『鬼人正邪になった者』のお話   作:たぬさわ

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今回はちょっと短めかもです。


その紅い霧は唐突に

 時が過ぎていくのはあっという間だと、最近は特に感じている。

 それは生活が充実しているからなのだろうか。決していい意味ではない。必死なだけであるが。

 

 恐らく、自分が妖力を取り戻してから何年かは立っているのではないかと思う。今がいつ、とまでは正確にはわからないが、季節が変わっていくのは何度も経験した。

 

 

 

 さて、ここで今一度自分の生活を振り返ってみることにする。 

 

 自分は今、だいぶ前に見つけた洞窟の中でそれなりに快適に生活している。というのも、森の中で生活とかの期間も割とあったので、嫌でもここが快適に感じてしまうのだ。

 ここは他の妖怪の縄張りというわけでもなく、そもそもこの洞窟の周辺には妖怪の数も多くなく、しかも比較的大人しい妖怪がほとんどだったので、安全性という面でもかなり高い。

 

 この場所を見つけることが出来たのは本当に幸運だったと思う。落ち着いて生活が出来るというのが何よりだ。

 ここを見つける前は、森の中で大木みたいな熊の妖怪に襲われたこともあったし、蜘蛛の集団にも囲まれたこともあった。よく逃げれたなあと我ながら思う。

 

 近くには水辺もあるので身体を洗うことも出来るし、妖怪には必須ではないが、睡眠を取る余裕もできたくらいだ。何だかんだ、寝たほうが調子が出る気がする。

 

 

 

 住む場所に関してはこんな感じだ。

 

 あと、普段の生活に関していえば、最近は修行をしていることが多いかもしれない。

 当たり前であるが、独学なので効率がいいとは言えないかもしれない。だが、何もしないよりかは絶対にいい。

 

 内容も別にそこまで深いものではないが、最初はうまく妖力を扱えるようにし、慣れてきたら妖力弾を放つ練習。いわゆる弾幕というものを張る練習である。

 身体も小さく筋力が特別高くない自分は、遠距離攻撃が特に重要となってくるのでこの辺りはとにかく必死になって練習している。

 

 

 

 ……後から気づいたことなのだが、自分は現在、相当な妖力を持っているっぽい。人里でのあれが、相当効果的であったのだろうか。

 ただ、だからといって強いわけではない。そもそも、全てをうまく扱えないのである。

 

 例えば、今自分が妖力を百持っているとすれば、十くらいしか使えていないだろう。

 これは自分がまだ力をうまく扱えていないのか、そもそも天邪鬼という種族上、妖力を扱う才能がないのか。一応、七だったものを八に、九にと徐々にステップアップこそしてるものの、全然である。

 

 

 

 ……潜在能力はすごいけど現状は全然凄くない、といった感じであろうか。一生覚醒しないまま終わりそうなのが怖いところである。

 

 

 

『暇だなー、おい』

『かと言って何年か前みたいに死にかけるのは勘弁だけどね』

『安全なのはいいんだけど、刺激が欲しいよなー。私に都合がいい感じの面白いこと起きないかなあ』

 

 こんな感じで、安全は確保できてはいるのだが暇でもある。娯楽がないのは辛い。

 最近の正邪の口癖は暇だなー、になっている。気持ちはわかるが、死にかけるよりかはだいぶマシと言えばマシだ。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

『やっべ!?何これ、めっちゃ愉快なことになってるじゃん!』

 

 正邪さんが超ハイテンション状態です。

 暇だ暇だと言い続けてしばらくたったある日、何だか大変なことになっているのだ。

 

 

 

『意図はどうだか知らないけど、ずいぶんと愉快なことをやる奴もいるもんだな!』

『……あー、これ何となくわかる。自分の知ってる知識の中にある奴だ』

『何だって?』

 

 

 

 ……どう愉快なことになっているのかというと、世界が真っ赤な霧に覆われています。

 そしてそれを自分は知っている。これこそが、ある意味全ての始まりと言ってもいいのかもしれない。

 

 

