はじめての投稿になります。
よろしくお願いします。
Turn01
少女はむむ、と手札と卓上を眺めた。
(伏せカードが怖いなぁ…)
相手の少年のフィールドには、攻撃力2500の《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》と伏せカードが1枚。 ライフは1200、手札は2枚。
対して、少女ののフィールドにモンスターはいない。 かろうじて伏せカードが1枚あるだけだ。 ライフは600、手札は3枚。
ボードアドバンテージもライフも、圧倒的に少女が不利な状況だった。
「私のターン、ドロー! ・・・!」
しかし、いま引いたカードをみた少女の口元が、にんまりと弧を描いた。
「・・・お前、なに引いた?」
そして、それに気づいたのだろう。少女の前に座る少年は、ひくりっと顔を引き攣らせた。
「んー?」
対してにこにこっと笑う少女は、引いたカードを相手に見せた。
「はっ?おまっ、ここでそれ引くか!?」
「だって来ちゃったんだもーん!そんなの私の管轄外だ(`・ω・´)キリッ」
「“だもーん”、じゃねえよ!!てかその顔やめろ!!」
「はいはい、それじゃ行くよー?スタンバイフェイズ、メインフェイズ1。私はいま引いた《貪欲な壺》を発動!墓地のモンスター、《アーマード・ウィング》、《アームズ・ウィング》、《月華竜ブラック・ローズ》、《カルート》2枚の5枚をデッキに戻してシャッフル、そして2枚のカードをドロー!・・・よしっ、私は《
「・・・マジかよ」
ほんとありえねえ、と呟く少年。
「・・・通す」
こくりと相手が頷いたのをみて、少女は次に墓地に置かれたカードへと手を伸ばした。
「続いて墓地の《BF-精鋭のゼピュロス》の効果発動!自分フィールドの表側表示のカードを1枚手札に戻して、墓地からゼピュロスを墓地から特殊召喚する。そして私は、ライフを400払う」
「ぐっ…!」
「私は、ブラストを手札に戻してゼピュロスを特殊召喚!」
これで少女のライフは200。
「ここまでで何かある?」
「・・・・・・・・・いや、なにもない」
首を横に降る相手を確認して、少女は手札へと目を向ける。
「それじゃ、私はさっき手札に戻した《ブラスト》を今度は特殊召喚。ブラストは自分フィールドにブラスト以外の《
「レベル4が2体ってお前まさか・・・・・・」
「そのまさか!私は、ブラストとゼピュロスでオーバーレイ!」
エクシーズ召喚を宣言した少女は、右手をエクストラデッキへと手をやる。
「漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙、いま降臨せよ!」
「げっ」
口上を口にした途端、少年は顔をしかめて嫌そうな顔をした。しかし、少女にとってそんなことは関係ない。
むしろ、彼女はここできめなきゃこちらが負けると予感していた。そのため、手は抜かない。
「エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」
格好よく召喚口上まで言い、少女は自分のフィールドに《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を召喚した。最近の少女の、もっぱら一番のお気に入りのカードの登場の瞬間だった。
「来たか・・・《ダベリオン》の効果は厄介だからな・・・」
なにせレベル4が2体という緩い素材指定。そしてその効果は、どんなに攻撃力が高いモンスターでも確実に破壊出来る。そのため、ほぼどんなデッキにでも入っているようなカードだ。
「だから・・・このままダーク・リベリオンの召喚を通すわけにはいかねぇな・・・ってことで罠発動、《奈落の落とし穴》!!悪いな、ダーク・リベリオンを破壊、除外させてもらうぜ!」
「そうはさせないっての!こっちだってこれ通んなきゃ負けるんだから!」
少女は言い、手元に伏せていた唯一のカードをひっくり返す。
「奈落の落とし穴にチェーンして、私はカウンター罠《神の宣告》を発動!ライフを半分払って、奈落の発動を無効にして破壊する!!」
「は!?おい、ちょっ、まじかよ!?」
少年は驚愕に目を見開いた。が、少女にとってはマジも大マジ。そして、まだこれだけでは終わらないとばかりに、手札のカードをデュエルフィールドに置いた。
「さらに私は手札から速攻魔法《禁じられた聖杯》を クリアウィング・シンクロ・ドラゴンを対象に発動!攻撃力を400アップさせて、ターン終了まで クリアウィングの効果を無効にする!」
「うげっ!」
「クリアウィングの効果は、モンスター効果にしか対応出来ない!」
だから、聖杯の効果は無事に通る。
これで相手のフィールドには効果が無効になったクリアウィング・シンクロ・ドラゴンだけ。 あとは相手の手札に《エフェクト・ヴェーラー》なんかの手札誘発の効果無効カードがないのを祈るしかない!
