ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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ヴィーネ・チャーチ

10歳(844年現在)
ファーラン・チャーチの弟。
少し大人びてはいるが、良くも悪くも年相応。
現状認識が早く、急な出来事にも素早く対応できる。格闘術をリヴァイに習っている。


悔いなき選択
第一話


844年

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、待たせたな。前回と今回の分だ。」

 

 

そう言って兄さんが分け前を仲間に渡していく。

一人多く渡していたのが見えた。その人は足が悪いと聞いていたので、それも含めての分け前だろう。

 

 

 

「お前ら、あんまり使いすぎるなよ?」

 

 

仲間は「分かってるよ!」と言って、家から出ていった。

 

 

 

 

 

 

ここは地下街。僕達が住んでいるところであり、壁の中で一番安全な所の地下にある街。昔、人は巨人から逃げる為に、地下移住計画を実行しようとしたらしい。

けれどそれは取り下げられてしまった。それの残骸がこの地下街であり、今僕達が住んでいる場所。

 

 

地下街は貧富の差がすごく激しい。

 

 

貧しい人等は飢え死にすることも珍しくないから、そうならないために僕達は盗みを働く。

 

 

兄さんやリヴァイさんは立体機動ってやつで鳥みたいに空を飛び、僕はそれで撹乱させているうちに落ちた金になるものを盗む。

 

 

僕達はそうやって生きてきた。

 

 

 

「ヴィーネ、これはお前の分だ。」

 

「ありがとう、兄さん。」

 

「本買いに行くのか?」

 

「うん。この前また高くなったから、買えるか分からないけど。」

 

 

 

 

 

掃き溜めみたいな場所の地下街では、地上の人達は入ろうとは思わない。

おかげで地下商人が物の値段を好き勝手高くしている。

続きが楽しみな本だって最近高くなったばかりだ。

 

 

 

「…それじゃあ、行ってくるね。」

 

「ああ、気をつけて行ってこいよ。」

 

 

兄さんの言葉に頷いて、リヴァイさんの方を向く

 

 

「リヴァイさんも、行ってきます。」

 

「…ああ、怪我するなよ。」

 

「あはは、分かってるよ。」

 

 

 

そう言って、僕は家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かった店は、僕の家からちょっと遠い店だった。

地下街も広いから、結構歩くのに時間がかかる。

 

 

「よぉ、坊主。金は持ってこれたのか?残念だが、安くはしねぇよ?」

 

 

店に行くと、店主が笑って出迎えた。笑うって言っても、ちょっと鼻につく笑いだけれど。

 

 

「持ってきたよ。また高くしたとか言わないでよね。」

 

「へいへい。……ほら、この本だよな。」

 

「!…ありがとう!」

 

 

 

この時の僕は嬉しさが前面に顔に出ていたと思う。ずっと見たかった本だ。嬉しくない訳が無い。軽い足取りで家に向かう。

 

 

「……でも、階段の通行料に回した方が良かったかな…」

 

 

兄さん程ではないが、僕も地上に出ることを望んでいた。

日の光が届かないこの場所で、一生を過ごすのは嫌だった。きっと世界は広いはずなんだ。いつか、外の世界を見てみたかった。

 

 

「外の世界の本とか、あればいいんだけど」

 

 

地上にも出たことはないが、この三重の壁の外はどうなっているのか、僕は興味があった。言ったら、異端者扱いされるかな。けど思うだけなら、タダだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま……って、あれ」

 

 

家に知らない女の人がいた。

兄さんの彼女だろうか。

 

 

「ん?コイツは?少しファーランに似てるな?」

 

「俺の弟だからな。ヴィーネって言うんだ。ヴィーネ、コイツはついさっき仲間になった奴だ。」

 

 

赤毛の人は僕を見る。知らない人にガン見されるのはあまり気分が良くない。

 

 

「へぇ、ヴィーネか。あたしはイザベル・マグノリア!よろしくな!」

 

「………よろしく、イザベルさん…?」

 

 

少し警戒しつつ、僕も挨拶をした。自己紹介されたのはいいものの、なんて呼べばいいのか分からなくて、疑問系になってしまったが。

 

 

「別にイザベルでいいよ。なんだったら姉貴って呼んでもいいんだぜ!」

 

「お前なぁ…」

 

 

得意げに言うイザベルさんに、兄さんは呆れていた。

思ったより悪そうな人でもないらしい。よくよく考えれば、兄さんとリヴァイさんが仲間にした人だ。いい人では無いだろうけど、信用できる人なんだろうな。そう思った僕は、親しみを込めてこう呼ぶことにした。

 

 

「…じゃあ、よろしく。イザベル姉さん。」

 

 

そう呼んだら、兄さんは少し驚いた顔をして、イザベル姉さんは顔を輝かせた。

 

 

「…!よろしく!ヴィーネ!」

 

「(珍しいな。ヴィーネがあんなに早く打ち解けるなんて…いつもは警戒して近づきもしないのに)」

 

「イザベル姉さんは立体機動ってやつ使うの?」

 

「ああ!やって見たかったんだ、ずっと!」

 

「いいなぁ…僕なんてまだ早いって言われたのに。」

 

 

 

そりゃあまだ子供だけども。時間が何故だか遅く感じる。

 

 

「はは、お前もあと2年くらいしたら教えてやるよ。」

 

そう言って兄さんは僕を慰めた。

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