ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第十三話

トロスト区奪還作戦が決行され、遠くの方で爆発音が聞こえた。

 

 

 

「…エレンが巨人化したみたいだ」

 

「ですね…頑張りましょう」

 

「…うん」

 

 

 

 

 

班に分かれ、ヴィーネ達は、巨人を誘導しエレンの邪魔をさせないという役割を果たそうとしていた。もう既に、多くの兵士が死んでいる。

 

 

 

「巨人発見!惹きつけるぞ!」

 

 

 

 

この班の班長である、ギーナが巨人を発見する。巨人はこちらに向かってくるが、ギリギリまで惹きつける。そして、掴もうと手を振り上げた瞬間に、横へ避けた。掴み損ねた巨人の手は屋根にぶつかり、屋根はガラガラと崩れ落ちていく。

 

 

 

 

「……!?サシャ、後ろ!!」

 

「えっ…」

 

 

 

知らぬ間に、もう一体巨人が近づいてきていた。少しふくよかな巨人はサシャを掴んで持ち上げた。

 

 

 

「ひぃっ……!?」

 

「……!」

 

 

 

 

素早くヴィーネは立体機動で巨人の後ろにまわり、うなじを削ぎ落とす。

 

巨人の手から離れたサシャはそのまま屋根の上へ落下するが、ギーナが受け止め怪我は無かった。ヴィーネはサシャの所へかけていき、声をかける。

 

 

 

「…怪我はない?」

 

「は、はいぃ…助かりましたヴィーネえぇ…!」

 

 

 

死ぬかと思いましたと涙ながらにいうサシャに、ヴィーネは無事なことに安心する。ギーナが大丈夫かとヴィーネに声を掛けるが、「ああ」と短く答え、鈍にしてしまった片方のブレードを新しく取り替える。表情は相変わらず変わらない。

 

次の瞬間、赤い信煙弾が上がっていくのが目に入る。

 

 

 

 

 

「…赤の信煙弾を確認」

 

 

 

そう言ってヴィーネがギーナを見ると、ギーナは目を見開く。赤の信煙弾の意味は「作戦に深刻な問題が発生」である。その意味をしっているヴィーネ達は、不安の色を隠せないでいる。

 

兵士達には当然家族がいる。家族の為にも死ぬわけにはいかないのだ。

 

 

 

 

 

「……ヴィーネ…」

 

 

サシャが不安そうにヴィーネを見る。

 

 

 

「…まだだ。作戦が完全に失敗したわけじゃない。まだ、終わってないよ」

 

 

 

ヴィーネはそのまま喋り続ける。今まで人類は負けてきたけど、だからって今回も負けるわけじゃない。エレンは誰よりも巨人を駆逐すると言っていた。その彼が、こんな事で負けるわけがない。その言葉は、ギーナの心を動かした。そうだ、まだ、負けたわけじゃない。

 

そこで、ギーナが口を開く。

 

 

 

 

「っ……行くぞ!俺達は課せられた任務をこなす!人類は今日!巨人に勝利するんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてくれよエレン!ここにいるんだろ、エレン!このままここにいたら巨人に殺される!ここで終わってしまう!!」

 

 

 

エレンの意思が反映されていない、その巨人に、アルミンはブレードを突き刺した。痛みからかとても暴れたが、アンカーのお陰で飛ばされることは防げていた。

 

何故このような状況になったか。

赤の信煙弾を見たアルミンは、嫌な予感を感じてエレンがいるところまでやってきた。しかしそこで見たものは、巨人となって岩を運んでいるはずのエレンが、座っている光景であった。やはり巨人の力を制御しきれていないと、アルミンが考えた最善策は、うなじの中で眠るエレンを呼び起こすことであった。

 

 

 

 

 

「エレン…僕達はいつか…外の世界を探検するんだろ?」

 

 

 

アルミンが語りかける。

この壁の外のずっと遠くには炎の水や、氷の大地、砂の雪原が広がっている。忘れたのかと思ってたが、この話をしなくなったのは自分を調査兵団に行かせたくなかったからだろう。

 

