希望と絶望のアポカリプス√r   作:桜彩(さや)

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このお話の基盤説明回です。
いろんな用語の説明などなど…


Turn08

「あんたたちは誰!」

「ーーー我らはドメス世界の“七大悪魔(セブンシンス)”」

「ゼブン、シンス…?」

 

 それにドメス世界って…

 

「ドメス…」

 

 ぼそりと遊馬が呟いた。

 

「俺、どこかで…」

 

 

 ーーーぽぅっ

 

 

「…!?」

 

 そして遊馬のデッキケースと皇の鍵が、 眩しいほどに光り出した。

「きゃあ!?」

「な、なんだよこれ!?」

 

 突然のことに、みんなが眩しさから目を 細める。

 

「遊馬!!」

『一体何が…!』

 

 アストラルでさえ困惑といった表情を浮かべている。

 

「この光…まさか!」

「こんなところにいたのか!?」

 

 一方のベルブとルシファーは、何かを悟ったらしく、歓喜と焦り、そして憎しみが混じったような顔をしていた。ーーーそして。

 

「…七大悪魔(セブンシンス)を集めて、サタンを復活させるつもりか? 傲慢神ルシファー、暴食神ベルブ」

「やはり貴様だったか…!コスモ世界の最高神…我らが最大の敵! !」

「希望光神ユーマ!!!」

 

 光が収まった時には、制服ではなく、アストラルと『オーバー レイ』した姿である、 ゼアルの…しかも一番最後の姿をした、 遊馬がいた。

 

《遊馬、一体なぜーーー』

「・・・・・・悪い、アストラル。みんなも…あとで話すよ」

 

 そういって笑う遊馬。しかしその笑顔は、いつもの無邪気な笑顔ではなくーーー…静かな、まるで大人のような、そんな笑み。

 

「遊馬…?」

 

 いきなりゼアルの姿になった遊馬に、アストラルだけでなくその場にいる全員がおどろいた。それもそうだ。何故なら、この場にいる全員が知っている。

 ゼアルは、遊馬とアルトラルがひとつになったときの姿だと。それなのに、いまの遊馬はひとりでゼアルの姿になっている。

 

「…まさか人間に転生していたとはな…『希望光神』」

「そっちこそ、蘇ってたとはな。傲慢神ルシファー、暴食神ベルブ」

 

 忌々しげに遊馬を見るルシファーとベルブに対し、遊馬もまた2人をするどく睨んで言葉を返した。

 

「あんたたちコスモ世界の守護神との戦いで僕らは傷を負い、深い眠りについた…!」

「しかし、こうして我らは蘇った。再び世界を混沌に包むために!そのためにあいつを使ってカオスの力を溜め込んだのだ!!」

「…あいつっていうのは、ドン・サウザンドのことか」

 

 静かにいう遊馬に、その場にいる全員が驚きの声をあげた。

 

「ほんっと、君はどこまでも僕らの邪魔してくれるよねぇ!?せっかくいい感じにドン・サウザンドは育ってくれて、ちょうど食べ頃だったってのにさぁ!!」

「まさか…ドン・サウザンドをけしかけたのはサタンか?」

「ふふっ、さあどうだろうねえ?」

 

 笑ってごまかすベルブ。だが、それが質問に対する肯定を指していた。

 

「遊馬。こいつらがドン・サウザンドをけしかけたってのどういう意味だ」

 

 説明しろ、と凌牙は遊馬に問いかける。遊馬はちらりと凌牙を…元バリアンの王であった友人を見た。 

 

「…俺も憶測でしかないけど」

 

 と、遊馬は少しためらったものの、口を開いた。

 

「ベルブとルシファーが忠誠を誓う神…それが、『最凶魔神サタン』。そいつは大昔の戦いで、とある神と戦い、弱ったところをその神によって封印されたんだ。けど、僅かに残っている力を使って、自分が復活できるよう、カオスの力を集めようとした」

『…! まさか、』

 

 アストラルは、はっと何かに気づいた。アストラルだけでなくその場にいる全員も、気づいたのだろう。

 

