『鬼人正邪になった者』のお話   作:たぬさわ

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結構色々すっ飛ばしてる。
妖精や妖怪なども大体は一人でカウントしてます。一匹とか、一体とかでも迷ったんだけどね。


紅い建物への侵入

「ねえ、なんで魔理沙は異変解決をしようと思ったの?」

 

 単純に気になったから聞いてみた。

 

 

 

 現在、自分たちは紅い霧の発生場所を探しつつ、飛行中。飛ぶのがだるいので、魔理沙の箒に乗せてもらっています。そのほうが早いし。

 

 

 

「おー?そうだな……正邪は博麗霊夢って知ってるか?……さすがに知ってるよな」

「歴代でもトップクラスの実力を持った、天才巫女でしょ」

「そうそう、そいつはまあ博麗の巫女なわけで、こんなことが起きたからには異変を解決しに行ってるわけだ」

「それで何の関係が?」 

「あいつとは友人であり、ライバル……いや、まあライバルに関してはこっちが勝手に思ってるだけかもしれないが、要するに負けたくないっていうか、なんつーか……」

「異変解決でも先を越されたくないと?」

「そう!それだぜ」

 

 

 

 この幻想郷に住む者なら誰もが知っている人物、博麗の巫女。

 そしてその今代の巫女である博麗霊夢。かなりの天才で、人間なのに大妖怪にも引けを取らない強者と聞く。まだ、実際に見たことはないのでわからないが。

 

 

 

 自分の知識の中では霊夢は最強の一角における人物なのだが、実物はいったいどうなのか。

 まあ、こうして魔理沙がライバル視しているということは強いのだろう。

 

 

 

「異変解決の手柄とか、ぶっちゃけそういう類のものはどうだっていいんだ。あいつには負けたくないってだけの話だぜ」

「その博麗の巫女は、やっぱり強いの?」

「真面目に戦っても、向こうが九割以上は勝つだろうな。仮に勝ったとしても、まだあいつは本気を出しているのかわからないってのが恐ろしいところだぜ」

 

 

 

 なんだそれ、ぶっ壊れている。

 魔理沙もかなりの強者だ。それは戦った自分が身に染みてわかっていること。自分がもし魔理沙とまた戦ったとして、今のところ初見殺しのスぺカでワンチャンスあるか、相手のスぺカを避け切るかくらいしか勝ち目が見当たらない。

 

 そんな魔理沙相手に、ほぼ勝ちを収める博麗の巫女。自分が戦ったら視線が合うだけでやられてしまうのではないか。

 

 

 

 しかしまあ、よく負けたくないという気持ちだけで、こんな危険なことに足を踏み込むもんだ。自分ではそんな気にはなれない。だから今すぐにでも帰りたい。……無理か。

 それはいいとして、魔理沙はよっぽどの負けず嫌いな性格だということがわかる。何をきっかけにそんなライバル視したのかは知らないしどうでもいいが、本当に博麗の巫女には負けたくないのだろう。

 

 

 

「異変を起こした奴がどんな奴だとか、まあ興味を持ったり面白そうとか思わないこともないが、それよりも負けたくないって気持ちのほうが強いことは確かだな」

「なるほどねー。で、なんで私をこうして引っ張ってまで連れまわしてるわけ?」

「ん?それはもちろんそのほうが面白そうと思ったからだぜ!」

「おいこらふざけんな」

 

 

 

 言っていることが違うぞこの白黒。君は黙って負けたくない一心で異変解決を頑張ってください。自分のことは明らかに何らかのスパイス的な何かと思って連れまわしてるだろこいつ。

 

 

 

「って、お?霧で近くまで来ないとわからなかったが、あんなところにでっかい建物があるぜ」

「というより、この辺明らかに霧の濃度が上昇している」

「ということは、あそこが親玉の居城か?しかし、霧のせいで時間間隔が麻痺してたけど、結構夜に近づいているみたいだな」

 

 

 

 魔理沙の言う通り、結構な時間が過ぎていたみたいだ。夜という時間は、吸血鬼を相手にするのならば危険すぎるのではないだろうか。

 というより、絶対あそこ敵の本拠地だ。やばいやばい、逃げたい。

 