 

『正邪は、だいぶ前に私がスペルカードルールについて言ったこと、覚えてる?』

『ん?……あー、確かに言ってたな。新しい戦闘手段、だっけ?』

『そう、そしてそのルールが完全に浸透するきっかけとなったのがこの異変……だったと思う』

 

 

 

 詳しくまでは覚えてないし、確信しているわけでもない。

 多分そうだろう、程度の認識でしかないが、スペルカードルールが広まったのはこの辺りからなのではないかと思う。

 

 

 

『……うーむ』

『正邪、どうしたの?』

『いや、ちょっと考え事をな』

 

 最初の荒ぶるハイテンションとは打って変わって、真剣に考え込んでいるみたいだ。

 

 

 

『お前はこの異変を起こした理由を知っているのか?』

『何だっけ……確か、吸血鬼がいつでも外に出歩けるようにするためだったかなあ』

『なるほど、ずいぶんと自分勝手な理由だな。そして首謀者は吸血鬼ってことか』

『まあ、これだけ目立つようなことをしたら当たり前だけど誰かが異変を解決しに行くよね』

『なーんか、引っかかるなあ……』

 

 正邪が何か気になる、といったような感じで自分に聞いてくる。

 

『と、言うと?』

『いやー、真意が読めないと思ってさ。本当にただ出歩けるようにするためにこんなことをしたのかなって思って』

『まあ……言いたいことはわかる』

『普通に考えて、お前の言った通りの理由ならば、首謀者はただの馬鹿だ。だけど、ここまで単純なことだと何か裏があるようにしか思えないんだよなあ』

 

 

 

 確かに、やっていることが単純すぎて本当にただ出歩きたいがためにこんなことをしているのか、と逆に疑ってしまうのもわかる。

 そもそも、自分の知識も本当に当たっているのかどうかわからないような曖昧なものだし、実際のところは本当は何がしたいのかわからない、というのが正しい。

 

 

 

『正邪はどうしたい?』

『……何がだ?』

『何だかんだ暇つぶししたいでしょ、自分はそうしたいし』

『……面倒事に巻き込まれない程度ならな。これだけのことをしている相手だ、巻き込まれたら相当厄介なことになるぞ』

『……じゃ、軽く様子見程度に出かけるとしますか?』

 

 

 

 自分も巻き込まれるのは御免だ。吸血鬼とか相手するの絶対無理だし。

 でも興味を持ってしまうのも事実。遠くから眺めるくらいならきっと大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 洞窟を離れ、適当にその辺を飛び回っている。

 視界が結構悪い。発生している場所は、どこだろうか。

 

 周りが真っ赤なため、誰かがいても気づきにくいかもしれない。ある程度近づいて、やっと気づくレベルかも。

 

 

 

「……へっくしっ!あー、寒い」

 

 

 

 そう、太陽光が遮られているため結構寒かったりするのだ。自分はかなり大きなくしゃみをしてしまった。

 最初は紅い霧も愉快なものだと思えていたが、だんだん苛々してきた。周りは見えないし、寒いし。

 

 

 

「同感だぜ。お天道様は姿を見せないし、本当に迷惑な霧だ。」

「……今のくしゃみ、聞いてた?」

「おう、やけに大きなくしゃみだったな。姿は見えてなかったけど、大きな音で誰かいたことに気づいちまった」

 

 

 

 くしゃみを聞かれていたのか、恥ずかしい。

 

 

 

 ……いやそうじゃなくて。ある程度は警戒していたはずなのに、誰かが近づいてくるまで気付けなかった。

 やはりまだ気配を察知することはできていないのだろう。目でしか追えていない証拠である。

 

 

 

「で、私と同じようにここら辺を飛び回っていたどこぞの妖怪。お前はこの異変について何か知っているか?」

「随分と図々しい白黒だね。もっと聞き方ってものがあるだろうに」

「すまんすまん。で、どうなんだ?」

「仮にわかっていたとしても、それを教える義理があると思う?」

 

 

 

