『鬼人正邪になった者』のお話   作:たぬさわ

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そのまんまのタイトル。
針妙丸のサイズは、イメージとしては普通の人間の膝下くらいのサイズだと思ってくれれば。虫かごサイズではないです!


正邪と針妙丸

「この度は助けていただきありがとうございます、あのままだったら私は凍死していたでしょう。えっと……本当にありがとうございます、お礼は私にできることならば、何でも」

「あー、いらない。そういうの本当にいいから。別に感謝されたくて助けてわけでもないし、何もする必要はない」

「えっ、でも……」

「……ただの気まぐれだよ、だからそっちは変な奴がいてラッキー程度に思ってればいいんだ」

 

 

 

 数日後、気を失っていた小人が目を覚ました。まあ予想はしていたのだが、この小人の名前は小名針妙丸であった。目を覚ました後に、名前を聞いたらそう名乗ってくれた。

 そしてその後は、このお礼ラッシュときたもんだ。

 

 

 

 しかしなあ、今更だけどまさかあんなところで遭遇するとは思ってもいなかった。

 てっきり、小人族の住処みたいなところがどこかにあって、そこに住んでいるのだとばかり思っていたけれど。

 

 

 

 そもそも、その小人族の住処ってどこなんだろう。確か、小人族って打ち出の小槌を使いすぎてどっかの世界に幽閉されたんだっけ?

 でも、目の前に小人族である針妙丸がいるってことは、それは昔の話であって、今は関係ないってことなのかなあ。

 

 

 

 

 

 ……まあ、今はそんなことはどうだっていいか。それよりも、どうしようこの空気。だんまりである。

 いや、確かに気になることは結構あるんだけど。いったい、何から聞けばいいのやら。

 

 

 

「……あ、あのっ!」

「ん?」

「やっぱり、ここにいたら迷惑でしょうか……?」

 

 

 

 ちょっと涙目でそんなことを言われた。何だこのかわいい生き物。

 

 

 

「……別に、そんなこと思ってるんならそもそも拾ってなんか来ないし。住みたきゃ住めばいい」

「……あ、ありがとうございます」

「あ、あと敬語とか無しで。他人に敬語で話されるの、好きじゃないんだよね、上に見られているみたいで。そんな大した存在じゃないのにさ」

「……う、うん」

「うん、それでいい」

 

 

 

 ちょっと納得していない様子だったが、言葉遣いを変えてくれたみたいだ。

 紅魔館のメイドみたいに、職業上というかそういう敬語は別に気にならないんだけど、面と向かってこうやって敬語で話されるのはどうもなあ。

 

 

 

「……なんで針妙丸はあんなところで倒れてたの?」

「えっと……実は、ちょっとした出来事がありまして」

「敬語」

「で、出来事があって……正邪は、これが何かわかるかな?」

 

 

 

 そう言って針妙丸は懐から小さなハンマーみたいなものを取り出した。実際にそれを見たことは今までなかったが、それが何なのかは何となく予想がついた。

 

 

 

「これ、打ち出の小槌って言うんだ。これには特殊な力が込められているみたいで、そしてそれを私は使うことが出来るみたいなの」

「……みたい?随分と特殊な言い回しをするもんだね」

「えっと、私にもよくわかっていなくて……実は私、特殊な空間に住んでいたんだけど、この小槌を持ちながらそこから出たいと願ったら、別の場所に出れたみたいなんだ」

「特殊な空間?……まあ、そこはいいや。それで、つまりはその小槌を持ちながら思いを込めたら、思った通りの出来事が起きたと?」

「うん、それで出れたはいいんだけどどこに行けばいいのか全くわからなくて、気が付いたら道を通った動物に蹴られて気を失い、雪に埋もれていたみたいでそのまま」

「……情けないな、それ」

 

 

 

 動物に蹴られてそのまま凍死とか、物凄くダサい。まあ、何はともあれこうして死を回避出来たという事か。

 というか、話を聞いているだけだと気になる点がいくつか浮上する。

 

 

 

「その小槌の力で空間から出れたって言ってたけどさ」

「うん、そうだよ」

「さらにその小槌の力で現状を打破しようとは、思わなかったの?」

「……それも勿論考えたけど」

「……何か理由があるということ?」

「いや、明確な理由ではないのだけれど。……それを使いすぎると、何か嫌なことが起きるんじゃないかと感じたの」

「……ふーん」

 

 

 

 なるほど、要するに何となくってことか。

 この何となくっていうのは一見適当にも見えなくもないが、強者になればなるほどこの力が優れている気がしなくもないんだよね。

 

 

 