 

 

「さて、準備はいいか?」

「帰っていい?」

「じゃ、行くぜ」

「ねえ、話聞いてる?……聞いてます?」

 

 

 

 会話のキャッチボールが出来ない相手というのは本当に不便であると改めて感じさせられた一瞬であった。

 もう、腹をくくるしかないのか。何事も起こらないことを祈るばかりである。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「しかし、建物の中も真っ赤とは悪趣味なやつだぜ」

「趣味はそれぞれの好みもあるからどうでもいいけど、目が痛くなるのは嫌だ」

「まったくだぜ。っと、そんなことより急がなくちゃな」

「もうすでに私たちの他にも侵入してる人物がいそうだもんね。魔理沙の予想では、それが博麗の巫女と」

 

 

 

 実は、すでに自分たちも建物の中へと侵入している。

 

 

 

 異変を起こしたであろう人物のいる建物である、普通なら門番の一人くらいはいてもおかしくないはずなのに何故もう中に侵入できているのか。いや、実際に門番はいたのだ。

 だが、その門番は既に何者かに倒された後なのか、気を失っていた。ということは、自分たちよりもすでにこの建物の中へと、それも正門から堂々と侵入したものがいるということになるだろう。

 

 

 

 それが、博麗の巫女なのではないかと推測する。 

 

 

 

「こうなったら急ぐしかないぜ、紅い霧が出ているということは首謀者はまだ倒されてはいないはずだ」

「まー、私としては誰がどうしようが別にどうでもいいし、急がないで誰かが解決するの待ってたいんだけど」

 

 

 

 自分としてはどっかの部屋にでも籠ってやり過ごしていたいくらいだ。

 下手に動いて、強者と戦うことになるなんてことは避けたい。

 

 

 

「まあまあ、せっかく来たんだし私を手伝って……おい、どうやらやりたくなくても急がなきゃいけない理由が出来たみたいだぜ?」

「ん?何言って……あっ」

 

 

 

 後ろを振り向くと、魔理沙の言っていることを理解してしまった。

 そこには、大量の妖精メイドたち。明らかに侵入者である自分たちに対して、敵意を向けていた。

 

 一人の妖精メイドが弾幕を放ってきたのをきっかけに、大量の弾幕がこちらに飛んできた。

 スピードはそこまで早くなかったりと質そのものは大したことはないが、量に関してはすさまじい。

 

 

 

「ちっ、一人だけなら大したことないが……面倒臭いな、ここで力を使いすぎるのもまずい気がするぜ」

「厄介な弾幕こそないけど……っと、量だけは、多い、ねっ!」

 

 

 

 攻撃を避けながら、弾幕で妖精メイドを少しずつ撃ち落としていく。

 撃退こそ出来てはいるものの、数が減っている気配がない。それどころか、応援やらで増えている気すらしてくる。

 

 

 

「きりがないぜ!おい正邪、いったん私の箒の後ろに乗れ!」

 

 

 

 魔理沙が提案する。恐らくは、一回ここを離れるといったものだろう。

 自分が飛ぶよりも魔理沙が飛ぶほうが圧倒的に早いので、すぐにその提案通り動く。

 

 

 

 そして魔理沙は全力でその場から逃げ出した。妖精メイドなんかでは、全く追いつけない速さで飛ばしていく。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「とりあえずは、撒けたみたいだな……あー、思っていた以上に面倒な場所だぜ」

「今は妖精メイドがいない場所にこれたからいいけど、時間の問題だと思うよ。どうするの?」

 

 

 

 ようやく妖精メイドを撒くことに成功し、何とか一息おける場所へとたどり着いた。

 しかし、この場所にもすぐに新手の妖精メイドが駆けつけてくるだろう。

 

 

 

「あー……どうすっかな、入口からはだいぶ離れちまったし、とりあえずは探索するっきゃないな……」

「まあ、手段としてはそうするしかないだろうね」

 

 

 

