ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

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第二十四話

アニから何も情報を得られる事ができずに肩を落とす暇もなく、その場に居た者達は、壁の中に埋まっている大型巨人に驚きを隠せなかった。絶句と動揺。あまりの事態に、体が動かないでいた。

ヴィーネもその一人である。全身に緊張を走らせ、その巨人を見つめる。

 

 

 

「(…そんなまさか…)」

 

「ヴィーネ!その巨人は生きているかい!?」

 

 

 

ハンジが壁にぶら下がっているヴィーネに声をかける。それを聞いて、ヴィーネは生きているのかどうかを確かめた。すると壁の中の巨人が、目だけをこちらに向けた。それはこの巨人が生きている事を意味している。

 

 

 

「…!!生きてます…!」

 

「!何て事だ…」

 

 

 

 

ハンジがこの事態について思考を巡らそうとしたその時、的確な指示を出したのは、ウォール教のニック司祭であった。

 

 

 

「巨人に日光をあててはならない。光を遮るものを被せろ、急げ…!」

 

 

 

その指示に従って壁の上に登り、大型巨人の応急処理を終えたハンジは、メガネをあげてから、ニック司祭を問いただした。

 

 

 

「あんたは壁の中に巨人がいる事を知っていたの?」

 

「ならん。私は忙しい」

 

「ふざけるな、これは重罪だ」

 

 

 

話そうとしないニック司祭に、ハンジは怒りを顕わにし、司祭を壁の上から吊し上げながら言った。

 

 

 

「お前らは、我々調査兵団が、何の為に血を流しているかを知ってたか?たとえ僅かな前進だったとしても…人類がいつか、この恐怖から解放される日が来るのならと、命を捧げ続けてきた…」

 

 

 

 

何年もの時間を費やしてでも突き止めたかった巨人の秘密を、教団や王政は知っていた。それでは何の為に、兵士達は死んでいったのだろうか。

 

 

 

「お…お前達の怒りはもっともだ。だが私達も悪意があってやった訳じゃない。自分の命がかわいい訳でもない。それを今証明してみせる」

 

 

 

震えながらも、死を覚悟してニックは言った。

 

 

 

「ろくでなしの口一つ割れんようでは、私以上の教徒にどんな苦痛を与えようと到底聞き出せないだろうな。私を殺して学ぶがよい。我々は今、使命を全うする」

 

 

 

 

ハンジはそれを暫く睨みつけた。しかし先に折れ、ニックの首を掴んでいた手の力を緩める。ニック司祭を投げうって、メガネをかけなおしたハンジは、壁に腰をかけて言った。

 

 

「ねぇ…ニック司祭?壁って全部巨人でできてるの?いつの間にか忘れてたよ…初めて壁の外に出た時以来の感覚だ…」

 

 

 

ハンジの問いに、ニックは無言で返す。

 

 

 

「……怖いなぁ」

 

 

 

そう言った街を取り囲む壁を眺めるハンジの体は、震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストヘス区、憲兵団支部施設。疲れて眠るエレンのベットの周りに、ヴィーネ、ミカサ、アルミン、ジャンが言葉なく皆考え込んでいた。

そんな中、ジャンが沈黙を破る。

 

 

 

「壁の中には、実はずっと大型巨人がいました…だって?」

 

「……壁の工事はウォール教が止めてたみたいだから…つまりそういう事だよね」

 

 

 

 

ジャンの言葉にヴィーネが賛同する。

以前から、巨人の脅威を避けるために壁の強化の話は出ていた。しかし、ウォール教が壁に手を加える事は許さないと抗議したのだ。シガンシナ区及びウォール・マリア陥落の日から、ウォール教は一気に信者を集め勢力を増したため、ないがしろにする事は出来なかった。つまり、壁には手をつけていないため、この100年間、ずっと大型巨人がいたという事になる。

 

 

 

 

「壁のつなぎ目が無いから分からないけど…あの壁って、巨人の硬化能力で造ったんじゃないかな」

 

 

アルミンが呟いた。

 

 

「僕達は巨人によって、巨人から守られていたんだ」

 

