ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第十六話

翌日からの訓練は、実践よりも、エルヴィンが考案した『長距離索敵陣形』を頭に叩き込むことが主となった。その陣形には、エレン・イェーガーの配置は記されていなかった。

 

 

「お前達新兵はここだ」

 

 

そう言って、新兵の纏め役を任されているシスは、陣形の荷馬車護衛班と索敵支援班の場所を指していく。新兵達は、ここで予備の馬と並走し、伝達を任せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れているこの日、新兵達は新しい制服を貰うため、外で待機していた。

 

 

 

 

「ミカサ!アルミン!」

 

 

 

先に調査兵団へと入っていったエレンが、幼馴染の名前を呼ぶ。その声にアルミンは顔を明るくし、ミカサは焦った様子でエレンに迫った。

 

 

 

「暫く振りにあった気がするぞ!」

 

「エレン、何か酷いことはされてない?体を隅々まで調べ尽くされたとか、精神的苦痛を受けたとか…」

 

「ねぇよ、そんなこと…」

 

「くっ……あのチビは調子に乗りすぎた、いつか私が然るべき報いを…」

 

「まさか…リヴァイ兵長の事を言ってるのか…?」

 

 

 

 

怖い表情で、あの人類最強をチビ呼ばわりするミカサ。エレンがそれに冷や汗をかいていると、後ろから声をかけられる。

 

 

 

 

 

「久しぶり、エレン」

 

「!…ヴィーネ!なんだよ、みんな揃ってるのか!」

 

 

 

そこには上位陣のほぼ全員が揃っていた。

また再開できたことに顔を明るくするも、すぐに顔を暗くさせた。

 

 

 

「ここにいるって事は、まさか調査兵団になったのか」

 

「他にここにいる理由があるのか?」

 

 

 

コニーが笑う。

上位陣のほぼ全員とは言っても、エレンの視界にジャン、アニ、マルコの3人は入っておらず、「憲兵団に行ったのはその3人か」と呟く。

すると、何か他の用事があったのか後からジャンがやってきた。それにエレンが驚くが、次にジャンが口にした言葉は、エレンにとって信じがたいものだった。

 

 

 

「マルコは死んだ」

 

 

 

他の104期生達はそれを知っていたが、先に調査兵団に行って、人類の希望となってしまったエレンは、そのような情報は入ってきていなかったのだ。雰囲気の暗くなった新兵達をよそに、上官が新しい制服を持ってくる。

 

 

 

「お前ら!新しい制服が届いたぞ!」

 

 

 

渡された制服を着る新兵達。それぞれの背中には、統一して調査兵団の紋章、自由の翼が描かれている。何故だかエレンには、ここにいるはずのないマルコの調査兵の姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お前ら、本当に…」

 

「そう、私達も、今度の作戦に参加する」

 

 

 

 

制服を渡された後、倉庫裏で、新兵達は集まって話をしていた。

 

新兵も今度の作戦に参加する事を聞くと、エレンは不安の色を見せた。トロスト区襲撃や、奪還作戦の時のように、あの惨劇をまた繰り返すのではないか、と考えているのは誰から見ても分かった。皆、同じ気持ちであるからだ。

 

 

 

「なぁエレン、お前巨人になった時、ミカサを殺そうとしたらしいな。それは一体どういうことだ?」

 

 

 

ジャンがエレンに問う。トロスト区奪還作戦の時、巨人化したエレンは自分を制御できず、巨人に意思が反映されずにミカサを攻撃したのだった。審議場でも問い詰められたことであり、エレン本人は、この事を知らなかった。

 

 

 

「違う、エレンはハエを叩こうとして…」

 

「お前には聞いてねぇよ。…なぁミカサ、頬の傷はかなり深いらしいな。それはいつ負った傷だ?」

 

 

 

 

ミカサがどう考えても無理がある誤魔化し方をするが、ジャンに遮られる。そして、頬の傷の事を聞かれ分が悪そうに傷を髪の毛で隠そうとする。

 

 

 

 

「…本当らしい。巨人になった俺は、ミカサを殺そうとした」

 

 

 

今まで黙っていたエレンは口を開らき、肯定する。

 

 

 

 

「らしいってのは、記憶に無いって事だな?つまりお前は巨人の力の存在を今まで知らなかったし、それを掌握する術も持ち合わせていないと」

 

「…ああ、そうだ」

 

 

 

ジャンの確認に、エレンはまたも肯定する。ジャンは溜息をつき、後ろで話を聞いていた新兵へ振り返った。

 

 

「お前ら聞いたかよ。これが現状らしいぞ。俺達と人類の命がこいつにかかってる。俺達はマルコのように、エレンが知らない内に死ぬんだろうな」

 

「ジャン!今ここでエレンを追い詰めることに何の意味があるの…!?」

 

 

 

 

ジャンの言葉に、ミカサが問いかける。

 

 

 

 

「…あのなぁミカサ。誰もがお前みたいに、エレンの為に無償で死ねるわけじゃないんだ」

 

 

 

ミカサやアルミンはエレンの幼馴染であるため、エレンが巨人だと知っても、彼を恐れることはなかった。特にミカサは、幼少期に両親を亡くし、イェーガー家に引き取られているのもあり、エレンに依存していた。

そんな2人はエレンを何としてでも守ろうとするだろう。しかし、他の者たちは違う。いきなりエレンの為に命を賭けろと言われても、納得できないだろう。

 

 

 

 

「知っておくべきだ。俺達は何のために命を使うのかを。…じゃねぇと、いざという時に迷っちまうよ。俺達はエレンに見返りを求めてる。」

 

 

 

ジャンの言っていることは正しかった。自身が命を捨てる代わりに、人類の勝利という大きな見返りを求めていたのだ。今は、全てエレンに賭けるしか無い。

 

 

 

「きっちり値踏みさせてくれよ…自分の命に見合うのかをよ…」

 

 

 

そう言って、ジャンはエレンの肩を掴み、顔を険しくさせる。

 

 

「だからエレン!!お前…本当に頼むぞ……!!」

 

 

エレンはその気迫に押され、ああ、としか返せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エレン」

 

「…?ヴィーネ…なんだよ?」

 

 

 

 

ジャンの話も終わり、全員が新しい宿舎へ帰ろうとしていた。ジャンが全て代弁してくれたおかげもあり、この場にいた全員は腹を括ることが出来ただろう。そしてエレンも旧調査兵団本部へ帰ろうとしていたとき、ヴィーネが声をかけた。

 

 

 

「リヴァイ兵長の所へ案内してくれないかな」

 

「……は?何でリヴァイ兵長なんだよ」

 

「会う約束をしてるんだ」

 

 

 

 

調査兵団に入団して数日が経つも、未だにヴィーネは、リヴァイと話が出来ないでいた。そこでたまたますれ違った時に耳打ちされ、今日会うことになっていた。

 

 

 

「約束なら別にいいけどさ…じゃあ行こうぜ」

 

 

 

 

リヴァイ兵士長は地下街出身だ、という噂をここで聞いたことがある。事実であるのだが、エレンも聞いたこともあるはずだ。

この時ヴィーネは思った。

 

 

 

 

「(……エレン、僕が地下街出身だって忘れてないか?)」

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