「ああ、そうだ。カオスの力を集め、自分の封印を破るため…そのために、サタンはドン・サウザンドにカオスの力をわけたんだ。そして同時に、サタンはバリアン世界をも生み出した」

 

 まさかそんな・・・と誰かが呟いた。

 

「計画は順調だったんだろう。ドン・サウザンドはどんどん力を蓄えていった。けど、アストラルとの戦いでドン・サウザンドは封印された」

「いやー、ほんっとあの時はまいったよ!!まさかドン・サウザンドか負けちゃうなんて思わなかったからさぁ!!」

「だが、ドン・サウザンドは意外な置きみやげを残してくれていた。それが、バリアン七皇だ」

「…!?」

「我らが置き土産だと?」

「おい、それってどういうことだよ!?」

 

 『ドン・サウザンドの置きみやげ』といわれた七皇。当然黙っているはずもなく、アリトが声を上げた。

 

「言った通りですよ。ドン・サウザンドが封印されて、計画は一からかと思いました。だが、あいつは君たちを使って蘇ろうとしてましたからね。君たちがドン・サウザンドの意のままに動き、アストラル世界との戦いを繰り広げはじめてくれたので、意外と早くカオスの力はたまりました」

「そのおかげで僕らは蘇ったんだよねー!」

 

 つい先日終わった、アストラル世界とバリアン世界の戦い。

 アストラルがヌメロン・コードを使ってアストラル世界とバリアン世界をひとつにし、そしてバリアン七皇を人間として生まれ変わらせた。

 まさか彼らは、あの戦いすらも利用したというのか。

 

「ふ、ざけんじゃないわよ!!」

 

 姫の体が、わなわなと怒りで震える。いままで、こんなに怒ったことがあっただろうか。

 

「あんたら、人のことなんだと思って…!」

「うるさいなぁ、あんたには関係ないじゃん」

「さっきのデュエルで負けかかってたくせになに生意気言ってんのよこのチビ!!」

「チビいうな!!」

「うおっほん!!!」

 

 姫がベルブと火花を散らし始めると、ルシファーがわざとらしい咳をした。

 

「あなたはあの時サタンを封印しましたがーーー今のあなたには守護神官はいない。対して我々セブン・シンスはすでに目覚めています」

 

 にやり、とルシファーが唇をつりあげる。

 

「遊馬がサタンを封印した…!?」

「それってどういう…」

「さっきの話に出てきた、サタンと戦い、そして封印した神…それがそいつ、コスモ世界の最高神『希望光神』ユーマ、そいつなんだよ!」

 

 その言葉に、全員が目を見開いた。

 

「守護神たちはいまだ目覚めず、いまはあなた一人だけ」

「いや、目覚めるさ。お前たちや俺のように、きっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、その通りだぜ!!」

「ーーー!?」

「お前…!」

 

 ふいにその場に現れた、ひとりの男子生徒。彼は、シャークやドルベたちと同じ、ブルーの制服をきている生徒。そして、その男子生徒に姫は見覚えがあった。確か、名前は…

 

「あなたっ…」

「上村…!?」

「よ!」

 

 そう、上村葉月。姫とセイクリッドデッキでデュエルした男子生徒だ。

 その上村という男子生徒は、にやりと挑戦的な笑みを浮かべてベルブとルシファーを見た。

 

「随分と久しぶりじゃねえか。なあ、ルシファー、ベルブ?」

「お前……」

「なんだよ。まさか俺のこと、忘れたのか?」

 

 言いながら、彼は一枚のカードを見せた。黒い枠…エクシーズモンスターのカードを。

 

「そのカードは…!」

「やっとわかったか」

 

 カードをみると、ベルブとルシファーの顔色が変わった。

 

「上村、くん…どうして…」

 

 周りは、ベルブたちの力のせいなのか、まだ時間が止まっている。それなのに彼はどうして…

 

「にっぶいな、いまユーマの話にあったろ?」

 

 そういって、にっと笑う上村くん。

 

(話にあった、って…)

「…!てめえ、まさか守護神官とかいうやつか!?」

「ぴーんぽーん!!」

 

 ベクターの言葉に、上村くんが弾んだ声を出す。

 

「え、ええっ!?」

 

守護神官!?

