ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第十七話

「なぁ」

 

 

旧本部に向かう際、並んで歩いているとエレンが口を開く。

 

 

 

 

「俺は人類の希望になれると思うか?」

 

「……と、いうと?」

 

「ジャンが言ってただろ、しっかり値踏みさせてくれって。……俺は、お前らの命を預かる資格はあるのか?」

 

 

 

 

エレンは決して絶対的な自信がある訳では無かった。自分が知らない内にミカサを攻撃してしまった事実もあり、エレンは揺らいでいた。本当に自分はこの力を制御できるようになるのか、また暴走してしまうのではないのかと。

そんなエレンを見つめ、ヴィーネは少ししてから喋り出した。

 

 

 

「…残念だけど、僕は答えられない。でも、僕もジャン達も皆、エレンを信用してる」

 

 

信じているからこそ、ジャンはエレンに自分の命を託そうとした。それはヴィーネ達も同じである。不安もあるが、自分の意思で託すと決めたのだ。

 

 

 

「偉そうな事は言えないけど…エレンも、自分が正しいと思ったことをすればいいと思うな、僕は」

 

「……ああ、そうだな。悪りぃな、変なこと言って」

 

「構わない。…でも君らしくないな、いつもはもっと一直線だろ」

 

「本当…俺らしくねぇよ」

 

 

 

 

エレンも納得したのか、この話を終えた。

丁度扉の前まで辿り着つき、エレンが扉を開ける。そこにはリヴァイ班の四人が座っていた。開けた瞬間、一斉にこちらを見る。

 

 

 

「只今戻りました!」

 

「おかえりエレン。……あれ、その子は?」

 

 

 

ペトラがエレンに声をかける。そこでヴィーネがいることに気づき、誰かを問いかけた。ヴィーネは敬礼し、それに答える。

 

 

 

「新兵のヴィーネ・チャーチです。リヴァイ兵士長にここへ来るよう命令を受け、ここへ来ました」

 

「リヴァイ兵長に?兵長なら今部屋にいるわ。案内するね」

 

 

 

 

そう言ってペトラはリヴァイの部屋へと案内した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが兵長の部屋。それじゃあ私はさっきの場所へ戻るね」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

 

案内してもらい、ヴィーネは敬礼しお礼を言う。ペトラが背を向けて歩きだした後、一回深呼吸をした。

 

 

 

「……、…失礼します。ヴィーネ・チャーチです」

 

 

 

軽くノックをし、声を掛けると、ドア越しから「入れ」という声が聞こえる。

ドアを開けると、リヴァイが椅子に座り紅茶を飲んでいた。

 

 

 

 

「リヴァイ兵長」

 

「前の呼び方と話し方でいい」

 

「…久しぶり。リヴァイさん」

 

「…ああ」

 

 

 

 

リヴァイとの久しぶりの再会に、ヴィーネは表情は変わらないが、密かに感動していた。

リヴァイの方が上だった身長が、3年を経て、リヴァイより17cmも高くなっていた。

 

 

 

 

「……僕さ、訓練兵団に入って、大切な人が増えたんだ」

 

 

 

リヴァイに出された紅茶を飲みながら、ヴィーネは訓練兵団での出来事を話していく。

ライナー、ベルトルトという親友と呼べる人が出来たこと。訓練兵時代の出来事、他にも沢山、ヴィーネは仲間に恵まれた。

 

 

 

「壁の上に登って見渡した時、初めて地上はこんなに広かったのを知ったよ」

 

 

 

地下街では絶対来ることのない自然の風や、絶対見ることない森が見えた。地上の人間にとっては見慣れたものかもしれないが、ヴィーネはそれを見て微かに高揚した。

 

 

 

 

「リヴァイさん。…あの時、迎えに来てくれてありがとう」

 

「…ああ」

 

 

 

ヴィーネは微笑んで言う。3年前と同じ言葉を聞き、リヴァイは少しだけ懐かしさを感じた。そこで、リヴァイが何か思い出したように口を開く。

 

 

 

 

「…ヴィーネ、お前成績が11位だったらしいな」

 

「そうだけど」

 

「お前は訓練の時に手を抜いていた、とエレンが言っていたが。本当か?」

 

「え。エレン、リヴァイさんに僕の話したの?」

 

「エルドが聞いていたからな。お前の同期の話は沢山聞かされたぞ」

 

 

 

 

 

話をしておいてエレンは覚えてないのか、とヴィーネは思う。そして、手を抜いていた事はもう隠す必要も無いため、正直に話そうと、ヴィーネは質問に肯定した。

 

 

 

「…手を抜いていたのは本当だよ。故意に11位まで落としてた。10位以内に入れたいっていう交渉が来たからね。代わりにある事を手伝ってもらったよ」

 

「ある事?」

 

「うん。地下街でさ、地上に行くための11号階段を仕切ってたロヴォフ議員が捕まったのは知ってるだろ?」

 

 

 

リヴァイが知らないわけがなかった。それはリヴァイ達3人に地上の居住権が手に入る仕事を持ちかけてきた張本人だった。リヴァイは「ああ」とだけ言い、話の続きを促す。

 

 

 

「その後、ロヴォフ議員に変わって、ニトラ議員が階段を仕切るようになったんだ」

 

「…あの豚野郎か。最近憲兵に捕まったらしいな」

 

「僕が証拠を提出したからね。あの議員、かなりの少年好きらしくて。僕が3年前、人攫いにあったのも、ニトラ議員が関わってたんだ」

 

 

 

 

アーベル・ニトラ。少年、少女好きで金に余裕のある彼は、人を雇って子供を攫っては、好き勝手やっていた。いわゆる異常性癖である。ヴィーネも目をつけられた1人だった。

 

 

 

「ロヴォフ議員がいた時は、シガンシナ区辺りで人攫いやってたんだって」

 

「そいつを捕まえるのが、その『ある事』か?」

 

「うん。家に人攫いが来た時、ニトラ議員の事を話しててね。『こいつがニトラさんの言ってた…』とかなんとか」

 

「…」

 

「本当は調査兵団に入ってから証拠を集めるつもりだったんだ。けど、丁度よく交渉してきたから。都合が良かったよ」

 

 

 

 

訓練兵だとあまり自由には動けないため、調査兵団に入団してからにしようと決めていた。交渉を持ちかけられたのは本当に偶然であった。

ヴィーネはリヴァイを見つめる。

 

 

 

「…怒ってる?手を抜いたこと」

 

「…いいや、怒ってねぇ。だが証拠集める為に、色々やり過ぎだ」

 

「まぁ結構危ない所には行ったかな………ああ睨まないでよ、ごめんなさいって」

 

 

 

 

リヴァイさんの睨みは人を気絶させるくらいは出来そうだ、などと考えながら、ヴィーネは席を立った。

 

 

 

「そろそろ戻らなきゃ。久しぶりに話せて良かった」

 

「ああ、部屋の掃除はしろよ」

 

「毎日やってるよ。じゃあ、また」

 

 

 

 

ガチャ、とドアを開け、ヴィーネは出ていった。

その後リヴァイは、ヴィーネの出身を思い出したエレンと、関係が気になるリヴァイ班4人に質問責めにあったのは、また別の話である。

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