「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除いて、相手モンスター1体の攻撃力を半分にして、その分の攻撃力を得る!トリーズン・ディスチャージ!!」
「あー…」
お前ほんとありえねぇ・・・と項垂れながらも、相手の少年が効果を通したことに、少女は「よしっ!」と内心ガッツポーズをした。
どうやら少年は、手札に《エフェクト・ヴェーラー》を握ってはいなかったらしい。
これでダーク・リベリオンでエクシーズ・ドラゴンの攻撃力は 3950。対するクリアウィング・シンクロ・ドラゴンの攻撃力は、2900の半分の1450。
「それじゃ、じゃあバトルフェイズ!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンでクリアウィング・シンクロ・ドラゴンに攻撃! 反逆のライトニングディスオベイ!!」
そして、相手のライフが0になった。
「やったあ!私の勝ちー!」
「くっそぉ!」
「んじゃ約束通りポテトとドリンクMおごってねん♪」
「ちぇっ、わーったよ!」
カバンから財布を取り出して、少年は席を立った。
少女たちが今いるのは、学校の近くのファーストフード店。そこで『遊戯王』のカードで遊んでいたーーーいわゆる「デュエル」だ。
少女の名前は
実はこの2人、大の「遊戯王」好き。そして、負けた方が「好きなものを奢る」という賭けデュエルをしていた。結果、最後の最後で姫が大逆転して、和也にポテトと飲み物をお願いした…というわけだ。
「ほらよ」
「ごちそー様♪」
「おう」
ストローに口をつける。しゅわしゅわっとした炭酸が、姫ののどを刺激していく。
「にしてもお前、あそこで《神宣》はねーだろ・・・」
はあ・・・とため息をつく和也に、姫は苦笑した。
「いや、本当に危なかったんだよ・・・あれ、実は伏せたターンで引いたんだよね」
「は?」
「クリアウィング出された後だったから、内心一足遅いって思ったんだけど」
「へー。じゃあブラストはいつ引いたんだよ?」
「ん?あぁ、あれ?あれは貪欲の2ドローで」
もごもごと姫はポテトをほおばる。うーん、人の奢りだと思うといつも以上に美味しい(←おいこら)。
「おっま、引き強すぎだろ!!」
「ふっ…最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!!」
「シャイニングドローされてたまるか! !」
「リ・コントラクト・ユニバース!」
「カード書き換えんな!!」
ばっと和也もポテトを奪い取るようにしてひとつとっていった。
「むしろ私はシャイニングドローより、 バリアンズ・カオス・ドローで《
「そういやお前、シャークデッキのパーツ集めてたっけ?」
「うん。やっとこの間出来たよ」
いいながら、姫は鞄からデッキを取り出す。スリーブもシャークこと神代凌牙のもので、まさにシャークデッキだった。
カードショップでパーツを探しまくって、やっと出来たばかりのほやほやのデッキだ。
「うっし、じゃあ今度はそっちでやろーぜ。俺ももうひとつデッキ作ったから、そっちも回してみてーし」
「うん、いいよー」
カバンから別のデッキケースをとりだし、2人はデッキをシャッフルし始める。
「にしてもクリアウィングとダーク・リベリオン並べられて、アニメ再現できたみたいである意味満足だったー」
「あー、デッキはユトユゴのじゃねーけどな」
「身も蓋もないこと言わないでよ…てかそもそもふたりのカード、まだこれ以外OCG化されてないし」
「いや、ユートに限っては《シャドーベイル》があるだろ…」
「あーあったね、そんな罠カード」
デッキをシャッフルしながら思い出す。
「まあ、アニメじゃ魔法カードだったのに、OCGじゃ罠になっちまったけどな」
苦笑しながら、和也はシャッフルし終わったデッキを姫に渡す。
「早く《
「んー、まだユートは沢渡とユーゴとしかデュエルしてねぇからカードプール広くないからなぁ」
「そうなんだよねぇ・・・」
「まあ、それはともかくさ。ダベリオンもクリアウィングも、召喚のための素材しばりがないってのはいいよな」
「だよね、効果も強いし、レベル7とか出しやすいし。私も《BF》にクリアウィングいれようかなー」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン。
アニメ「遊戯王ARC-V」で、主人公・榊遊矢にそっくりなライディングデュエリスト・ユーゴのエースである、ドラゴン族のシンクロモンスター。
そのカードが、発売されたばかりのパックに封入されている。ちなみに和也は、ホログラを当ててた(羨ましいぞこのやろう)。
BFにクリアウィングをいれるなら、エクストラはなにを抜こうか。候補として真っ先に上がるのは、ほぼ出番がないレベル5の《A・O・J カタストル》だった。
アーマード・ウィングなど、ほとんどレベル7のシンクロモンスターで固めている姫の《BF》デッキでは、レベル5は正直出しずらい。
その面クリアウィングならば、アーマード・ウィングなどと同じレベル7で出しやすい。
次点ではレベル9のトリシューラやミスト・ウォーム。出せないことはないし、どちらも召喚が決まればかなり強烈な効果だが、カタストルと同じくらい使ったことがない。
「おーい姫ー」
「へっ」
和也に呼ばれ、姫ははっと我に帰った。
「あ、あーごめん、ぼーっとしてた」
「別にいいけどよ。ほら、それじゃあいくぜ」
「うん」
「「デュエル!!」」
* * *
「俺は《
「…あ」
嘘でしょ。これ詰んだ。
和也のライフは残り800。フィールドにはいま召喚されたRR-ブレイズ・ファルコン。
一方の姫の残りのライフは1100。フィールドにはエクシーズ素材を全て使い切ったNo.32 海咬龍シャーク・ドレイクと、バハムート・シャークの2体。攻撃力は、姫のモンスターの方が上だが・・・
「行くぜ、俺はブレイズ・ファルコンの効果発動。オーバーレイユニットをひとつ使って、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊。そして破壊した数×500ポイントのダメージを与えるぜ」
で す よ ね !
