ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

6 / 26
第六話

訓練兵になって1年くらいが経った。

他の奴らもだんだん兵士に近づいてきた頃だろう。

ちなみに僕は周りの影響か少し口が悪くなった。

 

 

 

「…対人格闘か……ペア探すの疲れるなぁ…」

 

 

 

対人格闘術は得意分野だ。リヴァイさんに沢山教えてもらった。

かなりスパルタだったため、上達するのも早かった。

しかし訓練ではペアを探さなくてはならない。

 

…周りはほとんどやってしまっている。どうしようか。

 

 

 

 

「ヴィーネ、もしよかったら僕といいかな。」

 

「!ベルトルト…」

 

 

 

困っていると、ベルトルトが声をかけてきた。

ああ助かる。教官の頭突きは痛いから嫌だ。

 

ベルトルトとライナーは過去の話をしたり、寝床が隣でもあり仲が良かった。ほぼ彼らと一緒にいるだろう。

ベルトルトは周りと関わることを避けていたが、根気良く話しかけたら段々と心を開くようになった。今でも他とは関わろうとしないが、僕には積極的に話しかけてくれる。心底嬉しい。正直僕もベルトルトとライナーには割と懐いている。

 

ライナーは兄貴分のような性格で、面倒見がいいから子供扱いされるのが気に食わないが、悪い気はしない。

 

 

 

 

 

「良かった、ベルトルトがいなかったら僕は怒られるところだった。」

 

「はは、それは僕もだ。」

 

「じゃあやろうか。ならず者は僕がやろう。手加減はしないで欲しいな。」

 

 

 

104期の中で一番背が高いベルトルトは、その長い手足で攻撃を仕掛けてくる。

背の割りにはかなり俊敏なため避けるのも困難だ。

 

 

 

「わっ…と、……!」

 

 

 

攻撃を仕掛けるが、容易くよけられ、思い切り蹴り上げられた。

それをギリギリで下に避け、ベルトルトの脇腹を蹴る。

 

 

「ぐっ…!?ふっ!」

 

「…!!」

 

 

…耐えたか。長身だけでなく忍耐もあるらしい。とても手強い。

蹴りを流そうとするが、受け止めきれず腕がジンジンする。

 

 

 

「…やっぱりヴィーネは強いなあ。短剣が取れないよ。」

 

「軽々と避けておいてよく言うよ。あ、脇腹大丈夫?」

 

「まだ痛いけど大丈夫さ。」

 

「なら良かった。……もう時間みたいだ。次は座学だったっけ、行こう。」

 

「うん」

 

 

 

 

 

キース教官の合図を聞き、対人格闘を終えた僕達は次の訓練に向かった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ベルトルトは良くアニを見てるけど。」

 

「え、そ、そうかな……?」

 

「僕の勘違いとは思うけど、好きなの?」

 

 

 

 

流石に人と話している時は見ていないけど。訓練の合間や、食事の時などには見ていることが多かった。

 

 

 

「僕はアニと親しくないし、好きとかは分からないかな…」

 

「…それもそうだね。でもあの足技凄いし、今度僕も習ってこようかなあ。」

 

「え、それ以上強くなるの?」

 

「強くなるために兵士になったんだよベルトルト。」

 

 

 

ベルトルトが見ていたのは気のせいだったか。

アニとは何度か話をしたことはある。無愛想で口数が少ないけど、本当は優しい奴だと思っている。

 

 

 

 

「…ヴィーネは?気になる子とかいるの?」

 

 

 

聞きたいな、とニコニコしながら訪ねてくる。

…少し楽しんでいるな?

 

 

 

「そうだな………サシャ、かな。」

 

「えぇ!?意外だなあ。」

 

 

 

 

サシャと名前を出すと、とても驚かれた。

つい先日、ジャンに同じことを聞かれ、この名前を出したら「あの芋女かよー!」と笑われた。

 

 

 

 

「面白いよね、あと度胸がある。いい友達になれそうだなぁ」

 

「え、そっち?まぁいっか…」

 

 

 

 

僕はサシャと少し仲良くなった、あの日を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……サシャ、何やってるの」

 

 

 

入隊式から数ヶ月が経った頃。今日は訓練が休みの日であったので、暇を潰そうと図書室にいたのだが、サシャが本棚で何やら奮闘しているのが見えた。

 

 

 

「ヴィーネ、助けてください!あそこの本が届かないんですよー!あと少しなんですけど…!」

 

「本?よっと…これでいいかな。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

 

彼女が図書室にいるなんて珍しいな、と思いながら指された本を取る。

 

 

 

「これ、料理の本?何か作るの?」

 

「食料庫から芋を盗ってきたので。折角の休日ですしね!」

 

「…また盗んだの?バレたら怒られるよ。」

 

 

 

サシャはいつも通りだった。勉強でもするのかと思いきやまた食べ物だ。

しかし食べ物の話をする時が一番嬉しそうな顔をしている。

 

 

 

 

「大丈夫ですよ!…そうだ!なんなら一緒に作って食べましょうよ!」

 

「え、」

 

 

 

目を丸くする僕に、名案と言わんばかりに、サシャは目を輝かせて言った。

珍しい、あんなに食い意地の張ったサシャが、一緒に食べようなどと言うなんて。

 

 

 

 

「食べる時は一人で食べるより、二人で食べた方が美味しいんですよ!」

 

「そうなの?何人で食べようが一緒だと思ってたけど。」

 

「そんな事ありませんよ!さぁ、一緒にやりましょう!」

 

 

 

 

 

もしや連帯責任にさせようとしてるのかと疑ったが、サシャの目があまりに透き通っていたものだから、断るに断れなかった。

…仕方ない。用はバレなきゃいい。

 

 

 

 

「…いいよ、作ろうか。仕方ないからもしバレても一緒に走ってあげるよ。」

 

「!嬉しいですけど、別に連帯責任とかそんな意味で誘ったわけじゃありませんよ!?」

 

「あはは、分かってるよ。」

 

 

 

僕が笑うと、サシャは目を丸くしていた。…そんなにおかしかったか?

 

 

 

「ヴィーネってちゃんと笑えるんですね…」

 

「なにそれ、当たり前じゃないか。」

 

「まぁそうなんですけど。ヴィーネ、仏頂面なんで割と誤解受けやすいんですよ」

 

 

 

それについては心当たりがあった。

たまに呼び出されては相手を誤解させていたらしい。それにしても仏頂面だなんて。

 

 

 

「仏頂面なんて失礼な。……あーもう、作るなら早く作ろうよ。」

 

「そうですね!丁度死角になる調理場があってですね_____」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日がきっかけで、サシャとは少しだけ仲良くなった。あの後、教官にはバレそうにはなったが、危機一髪難は逃れた。

だがあれからも変わらず、サシャは食べ物を盗んでは教官にしばかれている。

 

 

 

 

 

「……昔は友達とかいなかったからさ……嬉しいんだ。今が凄く楽しい」

 

「そうだね、僕も凄く楽しいよ。…むしろ辛いくらいに」

 

 

 

 

 

地上に出てから約1年。地上はこんなにも澄んでいたのかと感動した。そして、自分の汚さを軽蔑した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。