 思っていた以上にこの建物の中は広い。というか、明らかに広すぎる。

 外から見ても大きい建物だとは思っていたが、それ以上に広いのだ。魔理沙がスピードを出して逃げても、建物の中をまだ回り切れていないほどには。

 

 

 

「……まあ、今更だけどさ。なんか、悪いな」

「本当に今更だね。いきなりどうしたの?」

「いやー、ちょっと正直思っていた以上に襲撃喰らったことにびっくりしててさ。舐めていたつもりはないんだが、それでも何とかなるだろうという楽観的なところはあった。だからこそ、正邪を連れまわしても大丈夫かなって勝手に思っていたんだが」

「大丈夫ではなかったと?」

「……まあ、そういうことだ。だから謝る。悪い」

 

 

 

 舐めていたつもりはないと言っていたが、まあ、心のどこかで舐めていたのだろう。つもりというのは、言い訳を言う際に本当によく使われる都合のいい言葉である。

 もちろん、完全に舐めていたわけではないだろうし、この謝罪も本心からのものなんだろうけど。

 

 しかし、本人の言う通り今更過ぎる。

 もうこれだけ騒ぎを起こしているのだ。今から建物を出て帰りたいと言っても、無理な話になる。入口も妖精メイドたちが守りを固めて侵入者が出れないようにしているのは容易に想像できることだ。

 

 

 

「別に、謝ったところで何かが変わるわけじゃないしどうでもいいかな。それよりも、現状をどうするかが問題」

「……それなんだけどさ」

 

 何かいい考えがあるのだろうか、魔理沙が話を切り出してくる。

 

 

 

「こっからは、別々に行動しよう。私は探索を続けたいが、正邪はそうじゃないだろ?部屋っぽいところは逃げてる間にもいくつか見かけたし、お前はそこで隠れてやり過ごすのがいいと思うんだ」

「あー、まあ……って、ん?」

 

 

 

 まあ、隠れてやり過ごす。その案は自分にとっては悪くない案だとは思う。

 だけど、魔理沙さん。なんで今すぐここを離れようとしているんですか。なんでもう行く気満々で箒に跨っているんですか。

 

 

 

「とりあえず私は行くぜ。どうやら向こうに図書館らしき場所があるみたいだからな、そっちを探索してくるぜ」

「……あのさ」

「じゃあな!正邪、健闘を祈るぜ」

 

 

 

 いや、人の話を聞け。

 魔理沙は私を置いて、図書館があるらしい方向へと猛スピードで飛んで行ってしまった。

 

 

 

 いや、確かに急ぎたい魔理沙の気持ちも勿論わかるし、別々の行動を取るというのもわかる。

 でもさ、普通はこっちの身の安全を確保してからでもいいんじゃないかな?

 

 今の自分にとって、何が最も危険なのか……普通に考えて、一人でいる時に敵に囲まれることである。それならまだ、敵に追われてても魔理沙とともに行動してたほうがマシだった。

 

 

 

「……あんの、バカッ!!!少しは、こっちの話を聞けあほっ!!!」

 

 

 

 キレそうというか、泣きそうというか、何とも言えない気持ちになった自分は、思わず叫んでしまった。

 それがいけなかった。大声に気づいた妖精メイドが、こちらへ向かってきたのだ。馬鹿は自分だった。

 

 

 

『災難すぎるな、お前を見てるとこっちまで悲しくなってくる』

『正邪、自分は生きて帰ることができるのかな……』

『……ノーコメントで』

 

 

 

 正邪さん、それ半分諦めてませんか?

 再び、妖精メイドとの追いかけっこが始まった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 とにかく自分は逃げる。色々部屋はあるのだが、常に追われている状態なのですぐにどこに隠れたのかばれてしまうことから、入ることはできなかった。

 完全に追っ手を撒いてから、隠れなければ意味がない。逆に、行き止まりで追い詰められてしまう。

 

 

 

 さて、ここはどこであろうか。少なくとも、魔理沙とは別の方向に向かったので図書館ではないことはわかる。

 もう必死なので、今いる場所が全然わかっていない状況である。

 

 

 

