ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第二十二話

「エルヴィン団長がお呼びだ」。先輩に呼ばれ、指示された場所に歩いて行った。呼ばれた趣旨はなんだろうかと思い浮かべながら、その場所へ辿り着く。

 

 

 

「ヴィーネ・チャーチです。上官にここへ来るよう伝達を受け、参上致しました」

 

 

 

ノックをしてから声を掛ける。ドア越しに「ああ、入ってくれ」という声を聞き取り、ヴィーネはドアを開けた。いるのはエルヴィンだけかと思っていたが、部屋の中には先輩の兵士等や、アルミン、ミカサ、ジャンの3人もいた。

 

 

 

 

「集まったな。…女型の巨人の正体が判明したそうだ。アルミン、話してくれ」

 

「はい」

 

 

 

指名を受けたアルミンは、女型の正体の人物の名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。女型の正体を聞いて、エルヴィンは作戦を立てた。

そして、ヴィーネ達はエルヴィンと共に、リヴァイとエレンがいる部屋へ向かっていた。ドアの前に立ち、エルヴィンがドアを開ける。

 

 

 

「エルヴィン団長……それにお前らまで…」

 

 

 

エレンはヴィーネ達を見るなり驚いた様子であった。エルヴィンは単刀直入に言う。

 

 

 

「女型の巨人の中身と思わしき人物が判明した。今度こそ捕らえる」

 

 

 

女型捕獲についての作戦を、エルヴィンが説明する。

明後日、場所はストヘス区で決行される。エレンが憲兵団に引き渡されることは阻止できないため、決行はその日しかない。

作戦内容は、ストヘス区を通過する際、エレンが囮となって目標を地下通路までおびき出すというものだった。最下層まで連れ込めば、サイズと強度から考えて、たとえ巨人化しても動きを封じることが可能である。

 

 

 

「だが万が一、その前に相手が巨人化した場合。エレン、君に頼むことになる」

 

「は、はい……ところで、肝心の目標はストヘス区にいることは確実なんですか…?」

 

「ああ、目標を探し当てたのはアルミンだ」

 

 

 

いきなり幼馴染の名前が出され、エレンはアルミンの方を見る。

 

 

 

「曰く、女型は生け捕りにした2体の巨人を殺した犯人だと思われ、君達104期訓練兵の同期である可能性がある」

 

「!?ちょっと待ってくださいよ…104期って…!」

 

「…その女型の巨人と思わしき女性の名は_____」

 

 

 

 

ちょっと、とエレンが止めるのも構わず、エルヴィンはその名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____アニ・レオンハート」

 

 

 

 

その名前を聞いた瞬間、エレンは椅子から立ち上がった。

 

 

 

「っ…アニが女型の巨人…!?なんでそう思うんだよ…アルミン」

 

 

 

どうしてアニなのかが分からず、エレンはアルミンに理由を求める。アルミンはゆっくり理由を話し始めた。

 

 

 

「…女型はエレンの顔を知っていた。それに同期しか知らないエレンのあだ名『死に急ぎ野郎』に反応を見せた。何より大きいのは、ソニーとビーンを殺したと思われるのがアニだからだ」

 

「なんでそんな事が分かるんだよ…」

 

「あの2体の殺害には、高度な技術が必要だから、使い慣れた自分の立体機動を装置を使ったはずだ」

 

 

 

 

エレンはますます意味がわからない、というような顔をした。エレンの顔に、冷や汗が垂れる。

 

 

 

「だから装置の検査があったろ…アニは引っかかってない…!」

 

「あの時、アニが出したのはマルコのだ。だから検査を免れた」

 

 

 

 

マルコと聞いて、ジャンは少しだけ顔をしかめ、エレンは目を見開いた。

 

 

 

「はぁ!?何言ってんだ…どうしてマルコの…」

 

「分からない…」

 

「見間違いじゃないのか…!?」

 

「いや、あれは確かに見覚えのある__」

 

「おいガキ」

 

 

 

アルミンが最後まで言う前に、リヴァイが言葉を遮った。

 

 

 

「それはもう分かった。他に根拠はねぇのか」

 

「…ありません」

 

 

 

リヴァイが他に無いのかと尋ねるが、アルミンは俯き首を横に振った。そこでミカサが手を上げ、口を開いた。

 

