ファーランの弟が生きるためにどうにか頑張るお話。   作:霜月@

9 / 26
第九話

翌日になり、とうとう今夜、所属兵科を決める時となった。

それと同時に、今日は調査兵団が壁外調査へ出発する日であった。馬に乗っている主力部隊に、住人は声援を呼びかける。

 

 

 

「リヴァイ兵長だ!」

 

「(…あ)」

 

 

 

ヴィーネはその名前を聞いて、その人物を見つける。

住人によれば、リヴァイは1人で一個旅団の戦力があるという。

休日がある日は、何度がリヴァイにあってはいたが、それでもかなり久しぶりであった。

 

 

「5年前とは大違いだ。調査兵団に、こんなに期待する人たちがいる…!」

 

 

 

エレンが嬉しそうな声をあげる。

5年前までは税金の無駄などと軽蔑されていた調査兵団であったが、超大型巨人および鎧の巨人の出現により、その意義が認められるようになった。

 

 

 

「みんなの雰囲気が明るくなったんだよ。もう5年も何もないし」

 

「超大型巨人なんて、来ないんじゃないか?」

 

 

 

笑いながら言うフランツに、それに同意するハンナ。

エレンはその言葉に少しイラつき、声を張り上げた。

 

 

 

「何言ってんだバカ夫婦!」

 

「そんな、お似合い夫婦だなんて!」

 

「気が早いよエレン!」

 

 

 

“バカ夫婦”と、一応罵ったつもりだったが、カップル2人には聞こえていないようだった。エレンはますますイラつき、アルミンは苦笑していた。

 

 

 

 

「おう、久しぶりだなエレン!」

 

「ハンネスさん!」

 

 

 

ハンネスと呼ばれた男が、エレンとアルミンに声をかけた。

どうやら知り合いらしい。

 

 

 

「…エレン、僕先に行ってるから。固定砲整備、遅れないでよ」

 

 

班は違うけど。とヴィーネが付け足す。エレンはおう、と言ってヴィーネを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…3人と分かれてしまった。)」

 

「私じゃ不満そうだね、ヴィーネ」

 

「…そんな事ないよ。君だって僕の大切な仲間だからね」

 

 

 

 

 

ヴィーネとアニは、固定砲整備2班として、壁に登り、固定砲に弾を詰めていた。

他の訓練兵達は、同じく固定砲整備を任されていたり、宿舎を掃除していたりと様々だ。

 

 

 

 

「…あんた、調査兵団に入るんだっけ」

 

「そうだよ。前から決めてたからね」

 

「…そう」

 

 

 

 

 

風になびいて、アニの髪が揺れる。

静かに横を見るヴィーネの目には、ライナー、ベルトルトと同じ、悲しい目をしているアニの姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、固定砲整備4班がいるはずの方向から、大きな爆発音が聞こえる。

それは地震に近く、とても大きなものであった。

 

 

 

「…!?なんだ……?」

 

「おい!これは一体___」

 

 

 

爆発音を聞きつけて、同じ班のユミル、クリスタ、ダズが戻ってきた。

やはり状況は分からないという顔をしている。

その時、上官である駐屯兵がやってきた。

 

 

 

 

「超大型巨人が出現し、トロスト区が破られた!出現時の作戦は分かっているな、今すぐ他の訓練兵と合流しろ!」

 

「ハッ!」

 

 

 

 

言い終えると、駐屯兵は自身の場所に向かっていく。

ヴィーネ達も急いで合流しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ……なんで今日なんだ…明日から内地に行けたってのによ…!」

 

 

 

ジャンが苦々しく零す。

他にも「死にたくない」と膝を抱える者や、吐いてしまう者もいた。

 

 

 

 

「ライナー、ベルトルト……また、後で合流しよう」

 

 

 

死なないで、と遠回しにヴィーネは言った。

呼ばれた2人は、当たり前だというように、力強くうなづく。

 

 

こうしてそれぞれ各班に分かれ、先輩兵士の合図を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「訓練兵第21班!前進!」

 

「行くぞ、お前ら!」

 

 

 

 

班長であるギーナの声で、第21班は前進する。

超大型巨人出現時の作戦は、前衛、中衛、後衛に分かれ、住民の被害を最小限にすることだった。

前衛は駐屯兵団、中衛が訓練兵団、後衛が駐屯兵の精鋭達が受け持っている。

 

 

 

 

「駐屯兵団が総崩れ……ここらはほぼ全滅じゃない…」

 

 

 

