ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第二十一話

「いいか新兵ども!森に入ろうとする巨人がいれば全力で阻止するのだ!」

 

 

 

それぞれ分かれ、巨大樹に登り巨人をこちらに引き寄せる。奇行種などが森に入ろうとした場合は阻止する。とにかく森の中に巨人を入れないことが指示であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ヴィーネ、俺達は何をさせられているんだ」

 

 

 

 

ライナーは、近くの木に登っているヴィーネを見上げ、問いかけた。しかしヴィーネは首を横に振り答える。

 

 

 

 

「…さぁね。ただ、エルヴィン団長が森を避けないで、中列だけ入らせたって事は、何か絶対意味があるはず」

 

 

「だが当初の目的は兵站拠点作りの筈だ。それがどうして森になるんだ?」

 

 

「……これは僕の予想だけど……団長、女型が来ることを予測してたのかも」

 

 

「!」

 

 

 

ライナーはその言葉に大きく反応する。そしてその瞬間、何かを撃っているような、大きな音が聞こえてきた。音は長い時間続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…武器を持ってきているように見えたか」

 

 

「いや…見てないな。…でも察しはついた。今やっているのは女型の捕獲だ。正確に言えば、女型の中にいる人間の捕獲」

 

 

「……、…だとしても、何故分かったんだ?あいつが来たのは想定外なはずだ」

 

 

「…5年前、シガンシナ区没落の時、超大型巨人と鎧の巨人が来たよね」

 

 

 

 

ヴィーネは話を続ける。

エルヴィンは、5年前の超大型及び鎧の巨人の出現時に、スパイが紛れ込んできたのではと考えていた。

 

 

 

「作戦に想定外は付き物だ。だから何十通りの作戦を立てて、その中の一つが当たったんだよ」

 

「…なるほどな。そして作戦に参加できるのは、その疑いのない5年以上前からいる兵士だけってことか」

 

「そういうこと、多分だけど」

 

 

 

 

 

それから、指示通り森に入ろうとする巨人を阻止していく。大半は通常種でこちらに反応をするため、巨人を見張っているのが主だったのだ。

 

 

 

 

______再び、いや、今度は何かが叫ぶような、大きな声が森全体に広がる。地響きが鳴る程のその大きな声は、数秒続いた。なんだ、とヴィーネとライナーが振り向くと同時に、木の下に集まっていた巨人達が、森の中へと一斉に走り出した。

 

 

 

「…!?なんでいきなり…!?」

 

「考えても無駄だ!とにかく追いかけるぞ!」

 

 

 

 

立体機動に移り、走り出した巨人の討伐を開始する。

こちらには見向きもしないが、その巨人達の多さに、ヴィーネは顔を歪める。

 

 

 

 

「…ああ、もう分からない事だらけだ…」

 

 

 

 

呟いた言葉は、ヴィーネ以外聞くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、撤退命令が出され、調査兵団は巨大樹の森から離れて平地に移動していた。

 

 

 

 

「……毎回これをやるのはキツイな」

 

「…そうだね、でも仕方ないよ」

 

 

 

壁外調査で戦死した兵士を荷馬車へと運ぶ。この作業は、一番堪えるものであった。暗い面持ちで、作業を続ける。

 

 

 

「(…女型の姿もないし、先輩達の表情からして、捕獲は失敗したのか…)」

 

 

 

撤退命令が出た時は、もしやとは思ったが、やはり上手くはいかなかったらしい。このまま何も得ずにカラネス区へ帰還しても、批判の声は避けられないだろう。かといって、調査を続けたとしても死者が増えるだけなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…僕はこの先も生きていけるかな」

 

「そんなこと考えるな。戦えなくなるぞ」

 

「…ごめん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラネス区まで辿り着き、開閉扉が開かれる。

 

その先には戦果を持って帰ってこれたかと期待して待ち構える、民衆達。だが、結局何も持って帰ることができなかった調査兵団は、ただ下を向き、歩くしかなかった。

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 

ヴィーネの目に、期待が込められた目をしてこちらを見ている子供が移る。まだ何も知らないその子供は、この有様を見ても今だ憧れの目で調査兵団を見ているのだ。ヴィーネは顔を歪め、その子供から目を離し前を見た。戦果無しか、とがっかりする民衆の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり戦果は無しか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「顔からして、失敗したんだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今朝から大声だして出て行ったと思いきや、もう帰ってきやがった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちから税金を巻き上げることには成功したらしいぜ」

 

 

 

 

 

 

何も言い返せない。

 

 

 

 

 

「エルヴィン団長!答えてください!今回の遠征でこの犠牲に見合う収穫があったのですか!?」

 

 

 

 

 

今回の遠征でかかった費用と損害による痛手は調査兵団の支持母体を失墜させるに十分であった。

 

エルヴィンを含む責任者が王都に召集されると同時に、エレンの憲兵団への引渡しが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか…予想外のことばかりだね」

 

 

 

 

調査兵団本部につき、ベルトルトはポツリと呟いた。

 

 

 

 

「……エレンは憲兵団へ引き渡しされるって。…エレンを殺して、困るのは人類なのに」

 

「やっぱり殺されるのかな…」

 

「すぐにでは無いだろうけど…色々解剖されてから殺されるだろうね」

 

 

 

 

ヴィーネの言葉にベルトルトは俯き、冷や汗が垂れる。それを見てヴィーネはもう一度口を開いた。

 

 

 

 

「…エルヴィン団長が、人類の希望を簡単に捨てるはずがない。きっと何か考えてるよ」

 

「そう、だよね」

 

 

 

 

ベルトルトがそう言ったところで、突然扉が開く。

 

 

 

「ヴィーネ・チャーチはいるか」

 

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