 

 

「アニは女型と、顔が似てると私は思います」

 

「はぁ!?その程度の根拠で__」

 

「つまり、証拠はねぇがやるんだな?」

 

 

 

 

今度はエレンの言葉を遮り、リヴァイは問いかけた。しかし、エレンは未だアニが女型だと思いたくなかった。

 

 

 

「根拠がない?なんだそれ…なんでやるんだ…どうすんだよ、アニじゃなかったら」

 

「アニじゃなかったら、アニの疑いが晴れるだけ」

 

「そうなったら、アニには悪いと思うよ。でも、だからって何もしなければ、エレンが中央の奴らの生贄になるだけだ」

 

 

 

 

 

信じられない、というより、信じたくない、の方が強く、困惑しているエレンを、ヴィーネとジャンはなんとも言えない気持ちで見ていた。

 

 

 

「(…ああ、嫌な予感がする)」

 

「…話は以上だ。作戦の事は頭に入れておくように。この話は他言しないでくれ」

 

 

 

 

少し沈黙があったが、エルヴィンがそれを破り、そして話が終わると各自解散をした。

ヴィーネは帰る前に、リヴァイに声をかける。

 

 

 

「リヴァイさん、壁外調査で足を怪我したって聞いたけど」

 

「ああ…大丈夫だ。大したことねぇ」

 

「…そっか。言ってくれれば掃除は僕がするからさ、無理しないでよ?」

 

「別にそこまで気を遣わなくていい。これくらいすぐ治る」

 

「まぁ気持ちだけでも受け取ってよ」

 

 

 

 

 

「じゃ、僕も戻るよ」。ヴィーネも帰ろうとしたその時、「なぁ、ヴィーネ」と、エレンがヴィーネの名前を呼んだ。

 

 

 

「お前…アニが巨人だって…本気で信じてるのか…?」

 

「……」

 

「アニは俺達の仲間だろ!?なのになんで…」

 

 

 

その場にいたエルヴィンとリヴァイは何も言わず、ヴィーネとエレンを見ている。

エレンが叫ぶと、ヴィーネは静かに口を開いた。

 

 

 

 

「仲間でも、疑いがあるならそれを確かめなきゃいけないと思うよ」

 

「っ…どうしてお前は、そんなに平然としてられるんだよ…」

 

「……アニだからやる訳じゃない。ただ、僕は今やるべきことをやるだけだ」

 

 

 

 

少し目線を逸らす。

 

 

 

「もしそれが親友だったとしても、それは変わらない」

 

「……アニを疑うなんて、どうかしてる」

 

「…話が過ぎたね。僕はもう戻るよ」

 

 

ヴィーネはドアの方へ向き直る。

エレンはそれを止めることはしなかった。

 

 

 

「……エレン」

 

「…なんだよ」

 

 

 

出て行く間際に、ヴィーネは目線をエレンに向けた。

 

 

「僕は、仲間が巨人と聞いて平然としてられる程、冷たい人間ではないんだ」

 

「!」

 

 

そう言い残してドアを開け、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場を後にし帰ろうとしたところで、ヴィーネはジャンを見つけた。

 

 

「…待ってたんだ。別に先行ってもよかったのに」

 

「いつもならそうしてるが、今日は気分だ気分」

 

 

 

そう言って2人は並んで歩き出す。

訓練兵時代、ジャンとはあまり関わることが無かったため、ヴィーネは新鮮だな、と感じていた。

 

 

 

「…エレンはまだ受け入れられないらしいな」

 

「まぁ…でも作戦はちゃんとやってくれるよ」

 

「だといいがな。……だが、エレンの気持ちも分からなくはねぇ」

 

 

 

エレンの気持ちは、ヴィーネもジャンも分かっていた。仲間が敵だったなんて、冗談でも考えたくはない。

 

 

 

「アニは優しい子だったからね」

 

「そうか?氷の女なんて呼ばれてたぜ」

 

「そんな事ないよ。なんだかんだ言って手伝ってくれたし」

 

「へぇ」

 

 

 

 

