのない幻想郷では燃料といえば薪一択である。

魔力や霊力依存の発火装置もあるにはあるけど、そのほとんどは着火用の道具であって、継続的に火を点すような作りにはなっていない。

探せばあるのかもしれないけど、少なくとも一般家庭に普及しているようなことはない。

 

そもそも冬場の燃料というのは秋までに時間をかけて溜め込むようなものであって、冬になってから慌ててかき集めるようなものじゃない。

冬場には冷気や寒気を操る妖怪が幅を利かせるようになるため、里の外で薪を集めるのは困難を極める。

単純に物理で強いタイプにはそうそう遅れを取るようなNOUMINではないけれど、大自然の力を後押しするような輩が相手では相性が悪いのだ。

 

だけど集めないわけにはいかない。このままでは人里全部が凍り付いてしまうのだから。

陰陽衆が中心になり、里の外へ燃料を集めに行くことが決まった。半ば決死隊のようなものだと聞いている。

更に長屋をいくつか取り潰してその材木を燃料に当てるのだという。

私の住んでる長屋は対象外だったけど、代わりに居候を預かることになった。父親のいない母子だ。

不謹慎かもしれないけど、こうして頼られることが人里の一員として認めてもらっているようで、なんだか嬉しくなる。

 

 

 

六月。まだ冬が終わらない。

 

未だ燃料は足りていないけれど、けーね先生の尽力で問題は収束に向かっている。

どこからか炎術士の友人を連れてきてくれたのだ。

けーね先生はもっと早くに決心が付かずに済まないと謝っていた。

絶望感に満ちていた里だから不満を口に出す人がいないわけではなかったけど、そういう連中は周りの人々にぼこぼこにされていた。

みんな燃料(炎術士さん)を繋ぎとめるのに必死である。文字通り命がかかっているのだから、どう考えても馬鹿なことを言い出したやつが悪い。

 

今や妹紅さまは老若男女問わず人里の輪の中心となっている(物理)。

少なくなった食料をお供えする人も後を立たず、そのたびにちゃんと自分で食べなさいと突き返すのはもはや恒例行事と化している。

人の好意に慣れていないから構いすぎないでやってくれとけーね先生がフォローに回っているが、そんなところが親しみやすさを生んでいるのだろう。

爺さま婆さまの中には若かったころに今と変わらない姿の妹紅さまを見たことがある人もいるらしく、里を救ってくれた仙人様として祈りを捧げる人もいるのである。

言われてみれば食事を取っているところを見たことがないので、仙人様が霞を食べて生きているというのは本当のことなのだろう。

私はもしかしたら語り継がれるような伝説の誕生に居合わせているのかもしれない。

 

六月中旬。妹紅さまが倒れる。雪はまだ降り続けている。

二十四時間休みなく炎を出し続けていたのだ。いくら仙人様だからって、やっているのが無茶だということは素人でもわかる。

それでも立ち上がって術の行使を続けようとする妹紅さまを、けーね先生が頭突きで無理やりに休ませる。

みんなに袋叩きにされるような馬鹿以外はそれに文句をつける人は出なかった。

 

半月かけてこつこつ貯蓄された燃料は高く積みあがっている。

一つの熱源をみんなで分け合うノウハウも、妹紅さまを中心にしていた(物理)おかげで里の皆が手に入れている。

博麗の巫女が動き始めてそろそろ二ヶ月。異変の解決はきっともうすぐだ。

 

 

 

七月初頭。雪が、止んだ。里は歓声に包まれた。

 

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