クララが絶望した顔で呟く。

 

 

 

「とにかく落ち着け。住民の避難を完了させればいいんだ!」

 

 

 

 

ギーナが落ち着かせる。

この作戦は住民の避難が完了するまで続く。

超大型巨人が出現し、トロスト区が破られた場合は、“トロスト区を放棄すること前提"で作戦が進められていた。

 

 

 

 

「ヴィーネ、どうする…?無理に突っ込んでも死ぬだけだぞ…」

 

「……わざわざ巨人を討伐する必要もない。逃げ遅れた住民を探す方がいいんじゃない」

 

 

 

 

作戦の本来の目的は住民の避難であって、巨人の殲滅ではない。よって住民の避難を急いだ方が良いとヴィーネは考えた。

ギーナは頷いて、住民を探すよう指示をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…居た!」

 

 

 

エミーリアの声に班員が反応する。

その先には子供が2人怯えて座っており、すぐそばに巨人が迫っていた。

 

 

 

「っ…子供を助けるぞ!戦闘準備!」

 

 

 

刃を構える。巨人は通常種のようで、こちらに反応し、向かってくる。

 

 

 

 

「巨人は一匹だけだ、みんなでかかれば____」

 

「…………!?ルディ、後ろ!」

 

「えっ……」

 

 

 

 

 

 

ヴィーネの呼びかけも遅く、ルディは後ろにいた巨人に気づかず、そのまま餌食となった。巨人の顔は変わらず笑顔のままだ。

 

 

 

 

 

「ルディ!……くっそ、子供だけでも守れ!」

 

 

 

 

ヴィーネとクララは子供に近づいて行く。

子供が怯えた声をあげた。

 

 

 

「ひっ……」

 

「……大丈夫、おいで。」

 

 

 

優しい声色で言うと。子供は落ち着いたのか、よろよろとヴィーネに近づいていった。

 

 

 

「…クララ、そっちは大丈夫?」

 

「ええ…」

 

「じゃあ屋根に登ろう。ここらは人が少ないから、こっちに集まってしまう」

 

 

 

 

 

子供を抱えて、屋根に登る。

だが、その時には他の巨人が集まって来てしまっていた。

 

 

 

 

「ヴィーネ!クララ!」

 

 

 

ギーナが名前を呼ぶ。

近くには下半身がないエミーリアの姿があった。

 

 

 

「(……、落ち着け…)」

 

 

 

 

自身の手を握り、深呼吸をする。ヴィーネの顔には冷や汗が浮かんでいた。

前から分かっていたことだ。この世界は残酷だと。

 

 

 

「ギーナ!!」

 

 

クララの叫ぶ声が響く。

ギーナが巨人に掴まれていた。

 

 

 

 

「(……僕は死ぬためにここに来たんじゃない。生きて、守るためにここに来たんだ)」

 

 

 

 

ヴィーネは巨人の体にアンカーを刺す。

 

 

「…っ!」

 

 

すかさず立体機動に移り、うなじめがけ、ブレードを振り下ろした。

 

 

 

「っ…助かった…ありがとなヴィーネ…」

 

「…ギーナとクララは子供を抱えて。援護は全部僕が引き受ける」

 

 

 

そういうヴィーネにギーナとクララは驚愕を顔に浮かべた。

 

 

 

 

「そ、そんなの任せられるわけないだろ!」

 

「貴方死ぬつもりなの!?」

 

 

 

 

ヴィーネは表情を変えず、無表情のまま、言葉を続けた。

 

 

 

「話し合ってる暇はないよ。僕に任せて子供を抱えるか、それとも援護にまわって食い殺されたいか。どっち?」

 

 

 

ギーナとクララは押し黙る。

そして、少し考え2人は答えを出した。

 

 

 

「……分かった。お前に任せる。……絶対死ぬなよ!」

 

「死んだら、殴ってやるんだから!」

 

 

 

2人の目には、不安も残るが、全てを賭けたようだった。

ヴィーネはそれに答えるかのように微笑む。

 

 

 

 

「任せなよ。僕は死なないし、君らを死なせない」




第104期訓練兵団第21班↓


班長 ギーナ・ヘルベルク Gina Herberg 男

ヴィーネ・チャーチ Wiene Church 男

クララ・ルーデンドルフ Clara Ludendorlff 女

エミーリア・ドール Emilia Dor 女
死亡

ルディ・ラメル Rudi Rammel 男
死亡




一応載せておきます。モブなんで覚えなくてもいいです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。