ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第十四話

その後、急遽駆けつけた調査兵団と駐屯兵団工兵部の活躍により、巨人は掃討され、ウォール・ローゼは再び巨人の侵入を阻むことに成功した。

 

トロスト区に閉じ込めた巨人を掃討するのには丸一日が費やされ、その間壁上固定砲は耐えず火を吹き続け、壁に群がった巨人の殆どが榴弾によって死滅。

僅かに残った巨人も、主に調査兵団によって掃討された。

 

その際、4m級と7m級の巨人の捕獲に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

作戦終了後、兵士達は犠牲となった兵の収容作業を行っていた。

そしてヴィーネも、目の前にある死体と、それに縋りつくように泣いている彼女を、光のない目で見ていた。

 

 

 

「ギーナ……ギーナぁっ……」

 

 

 

彼女…クララはギーナの名前を呼ぶ。

あの時クララを助けた後、ギーナは巨人の餌食となってしまった。その後クララはギーナの立体機動を借りて、難を逃れたのであった。

 

 

 

 

「私のせいよ………私なんか…死ねばよかったのにっ……」

 

「…クララ。自分を責めても仕方ない。それで生き返る訳じゃないだろ」

 

「っでも…!」

 

「訓練兵、彼の名前が分かるのか。答えてくれ」

 

 

 

 

自分の所為だと、己を責めるクララをヴィーネは落ち着かせようとしていた。

すると、後ろから医療班の兵士が尋ねる。

 

 

 

「……。……はい。第104期訓練兵団、21班班長、ギーナ・ヘルベルクです」

 

 

 

ヴィーネはゆっくり振り返り、静かに返答する。

そして、医療班の兵士は「そうか」と、名簿にギーナの名前を書き、作業に戻っていった。

今だにクララは彼の名前を呼んでいた。

 

 

 

 

「……クララ。大岩で穴を塞いでから、2日経ってるんだ。それなのにまだ遺体が回収出来てない。…分かるだろ」

 

「…っ!」

 

 

 

遺体が回収しきれないと、感染症が出回る可能性がある。

第二次災害を防ぐためにも、なるべく早く回収を済ませなければならない。クララもその事は分かっていた。

 

 

 

 

「…悲しいのは君だけじゃない。多くの兵士が仲間を失ったんだ。だけど、悲しんでる暇なんてない」

 

「……ええ、そうね…。ごめんなさい、回収しましょう」

 

「………ああ」

 

 

 

 

 

 

死者、行方不明者207名、負傷者897名。

人類が初めて巨人に勝利するという歴史的快挙であったが、それに歓喜するには失った人々の数があまりにも多すぎた。

 

 

ヴィーネも重い足取りで作業を続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日を費やし、やっと回収が終わり、訓練兵は食堂で休んでいた。ガヤガヤと騒いでいたあの日とは違い、とても静かであった。

 

地獄を見た。この世界は元々分かりやすく残酷な世界であったが、みるに耐えなかった。目の前で仲間が手足を引きちぎられ、真っ二つに食べられていく。脳裏にその光景が何度も蘇った。

 

 

「(……それでも。こんな世界だからこそ、僕は強くなくちゃいけない)」

 

 

 

 

どんな事をしても、大切な彼等だけは守りたい。その気持ちだけは揺るがなかった。

きっと、他の兵士が食われそうになっていても、彼等を優先して助けるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルトは居るか!?」

 

 

ガチャ、と食堂の扉が開き、上官が名前を呼ぶ。

ミカサとアルミンが立ち上がり、上官について行った。ヴィーネの目の前にいたサシャが、ヴィーネに尋ねる。

 

 

 

 

 

「…あれ、多分エレンの件かな。今頃審議場かもね」

 

「やはりそれは免れないか…」

 

 

 

 

そうだよな、とライナーが呟く。エレンは今、動向を憲兵団、調査兵団のどちらに委ねられるかを決める審議を受けていた。巨人化出来る人間は前代未聞な為、審議は難航するだろう。

 

 

 

「憲兵団に引き渡されれば、きっとエレンは処分される。…だから調査兵団の方が人類の為になるんだけど…」

 

「…そうだな」

 

 

 

 

 

巨人は人類にとって天敵である。一般の民衆にも、やはり存在は隠しきれなかった。巨人となったエレンの、民衆からの反応は様々だった。壁の内側の者ほど破滅に導く悪魔だと蔑み、外側の者ほど希望に導く救世主と呼んだ。それ程までに、エレンの存在が与える影響は大きい。

 

 

 

 

「(…審議にはエルヴィン団長は当然、リヴァイさんも出るはずだ。…多分大丈夫)」

 

 

 

 

リヴァイさんは少し暴力的だから、エレンの身が心配だ。と考えながら、静かに水を飲む。

 

 

 

 

「……やっぱりヴィーネは、調査兵団に行くの?」

 

 

 

心配そうに見つめ訪ねてくるベルトルト。様子を見るに、ライナーも心配なようだ。ヴィーネは少し考え返答した。

 

 

 

 

 

「…入団した時から決めてたことだ。……君らは?この惨状じゃ、憲兵団に行きたくなるよね」

 

 

 

 

トロスト区の扉が壊される前までは、エレンの演説もあって調査兵団希望の者も多かった。けれど巨人の恐怖を目の当たりにして、調査兵団に希望できる者は少ないだろうと、ヴィーネは思っていた。

 

 

 

 

 

沈黙が流れた。

 

 

 

 

 

 

「……俺は、やっぱり調査兵団に行く」

 

 

 

最初に喋り出したのはライナーだった。

 

 

 

「何もしないで、憲兵でのうのうと生きるのは嫌だからな」

 

 

 

何か他の目的を見つけたように、ライナーは告げた。そしてベルトルトもそれに続き、僕もそうすると言った。

ヴィーネはライナー達を見た。

 

 

 

 

「……僕は心配だ。壁外調査で、君らが死んでしまうかもしれない」

 

 

 

壁外調査では班が異なるから、守りたくても守ることができない。と零すヴィーネに、ライナーがくしゃくしゃとヴィーネの頭を撫でる。

 

 

 

 

「心配するな。俺達はそんなにやわじゃない。」

 

「…そうだよ。僕等の事はよく知ってるだろ?」

 

「俺達を、信じてくれ」

 

 

 

 

 

“自分達を信じろ”。ヴィーネにとって、それは憧れの人物が口にしていた言葉。

何故かそれを聞くと、ひどく安心できた。

 

 

 

 

「……。……君達が言うなら。僕は何も言わないよ」

 

 

 

あの言葉が自分の兄の言葉と錯覚してしまうほどに、ヴィーネは彼等を慕っていた。

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