ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。 作:霜月@
翌日になり、とうとう今夜、所属兵科を決める時となった。
それと同時に、今日は調査兵団が壁外調査へ出発する日であった。馬に乗っている主力部隊に、住人は声援を呼びかける。
「リヴァイ兵長だ!」
「(…あ)」
ヴィーネはその名前を聞いて、その人物を見つける。
住人によれば、リヴァイは1人で一個旅団の戦力があるという。
休日がある日は、何度がリヴァイにあってはいたが、それでもかなり久しぶりであった。
「5年前とは大違いだ。調査兵団に、こんなに期待する人たちがいる…!」
エレンが嬉しそうな声をあげる。
5年前までは税金の無駄などと軽蔑されていた調査兵団であったが、超大型巨人および鎧の巨人の出現により、その意義が認められるようになった。
「みんなの雰囲気が明るくなったんだよ。もう5年も何もないし」
「超大型巨人なんて、来ないんじゃないか?」
笑いながら言うフランツに、それに同意するハンナ。
エレンはその言葉に少しイラつき、声を張り上げた。
「何言ってんだバカ夫婦!」
「そんな、お似合い夫婦だなんて!」
「気が早いよエレン!」
“バカ夫婦”と、一応罵ったつもりだったが、カップル2人には聞こえていないようだった。エレンはますますイラつき、アルミンは苦笑していた。
「おう、久しぶりだなエレン!」
「ハンネスさん!」
ハンネスと呼ばれた男が、エレンとアルミンに声をかけた。
どうやら知り合いらしい。
「…エレン、僕先に行ってるから。固定砲整備、遅れないでよ」
班は違うけど。とヴィーネが付け足す。エレンはおう、と言ってヴィーネを見送った。
*
「(…3人と分かれてしまった。)」
「私じゃ不満そうだね、ヴィーネ」
「…そんな事ないよ。君だって僕の大切な仲間だからね」
ヴィーネとアニは、固定砲整備2班として、壁に登り、固定砲に弾を詰めていた。
他の訓練兵達は、同じく固定砲整備を任されていたり、宿舎を掃除していたりと様々だ。
「…あんた、調査兵団に入るんだっけ」
「そうだよ。前から決めてたからね」
「…そう」
風になびいて、アニの髪が揺れる。
静かに横を見るヴィーネの目には、ライナー、ベルトルトと同じ、悲しい目をしているアニの姿が映っていた。
突如、固定砲整備4班がいるはずの方向から、大きな爆発音が聞こえる。
それは地震に近く、とても大きなものであった。
「…!?なんだ……?」
「おい!これは一体___」
爆発音を聞きつけて、同じ班のユミル、クリスタ、ダズが戻ってきた。
やはり状況は分からないという顔をしている。
その時、上官である駐屯兵がやってきた。
「超大型巨人が出現し、トロスト区が破られた!出現時の作戦は分かっているな、今すぐ他の訓練兵と合流しろ!」
「ハッ!」
言い終えると、駐屯兵は自身の場所に向かっていく。
ヴィーネ達も急いで合流しに行った。
*
「くそっ……なんで今日なんだ…明日から内地に行けたってのによ…!」
ジャンが苦々しく零す。
他にも「死にたくない」と膝を抱える者や、吐いてしまう者もいた。
「ライナー、ベルトルト……また、後で合流しよう」
死なないで、と遠回しにヴィーネは言った。
呼ばれた2人は、当たり前だというように、力強くうなづく。
こうしてそれぞれ各班に分かれ、先輩兵士の合図を待った。
*
「訓練兵第21班!前進!」
「行くぞ、お前ら!」
班長であるギーナの声で、第21班は前進する。
超大型巨人出現時の作戦は、前衛、中衛、後衛に分かれ、住民の被害を最小限にすることだった。
