ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。 作:霜月@
結構な時間が経ち、イザベル姉さんは、兄さん達に立体機動を教えてもらってかなり上達した。仕事にも加わり、前よりやりやすくなった。憲兵団も追いかけてくるけど、兄さん達が負けるはずがない。
なのに________
「…な、んで……」
影からこっそり覗くと、兄さん達が捕らえられていた。
憲兵団じゃない。あれは自由の翼。
「調査兵団…?どうしてここに……」
壁外で巨人と戦っているのだから、立体機動は憲兵団より慣れているだろう。捕まえるためにそこまでするのか?
すると、向こうがこっちに気がついたらしい。僕の方を見ている。
「っ……!」
「あちらの少年はお前たちの仲間か?」
「…!?来るな!家に戻ってろ!」
兄さんが僕に叫んだ。
それと同時に、リーダー格が隣に目配せする。そして一人が僕に近づいてきた。
「ひっ……」
「おい!汚ねえぞ!あいつは関係ないだろ!?」
「ヴィーネ!早く行け!」
やっと動いた僕の足は、思うようには動かなかったが、とりあえず家まで走ることはできた。僕を本気で捕まえる気は無かったようだ。
「…どうしよう…これから、どうなるのかな…」
嫌な想像をしながら、兄さん達の帰りを待った。
…捕まったら、もう…地上には行けない。
ガチャ、とドアが開く音がする。
「…!兄さんっ…!」
「…良かった…無事だったか…」
兄さんは安心したように言う。
けれど、また顔を暗くした。他の二人も同じような顔だった。
そして、重々しい口調で僕に言った。
「ヴィーネ、俺達は調査兵団に入ることになった。」
「………え、」
調査兵団に行く?一瞬意味が理解できなかった。
「…お、脅されてるの?」
「違う。俺達はある仕事をこなしに行くんだ。仕事が成功すれば、沢山の金と、地上の居住権が手に入る。」
地上の居住権。この上の地上で住むために、必要な権利。
階段の通行料が払えても、居住権がなきゃすぐに地下に戻される。
「だったら僕もっ……」
「お前は危険だ。…仕事が終わったら、俺達は必ずお前を迎えに行く。そしたら4人で地上で住もう。…俺達を、信じてくれ。」
「…!」
兄さんが約束をする時にいつも使う言葉。僕はそのまっすぐな目が好きだ。帰ってくる日がいつなのか分からないけど、きっと兄さん達なら、迎えに来てくれるのだろう。
「…わ、分かった……約束だからね……絶対!」
僕がそう言った時、兄さんだけでなく、リヴァイさんとイザベル姉さんも笑って、力強く頷いていた。
…早く、地上に出れるといいな。
リヴァイさんが家に帰ってきたのは、あれから2年後のことだった。
*
846年
一人になってから2年が経ち、僕は12歳になった。
そういえば、1年前に超大型巨人と鎧の巨人が出現して壁が壊されたらしい。
…なんでも、超大型巨人は壁を跨ぐほど大きかったとか。
「…兄さん達、遅いな」
約束、忘れてしまったのだろうか。そんな事を思いながら家を掃除する。
掃除の習慣がついたのはリヴァイさんの影響だ。潔癖性だからなぁ、あの人は。
この二年間、僕は色々な事をした。
いつもの仕事という名の盗みも働いたし、体だって使った。使えるものは全部使う。生きるために。
コンコン。
ノック音が聞こえる。きっと兄さん達だ!そう思ってドアを開けた。
けれど、それは兄さん達ではなく、見知らぬ男たちだった。