 

「へー、君も人間世界に転生してたんだ?」

「ああ。まあ今さっき目覚めたばっかだけどな。わりいな、目覚めちまって」

 

 上村は皮肉を込めて言う。

 

「ふん、守護神官たったひとりでなにが出来るのさ!!」

「確かにいまは、守護神官は俺ひとり。だが、目覚めたばかりとはいえ、神もいるんだ。それにユーマだけでなく、俺も人間世界に転生してる。ってことは、他の守護神官たちもかならずこの世界に転生しているはずだ。他の奴らも見つけて、てめえらのくだらない野望とめてやるよ!」

「やれるもんならやってみろよ!!」

 

 ベルブがそういうと、その身体からぶわっと黒いオーラのようなものが現れた。

 

「っ、まさか!?」

「おいユーマ!!」

「分かってる!!」

 

 ベルブから溢れ出すそのオーラは、姫でも只ならぬものだということを感じさせた。

 

「ベルブ!」

 

 が、そのベルブを止めたのは、ルシファーだった。

 

「なんで止めるのさ!?」

「言っただろう、まだその力を使うんじゃない!!」

「けどいまならっ…」

 

 止めるルシファーと、その静止を聞かないベルブ。なおもそのオーラはベルブの身体から溢れ出している。

 

「僕があいつらを… っ!?」

 

 ベルブがそう叫んだ次の瞬間、ベルブはがくりと膝を折って、倒れ込んだ。それと同時に、身体から溢れ出ていたオーラも消えていく。

 

「な、なんだ…?」

「ベルブ!!」

 

 倒れ込むベルブを支えるルシファー。

 

「っ、はぁ、はぁっ…」

「だから言っただろう!!すぐに戻るぞ!!」

「ちっ、待ちやがれ!!」

 

 上村が叫ぶ。が、ふたりは一瞬にしてその場から姿を消してしまった。

 

「き、消えた…!?」

 

 バリアン七皇や、トロン一家が以前使っていたようなワープゾーンのようなものを使わず、言葉通り一瞬にして、ふたりは姫たちの目の前から消えた。ーーーまるで、はじめからその場にいなかったかのように。

 そして同時に時間が動き出し、ざわめきが耳に入る。

 

(そういえばいまって昼休みだっけ)

 

 まわりの生徒たちは、普段通りに思い思い休み時間を過ごしている。

 

「なんだったんだいまの…」

 

 アリトが呆然といったように呟く。

 

「…ユーマ」

「……ああ、分かってる。けどここじゃまずい」

「だな…どーするよ?」

(…えぇーっと)

 

 なんかこれ、面倒くさそうなのに巻き込まれそうな予感がする・・・

 

(とりあえず退散…)

 

 しようと、そろりと数歩離れるーーーが。

 

「どこいくよ、碧那」

 

 

 ぎっくぅぅぅぅぅ!!!

 

 

「え、いや、その……トイレ?」

「とかなんとかいって逃げる気かお前」

 

 ばっさりと、上村に一刀両断された。

 ひえぇぇぇぇ退路絶たれた!てか頼むから見逃してよ!!

 

「お前に聞きたいことがあんだよ逃げんな」

「…お願いだからじりじり距離詰めないで」

「お前が逃げるのやめたらな」

「逃げてないし」

「嘘付け後ずさってんじゃねーか」

「あんたが距離詰めてくるからだよ」

「…ユーマ」

「ん?」

 

 上村が呼ぶと、遊馬が返事をする。

 

「とりあえず放課後集まらないか?」

「おう、いいぜ」

「お前もだからな、碧那」

「……嫌って言ったら?」

「お前に拒否権はない」

 

 またもやばっさり切られた。

 

(なんで転生(っていうかトリップ?)して面倒事に巻き込まれないといけないのさ!?)

