今更であるが、スペルカードルールとは何なのかを確認したいと思う。
別名で弾幕ごっことも呼ばれるもので、弾幕を打ち合って戦闘をするものである。
その際に用いられるスペルカード、これはそれぞれが持つ時間制限ありの必殺技みたいなもの。これを何枚ずつまで使えるかを決闘の前に互いに話し合って決める。
この戦闘方法における勝敗は、スペルカードを全て使わせるか、あるいは弾幕を相手に当てれば勝ちとなる。つまり、被弾したら負けだ。
「……ッ!」
「ほらほら、どうした!まだまだこんなもの序の口だぜ!」
現在、自分は魔理沙の弾幕から必死に逃げています。スペルカードを使わずに通常弾幕でこれですか。
必殺技を使われてもいないのに、通常攻撃だけで結構追い込まれているようなものだ。
とはいえ、まだ一応避けられる範囲ではある。
逃げることに関してだけは意外とうまいのか、思ったよりも見極められている。勿論、魔理沙もまだ本気を出してはいないのだろうが。
ともあれこっちも反撃しなければ何も始まらない。
魔理沙の弾幕を避けつつ、お返しとばかりにこっちも通常弾幕を放った。
「んー……おっと!結構嫌らしい弾幕だな。初めてにしてはなかなかやるな!」
割と褒められた。
と言っても、まだまだ魔理沙も余裕綽々のようだ。こっちも相手が避けにくいように意識して弾幕を放っているのに普通にかわされるのは、少しショックな部分もある。
このままでは埒が明かない。というよりむしろ、押し切られてしまう。
自分は一枚のカードを手に取った。どうせ相手よりも自分は格下なのだ、だったら先にどんどん攻めるくらいがちょうどいい。
欺符「逆針撃」
スペルカードを一枚、宣言した。
そして自分は弾幕を、魔理沙のいる方向へと飛ばす。
「お、早速使ってきたか。そうこなくちゃな!……って、どこに打ってやがる?」
宣言したのにも関わらず、場は静まっている。何故なら自分が飛ばしている弾幕は、魔理沙のいる方向に飛ばしているとはいえ、本人に向けて飛んでいるわけではなく、かわさなくても魔理沙の左右や上下へと飛んでいく。
魔理沙も拍子抜けしたのか、気の抜けた様子でその場にとどまっている。
だが、それこそが自分の狙いだ。何も弾幕というのは、真正面から正々堂々飛んでくるだけのものではないってこと。
「……ッ!?なんだこの、ちょっ、このやろっ、あぶねっ、嫌らしい弾幕だな、おい!」
嫌らしい、天邪鬼の自分にとってそれ以上の褒め言葉はない。
自分がランダムに飛ばした弾幕は、これまたランダムに後ろから魔理沙のいる方向へと戻って来た。
これは自分の能力を使った弾幕だ。ひっくり返す、つまり弾幕を反転させている。見えない壁にでも当たったかのように、弾幕がこちらに戻ってくるのだ。
最初は焦った様子を見せた魔理沙だったが、慣れてきてからは避け方が安定してきているみたいだ。少しだけ弾がかすったのか、服に少し焦げたような跡がある。
ちなみにかすりは被弾扱いにはならず、しっかり直撃させて初めて当てたことになる。
この逆針撃というスぺカは、相手の隙を突くという点においては優れているが、特別弾幕の密度が濃いわけではない。初見殺しの要素が高い、というべきか。
うまくいけば、という期待を込めて宣言してみたが、実際に弾をかすらせるというおしいところまでは行っている。既に弾の動きに慣れられて、もう当たる気配はないが。
そうしている間に、時間切れ。結局、当てるところまでには至らなかった。
「ちっ、お前なかなか嫌らしい弾幕打ってきやがるな!危うく被弾するところだったぜ」
「その割には、余裕そうに見えるけど?」
「慣れたら意外と避けやすかったからな、こいつはお返しだ!」
魔理沙も手に一枚のカードを掲げる。自分はいつでも避けれるよう、しっかりと警戒する。
「正直初めてとは思えないほどだからな、一枚目は小手調べ程度のもので行こうと思ったが……やめだぜ、そして何よりさっきの弾幕のたちの悪さにムカついた!」
「……こっちとしては、油断してくれたほうがありがたかったけど」
「それだったらあんなスペル作った自分を恨むんだな、行くぜっ――――!」
恋符「マスタースパーク」
宣言とともに、魔理沙は手に持った何かに魔力を最大限チャージしてる。というか、この感じはやばいっ……!