 

 

そこまで言うと、上官が部屋に入ってきた。

エルヴィンが会議に出てほしいというから、ついて来いという事だった。アルミンが立ち上がると、ジャンは苦し紛れに目を逸らしながら呟いた。

 

 

 

 

「俺も…上に行こうかな……みんな出た方がいいと…思うなぁ」

 

 

 

 

 

アルミンについていく形で、ヴィーネ、ジャンも会議に参加する事になった。

上官がヴィーネとミカサにも声をかけた。ヴィーネは「行きます」と答えたが、ミカサはエレンと一緒にいるという事で断った。去り際にアルミンがミカサを見つめていたのに対し、ミカサは少し頬を赤らめていた。

 

 

 

 

「……残念だったね、ジャン」

 

「…うるせぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時間前に遡り、ヴィーネ、エレン、ミカサ、アルミン、ジャンを除く104期生は、何も装備もせず、訓練もするなと命令を受けていた。

 

 

 

「なんだって先輩方は完全装備なんだ…?俺たちは装備も、訓練もするなだと…俺たちは、兵士だぞ」

 

 

 

この異様な状況に、ライナーとベルトルトは違和感を感じていた。

 

 

 

 

「どうして僕等だけなんだろう……ヴィーネ達はどこにいるんだ」

 

「さあな……だが、どこかおかしい事は確かだ」

 

 

 

 

コニーやサシャは、自分の村はここから近いだとか、呑気に過ごしていた。

しかしサシャの野生の感が働いたのか、何かに気づき、サシャは咄嗟に机に耳を当てる。

 

 

 

「足音みたいな…地鳴りが聞こえます…!」

 

「…おいおい、ここに巨人がいるって言いたいんなら、そりゃウォール・ローゼが突破されたって事だぞ?」

 

 

 

 

ライナーがそう言うが、見張りについていたミケも嗅覚の反応を示す。

 

 

 

「おそらく104期の中に巨人はいなかった…南より多数巨人襲来!ウォール・ローゼは突破された!!」

 

 

 

そう叫び、ミケは部下であるトーマに、エルヴィン団長に伝えるよう報告を急がせる。そして緊急の作戦が開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ウォール・ローゼが破られた…?」

 

 

 

聞かされた報告に唖然としている中、そう呟いたのはヴィーネであった。

 

 

 

「そうだ。お前とアルミンは俺と一緒にエルミハ区へ向かう。ジャン、お前はエルヴィンの方へつけ」

 

 

 

伝達をしたリヴァイが、3人に指示を出した。3人は驚きながらも、指示に頷いた。

 

 

 

 

「(……ベルトルト達が心配だ)」

 

 

 

 

丸腰で待機しているであろう彼らを心配しながらも、ヴィーネは歩き出したリヴァイについて行った。

 




ヴィーネ「ふとんがふっとんだ」

ベルトルト「もう少し哲学的に」

ヴィーネ「ふとんが吹っ飛んだのであろうか。それともふとんは動かず、我々と家と地球が移動したのだろうか」

ライナー「もう少し悲しく」

ヴィーネ「ふとんは吹っ飛んでいってしまったのか?それとも動いたのは、我々のほうだったのだろうか?今はもうないふとん……」

サシャ「もう少し詩っぽく」

ヴィーネ「今はもう無い 君のふとん
何処かへ飛んだわけじゃない
二人の距離が 離れただけ
君の部屋には 君のふとん
僕が寝ていた 君のふとん」

ベルトルト「もう少し貧困にあえいで」

ヴィーネ「君のふとん もうないんだ
どこかへ飛んだわけじゃないんだけど
僕からお金が離れただけ
君の部屋の君のふとん
僕が寝ていた君のふとん
もういちどふとんで眠りたい
明日からどうやって生活していこう」

ライナー「もう少し格調高く」

ヴィーネ「貴方のベッドは もうありませぬ。
わたくしが大好きだった 貴方のベッド。
寂しくて、寂しくて、どうしていいかわからない」

サシャ「もう少し短く」

ヴィーネ「ふとんがふっとんだ」
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