 

 というか遊馬。きみ、いつの間にゼアルの姿から元に戻ったの。

 

 

 

* * *

 

 

 

ーーーと、いうわけで。

 

 姫たちは放課後、上村の家に呼ばれた。彼の両親は共働きで、夜遅くにならないと帰ってこないらしい。そしてこの場には、カイトやⅢ…ミハエルたちトロン一家も集まった。

 姫は巻き込まれたくない一心で帰ろうとしたけれど、そこを上村や凌牙たちにみつかり、強制連行…拉致られた。そして現在、昼間にあったことをカイトたちに説明中だ。

 

「ドメス世界?」

「聞いたことないなぁ」

 

 異世界の研究をしているカイトやトロンですら、聞いたことはないらしい。

 

「…ドメス世界は、カオスに満ちた闇の世界だ。そして、それぞれ罪の力を与えられた者…それが、ベルブたち『七大悪魔(セブンシンス)』なんだ」

「大昔、ドメス世界と対になる光の世界、コスモ世界の守護神官たちは、自らの命と引き替えにしてセブンシンスを封じた。そしてコスモ世界の最大の神、希望光神は、すべての力を使ってドメス世界の神を封じた…実を言うと、遊馬がその希望光神の生まれ変わりなんだよな」

 

 

ーーーは?

 

 

「「ええええええええっ!?!?」」

 

 上村がさらりっと言った言葉に、全員が驚きの声を上げた。

 

「ゼルク…」

 

 遊馬がじとっと上村くんを見る。

 

「おー、ひさしぶりだなその名前!てか事実だしよくね?別に」

「まあ、そうだけど…」

 

 どこ吹く風で受け流す上村に、遊馬は「はあ・・・」っとため息をついた。

 

「あれ?でも遊馬…その話が本当なら、なんではいまになって…」

「セブンシンスが現れたか、か?」

 

 小鳥の言葉を遮り、遊馬はその先を口にした。

 

「…シャークたち七皇はきついと思うけど、それでも聞くか?」

「…ああ」

 

 遊馬の問いに、凌牙たちバリアン七皇はこくりっと頷いた。

 

「ちょっと待て遊馬」

「? 何だよカイト」

「さっきから気になっていたんだが…」

 

 と、カイトは鋭い目で私を見る。

 

「その女はなんだ?」

「あー、えぇっと、」

 

 まあそうだよね、気になるよね。むしろならない方が可笑しいよ。

 

「私は碧那姫。シャ・・・じゃない、神代くんのクラスの転入生」

 

 とりあえず簡潔に自己紹介。

 

「ただの転入生じゃねえ。こいつはアストラルが見える」

「っちょ!?」

『しかもシャークのオーバーハンドレット・ナンバーズを持っていて、ナンバーズに取り込まれることなく使っていた』

「うぉぉいっ!?」

「なんだと?」

 

 ひぃっ!!シャークもアストラルもなにいうかーー!!!おかげでいらんフラグたったじゃん!!

 

(私まだ狩られたくないんですけど!?!?)

 

「ちょ、ちょっと待てよみんな。えーっと、姫?、でいいんだよな?」

「う、うん…?」

 

 そんな姫とカイトたちの間に入ったのは、遊馬だった。

 

「そんな敵意むき出しにしたら、こいつだって話せるものと話せねえだろ?」

「そーそー。とりあえず姫ちゃんの話きこーぜ」

「ひ、」

 

 ひ、姫ちゃん!?

 

(っていうか私を拉致ったのあんたでしょーが!!!)

 

 ぎろっと上村を睨む姫だが、当の本人は「ん?」と首を傾げただけだった。

 

(こいつっ…本気デッキでしめたろーかっ…!)