宿舎まで歩きながら、ヴィーネとジャンはアニについて話す。

アニ・レオンハートはベルトルトと同じく訓練兵時代から人と関わるのを避けていた、とヴィーネは認識していた。しかしそれでも、毎日のように話しかけていたミーナ・カロライナとは仲が良く、ミーナと話している時は楽しそうであった。無愛想で、『氷の女』などと呼ばれても、本当は優しいということを彼女を慕う者は知っていた。

 

 

 

「……どうして、こんなことになったんだろうね」

 

「……ああ…俺にも分からねぇよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦決行日。ヴィーネ、エレン、ミカサ、アルミンの四人は、ストヘス区まで来ていた。ジャンは憲兵団に引き渡されるエレンの影武者をしている。

 

 

 

 

「アニ」

 

 

 

ストヘス区駐屯の憲兵団からアニを見つけ、人目につかない場所からアルミンが声をかける。その声が聞こえたのか、アニは立ち止まり、アルミンがいる場所へと駆けていった。アルミンとヴィーネの姿を見つけると、目を大きく見開いた。

 

 

 

「やぁ…すっかり憲兵団だね」

 

「……アルミン、ヴィーネ…」

 

 

 

顔をすぐ元の表情に戻し、アニは何の用かと尋ねる。

 

 

 

「…どうしたの、その格好は」

 

「…荷運び人。立体機動装置を雨具で見えないようにしてるんだ」

 

 

アニの問いにヴィーネが答える。ほら、といってヴィーネは腰につけた立体機動装置を見せた。

 

 

「どういうこと?」

 

「…アニ、エレンを逃がすことに協力してくれないかな」

 

 

今度は問いにアルミンが答え、その言葉にアニは怪訝な顔をした。

 

 

「逃がすってどこに?王政に逆らって、この狭い壁の中のどこに逃げるの?」

 

「一時的に身を隠すだけさ。王政に真っ向から逆らうつもりは無い。調査兵団の一部による犯行行為って体だけど。時間を作ってその間に審議会制度をひっくり返すだけの材料を揃える。必ずね」

 

 

アニはますます怪訝な顔をする。

 

 

「ひっくり返す材料?そんな都合のいい何かがあるの?根拠は?」

 

「……ごめん、言えない」

 

 

正直まだ考えてもいないため、アルミンは返す言葉も無く、俯き謝る。

それを見て、アニは溜息をついた。

 

 

「…悪いけど、話にならない。黙っといてやるから、勝手に頑張んな」

 

「アニ」

 

 

そう言って配置に戻ろうとするアニを、ヴィーネが呼び止めた。そのまま話を続ける。

 

 

「エレンが人類にとってどれだけ大切か、君には分かるだろ。彼は人類の希望なんだ。憲兵団なんかに引き渡されるわけにはいかない」

 

「……」

 

「…物扱いする訳じゃないけど、初めてエレンの巨人を見た時、『どんな武器より強力になる』って言ったのは君だ。あの時を覚えてないなんて言わせないよ」

 

 

 

アニはトロスト区襲撃で、エレンの巨人を初めて見た時を思い出す。あの時はとても味方になるとは思ってもいなかったが、確かに言っている。アニも自分の発言を覚えていた。

 

 

 

「…勿論迷惑はかけない。だけど、君の力が必要なんだ」

 

「ヴィーネ…」

 

 

 

アニを説得するヴィーネに、アルミンは思わずヴィーネの名前を呟いた。そして、アルミンも、アニをどうにか説得しようと試みる。

 

 

 

「アニ!お願いだ。このままじゃエレンは殺される!何にも分かってない連中が、自分の保身のためだけに、そうとは知らずに人類破滅の道を進もうとしている!」

 

 

冷や汗をかきながらも、アルミンは説得を続ける。

 

 

「説得力が無い事は分かってる…でも、それでも大きな賭けをするしかないんだ。もう、これしかない!」

 

 

 

そこまで言って、アニはようやくこちらを向く。そして、いつも通りの仏頂面で問いかけた。

 

 

 

「…あんたらさ、私がそんなに“いい人”に見えるの?」

 

 

 

その問いかけに、アルミンが俯きながら答える。

 

 

 

「“いい人”か…その言い方はあまり好きじゃないんだ。だってそれって、都合のいい人だけをそう呼んでいる気がするから」

 

 

 

