ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第十八話

数日後。

 

 

_____…ああ疲れた。

 

 

ヴィーネとリヴァイが地下街で一緒だというのは、一気に広まっていった。その所為もあってか、随分と質問責めに遭う。先日も、ハンジという分隊長の女性が話しかけて来ていた。

 

 

_____地下街出身っていうのが気になるのか?……いや、やっぱりリヴァイさんの方か。

 

 

 

ヴィーネが頼まれた仕事をこなそうと歩いていると、考え事をしていたのもあって、誰かにぶつかってしまった。

 

 

 

「!…ごめんなさ…」

 

 

 

謝罪しようとぶつかった相手を見上げるが、謝罪は途中で途切れた。目の前にはベルトルトよりも背の高い男性兵士が立っていて、ヴィーネはその男性兵士に見覚えがあった。

 

 

 

「…あの時地下街にいた…」

 

「!…記憶力がいいな」

 

 

 

ヴィーネの言葉に、男性兵士は驚く素振りをみせる。ヴィーネはこの男にはいい感情を抱いていなかった為、反射的に警戒したが、男性兵士は構わずヴィーネに近づき、おもむろに匂いを嗅ぎ始めた。

 

 

「っえ、」

 

 

 

突然の事に驚き、体を硬直させるヴィーネをよそに、男性兵士は臭いを嗅ぎ終えるや否や、フッと鼻で笑った。

 

 

 

 

「…いきなりで悪かったな。…お前はファーランの弟か?」

 

「…。……ヴィーネ・チャーチです」

 

「そうか。俺はミケ・ザカリアスだ。分隊長をしている」

 

 

 

ミケはスン、と鼻を鳴らし言った。調査兵団には、初対面の人の匂いを嗅ぐ癖がある変人がいるという事を、ヴィーネは先日、ハンジから聞かされた。ああこの人かと思いながら、ミケを見上げる。

 

 

 

「調査兵団に入ったんだな」

 

「…はい」

 

 

 

何もしないと分かっていても、やはりヴィーネは警戒を拭えなかった。

 

 

 

「……警戒しすぎだ。別に取って食おうとしてるわけじゃない」

 

 

 

 

表情には出ていなかった筈だが、ミケはヴィーネの心情を読み取ったかのように言った。そのことにヴィーネは少しだけ目を見開く。

 

表情が変わらなくても分かる、とミケはまたフッと笑った。

 

 

 

「…俺を恨んでいるのか」

 

 

 

真っ直ぐとヴィーネの目を見て、ミケは言った。

 

 

 

「……いや、別に恨んでいません。ただ、反射的に」

 

「…お前の唯一の家族を調査兵団へ引き込んだから、恨んでいるかと思っていたが」

 

 

 

そこでヴィーネは目を逸らし思考を巡らせ、少し時間をおいた後、口を開いた。

 

 

 

「兄さん達が調査兵団に行ったのは無理やりじゃない。自分の意思で行きました。だから恨んではいません」

 

 

 

調査兵団に恨みはない。そこで、ヴィーネは再びミケに目を合わせる。

 

 

 

「…それに、このことで誰かを恨んでも、どうにかなる訳じゃないので」

 

「!」

 

 

 

 

 

まぁ、最初は恨みましたけど。と付け足す。

ヴィーネは、リヴァイ達が出て行った後、約2年間帰りを待ち続けた。3人で、笑って帰ってくるのを信じて。しかしそれが叶うことは二度となかった。

 

 

ファーラン、イザベルが死んだと聞かされた時は、頭が真っ白になり、絶望した。

それと同時にヴィーネは実感されられた。やはりこの世界は残酷だと。

 

 

 

 

「…俺が思っていたよりも、お前は随分と冷静だな」

 

「どうも。…すみません、そろそろ失礼します。」

 

「ああ、引き止めて悪かったな」

 

「いえ、こちらこそ」

 

 

 

そう言って資料を片付け、ヴィーネは宿舎へと歩いていった。

 

 

 

「……あいつは抱え込みすぎているな」

 

 

 

歩いていくヴィーネの後ろ姿を見つめ、ミケはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壁外調査の前日。

ヴィーネは深夜に目が覚め、うっすらと目を開けたが、すぐに目を閉じて、再び眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____壁外調査当日。

 

 

 

「至近の巨人は粗方遠ざけた!開門30秒前!」

 

 

 

壁外調査は、もうすぐ始まろうとしていた。

ヴィーネの目に、キラキラとした目でこちらを見ている子供が映る。昔は自分も、あんなに純粋だったのだろうか、と考える。

 

 

 

「いよいよだ!これより人類は、また一歩前進する!お前達の成果を見せてくれ!」

 

 

 

その声に、その場の兵士が雄叫びを上げる。

そして、開門始めという合図が聞こえ、とうとう門が上へ上がり始める。

馬の手綱を握った。

 

 

 

「これより第57回壁外調査を開始する!前進せよ!!」

 

 

 

 

 

陣頭指揮を執るエルヴィンの声に、調査兵団の兵士たちは、壁の外へと馬を走らせた。

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