「なあ、話してくれよ。なんでオーバーハンドレット・ナンバーズを持ってたのか」

「ベルブは君を、異世界から来た、と言っていたが…?」

「あはは、うん、まあ…そうなる、かな?」

 

 まあ、上村へのフルボッコ計画は置いておくとして。

 姫としては平穏に過ごしたい。それには事情を説明することが不可欠だろう。しなければ、ずっと敵対心むき出しにされる・・・と判断して、姫はすべてを話した。

 

 こことは別の世界では、デュエルモンスターズは一部の人たちの娯楽であり、その世界ではオーバーハンドレット・ナンバーズどころか、どのカードでも手に入る世界なんだということ。

 そして、この世界のことはアニメでやっていて、だから七皇とドン・サウザンド、オーバーハンドレット・ナンバーズの関係を知っていたこと。

 そして、元の世界で事故にあい、この世界にとばされたことーーーを、略せるところは略してはなした。

 

「アストラル世界やバリアン世界みたいに、まだ別の世界があるのか」

「まあ、そんなとこ…です」

「…敵じゃないなら、まあいいんじゃねえか?」

「まあそうだな」

 

 

えーっと。

 

 

(とりあえず警戒はとけた…のか?)

「で、セブンシンスのことだが…」

 

 うぉぉいっ!?え、なにもういいの?自分で言うのもなんなんだけど、こんなあっさりしてていいの!?

 

「あ、あの…疑ったり、してないの?」

 

 恐る恐るといった感じで姫が聞くと、

 

「アストラル世界やバリアン世界だけじゃなくて、ドメス世界やらコスモ世界やらあるから、まあ他の世界があっても可笑しくないだろうし」

「あるはずのないオーバーハンドレット・ナンバーズとか、幻の《E・HERO(エレメンタル・ヒーロー)》も、そう考えれば納得いくからな」

 

 と、かえってきた。

 

「それとも、疑って欲しいのか?」

 

 そう聞かれて、姫は取れんばかりに首をぶんぶんっと横に振る。

 

「ならそれ以上聞くんじゃねぇ」

 

と凌牙に言われ、

 

「は、はい…」

 

 姫は頷くしかなかった。

 

『それで遊馬、セブンシンスのことだが…』

「ああ…さっき話した通り、サタンは弱ったところを俺が封印した。サタンとの戦いを繰り返して俺も弱ってたから…封印するので精一杯だった。そして封印で力を使い果たした俺は、人間世界で『九十九遊馬』として生まれ変わったんだ」

『なるほど・・・ではサタン、とは一体なんなのだ?』

 

 アストラルの質問に答えたのは、上村くんだった。

 

「サタンってのは、ドメス世界の最凶魔神。カオスで蔓延している、闇の世界のトップだ。っつっても、ドメス世界もはじめっからカオスで混沌としてたわけじゃねぇ。俺らが知ってる限り、ドメス世界は闇といっても安らぎのための闇を司る世界だった」

「安らぎのための闇…?」

 

 小鳥が首を傾げた。

 

「人は『夜』っていう『闇』があるから、ゆっくり眠ることが出来る。ドメス世界は、もとはそういう安らぎをもたらす世界…のはず、だった」

「けど、サタンは突然ドメス世界を混沌で包んだ。そして…世界のすべても、同じように混沌で包もうと動きはじめたんだ」

 

 ふう、と遊馬が一息ついた。

 

「サタンは、六人のデュエリストたちにカオスをあたえた。それが、七大悪魔…セブンシンスだ」

「六人?だけど七大悪魔(セブンシンス)っていうなら、七人じゃ…?」

 

 Ⅲの問いに、遊馬が「いや」と首を横に振る。

 

「セブンシンスは、サタン自身を含めて全部で七人。奴らはそれぞれ、人が元々もっている『七つの大罪』を力としてる。ベルブは暴食、ルシファーは傲慢…そしてサタンは憤怒。他に、嫉妬、怠惰、強欲、色欲がある」

 

 ぎり、と遊馬が唇を噛み締めた。

 

「あのとき…いくつもの世界が、ドメス世界みたいに混沌とした世界になっていった 」

「俺らはいつかくるであろうサタンの魔の手からコスモ世界を守るために、力を蓄えた。そして…とうとう、ドメス世界のやつらは…」

 

 その先はみんなが察しがついた。セブンシンスたちがコスモ世界にきて、戦ったのだろう。

 

「俺たち守護神官は、なんとかセブンシンスをそれぞれ相打ちって形で退けた。そしてユーマは、サタンと戦って…」

「俺は尽きかけた力を使って、サタンを封印した。けど…サタンはそれで終わらなかった」

 

 目を伏せて言う遊馬。

 