すべての人にとって都合のいい人なんていないと思う、とアルミンが言うと、アニは目線をアルミンからヴィーネへと移した。

 

 

「…ヴィーネは?」

 

「…さぁね。でもアニがこの話に乗らないんだったら、アニは僕等にとって“悪い人”だ」

 

 

 

それを聞いて、アニは少し考えた後、担いでいた銃を壁に立てかけた。銀色の指輪をはめ、ヴィーネとアルミンに向かってこう告げた。

 

 

 

 

「……いいよ、乗った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦に乗ったアニは、ヴィーネ、エレン、ミカサ、アルミンと共に、憲兵団に見つからないよう歩いていた。

 

 

「案外楽に抜けられたな…流石憲兵団様。日頃の仕事具合が伺える」

 

「キョロキョロしない」

 

 

 

嫌味混じりに、というか完全に嫌味なのだが、エレンが辺りを見渡しながら言った。それをミカサが一喝する。

 

 

「後は影武者のジャンがバレなきゃいいが…あれはそう長くはもたねぇよ。アイツと俺、全然似てねぇし」

 

「大丈夫だよ…二人は目つきが凶悪で、似たような悪人面だから」

 

「!?俺はあんな馬面じゃねぇよ…!」

 

 

 

 

エレンはジャンと似ていると言われたのが癪に触ったのだろうが、影武者のジャンを見た時、案外似てるな、とヴィーネは思っていた。

そんなやりとりを続けていると、アニがヴィーネに問いかけた。

 

 

 

「あんた、どうしてこの作戦に乗ったの?」

 

「…どうして?」

 

「こんな面倒な作戦、乗らなそうだと思ってたから」

 

「ああ…、この作戦の方が、一番成功率が高いと思ったんだ」

 

 

 

僕は自分に有利な方を選んだつもり、と答えたヴィーネに、アニは納得したのか「…そう」と言った。そして、また口を開き、疑問を唱える。

 

 

 

「…それと、もし私が協力しなかったら、どうやって壁を登るつもりだったの?」

 

「立体機動で突破するつもりだったんだ」

 

「無茶じゃない?そもそもストヘス区に入る前に逃げた方が…こんな面倒も掛からなくて済んだはずでしょ?何で今ここなの?」

 

 

 

 

疑問に思ってた事を次々と言うアニ。アルミンも負けずに、その質問に答えていく。

 

 

 

「ここの入り組んだ町の地形を利用しなければ、替え玉作戦が成功しないと思ったからさ。それに真っ向から逆らって逃げるより、ある程度従順に振舞って警戒心を解いてからの方が、逃走の時間を稼げるからね」

 

 

「………そう、納得したよ」

 

 

 

アニがそう言ったところで、目的の場所へたどり着いた。

 

 

 

「…あ!あった…ここだ!」

 

 

 

アルミンの見つけた場所は、地下へと続く階段であった。外門へと繋がっていて、ここから逃げるのだという。

 

 

 

「………ここ?」

 

「うん…ここを通る」

 

「…………」

 

 

 

 

 

そうしてヴィーネ達は階段を降りていくが、アニ1人だけが、頑として降りようとはしなかった。

 

 

 

 

「何だよアニ…まさか暗いのが怖いとか言うんじゃねぇだろうな」

 

 

エレンが茶化したように言う。もっとも、冷や汗をかいているのだが。

 

 

 

「そうさ…怖いんだ。あんたみたいな勇敢な死に急ぎ野郎には、きっとか弱い乙女の気持ちなんてわからないだろうさ。」

 

「大男を空中で一回転させる奴はか弱くねぇよ。バカ言ってないで急ぐぞ」

 

 

 

そう言ってまた階段を降りようとするが、アニはまだ動かない。

 

 

 

「いいや、そっちには行かない。そっちは怖い…地上を行かないんだったら、協力しない」

 

「何言ってんだ、いいからこっちに来い!」

 

「エレン、叫ばないで」

 

「大丈夫でしょ、ミカサ。ここらには、どうしてか人がいないから」

 

 

 

 

そう言ってアニは、目を細めた。アニのこの目を、ヴィーネは知っている。ライナーとベルトルトがたまにする、悲しそうな目。

 

 

 

「全く、傷つくよ…いつからそんな目で、私を見るようになったの」

 