自分でもわかるくらいの威圧感が、びりびりと襲い掛かってくる。
「うおおおおおっ!弾幕はパワーだぜ!!」
「ッ!?ちょっ、それはまずっ……!」
飛んできたのは極太レーザー。太いだけではなく、飛んでくる速度も相当なもの。
自分はそれをギリギリのところでかわす。チリチリチリ、と自分にも聞こえるくらいのかすり音が響く。
「一発目を避けるか!だがな……まだ終わらないぜ!」
続いて二発目。一発を避けるだけでも肉体的にも精神的にも来るのに、まだ打ってくるのか。
同じく、ギリギリのところで回避に成功する。
「……あっ!?やばっ」
レーザーを避けるのに必死で気づかなかったが、自分の目の前に一緒に飛んできていたであろう星形弾幕が来ていた。
それもギリギリで回避するも、完全に体勢を崩された。この後すぐに動くことは困難だ。
「これでラストだ、喰らいやがれっ――――!」
再び飛んでくる極太レーザー。
体勢が崩れていたせいで、一歩目が遅れる。このままでは、レーザーを避けることが出来ない。
考えろ、考えろ――――一つの手段が浮かぶ。
もうレーザーは目の前だ。
ワンチャンスに賭ける、行けっ――――!
―――
「はあっ、さすがにしんどいぜ……だけど、手ごたえはあった。きっと身体中焦がしながら気失ってるあいつが目の前に――――なっ!?」
「あっ、ぶな……賭けには、勝った……はあっ、てか身体焦がすだけじゃすまない気がするんだけど……」
勝ちを確信していた魔理沙の表情が驚きのものへと変わる。
というか、回避に成功した自分も驚いている。一瞬で考えた愚策と思われたものが、まさかの結果を生み出したのだから。
あと少し動けば何とか避けれるのに、しかし自分の身体は避けるまでには至らない。間に合わない。
だったら逆に、レーザーを動かせばいいというふざけた策。
自分の能力――――ひっくり返す、つまりレーザーの反射が理想だが、そんなものは絶対無理である。だったらせめて、ほんの少しだけ横にそれてくれればいい。
そのわずかなずらしのために、自分は全力でレーザーに対して能力を使った。結果がかする程度でギリギリの回避。正直、かすったところがめちゃくちゃ熱くて痛い。
直撃したらどうなっていたのだろうか、考えるだけでも恐ろしいものだ。
正直、ほんの少し動かすためだけに全集中を注いだ結果、自分は相当疲弊している。だが、相手もあれだけの大技を使った後のせいなのか、同じように疲弊、肩で息をしている。
好機はここだっ――――!
長期戦になったら絶対に負けるだろう、向こうも疲れているとはいえこっちのほうが消耗が激しい。
だったらと、自分は一枚のカードを手に持つ。
これを攻略されたら負けになってしまうが、それでも早く攻めたほうが勝率は上がるだろう。
逆符「鏡の中の弾幕」
自分を中心に、半径十メートルほどの球体の空間が出現する。
「な、なんだ!?って、あれ?」
もう既に魔理沙は違和感を覚えただろう。
身体が慣れる前に攻め切るしかない。自分は魔理沙に向け、弾幕を放った。
「くっそ、こんなのありか、ふざけたことしやがって!!うおっ!?あぶね、訳わかんなくなってきたぜ!?」
空間の中ではただ魔理沙に向けて弾幕を打っているだけなのだが、この中には仕掛けがあった。
ここは自分の能力を使った空間。左右が反転し、右に動こうとしたら左に動き、逆も然り。
普段ならば避けるのもたやすいであろうそこまで密度の高くない弾幕も、動きが慣れないこの中では勝手が全然違ってくる。
とんでもなく能力を自在に操っている感じこそあるが、実はこれはそこまで妖力操作は難しくない。
修行を行っていた際に気づいたことなのだが、自然的なものであったり、あるいは抵抗のない無機物などは、能力を使うのが容易いのだ。
だからこのような何もないところに、能力を使うのは意外なことに何とかなったりする。空間の中にいるもの全ては、能力の影響下だ。
これがもし、魔理沙という生きている特定の対象者に能力を使用するとなったならば、とんでもなく妖力操作が難しいだろうし、消費も激しいだろう。抵抗力が段違いなのだ。
あと、生きているものではあるが、妖精という自然が具現化したようなものにも能力が通りやすかったりもする。
ちなみに、空間の中にいる自分も能力の影響下だ。つまり、自分も左右逆になっている。まあ、もう慣れたものだが。