「それで終わらなかったって…いったいどういうことだ?」

 

 全員が、遊馬の次の言葉を待つ。

 

「どうやったのかはわからない。けどサタンは、残ったカオスの力をドン・サウザンドに使って、バリアン世界を生み出した」

「ーーー!」

 

 遊馬の言葉を引き継いで言った上村の言葉に、全員が息をのんだ。

 

「サタンがバリアン世界を…!?」

「俺ら七皇みたいなもんか…」

「ドン・サウザンドが自らのために我ら七皇を生み出したように、サタンもまた自らのためにバリアン世界を作り出したということか・・・」

「もちろん、確証はない。けど、ベルブとルシファーの言葉からすると、それ以外考えられない」

 

 遊馬が言葉を区切ると、全員が嫌な静けさに包まれる。

 

「だけどそれだけじゃない。もともとサタンは、ドン・サウザンドを使ってカオスの力を蓄えて、蘇ろうとしてた。アストラル世界とバリアン世界のあの戦いは、サタンたちドメス世界にとっては、カオスをためる絶好の機会だった。だからこそ、ベルブやルシファーたちセブンシンスは蘇った」

「でも、本来の目的はサタン復活…なら、ベルブたちが蘇ったのはまだ序の口…ってことかしら?」

 

 璃緒が聞くと、上村くんは「そーゆーこった」と肯定的した。

 

「そういえばゼルク」

「んー?」

「お前、《LNo.(リヒト・ナンバーズ)》はあるのか?」

「ああ、大丈夫。あるぜ」

 

 ほら、と上村くんがデッキケースから一枚のカードをみせた。  

 

「あの…その、ゼルクって?」

「…あ、」

 

 姫が聞くと、遊馬と上村は顔を見合わせた。

 

「悪い悪い!ゼルクってのは、守護神官だったときの俺の名前だ!」

「俺もいま昔の名前で呼んでたこと気づいた」

 

 あはは、と2人は苦笑した。

 

『その《LNo.(リヒト・ナンバーズ)》とはなんだ?》

「LNo.は、コスモ世界の…光の力が込められたカードだ。前世で俺たちは、このLNo.を使ってセブンシンスたちと戦った」

『ふむ…確かにナンバーズとはまた違った力を感じる…これがコスモ世界の光の力、というものなのか…』

 

 遊馬は上村にカードを返すと、皇の鍵を握りしめた。

 

「守護神官は残り5人…だけどラルファがな…」

「ラルファか…」

「ん?なにか問題でもあるの?」

 

 トロンが聞くと、遊馬は「あるっていうかなんというか・・・」と言葉を濁した。

 

「セブンシンスが罪の力をもつように、守護神官たちもそれぞれ源になる力があるんだ。神である俺は希望、ゼルク…葉月は情」

「で、俺ら守護神官にはひとりだけ、女の神官がいたんだ。名前はラルファ…『癒し』を司る、俺ら守護神官の紅一点だった」

「そのラルファがどうかしたのか?」

 

 カイトが聞くと、遊馬と上村は顔を歪めた。

 

「ラルファは…サタンに、連れ去られたんだ」

「「ーーー!」」

 

 その言葉に、全員が息をのむ。

 

「ラルファと恋人同士だったリエル…絆の力をもった神官なんだけど、単身でもドメス世界に乗り込んでラルファを助け出す!って聞かなくてさ…」

「それでそのラルファは…?」

「……わかんねぇ」

 

 2人は首を横に振った。

 

「準備も整えて、いざドメス世界に乗り込もうってときに、あいつらセブンシンスがこっちに乗り込んできたからな…」

「俺はサタン、他の神官は残りのセブンシンスたちと戦うことになったから、結局ラルファがどうなったのかは、俺たちもわからない」

「いつもはクールなリエルが、あそこまで取り乱したの初めてみたよ」

「そうだな…そのぶん、ラルファを本当に好きだったんだろ」

「まあ、俺やユーマもこうして人間に転生してるわけだし、リエルや…ラルファたちも、転生してるといいんだけどな」

「……ああ」

 

 遊馬は言葉を続けた。

 

