ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。 作:霜月@
「!!」
ナイフが喉に当たる。
しくじった、何も考えずに開けてしまった。
「おい、大人しくしろよ?」
相手は二人。体が大きいけど、不意打ちすれば勝てない相手じゃない。
多分一人ぐらいはやれるはずだ。
殺さなくていい、気絶させて逃げ回れば……
僕は後ろに走って近くにあった棒を取り、相手に体当たりする。
「!?ぐぁっ……」
「なっ……」
打ち所が悪かったのか、ナイフを落として一発で沈んでくれた。
…ナイフが一本だけで良かった。
「っのクソガキィ…!」
「…!うっ…ぐ、…」
逃げようとした矢先に首を掴まれた。…やっぱり無茶か…
でもまだ勝機はある。このままどこか急所をつけば…
「…お前、あの有名なゴロツキと一緒にいた奴だろ」
「!?っは……」
「いい事教えてやるよ、リーダーを取り巻いてたあの二人、巨人に喰われたらしいぜ?」
動きが止まった。
兄さん達が………死んだ?
その瞬間、周りが全部雑音に聞こえた。
男が喋る
「馬鹿だよなぁ、わざわざ壁の外に行くなんてよ!」
……うるさい
「地下街にいた方がよっぽど安全なのにな、」
うるさい
「まぁ、ゴロツキがいない方が、俺は好都合だけどよ」
うるさい…!!
「あんな馬鹿にはなりたくないよな」
「っう、るさ……いっ…!!」
衝動に任せて僕は持っていたナイフで、相手の首を掻き切る。
首を掻き切られた男は当然即死だった。
「……あ、僕…」
ふらふらになりながらドアを開けようとするが、首を締められていたのもあって、僕は力尽きて気を失った。
リヴァイside
ヴィーネを迎えに行くのに2年もかかった。本当はもっと早く行きたかったが、一年前の惨劇のおかげでかなり遅れてしまった。
「…別にお前までついて来なくてもいいんだが、エルヴィン。」
「いいじゃないか。リヴァイ達が大切にしてきた子が、どんな子か見てみたくてね。」
ヴィーネは怒っているだろうか。それならば大変だ、そう思い足を急がせる。
「その子はどんな子なんだ?」
エルヴィンが俺に問いかけた。
「…彼奴は賢い。一度覚えたことは忘れないからな。だが生きるために手段を選ばない…性格が歪んでないといいが。」
「ははは、あり得ない話ではないかもな。」
そんな話をしていると、丁度家に着いた。
「ヴィーネ、入るぞ。」
開けようとした瞬間、最悪な光景が広がった。
「なんだ、これは……」
「…!?っ、ヴィーネ!!」
そこには倒れている男二人と、ヴィーネがいた。
………俺は…また仲間を失うのか……?
呆然としていると、エルヴィンが叫ぶ。
「リヴァイ、大丈夫だ!まだ息がある!俺は憲兵団を呼ぶ、お前は運んでくれないか?」
「っあ、ああ……」
生きていたことに安心し、少し冷静になった俺は、ヴィーネを地上へ運んだ。
*
「……ん、…?」
目が覚めると、僕はベットの上にいた。
たしか…ドアを開けたら知らない人が来て…………ああそうだ、僕は人を殺したんだった。やけに冷静な僕が心底気持ち悪いとおもう。
…ここ、どこだろう。
「ヴィーネ」
聞き慣れた声にハッとする。
「リ、ヴァイさ……?」
「起きたか。どこか痛いところはないかい?」
「…!!」
金髪の人が話しかけてきた。僕はこの人を知っている。2年前、兄さん達を捕まえていた人だ。
「おや、」
「言っただろう、ヴィーネは一度覚えたことは忘れない。」
「…ああ、なるほど。」
すると、金髪の人はまた話しかけてきた。
「私はエルヴィン・スミス。名前は聞いているよ、ヴィーネであっているかな。」
その言葉に僕は頷く。
「単刀直入に言う、あの場所で何があったんだ?」
「……」
言われた通りに全て話した。
ドアを開けたら見知らぬ男がナイフを持って入ってきたこと。
それを気絶させて逃げようとしたこと。
………ある話を聞いて、誤って殺してしまったこと。
「ある話、とは?」
「……兄さんと、イザベル姉さんが巨人に食べられたって。」
「!!」
リヴァイさんが固まった。…話は本当らしい。
「…やっぱり本当なんだ……」
「っ……約束、守れなくてすまなかった。」
沈黙が流れる。
「リヴァイさんは……後悔してる?」
「…いや、していない。結果は誰にも分からないからな。お前は怒るかもしれないが。」
「怒らないよ。…いいんだ。リヴァイさん、迎えに来てくれてありがとう。」
「!…ああ…」
兄さんは僕の憧れだった。強くて、頭が良くて、かっこ良くて。
誰よりも地上に行くことを望んでいた。
そんな兄さんが兵士になって、壁の外に行った。
…生きていたら、壁の外の話、聞けたのかもしれないな。
「…リヴァイさん、僕、兵士になりたいんだ。」
兵士になれば、きっと自由になれる。
「ファーラン達の仇を打つつもりか?」
「…それもある。でも、この世界のことを知りたいんだ。」
兄さん達が兵士になって、巨人と戦ったように。
いつも僕を守っていてくれたように。
僕も今度は大切な人を守ってあげられるようになりたい。
「…お前が決めたなら、それでいい。」
「それじゃあ私から兵士を申請しておこう。訓練兵団に行くのは来年になるが、それでもいいかい?」
「はい…!」
見ててね兄さん、イザベル姉さん。
今度は僕がリヴァイさんを守れるようになるから。