 

アニを見上げるアルミンの目は、以前の仲間を見るような目ではなかった。右手には、空砲銃を構えていた。

 

 

 

「アニ…どうしてマルコの立体機動装置を持っていたの…?」

 

 

 

アルミンの頭の中には、2体の巨人を殺した犯人探しの時が過ぎっていた。アニが出した立体機動装置は、自分のものではなくマルコの物であった。

 

 

 

「僅かな傷や凹みだって…一緒にやった思い出だからすぐに分かった」

 

「そう……あれは……拾ったの」

 

「じゃあ…2体の巨人を殺したのはアニなの…?」

 

「…さぁ…でも、そう思うんなら、そうなんじゃないの」

 

 

 

シラを切るつもりなのか、アニは曖昧な言葉で返す。

 

 

 

「そこまで分かってたんなら、どうして今まで行動しなかったの」

 

「今だって信じられないよ!きっと見間違いだと思いたくて…でもアニだって、あの時僕を殺さなかったから・・・今、こんなことになってるんじゃないか!」

 

「ああ…心底そう思うよ。あの時…なんで、だろうね」

 

 

 

 

ふいにアニが、ヴィーネの方に目線を向けた。

 

 

 

 

「ヴィーネ……あんたは、私にとって“悪い人”みたいだね。……いや、“いい人”なのかもしれない。薄々気づいてるんでしょ?」

 

「………」

 

 

 

アニの言葉は、ヴィーネの嫌な予感が当たっているということを比喩していた。ヴィーネは無言で返す。

 

 

 

 

 

「おいアニ!お前が間の悪い馬鹿で、つまんねぇ冗談言ってるのは分かったから…こっちに来るだけで証明できることがあるんだ!とにかくこっちに来い!」

 

 

 

 

中々降りようとしないアニに、エレンが叫んだ。

 

 

 

「そっちには行かない……私は、戦士になり損ねた」

 

「っだから!!つまんねぇって言ってるだろうが!!」

 

 

 

 

アニはこの場で冗談を言う程馬鹿ではないし、むしろ賢い事をエレンはもちろん知っていた。それでも、まだ信じたくはなかった。

 

 

 

 

「答えてよアニ!僕達はまだ話し合う事が_____」

 

「もういい」

 

 

 

アルミンが説得しようとするが、それを痺れを切らしたミカサが遮った。立体機動装置からブレードを引き抜き、アニに向かってこう告げる。

 

 

 

「もう一度ズタズタに削いでやる…女型の巨人…!!」

 

 

 

 

少しの間沈黙が流れた。沈黙を破ったのはアニだったが、彼女は命乞いをするわけでも、ヴィーネ達を罵倒するわけでも無く、ただ、笑い声をあげた。何かから解放されたような、いつもの仏頂面ではなく、普通の16歳の少女の顔で、笑っていたのである。

 

 

 

 

「……ヴィーネ、アルミン…私があんたらの“いい人”で良かったね。ひとまずあんたらは賭けに勝った…でも」

 

 

 

アニはヴィーネ達をまっすぐ見つめた。

 

 

「私が賭けたのは、ここからだから…!」

 

 

 

そう言って、エレンが巨人化するのと同じように、手を噛もうと構えた。同時に、アルミンが空砲銃を発砲する。周りに待機していた調査兵が、それを合図にアニに向かって走り出し、捕獲しようと取り押さえる。アニは猿轡をされ噛む事ができなくなるが、手にはめている指輪から、仕込んでいた針をだす。

 

 

 

 

「…!」

 

「っ…!!」

 

 

 

それにヴィーネとミカサがいち早く気づき、エレンとアルミンを引っ張り階段を駆け下りていく。

 

 

 

「遅かった…!」

 

 

 

ミカサがそう呟くと、アニは指を針で傷つけた。突如閃光と共に大きな爆発音が、全体に響き渡る。

 

 

「(……アニ)」

 

 

煙の中から出現したのは、先程までアニがいたはずの場所に立っている、女型の巨人であった。

 




アニ「男がドキッとする女性の仕草→・足を蹴って転ばせる ・刃物を首筋に当てて動きを封じる ・巨人化をしてダッシュで追いかける ・喰う」
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