【姫】LP 1100→100
ブレイズ・ファルコンの全体破壊+バーン効果。特殊召喚されたモンスターをすべて破壊する上に、対象を取らない厄介な効果だ。
「・・・あのさ、和也」
「ん?」
「一言、言ってもいいかな」
「おう」
ちらっと和也の顔を見て、姫は顔をしかめた。
「・・・・・・・・・顔がすっごいニヤニヤしてるんだけど」
「そうか?」
そんなことないぜー、と言う和也。しかし、その顔はやはりニマニマとしている。
(ぜったいさっき負けたの根に持ってるよこの人! !)
大人気ない!!と姫は和也を睨みつけるが、和也は気にも止めない。
「んじゃ、バトルフェイズ。俺はブレイズ・ファルコンでダイレクトアタック」
「負けたぁぁぁっ!!」
和也の新しいデッキがまさかの《
「俺の勝ちだな」
「くやしいぃーっ!」
「お…もうこんな時間か」
「え?」
スマホの時計をみると、時間は夕方の6時。
「ちぇっ、もうひとつデッキ作ってきたのになー」
「作ったのシャークだけじゃなかったのか?」
「うん。パック買ったらそこそこパーツ集まったから、せっかくだしと思って組んだんだよね」
まあ結局試さなかったけど、といいながら、姫はデッキをケースにしまって立ち上がる。
「よし、じゃあ明日またデュエルしよーぜ」
「オッケー、今度は負けないから!」
「へっ、またRRでコテンパンにしてやるよ」
「むっかぁぁぁ!絶対まけないから!! かっとビングだ、私ーーっ!!」
「周りに迷惑だからやめろ」
「……はーい」
べしっと軽く頭を引っぱたかれ、すごすごとテーブルの上に広がったカードを片付ける。トレーを片付けてお店を出ると、すでにあたりは真っ暗だった。
「んじゃ、また明日な」
「うん、またねー!」
和也は電車、一方の姫はバスだ。そのためふたりは、店の前で別れた。そして和也は駅、姫はバス停へと向かった。
* * *
「んー、そこそこいいところまでいってたんだけどなぁー」
今日のデュエルを思い出す。
初手はなかなかだった。 1ターン目でシャークデッキ鉄板の動きであるバハムート・シャーク とFA-ブラック・レイ・ランサーをだせたし。
ーーーけれど、問題はそのあとだった。
せっかくドローで引けた《
やっとの思いでシャーク・ドレイク をだしてダメージをあたえつつ、2体目のバハムート・シャーク』をだしたまでは良かったのだが・・・
(禁じられた聖杯でとめられたしな…)
やっぱ除去カード少ない(というか、デッキに余裕がないせいもあって、ハーピィの羽根帚しか入っていない)から、伏せカードで効果封じられると痛いなぁ…
「うーん・・・やっぱ除去カード増やしてみるか・・・」
ふう、とため息。
明日は、もうひとつのデッキで絶対に勝とう。うん、打倒RR!!
そうなると、あれいれようかな、だとしたらあれ抜いて…あ、『転移アシッド』とかもいいよなー・・・。
なんて考えていると、あっという間にバス停だ。時刻表を確認すると、バスが来るであと5分ほどあった。
「定期定期…」
何処にしまったっけ?と、鞄に手をやったときだった。
ーーーキキィィッ!!!
近くで、急ブレーキの音が聞こえた。
「え?」
顔を上げると、かっとまぶしくなって視界が見えなくなる。
「……!?」
次の瞬間、強い衝撃が体中に走った。そして、なにかに叩きつけられたような 、固くて冷たい感触。
(な、に…?)
身体が動かない。
(痛い…?)
ぬるっとしたものが手に振れた。そしてまわりからは、なんだか悲鳴が聞こえる。
ぼんやりする意識の中、(ああ、私…車に跳ねられたのか…)なんて、どこか他人事のように思っていた。
そして、重たくなる瞼に逆らえず、私はそのまま目を閉じた。
...
Turn01はとりあえずここまでです。
サイトで連載してるのですが、実はこれ書いてたのは「クロスオーバー・ソウル」発売直後でした。
なので、 「そもそもふたりのカードまだこれ以外OCG化されてないし」のセリフになったわけです。
……あ。
ごめんユーゴ。
「HSR魔剣ダーマ」のことすっかり忘れてた。
ユーゴ「忘れんじゃねーっ!!!」
……うん、ほんとにごめん。