ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。 作:霜月@
巨人化したアニの巻き添えにならないよう、ヴィーネ達は急いで地下へと駆け下りる。走った先には、作戦に参加している調査兵達が待機していた。
「何があった…!?作戦は!?」
「失敗しました!次の作戦に移行してください!」
アルミンが言うが、同時に天井に穴が開き、踏み抜いた足はその調査兵達を踏み潰した。どうやら女型の巨人…アニは、エレンがそこに居ない事に賭けて踏み抜いたようだ。
「エレンが死んでもいいっていうのか……こうなったら手強いぞ…!」
退路を塞がれ、安易に外に出る事もできない。かといって、ここに留まっていてもいずれ踏み潰されてしまう。次の手を考えている側で、エレンは巨人化するべく、自分の手を噛み千切ろうとしていた。しかし巨人化は出来ず、再生もせずに、ただ血が流れるばかりであった。
「なんでだよ!なんで出来ないんだ!?くっそ…痛ってえぇ…っ!」
「エレン、まだアニと戦うことを…躊躇してるんじゃないの?」
自傷行為を続けるエレンに対し、ミカサが声をかける。
「まさかこの期に及んで…アニが女型の巨人なのは気のせいかもしれないなんて思ってるの? あなたはさっき目の前で何を見たの?」
「うっせぇな…!俺は、やってるだろ…!!」
「あなたの班員を殺したのはあの女でしょ?まだ違うと思うの?」
巨人化をするのには2つの条件が必要であった。1つは自傷行為。もう1つは目的意識。条件の1つである自傷行為を行って巨人化出来ないとなると、原因はただ一つ。目的意識が明確では無いことだった。エレンはアニが目の前で巨人化するのを見てしまった。人類の敵であることも知ってしまった。それでも、かつての仲間であったアニと戦うことを、心の奥底で拒んでいたのだった。
そんな中、アルミンが作戦を立てる。もとの入口と踏み抜かれた穴からアルミン、ミカサ、ヴィーネの内2人が同時に地上に出れば女型の巨人はどちらかに対応するので、その隙にエレンともう1人が反対側から地上に出ればエレンは助かる、と。
3人の内1人は確実に死んでしまう作戦なのでエレンは引き止めるが、アルミンはそこに留まっていたら4人とも死ぬ、とあっさり一蹴する。
「…その作戦、僕が引き受けるよ」
「ヴィーネ…」
アルミンの作戦に、ヴィーネが乗った。
「誰がやるかなんて迷ってる暇は無いからね。あと1人はどうする?」
「…私がやろう」
「2人とも…危険に晒してしまってごめん。ミカサは入り口、ヴィーネは踏み抜かれた穴から頼む…!」
ヴィーネとミカサ頷き、それぞれ出て行こうと走り出す。その行動にエレンは戸惑いを隠せなかった。
「なんで……どうしてお前らは戦えるんだよ!?」
エレンの叫びに、ミカサが足を止め、エレンの方を振り返り答える。
「……仕方ないでしょ。この世界は残酷なんだから」
その言葉を聞いて、エレンは今までの事を思い出す。
女型の巨人が殺した調査兵達。エレンを守る為に犠牲となったリヴァイ班。そして、エレンが巨人を憎む最大のきっかけとなった、母親の死。
本来の目的を思い出せ。俺は、巨人を駆逐して___いや、殺す。
「…………だよな」
アルミンに離れるよう言うと、エレンが自分の手をもう一度噛み千切った。すると、アニが巨人化したと同じように、大きな音と閃光が現れた。エレンはアニが自分の敵である事を認識し、巨人化したのであった。
*
「っ…!」
両側から出てきたヴィーネとミカサは、女型へと向かう。女型が反応したのはミカサの方であった。女型のうなじを削ごうと試みるが、やはり硬化能力で触れがれ、ヴィーネは舌打ちをする。エレンとアルミンは逃げられたかな、などと思っていると、突如女型が目の前で吹き飛ばされた。
「…!?わ、」
その勢いでヴィーネも飛ばされ、そのまま地面に落下する。寸前にアンカーを壁に刺した為大怪我は避けられた。
立体機動装置が鈍い音を立てた。
「ヴィーネ!」
「っ……アルミン?」
エレンと一緒に居たはずのアルミンが、ヴィーネに駆け寄った。
「大丈夫!?屋根から落ちたみたいだけど…っ」
「アンカーを刺したからなんとか…それより、エレンが吹っ切れたらしいね」
「ああ、とにかく僕等は被害を最小限に抑える為に、援護しよう!」
「…了解」
吹き飛ばされた女型の巨人は、壁を崇めるウォール教がいる教会へと倒れこんだ。下敷きとなったウォール教の人々を見て何を思ったのか、女型は壁に向かって走り出す。食い止めようとした兵を振り払った女型は、兵達が加わりにくい平地で最後のエレン捕獲に賭け、戦闘体勢に入る。巨人化したエレンは、正気を保って戦闘に応じた。