「確かに他の神官たちも転生してる可能性は高い。リエルやラルファたち他の神官やLNo.をみつけて、セブンシンス…ドメス世界の侵略を食い止めねぇと、今度はこの世界も…」

「ああ、今度こそやってやろーぜユーマ!!」

 

 おう!と遊馬と上村くんは軽く握った拳を合わせた。

 

「遊馬、俺たちも力を貸すぜ」

「シャーク、」

「バリアンといいセブンシンスといい、落ち着く暇もないな」

 

 ふん、と鼻を鳴らすカイト。

 

「カイト…」

「俺らも忘れんなよ遊馬!!」

「ま、このベクター様もよかれと思って!手を貸してやるよぉ!」

 

 アリトやベクターが言えば、他の七皇も頷いた。

 僕らもいるよ!とⅢがいえば、ⅣやV、トロンも協力する、と言い出した。

 

「ありがとう…だけど、」

「言っておくけど、遊馬がダメだっていっても僕らはついていくよ?」

 

 言おうとした言葉を遮られて、遊馬は言葉をつまらせた。

 

「…・・・いや、やっぱりダメだ」

 

 遊馬は俯いて、頭を振った。

 

「みんなの気持ちは嬉しい。けど、ドメス世界との戦いはバリアン世界との戦いとは違う。そんな戦いに、みんなを巻き込きこむことは出来ない」

 

 遊馬の心によぎるのは、バリアン世界での戦い。

 ひとり、またひとりと、ここにいるほとんどが、あの戦いで死んでいる。

 守りたかった。守ろうとしたのに、守れなかった。 

 あの時の戦いは、遊馬に深い傷を残していた。

 

「~~なに言ってんのよ遊馬!!」

「っ!?いてぇ!!!」

 

 ばしっ!!と、とてもいい音をだして、小鳥が遊馬の背中を思い切り叩いた。

「~~っなにすんだよ小鳥!!」

「それはこっちよ台詞よバカ遊馬!!」

「ばっ…!?」

「いままで散々巻き込んできていまさらなにいってんのよ!!」

「遊馬、君は僕の最初の友達だ。友達の危機を黙って見過ごすなんて出来ないよ」

「Ⅲ…」

 

 Ⅲは、手首の腕輪をみた。

 

「遊馬、覚えてるだろ?僕らだけじゃない。カイトも七皇も、出会ったときはみんな敵同士だったよね。だけど敵同士だった僕らがいまこうして仲間として、友達としていられるのは…遊馬、君の諦めない気持ちが、かっとビングがあったからだ。僕だけじゃなく、みんな君のかっとビングに救われた。だから遊馬・・・微力だろうけど、僕は君の力になりたい」

「だけど俺はっ…」

 

 ぎゅっと遊馬は両手を握りしめた。

 

「俺はっ…また、みんなが消えるのはみたくねぇんだっ…!」

 

 俯いて、絞りだすように言った言葉。それは、まぎれもなく遊馬の本音なのだろう。

 バリアン世界と戦いのとき。ここにいるみんなが、あの戦いの中で一度命を落とした。

 ドメス世界との戦いは、バリアン世界との戦いの比じゃない。だから遊馬は、仲間だからこそみんなを巻き込みたくはないんだろう。

 

『…それならば、みんなに力を与えればいい』

「え?」

 

 いままでずっと黙っていたアストラルが、口を開いた。そして、小さな四角い形をした光が、この場にいる全員それぞれに向かった。

 

「…!」

「これは、」

「ナンバーズ!?」

 

 ナ、ナンバーズ?力を与えればいいって、ナンバーズのことか!!

