ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

23 / 26
第二十三話

巨人化したアニの巻き添えにならないよう、ヴィーネ達は急いで地下へと駆け下りる。走った先には、作戦に参加している調査兵達が待機していた。

 

 

 

「何があった…!?作戦は!?」

 

「失敗しました!次の作戦に移行してください!」

 

 

 

アルミンが言うが、同時に天井に穴が開き、踏み抜いた足はその調査兵達を踏み潰した。どうやら女型の巨人…アニは、エレンがそこに居ない事に賭けて踏み抜いたようだ。

 

 

 

「エレンが死んでもいいっていうのか……こうなったら手強いぞ…!」

 

 

 

退路を塞がれ、安易に外に出る事もできない。かといって、ここに留まっていてもいずれ踏み潰されてしまう。次の手を考えている側で、エレンは巨人化するべく、自分の手を噛み千切ろうとしていた。しかし巨人化は出来ず、再生もせずに、ただ血が流れるばかりであった。

 

 

 

「なんでだよ!なんで出来ないんだ!?くっそ…痛ってえぇ…っ!」

 

「エレン、まだアニと戦うことを…躊躇してるんじゃないの?」

 

 

 

自傷行為を続けるエレンに対し、ミカサが声をかける。

 

 

「まさかこの期に及んで…アニが女型の巨人なのは気のせいかもしれないなんて思ってるの? あなたはさっき目の前で何を見たの?」

 

「うっせぇな…!俺は、やってるだろ…!!」

 

「あなたの班員を殺したのはあの女でしょ?まだ違うと思うの?」

 

 

 

 

巨人化をするのには2つの条件が必要であった。1つは自傷行為。もう1つは目的意識。条件の1つである自傷行為を行って巨人化出来ないとなると、原因はただ一つ。目的意識が明確では無いことだった。エレンはアニが目の前で巨人化するのを見てしまった。人類の敵であることも知ってしまった。それでも、かつての仲間であったアニと戦うことを、心の奥底で拒んでいたのだった。

 

そんな中、アルミンが作戦を立てる。もとの入口と踏み抜かれた穴からアルミン、ミカサ、ヴィーネの内2人が同時に地上に出れば女型の巨人はどちらかに対応するので、その隙にエレンともう1人が反対側から地上に出ればエレンは助かる、と。

 

3人の内1人は確実に死んでしまう作戦なのでエレンは引き止めるが、アルミンはそこに留まっていたら4人とも死ぬ、とあっさり一蹴する。

 

 

 

 

「…その作戦、僕が引き受けるよ」

 

「ヴィーネ…」

 

 

 

アルミンの作戦に、ヴィーネが乗った。

 

 

 

「誰がやるかなんて迷ってる暇は無いからね。あと1人はどうする?」

 

「…私がやろう」

 

「2人とも…危険に晒してしまってごめん。ミカサは入り口、ヴィーネは踏み抜かれた穴から頼む…!」

 

 

 

 

ヴィーネとミカサ頷き、それぞれ出て行こうと走り出す。その行動にエレンは戸惑いを隠せなかった。

 

 

 

 

「なんで……どうしてお前らは戦えるんだよ!?」

 

 

 

 

エレンの叫びに、ミカサが足を止め、エレンの方を振り返り答える。

 

 

 

 

「……仕方ないでしょ。この世界は残酷なんだから」

 

 

 

 

その言葉を聞いて、エレンは今までの事を思い出す。

女型の巨人が殺した調査兵達。エレンを守る為に犠牲となったリヴァイ班。そして、エレンが巨人を憎む最大のきっかけとなった、母親の死。

本来の目的を思い出せ。俺は、巨人を駆逐して___いや、殺す。

 

 

 

 

「…………だよな」

 

 

 

 

アルミンに離れるよう言うと、エレンが自分の手をもう一度噛み千切った。すると、アニが巨人化したと同じように、大きな音と閃光が現れた。エレンはアニが自分の敵である事を認識し、巨人化したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!」

 

 

両側から出てきたヴィーネとミカサは、女型へと向かう。女型が反応したのはミカサの方であった。女型のうなじを削ごうと試みるが、やはり硬化能力で触れがれ、ヴィーネは舌打ちをする。エレンとアルミンは逃げられたかな、などと思っていると、突如女型が目の前で吹き飛ばされた。

 

 

 

 