外の世界にいく。誰も見たことのない、外の世界へ。

それがエレンにとっての自由の証、原初の欲求であり、前へ進む原動力となっていた。うなじの中で、エレンはうっすらと目を開く。

 

 

 

 

 

「エレン…答えてくれ。壁から一歩外に出ればそこは地獄の世界なのに、どうしてエレンは外の世界に行きたいと思ったの?」

 

 

 

 

壁の外へ行けば、巨人が沢山いる。そんな中出てしまえば巨人の口の中へ直行である。それでも、何故外の世界に行きたいのか。アルミンは問う。

 

 

 

「(どうしてだって…?そんなの決まってんだろ…)」

 

 

 

その言葉が聞こえたのか、エレンは決意を固くし、全力で答える。

 

 

「(俺が……この世に生まれたからだ!!)」

 

 

 

瞬間、エレンの頭部が修復されていく。

エレンは今、自分の役割を果たそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

ヴィーネはかすかに遠くで何かが叫ぶ声を聞き取った。サシャも聞き取ったのか、ヴィーネと顔を見合わせる。彼女は狩猟民族の出身もあり、聴力は人一倍良かった。そのためこの場にいる誰よりも、叫ぶ声を聞き取れただろう。

 

 

 

 

「…サシャ、聞こえた?」

 

「ええ…きっとエレンですよ!」

 

 

 

 

間違いありませんと、喜びを露わにするサシャ。エレンが壁を塞ぐことさえすれば、人類は巨人に初めて勝利することができる。勝利は目前であった。ヴィーネとギーナは互いに頷き合う。

 

 

 

 

 

 

「あと少しだ!巨人をそっちへ行かせるな!」

 

 

 

 

ギーナが叫ぶ。班員はその指示に従い、巨人に食われながらも任務をこなしていった。そこで、同じ訓練兵で超大型巨人出現時の作戦で一緒であったクララが、立体機動の故障で屋根に登れずに居たのが目に入る。

 

 

 

「…!あいつ、故障してるのか!?」

 

「……巨人がすぐそばにいる。クララは気づいて逃げてるけど…すぐ追いつかれるよ」

 

「っ…ヴィーネ、先に行っててくれ!俺はあいつを助けに行く!後で行くからさ!」

 

 

 

 

そう言われて、ヴィーネは少し躊躇う。

 

 

 

 

「考えてる暇はないって、お前が言ったんだろ!班長命令だ!行け!」

 

「………了解。行こうサシャ」

 

「え!?いいんですか…!?」

 

「班長が言うんだ。従おう」

 

 

 

 

ギーナの指示に、黙って従うことにした。サシャを連れて、立体機動で移動する。後ろに目線をよこすと、ギーナが屋根から飛び降りるのが見えた。

 

 

 

 

「(……周りに巨人がいるのを見越してか。)」

 

 

 

 

ヴィーネは戦闘能力は高いが、協調性が足りないため班長に抜擢されることは少なかった。本人も理解はしており、直す気もあまり無い。大切な、守るべき相手が守れれば、それで良かったのである。

 

ギーナがクララを助けると聞いた時、戸惑ったのは何故一人で行くのかと考えたからであった。班全員の方が助けられる確率は高いのでは無いのかと。しかし、その時には巨人が2体ほど近くにいたのを確認すると、ギーナの指示の意味を理解する。

彼はヴィーネとサシャを逃がそうとしていた。

話してる暇も無いのは事実であったし、言っても聞かないだろうと思ったヴィーネは、指示に従った。

 

後で班長は柔軟性も大事だと伝えよう、とヴィーネは考える。

 

 

 

 

 

 

「……あ!黄色の信煙弾!……ってことは…」

 

「作戦成功……か」

 

 

 

 

作戦成功の信煙弾が出た。後は中にいる巨人を討伐すればいい。

きっと駐屯兵団が援護しに行っているだろう。

 

 

 

 

 

「やっぱりエレンはやる男だよ。駆逐するのも夢じゃないかもね」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

ヴィーネはふと空を見上げる。

 

「(……兄さん。今日、初めて人類が…巨人に勝てたよ)」

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