 自分はこの小槌の断片的な知識を所有している。使いすぎると、副作用が発生するのだ。

 それを直感で回避している針妙丸はそこの直感力というか、優れているようにも見える。小人の身でありながら、鬼を退治した一寸法師の才能を所持しているのかもしれない。

 

 

 

「ちょっと、それ借りていい?」

「え?う、うん」

 

 

 

 そう言って、針妙丸から小槌を借りた。

 

 

 

 

 

 酒、たくさん出てこいー。

 

 

 

 

 

 ……出てこない。

 

 

 

「……返すわ、ありがと」

「ん?正邪はいったい、何をしたの?」

「……使えるかどうか確認しただけだよ、どうやら私には無理なようだ」

 

 

 

 やはり自分は扱うことは出来ないようだ。これを使うことが出来るのは、恐らく針妙丸だけか、もし他に小人がいるのならそいつらくらいしか使えないだろう。

 

 

 

「ま、大体のことはわかったよ。小槌は針妙丸にしか使えない、そしてそれには使いすぎると反動があるかもしれないと」

「そうだね、そういうことになるのかな?」

「……ふーむ」

 

 

 

 他に何か話すことはないかと色々考えてみたが、今のところは特に思い浮かばなかった。

 

 

 

「ま、話はそんなもんかな。何もないけど無駄に広い洞窟だから住みたきゃ勝手に住んでいいよ、自分のことは自分で適当にやってね」

「……ね、ねえっ!」

「ん?あ、どっか別のところに住みたいとかは無しね、そういう宛とか無いから」

「いや、そんなことない、むしろここに住みたい!いや、そうじゃなくて……」

「なんだなんだ」

 

 

 

 目の前にあたふたしながら喋る小人が。どんだけ慌ててるんだ。

 

 

 

「あの……改めて、ありがとう!正邪は、優しいんだね」

「……どこが?」

 

 

 

 さて、今の流れに優しさの要素などあっただろうか。拾ってきたことに関して礼を言われるのはわからなくもないが、そこを言っている感じでもないし。

 というか、自分は一応これでも天邪鬼である。極端にひねくれているとは思ってはいないが、少なくとも優しい存在ではないことは確かなはず。

 

 

 

「対等に見てくれているところ……かな?」

「対等って、だって別に上にも下にも見えないし」

 

 

 

 人によっては苛々する言い方のような気もするが、思っていることだからしょうがない。というか、考えてみると格上にも格下にも表面上は対等に接するかもしれない。

 理由としては格上には単純に舐められたくないし、格下にはビビられたりしても面倒くさいからだ。……いや、格下がいるのかどうかはわからないけどさ。もしもの話であって。

 

 

 

「……私たちの一族はこんな姿だし、強い力も無いから結構舐められたり虐げられたりすることも多かったんだ。だけど、正邪は同じ目線で見てくれるから」

「そこに関しては、私は姿だけで判断する馬鹿じゃないってだけの話だ。優しさ云々の話じゃない」

 

 

 

 確かに小人はかなりマイナーな種族だと思うし、全般的には強いカテゴリーには入らないだろう。

 だが、一寸法師のような例外もあるのだ。見た目だけで弱者と判断するのは馬鹿だけである。

 

 

 

 ……まあ、気を察知する力がある者からすれば、一発で強いか弱いかわかるのかもしれないけど。自分には出来ません。

 

 

 

 

 

「……やっぱり、正邪は優しいね!」

「……もういい、勝手にそう思ってればいいよ」

 

 

 

 もう反論するのも疲れました。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 もはや日課となっている特訓をしようと外に出ようとしたら、針妙丸がついていきたいとの話。

 それに関しては断る必要性も特にないので、来たければ勝手に来ればいいと了承の返事をする。

 

 

 

 そしてふと一つの疑問が浮かび上がったので、針妙丸に訪ねてみることにしてみた。お前って戦えるの?みたいな感じで。

 強くはないけれど、戦えないことも無いらしい。気になったので、早速弾幕勝負をしてみることに。

 

 

 

 

 

 確かに、本人の言う通り強いわけではなかった。だが、どこか上手さを感じた部分はある。

 弾幕が速いわけでもなく、力強さがあるわけでもないのだが、配置とか、頭を使った攻撃をしてくるといった印象を受けた。

 

 

 

 自分が知っている限りでは、いなかったタイプだ。魔理沙のような脳筋でもなく、レミリアのような完璧に近いようなタイプでもなく。

 テクニックがあると言えばいいのか。少し変わったタイプである。

 

 

 

 勝負自体は、引き分けに終わった。と言っても、自分も能力を使わず通常弾幕だけで戦ってたし、スぺカも特に使ったりはしなかった。

 それは向こうにも同じことが言えるとは思うが。自分も能力を使えば弾幕を連続で当て撃ち落とすことも可能だと思うし、向こうも小槌を使えば比べ物にならないくらい強かっただろう。