 自分が不安に思っていることは、今のように妖精メイドに追われるくらいなら辛いけどまだ何とかなる。

 それよりも、他の誰かに出会ったらどうしようか、そこが一番辛いところだ。どうしようもない状況に陥る可能性だってある。

 

 

 

『分かれ道が三つ……?』

『本当にここは建物の中かよ、さすがに広すぎじゃないか?』

 

 

 

 建物の中だというのに、そこには十字に分かれ道が続いていた。つまり、左に行くか、真っすぐ行くか、右に行くか。

 今はぎりぎり妖精メイドの視線では捉えきれないくらいの距離位置にいる。だったら、左右のどちらかに進んだほうが撒きやすいと考え、とりあえず右を目指そうとし――――

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 ――――やめた。

 そこでは二人の人間が戦っていた。巻き込まれてはいけない、そう思って急いで左の道へと進路変更する。

 

 

 

 そのとき、自分に向かって一本のナイフが飛んできていた。

 それに自分は気づくことが出来ず、しかも完璧な軌道でこちらに向かってきていた。

 

 

 

 ――――結果として、それは自分に当たることはなく、そのままの軌道でナイフが反射した。

 

 

 

 飛んで「きていた」という表現は、自分に当たってから気づいたからだ。

 ならば何故、直撃を避けることが出来たのか。

 

 

 

 自分の能力――――ひっくり返す、つまりは反射。自分に能力をかけ、来たものをそっくりそのまま返すように設定していたのだ。

 ぶつかったナイフ、いやぶつかるはずだったと言うべきか。そのナイフはそっくりそのままの力で反射したということになる。

 

 

 

 これだけならば、何でも跳ね返す最強の防御に見えるかもしれない。だが実態としては、そこまでのものではない。

 

 というのも、まずこの能力はかなり燃費が悪く、一度だけ跳ね返すためのシールドを張ったとしても、それだけでかなりの妖力を消費する。実際自分は、保険として一度分しか能力を展開していなかった。

 一度しか、ということはもしあのナイフが大量に飛んできていたならば二撃目からは直撃していたということになる。

 

 もちろん、一撃だけに関するならばかなり強力なシールドだ。最も、強すぎる力ならばそのまま押しつぶされる可能性もなくはないが。これに関しては、検証したこともないのでわからない。

 

 

 

 ナイフが一本しか飛んでこなかったのは本当に幸運だった。恐らく、戦っていたためにナイフを投げる余裕というものがなかったのだろう。

 逆に言えば、戦いながらでも侵入者を仕留めようと一撃を入れてきたのは、かなりの強者である証拠でもあるのだが。

 

 

 

 とにかく自分は逃げる。あの戦っていた人間二人ともだいぶ離れ、ようやく妖精メイドも撒けた。

 ならば、近くにあった部屋に入り、身を隠すことに専念すべきだ。撒いたと言っても、すぐに追っ手は来るのだから。

 

 

 

 誰の部屋かは知らないけれど、中に入りすぐに扉を閉める。

 誰もいなければ、ここでしばらく休憩が出来る。

 

 

 

 

 

 ――――突如、凶悪とも呼べる圧力が、自分を襲った。

 

 

 

 これはやばい、まじでやばい、出来るならば、現実から目を背けたい。

 別に相手の妖力やら霊力やらを認知するのが得意ではない自分がわかるというのは、裏を返せばそれだけやばいということ。

 

 少なくとも、それだけで純粋な力だけで計るならば、魔理沙以上ということ。

 

 

 

「――――いらっしゃい、侵入者さん?」

 

 

 

 そこには、立派な蝙蝠の羽のようなものを携えた、小さくも強大な吸血鬼が存在していた。

 

 

 

 ……これ、本格的に終わったかもしれない。




いきなりクライマックスである。
せっかく図書館→地下室フラグをへし折ったのに、この結果である。

正邪の反射についてはとあるシリーズの一方通行さんを思い浮かべるとわかりやすいかもしれないです。わからない人はまあ……ググるなりなんなり。勿論常時発動型なんてチートなわけもなく。
書きながら思ったのが、木原神拳出来る人って幻想郷には案外いそうだなあ……って思った。
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