 何だか変なのに絡まれてしまった。箒にまたがった、いかにも魔女っぽい白黒。

 だが、自分はこの人物を知っている。異変解決のスペシャリストの一人……だったはず。

 

 

 

「……それもそうだな。だったら、力づくでも聞いてやるぜ!」

「……帰っていい?」

「ま、待て!一度目を合わせたら、戦わなくちゃいけない暗黙のルールがあってだな!」

「それはきっと、ここでは適用されないルールだと思うけど」

 

 

 

 なんだそれ。どこぞの世界ではあるのかもしれないけど、絶対この幻想郷では存在しないルールのような気がする。

 

 

 

「結構色々調べても、なかなか手がかりが見つからないんだよ!頼む!」

 

 

 

 何だか見ていて結構かわいそうになってきた。

 というか、目の前の人物は意外なことに、まだ何かを知っている様子もないみたいだ。まあ、確かに霧が出てからそこまで時間は立っていないのでしょうがないのかもしれないが。

 

 しかし、どうしようか。

 別に協力するつもりは特にないし、かといってここから離れようとしてもしつこく聞いてくるに違いない。よって、逃げるという選択肢は使えないだろう。

 

 

 

「……しょうがない。戦ってそっちが勝ったら、知っている事だけでいいのなら教えるよ」

「おお!そいつはありがたいぜ、名前も知らないどこぞの妖怪。おっと、名乗ってなかったな。私は霧雨魔理沙、人間だ」

 

 

 

 そう、私はこの霧雨魔理沙という人物を知っていた。

 人間でありながら魔法を扱うことのできる、力を持った少女。

 

 

 

「……鬼人正邪。私は弱い妖怪だから、もし魔理沙が普通くらいの実力を持っているなら勝てないと思う」

「そうか、そいつはラッキーだぜ。何故なら私は普通の魔法使いだからな。自分で弱いって言うやつには負ける気はしないぜ」

 

 

 

 それなりに修行はしていたが、まだ自分は弱い妖怪……だと思う。

 魔理沙と戦うのはある意味、実力を図るのにはちょうどいいのかもしれない。痛みを伴うことはあっても、殺し合いに至ることは多分ないだろうし。

 

 

 

「……っと、じゃあ早速だが。何枚でやる?」

「……そう、それ。存在は知ってたけど、やったことはないんだよね、そのルール。カード持ってないし」

 

 魔理沙は数枚のカードを出して提案してきたが、生憎自分はそれをやったことがない。

 スペルカードルール。ルールの内容はわかるが、カードを持っていなければ、対戦したこともない。

 

 

 

「っと、ルールは知ってるけどカードは持ってない妖怪だったのか。だったらほら、これやるよ」

 

 そう言って、魔理沙は白紙のカードを数枚手渡してきた。

 

 

 

「そいつがスぺカの元となるカードだ。適当に力を注げば、すぐに自分のスぺカになるはずだ。ルールは知ってるんなら、特に説明しなくてもいいよな?」

「うん、大丈夫。ちょっと待って」

 

 

 

 魔理沙に言われた通りカードを持って、頭でイメージしつつ妖力を入れてみると、光とともにスぺカが完成した。なるほど、こうしてスぺカは出来ていたんだな。

 

 

 

「初心者みたいだし、枚数は少なめのほうがいいな。二枚でどうだ?」

「それでいいよ」

 

 

 

 魔理沙はきっと相手が初心者だと思って油断しているはず。その隙をつけば、勝ち目はある。

 自分で言うのも何だが、結構癖のあるスぺカを作ったつもりである。

 

 

 

「だったら……始めるぜ!」

 

 

 

 そう宣言して、魔理沙は弾幕を放ってきた。

 初のスペルカードルールの対戦、中々に楽しみである。

 

 

 

 どこからともなく、正邪の声が聞こえてきたような気がした。

 何だか面倒臭いことに巻き込まれた、嫌な予感がするだって?

 

 ……大丈夫、自分も既にそんな気がしています。




紅魔郷編スタート。まずは魔理沙の登場からです。
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