 

 

 

 ……というか、通常弾幕だけだと相手が小さくて全然当たらないんだよ。引き分けの要因は、そこにもある。

 

 

 

 

 

「楽しかったー!正邪との弾幕勝負、とても有意義な時間になったな」

「別に遊びでやってたわけじゃないんだけどね、まあいいか」

 

 

 

 楽しさはともかくとして、針妙丸に同意できる部分として有意義な時間になったという点が挙げられる。

 やはり対人戦は、結構な刺激になるのだ。今後は特訓の相手として付き合わせるのもいいかもしれない。

 

 

 

 この後は……どうしようか。特訓は今日の所はここまでにするとして。

 今日は夜にレミリアと飲みに行く約束をしていたのだが、時間的にまだだいぶ先の話である。それまで、何をして時間を潰そうか。

 

 

 

 ……夜まで寝てようかな。ずっと外にいるのも寒いし。

 

 

 

「ねえ、正邪」

「ん?」

 

 

 

 そんなことを考えていたら、横にいた針妙丸に声をかけられた。

 

 

 

「ちょっとこの辺の事、教えてもらってもいいかな……?迷惑じゃなければだけど」

「この辺?……ああ、そういう事か」

 

 

 

 針妙丸はこの辺の地理を恐らくほぼ何もわかっていない。だからこそ、こうやって自分に尋ねてきたのだろう。

 どこか遠慮がちなのは……たぶん、最初に自分の事は自分でやれって言ったからであろうか。

 

 

 

「……まあ、いいや。暇だし、ただ面倒くさいから一回しか教えないから」

「……うん、ありがとう正邪!」

 

 

 

 これで夜までの時間は潰せるだろう。と言ってもこの辺は比較的安全な土地なので、どこに注意しろとかも特に無いんだけどね。

 ついでに久々に魚でも獲りに行こうか。一度洞窟に戻って、釣り竿でも持って行こうかな。

 

 

 

 針妙丸にある程度の事を教えればこっちの分の食料も今後取ってきてくれるんじゃないかと一瞬期待したが――――やめた。

 冷静に、そんなに食料持てないと思った。魚釣りしたら逆に魚に食われてそう。大きな木の実が上から落ちてきたら、潰されてそう。

 

 

 

 ……うん、期待は出来ない。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、針妙丸に適当にここら一帯を案内してあげた。

 まあ、何だかんだ弾幕勝負をした感じでは、ここら辺なら自衛能力は十分だと思うし、放っておいても大丈夫だろう。

 

 

 

 さ、そろそろ飲みに行くいい時間かな。

 針妙丸は……置いていこう。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 針妙丸、という存在が身近に来たことによって、ふと考えてしまうことがある。

 

 

 

 異変って、起きるのだろうか?いや、自分が起こすことがあるのだろうか?

 それは自分だけではなく、中の正邪も感じていることだ。別に今の段階では、針妙丸を利用して何かをしようとは特に思わないのだから。

 

 

 

 針妙丸は小槌を進んで使おうとはしていないが、こっちが適当に言えば協力はしてくれる気がする。

 天邪鬼は他人からの敵意だったり、そういったものが大好きな種族であり、その感情に関してはとても敏感だ。更に言えば、その真逆である好意に関してもとても敏感なのだ。

 

 

 

 針妙丸は、自分に対してかなりの好意を抱いていると感じている。別に特に何かしたわけではないと思うのだが。

 だから、利用しようと思えばいくらでも利用することは可能である、というのが現状だ。しかも、小槌の力というかなり強力な力を利用できるのだ。

 

 

 

 ……いやー、それなら小槌の力でたくさん酒を出してくれーって頼んでしまうかも。マジで。

 それほど今の自分は小槌の力を利用して何かしようとは思っていないということである。異変を起こす気は本当に無い。

 

 

 

 

 

 ……もし、異変が起きるのなら。

 それは、自分が進んで異変を起こしにかかっているのだろうか?それとも、もっと別の何かなのだろうか?

 

 

 

 

 

 ……今の自分に、わかるわけないか。




次回こそ、本当に酒回の予感。

結構色々調べながらやってはいるつもりなんですけど、それでもわからない部分もあるんですよね。小人族は閉じ込められたらしいけどいつ出てきたとか、何で正邪はもともと小槌の能力を知っていたのだとか、謎な部分がいくつか。そこは結構、独自設定とかでごまかしに走るかも。

いや、もしかしたらこっちの調査不足で本当はこういうエピソードがあるとか、見逃している可能性も無くはない。
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