「ぬおおおっ……!弾幕ごっこでここまで頭使って動くのも中々ないぜ、ちくしょう!」
凄く動きにくそうにしながらも、魔理沙は弾にかすりつつギリギリのところで回避していた。
弾幕はパワーと言っていたあたり、普段は火力で押していくタイプなのだろう。故に、自分のこういう弾幕は効果が高いのかもしれない。
――――それでも、避け続けているあたり、センスというか、実力の高さが見えてくる。
時間切れである。
初の弾幕ごっこにおける戦闘は、こうして幕を閉じた。
―――
『まあ、お前もそこそこ頑張ったんじゃないのか?あの魔理沙ってやつ、お前の知識の中では割と強い部類だったんだろ?』
『そうだね、それなりに動けたと思うし、弾幕を打つほうはともかく、回避には手ごたえはあったよ』
とりあえず初戦闘に対する振り返り。疲れた。別に悔しさとかそういう類のものは特になし。
まあ、魔理沙に対してこれだけ動けたのだ。上出来なのではないか。
この時点ではどうなのかはわからないが、たぶんそれなりに上位層にいるであろう魔理沙相手に惜しい場面であったり、弾幕を回避できたりと多少の見せ場はあった。悪くない。
だが、相性としてはかなり自分にとっては良かったであろうはずの魔理沙にも勝てていないという現実もある。
自分はかなり弱者だと思っていたが、極端な下位層でもないのかもしれない、くらいの感触はあった。
だが、上位層には相性が良かろうと結局勝てていないわけであって。実力不足を実感する。
「はー、お前、正邪だっけか。結構手ごわかったぜ。出来れば二度と戦いたくない相手だな」
「ま、弾幕ごっこ、初めて対戦できてよかったよ。じゃ、さよなら」
「おいこらちょっと待て」
魔理沙に掴まれた。くそ、逃げれなかったか。
「何さりげなく逃げようとしてるんだ、知っていること教えてほしいぜ」
「あー、まあ……しょうがないな。この霧は多分どっかの吸血鬼が出している、以上」
「……それだけか?って、まあ吸血鬼ってピンポイントな情報があるだけ十分か」
「知っていることはこれだけ。どこに住んでいるかはわからないし、吸血鬼がどんな奴かも知らないし、異変の意図も知らないし」
吸血鬼に関しては微妙に知っているので若干嘘も交えているが、まあこれだけ教えれば十分だろう。
というか、本当に疲れた。最初は興味があって近くまで探索する気でいたのだが、今は何よりも帰って寝たい。
「なるほどなー、吸血鬼か……厄介そうな相手だぜ」
「なんで異変の元凶のいる場所に行きたいのかは知らないし、事情も聞く気はないけど、ま、精々頑張ってってことで」
まあ、何だかんだ自分が寝ている間に、異変は解決されているのだろう。たぶん。
今日はこうして魔理沙という人物に出会えたこと、スペルカードルールでの戦闘を行えたことと、中々の刺激に巡り合えたのでそれなりに楽しい一日であった。あとは帰って疲れを取るだけだ。
……あれ、おかしいな。帰ろうとして動こうとしているのに、動けない。あれー?
「どこ行くんだぜ」
「帰る」
「ま、ここまで来たなら付き合えよ。旅は道連れってな」
「その理屈はおかしいと思うんだけど、というか吸血鬼のいる場所なんて行きたくないからその掴んでいる手を放してくださいお願いします」
「問答無用だぜ!」
「ちょっ、まっ」
どうしてこうなった。
手を振りほどく気力もない。振りほどいたところで、しつこくまだ引っ張るだけだろう。もうだめだ詰んでる。
このままではいずれ吸血鬼のところにたどり着いてしまうだろう。
仮に戦闘になっても、弾幕ごっこって死ぬ要素少ないよね?マスパ喰らったら死んでたかもしれないけど、死ぬ要素少ないよね?
『……諦めろ。頑張れ』
『もうやだ帰りたい』
普段自分を応援することなど滅多にない正邪の応援が、余計に悲しみを増長させた。
原作でも使用されているスぺカですが、ゲームの画面上でのあれだと説明できないというか、どうやっても書けないので自分で何か適当に考えたり、オリジナリティーが含まれていたりします。正邪の弾幕とか特に特殊すぎて難しい。
正邪って自分で弱者って言ってるけど、原作の謎の強さだったり、弾幕アマノジャクで逃げ切ったりと、意外とやれるやつなんじゃないかなあと個人的には思う。まあ、強者と言われたらたぶん違うんですけどね。