「…!?わ、」

 

 

 

その勢いでヴィーネも飛ばされ、そのまま地面に落下する。寸前にアンカーを壁に刺した為大怪我は避けられた。

立体機動装置が鈍い音を立てた。

 

 

 

「ヴィーネ!」

 

「っ……アルミン?」

 

 

 

エレンと一緒に居たはずのアルミンが、ヴィーネに駆け寄った。

 

 

 

「大丈夫!?屋根から落ちたみたいだけど…っ」

 

「アンカーを刺したからなんとか…それより、エレンが吹っ切れたらしいね」

 

「ああ、とにかく僕等は被害を最小限に抑える為に、援護しよう!」

 

「…了解」

 

 

 

 

吹き飛ばされた女型の巨人は、壁を崇めるウォール教がいる教会へと倒れこんだ。下敷きとなったウォール教の人々を見て何を思ったのか、女型は壁に向かって走り出す。食い止めようとした兵を振り払った女型は、兵達が加わりにくい平地で最後のエレン捕獲に賭け、戦闘体勢に入る。巨人化したエレンは、正気を保って戦闘に応じた。

 

 

 

_____なぁ…アニ。お前…何のために戦ってんだ。どんな大義があって、人を殺せた?

 

 

 

戦いながらアニに問いかける。

訓練兵の時、アニとエレンが対人戦闘訓練で戦った、あの戦術そのままに、

二人の巨人は戦っていた。女型の巨人の足がエレンの巨人の顔面を打ち砕く。しかし今回はエレンが女型の足をがっちり咥えて離さなかった。

するとエレン捕獲を諦めたのか、今度は逃走に転じ、壁を登り始めた。

 

 

 

 

「あいつ…壁を乗り越える気か!?」

 

 

 

誰かがそう言ったと同時に、ヴィーネとミカサが動き出す。

指を硬化させ、壁に刺して登っていく女型に立体機動で近付き、ヴィーネは右手、ミカサは左手と、その硬化した指をブレードで壁から切り離した。

 

 

 

 

 

 

 

「……アニ、落ちて」

 

 

 

最後にミカサが、その足で女型の額を押した。

 

 

 

 

 

支える力が無くなった女型の巨人は、そのまま地面へと落下し、エレンの巨人に取り押さえられる。ミカサも地面へと降り立っていた。そして、ハンジによって、とうとううなじからアニが取り出され、人類は初めて巨人の秘密を手にしようとしていた。

 

 

 

女型の中から取り出されつつあるアニは、故郷の父の言葉を思い出す。

 

 

 

『アニ、俺が間違っていた…今さら俺を許してくれとは言わないが…一つだけ、一つだけでいい、頼みがある』

 

 

『この世のすべてを敵に回したっていい。この世のすべてからお前が恨まれることになっても、父さんだけはお前の味方だ』

 

 

『だから約束してくれ。帰ってくるって…』

 

 

 

 

感情を表に出す事のなかった彼女は、調査兵団に引き剥がされながらも泣いていた。その瞬間に、アニは光と共に水晶のような物に包まれる。

 

 

 

 

「!?…なんだ…!?」

 

 

 

拘束しようとしていた兵士達は、突然の事に驚く。

それと同時に、ストヘス区で行った作戦で出た多くの犠牲が、無駄になってしまったのだった。結晶に包まれたアニを、兵士達は眺める事しかできなかった。

 

 

 

 

「(…このまま無駄死にで終わるのか…)」

 

 

 

 

こんなにも犠牲を払ったというのに、結局アニからは何も聞き出せなかった。これで作戦成功と言えるのか。立体機動で壁からぶら下がり一部始終を見ていたヴィーネは、顔を歪める。

 

 

 

 

「(…結局、アニの言う“賭け”に負けたって事だよね)」

 

 

 

 

自分も降りようと思い、立体機動を動かそうすると、ヒビが入った壁が剥がれていく。壁の中を見た瞬間、ヴィーネは大きく目を見開いた。

 

 

 

「……え、」

 

 

 

嘘だろ、とヴィーネが呟く。

壁の中には、壁と同じ大きさの巨人がこちらを覗いていた。




コニー「以前、テストで全く分からなかった解答に (エ)(エ)(イ)(イ)(ア)(ア)と適当に書いたら案の定全滅で、となりに教官の字で「君からもらいなき」と書かれてた」



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。