前衛は駐屯兵団、中衛が訓練兵団、後衛が駐屯兵の精鋭達が受け持っている。
「駐屯兵団が総崩れ……ここらはほぼ全滅じゃない…」
クララが絶望した顔で呟く。
「とにかく落ち着け。住民の避難を完了させればいいんだ!」
ギーナが落ち着かせる。
この作戦は住民の避難が完了するまで続く。
超大型巨人が出現し、トロスト区が破られた場合は、“トロスト区を放棄すること前提"で作戦が進められていた。
「ヴィーネ、どうする…?無理に突っ込んでも死ぬだけだぞ…」
「……わざわざ巨人を討伐する必要もない。逃げ遅れた住民を探す方がいいんじゃない」
作戦の本来の目的は住民の避難であって、巨人の殲滅ではない。よって住民の避難を急いだ方が良いとヴィーネは考えた。
ギーナは頷いて、住民を探すよう指示をする。
「…居た!」
エミーリアの声に班員が反応する。
その先には子供が2人怯えて座っており、すぐそばに巨人が迫っていた。
「っ…子供を助けるぞ!戦闘準備!」
刃を構える。巨人は通常種のようで、こちらに反応し、向かってくる。
「巨人は一匹だけだ、みんなでかかれば____」
「…………!?ルディ、後ろ!」
「えっ……」
ヴィーネの呼びかけも遅く、ルディは後ろにいた巨人に気づかず、そのまま餌食となった。巨人の顔は変わらず笑顔のままだ。
「ルディ!……くっそ、子供だけでも守れ!」
ヴィーネとクララは子供に近づいて行く。
子供が怯えた声をあげた。
「ひっ……」
「……大丈夫、おいで。」
優しい声色で言うと。子供は落ち着いたのか、よろよろとヴィーネに近づいていった。
「…クララ、そっちは大丈夫?」
「ええ…」
「じゃあ屋根に登ろう。ここらは人が少ないから、こっちに集まってしまう」
子供を抱えて、屋根に登る。
だが、その時には他の巨人が集まって来てしまっていた。
「ヴィーネ!クララ!」
ギーナが名前を呼ぶ。
近くには下半身がないエミーリアの姿があった。
「(……、落ち着け…)」
自身の手を握り、深呼吸をする。ヴィーネの顔には冷や汗が浮かんでいた。
前から分かっていたことだ。この世界は残酷だと。
「ギーナ!!」
クララの叫ぶ声が響く。
ギーナが巨人に掴まれていた。
「(……僕は死ぬためにここに来たんじゃない。生きて、守るためにここに来たんだ)」
ヴィーネは巨人の体にアンカーを刺す。
「…っ!」
すかさず立体機動に移り、うなじめがけ、ブレードを振り下ろした。
「っ…助かった…ありがとなヴィーネ…」
「…ギーナとクララは子供を抱えて。援護は全部僕が引き受ける」
そういうヴィーネにギーナとクララは驚愕を顔に浮かべた。
「そ、そんなの任せられるわけないだろ!」
「貴方死ぬつもりなの!?」
ヴィーネは表情を変えず、無表情のまま、言葉を続けた。
「話し合ってる暇はないよ。僕に任せて子供を抱えるか、それとも援護にまわって食い殺されたいか。どっち?」
ギーナとクララは押し黙る。
そして、少し考え2人は答えを出した。
「……分かった。お前に任せる。……絶対死ぬなよ!」
「死んだら、殴ってやるんだから!」
2人の目には、不安も残るが、全てを賭けたようだった。
ヴィーネはそれに答えるかのように微笑む。
「任せなよ。僕は死なないし、君らを死なせない」
第104期訓練兵団第21班↓
班長 ギーナ・ヘルベルク Gina Herberg 男
ヴィーネ・チャーチ Wiene Church 男
クララ・ルーデンドルフ Clara Ludendorlff 女
エミーリア・ドール Emilia Dor 女
死亡
ルディ・ラメル Rudi Rammel 男
死亡
一応載せておきます。モブなんで覚えなくてもいいです。