_____なぁ…アニ。お前…何のために戦ってんだ。どんな大義があって、人を殺せた?
戦いながらアニに問いかける。
訓練兵の時、アニとエレンが対人戦闘訓練で戦った、あの戦術そのままに、
二人の巨人は戦っていた。女型の巨人の足がエレンの巨人の顔面を打ち砕く。しかし今回はエレンが女型の足をがっちり咥えて離さなかった。
するとエレン捕獲を諦めたのか、今度は逃走に転じ、壁を登り始めた。
「あいつ…壁を乗り越える気か!?」
誰かがそう言ったと同時に、ヴィーネとミカサが動き出す。
指を硬化させ、壁に刺して登っていく女型に立体機動で近付き、ヴィーネは右手、ミカサは左手と、その硬化した指をブレードで壁から切り離した。
「……アニ、落ちて」
最後にミカサが、その足で女型の額を押した。
支える力が無くなった女型の巨人は、そのまま地面へと落下し、エレンの巨人に取り押さえられる。ミカサも地面へと降り立っていた。そして、ハンジによって、とうとううなじからアニが取り出され、人類は初めて巨人の秘密を手にしようとしていた。
女型の中から取り出されつつあるアニは、故郷の父の言葉を思い出す。
『アニ、俺が間違っていた…今さら俺を許してくれとは言わないが…一つだけ、一つだけでいい、頼みがある』
『この世のすべてを敵に回したっていい。この世のすべてからお前が恨まれることになっても、父さんだけはお前の味方だ』
『だから約束してくれ。帰ってくるって…』
感情を表に出す事のなかった彼女は、調査兵団に引き剥がされながらも泣いていた。その瞬間に、アニは光と共に水晶のような物に包まれる。
「!?…なんだ…!?」
拘束しようとしていた兵士達は、突然の事に驚く。
それと同時に、ストヘス区で行った作戦で出た多くの犠牲が、無駄になってしまったのだった。結晶に包まれたアニを、兵士達は眺める事しかできなかった。
「(…このまま無駄死にで終わるのか…)」
こんなにも犠牲を払ったというのに、結局アニからは何も聞き出せなかった。これで作戦成功と言えるのか。立体機動で壁からぶら下がり一部始終を見ていたヴィーネは、顔を歪める。
「(…結局、アニの言う“賭け”に負けたって事だよね)」
自分も降りようと思い、立体機動を動かそうすると、ヒビが入った壁が剥がれていく。壁の中を見た瞬間、ヴィーネは大きく目を見開いた。
「……え、」
嘘だろ、とヴィーネが呟く。
壁の中には、壁と同じ大きさの巨人がこちらを覗いていた。
コニー「以前、テストで全く分からなかった解答に (エ)(エ)(イ)(イ)(ア)(ア)と適当に書いたら案の定全滅で、となりに教官の字で「君からもらいなき」と書かれてた」