ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。 作:霜月@
「(縦1m、幅10cm……)」
座学の時間では立体機動についてや、巨人について学ぶ。
ここではアルミンが才能を発揮している。周りより体力が劣る分、頭脳は飛び抜けていた。
「(…立体機動は体が大きいと小回りが利かないから不利になるな。もっと体を柔らかくするか…)」
*
「ヴィーネ」
今日の訓練が終わり、夕食を食べようとすると、ユミルが僕の名前を呼んだ。
「なに、ユミル」
「話があるんだ。今日水汲み当番だろ?それ終わったら第二倉庫の裏な。」
「?…いいよ、分かった。」
返事をすると、ユミルはそのままクリスタの元へ走って行った。
ユミルとはあまり話したことがない。いつもクリスタと一緒にいて、クリスタを愛していることしか知らない人物だった。
「ユミルと何話してたんだよ?」
「さぁ、ここじゃ話せないことらしいけど。」
「そうか…珍しいな。」
…集団リンチ?いやいやまさか。
とにかく深読みはしないようにしようと、僕は夕食を受け取りにいった。
*
夕食が終わり、僕は今日の当番である水汲みをしていた。
「…ベルトルト、別に手伝わなくても良かったのに」
「少し、居辛くて」
「喧嘩でもしたの?」
エレンはともかく、アルミンやライナーは短気では無さそうだが。
そもそもベルトルトが喧嘩をするとは考えにくい。そう思って問うたが、ベルトルトは首を横に振った。
「喧嘩じゃなくて…その、」
「……言えないなら良いよ。無理しないで」
「ご、ごめん」
他に事情があるのだろう。無理矢理納得させ、水汲みを済ませる。
「…どうしても辛かったら話してよ。僕は君を親友だと思ってるから」
「!ぼ、僕も親友だと思ってる!勿論ライナーも…!」
少し焦りながら言うベルトルト。
僕は微笑みながら、ありがとう、と言うと、ベルトルトは嬉しそうにしていた。
*
「……第二倉庫……はここか。」
ベルトルトと別れ、第二倉庫に向かった。
宿舎に居辛いと言っていたベルトルトを置いていくのは気が引けたが、ベルトルトは大丈夫だ、と言ってその場を後にした。
それにしても、暗くて場所が分かりづらい。
「お、来たか。遅かったな。」
「ごめん。で、用は?告白?」
「はぁ?勘違いも程々にしろよ。」
…冗談なのに真顔で言われた。
「…お前、今暫定2位だったな」
「そうだね。君も最初は上位だったのに、いきなり下がり始めたようだけど。」
「まぁ故意にだからな。」
「は?…………ああ。君、クリスタの順位をあげているのか。」
クリスタを愛しているのは分かるが、何故そこまで執着するのだろうか。
「察しがいいな。そこでお前に頼みたい。クリスタに順位を譲ってくれ。」
「……君がクリスタに執着する理由は分からないけど…別にいいよ。憲兵狙いでも無かったし。」
「はっ…お前ならそう言うと思ったぜ。」
僕が目指しているのは大切な人を守るために強くなること。
順位は別にどうでもいいので、あっさり快諾した。
ユミルはクリスタを上位10名に入れて、憲兵団に入れるつもりらしい。
まぁ、内地なら安全だから死ぬことはあまり無いだろうが、そしたらユミルはクリスタと離れてしまうのでは無いだろうか。
「で、お前は何か望みはあるか?」
「…望み?」
「借りを作るのは嫌なんだ。出来るだけ早く返す。」
「自分勝手…」
「よく言われる。で、どうなんだ?体か?」
「馬鹿なの?」
「冗談だよ。」
僕は考えた。望みといってもこれといったものはない。
どうしたものかと悩んだ時、ふと頭に浮かんだ。
僕が地上に出る前。人攫いの男を殺めてしまった時の事だ。
あの二人はある人物の名前を口にしていた。その男の名前は"アーベル・ニトラ”。
…そうだ、これだ。
「…ユミルに少し手伝って欲しい事がある。それで手を打とう。」
「…交渉成立、だな。」