ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第十五話

審議の結果、エレンは調査兵団に引き渡されることが決まった。

そして、その日から数日後。

捕獲したはずの4m、7m級の巨人が何者かによって、殺された。

 

 

 

 

 

 

「次」

 

「ハッ、第104期訓練兵21班所属、ヴィーネ・チャーチです」

 

 

 

 

犯人は弱点がうなじだということを知っていたため、兵士が疑われた。そして今、訓練兵の立体機動の確認が行われている。

 

巨人を殺して罰せられるというものは変な話だが、大事な被験体を失ったのだ。これでは巨人に手を貸したも同然である。

 

犯人の復讐心は満たされたかもしれないが、人類にとっては大打撃だ。

 

 

 

 

 

「記録通りだ。よし、行っていいぞ」

 

「ハッ」

 

 

 

 

ヴィーネの疑いは晴れ、解放された。今日は所属兵科を決める日でもある。

ヴィーネはふと、火葬していた時のことを思い出した。

 

纏めて火葬された遺体は、もう誰が誰の骨なのか分からない位に燃えていた。こんな地獄だと知っていれば誰も訓練兵に志願しなかっただろう。兵士になら無ければ、次は誰の番かなど考えなくても済んだ。

 

もうごめんだ、というように炎を眺めていた時だ。ジャンが所属兵科を訪ねてきた。そして、「俺は調査兵団に入る」と決意を固めていた。

その言葉に誰もが驚いた。ジャンは入団式の時から、憲兵団に入ると豪語していたのだ。その時のジャンは、拳を握りしめ、今にも泣きそうだった。

 

 

 

 

 

「(…やっぱりマルコの死が関わっているのか)」

 

 

 

マルコはトロスト区奪還作戦の時に戦死してしまっていた。彼の最期を見たものは誰も居ない。彼は人知れず、1人で死んだのだ。

 

彼は本を貸してくれたことがあったな。何度か話しただけだったが、もっと話しておけばよかった。ヴィーネは思う。けれど、それはもう叶わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練兵達は勧誘式が行われる壇上前に集まっていた。

 

 

 

「…ジャン、本気なの?調査兵団に入るって」

 

「ああ」

 

 

 

アルミンが、ジャンが調査兵団に入ると聞き、本人に問いかけた。

 

 

 

 

「そんな…巨人が怖くないんですか…?」

 

「はぁ?怖いに決まってるだろ」

 

 

 

即答だった。

 

ジャンはそのまま言葉を続ける。巨人が怖くないから調査兵団に決めた訳じゃない。有能な奴は調査兵団に入るべきだと言うつもりもない。誰かに説得されて入団を決めているわけでもないし、こればっかりは自分で決めずに務まる仕事じゃない。

 

 

 

「ヴィーネ、お前も調査兵団って言ってたな」

 

「……ああ」

 

 

 

ジャンに問われて、ヴィーネは短く答える。

直後、上官から集合の指示がはいり、全員それに従った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所属兵団を決める日に話すのは、率直に言って勧誘に他ならない」

 

 

日も落ち、松明の炎とだけが照らすこの壇上では調査兵団勧誘式が行われていた。団長であるエルヴィンが壇上に立ち、訓練兵を勧誘する。

エルヴィンが言うには、今回の巨人の襲撃により、巨人の恐怖も、己の限界も知ることになった。しかしこの戦いで人類は、これまでにないほど前進した。それはエレン・イェーガーの存在である。

 

 

 

「彼が間違いなく我々の味方であることは、彼の命懸けの働きが証明してくれた」

 

エルヴィンは続ける。

 

 

 

 

「さらに我々は、エレンによって巨人の進行を阻止するのみならず、巨人の正体を辿り着く術を獲得した。彼の生家があるシガンシナ区の地下室には、彼も知らない巨人の謎があるとされている。」

 

 

 

 

その地下室に辿り着きさえすれば、人類はこの100年に渡る巨人の支配から脱却出来る手掛かりが掴めるだろう。

 

ここまで話すと、訓練兵がザワザワとし始めた。

「もうそこまで進んでいたのか…」など、所々から声が聞こえる。

しかし、幾ら兵士が欲しいからと言って、ここまで公開する必要があるのか、と考えるものもいた。

 

 

 

 

「(…エルヴィン団長は、何を考えているんだ…?)」

 

 

エルヴィンの意図が分からず、アルミンは困惑する。エルヴィンはそんな兵士達を見つめながら、また話を続けた。

 

 

「我々はシガンシナ区の地下室を目指す。ただそのためには、ウォール・マリアの奪還が必須となる」

 

 

つまり、目標は今まで通りだが、トロスト区の扉が使えなくなってしまった以上、東のカラネス区から遠回りするしか無くなったという。

 

 

 

 

 

「4年かけて作った大舞台の行路も、全てが無駄になった。その4年間で6割以上が死んだ。4年で6割だ。…正気の沙汰ではない数字だ」

 

エルヴィンは淡々と、今までの惨状を述べていく。

 

 

 

 

 

「今期の新兵にも、1ヶ月後の壁外調査に参加してもらうが、死亡する確率は3割と言ったところか。4年後には殆どが死ぬだろう」

 

 

 

しかし、それを越えた者が、生存率の高い優秀な兵士となる。この惨状を知った上で、自分の命を賭してもやるという者は、この場に残って欲しい。人類のために、心臓を捧げることが出来るのかを。

 

エルヴィンは声を張り上げて言った。

 

 

 

「……以上だ、他の兵団志願者は移動してくれ」

 

 

壇上の隅で聞いていた調査兵が、必要以上に脅しすぎではと話かけるが、エルヴィンは構わず壇上に立っている。

 

 

 

話が終わると、訓練兵達のほとんどが他の兵団を志願しようと、逃げるように移動する。

 

 

「(頼むぞっ……これ以上…自分を嫌いにさせないでくれ…っ)」

 

 

 

 

此処から動かなければ、また巨人に食われることになる。

訓練兵たちは知ってしまった、巨人がどうやって人を食べるのかを。

 

 

 

「(……それでも、)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大半の訓練兵が去り、静かになった。

松明が燃える音が聞こえる。

 

 

 

 

「___君達は、死ねと言われたら死ねるのか」

 

「死にたくありません!!」

 

 

 

エルヴィンの静かな問いに、誰かがそう答えた。

 

 

 

「そうか…皆いい表情だ。…では今!ここにいる者を、新たな調査兵団として迎え入れる!心臓を捧げよ!」

 

「ハッ!!」

 

 

 

 

 

怯えながらも、その場に立ち、心臓を捧げる訓練兵。

こうして、第104期訓練兵の総勢22名が、調査兵団に所属を決めた。

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