 

「アストラルっ!!」

『彼らの性格は君も知っているだろう。なにを言っても、彼らはきっとついて来る』

「だけどっ…」

『君の気持ちは分かる。しかし、守護神官とやらが揃っていない今の状況では、セブンシンスに立ち向かうには力が足りないのではないか?》

「ぐっ…」

「…ユーマ、アストラルと言うとおりだと思うぜ」

「ゼルク!!」

「少なくとも、足手まといになる奴はない。なら、ドメス世界の進行を止めるためにも、戦力は少しでもあったほうがいい」

 

 戦力、か…

 

「……その戦力、もう少しアップ出来るかもしれない」

「え?」

 

 姫はデッキケースから数枚のカードを取り出すと、カイトとVをみた。

 

「カイト、V。ふたりなら、このカードを複製すること出来る?」

「そのカードは…!」

 

 姫が見せたカードをみて、ふたりが驚きの表情を浮かべた。

 

「オーバーハンドレット・ナンバーズに・・・《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)》・・・!」

「は!?」

 

 カイトの言葉に、元七皇たちが反応した。

 

「おま、オーバーハンドレットだけじゃなくて《七皇の剣》までもってたのかよ!?」

「だから言ったでしょ。私がいた世界じゃだれでも手に入るんだってば」

 

 前に和也とデュエルしたときに、《七皇の剣》で《時空竜(タキオン・ドラゴン)》だされて一気にライフ削られたんだよね…。まあ返しのターンで《Dark Knight》だしてやったけど。

 

 と、元の世界でのデュエルを思い出す姫。

 

「しかし、カードを一時とはいえ渡してもいいのか?」

「んー、まあ乗りかかった船だし。それにふたりが人のカードをどうにかするような人じゃないってことは知ってるから」

 

 それに。

 

「みんな、遊馬の力になりたいんでしょ?私の世界のカードだからナンバーズ耐性はないうえ、みんながバリアンのころ使ってたのよりは効果弱くなっちゃってるけど、少しは足しになると思うし」

「…わかった。複製出来次第、連絡しよう」

「うん、よろしく」

 

 はい、とVにカードを渡す。

 

「みんなを巻き込みたくないっていう遊馬の気持ちもわかるよ。でも、逆の立場なら遊馬はどうした?」

「そ、れは…」

「…っていっても、聞くまでもないか。バリアンとして生きるって決めた神代くんを、絶対に連れ戻すんだって言ってたもんね?」

「ーーー!」

 

 姫の言葉に、遊馬は息をのんだ。

 

「遊馬、君は神様として戦うって決めたんだよね。みんな、そんな君を仲間だと思ってるから、ほっとけないんだよ。君があの時、友達の神代くんを連れ戻すって決めて、命を懸けたようにね」

『遊馬…』

 

 アストラルが気遣わしげに遊馬に声をかける。

 

「…はあ」

 

 数秒の沈黙の後、遊馬はやけに長いため息をはいた。

 

「…わかった」

「!」

「遊馬…!」

 

 顔をあけだ遊馬は、すこし困った笑みを浮かべていた。

 

「みんな…協力してくれるか?」

 

 そして出された言葉に、みんなは笑顔で頷いた。

 

「でもさ、その守護神官見つけるのってどうやるの?」

 

 Ⅲの疑問ももっとも。何か手掛かりや目印でもあれば別だけど…

 

「遊馬と上村くんにはなにかアテでもあるの?」

 

 姫が聞くと、上村くんは「葉月でいーって」と苦笑した。

 

「アテっていうか、探知機みたいなのはあるぜ」

「探知機ってひどくね!?」

「それ以外に言葉思い浮かばなかった」

 

 しれっという遊馬は、皇の鍵をかざした。

 

「守護神官は無理だけど、皇の鍵の中にある飛行船…あれと、ゼルクのLNo.を使って、他のLNo.を見つけるんだ。カードが覚醒すれば、その持ち主だった守護神官たちも目覚めるかもしれない」

「飛行船を使うの?」

『以前、遺跡のナンバーズを見つけたようにするのだな?』

「ああ。だけどセブンシンスたちも、残りの守護神官の覚醒を阻止するために、LNo.を俺たちより先に手に入れようとするはずだ」

「つまり、セブンシンスたちより先にLNo.を回収し、守護神官たちを目覚めさせる…それが、今のところうてる最善の策か」

 

 確かに、いまはセブンシンスより先にLNo.を集めないといけない。けど行く先には必ずセブンシンスがいる…か。

 

(気の滅入りそうな話だけと、やるっきゃないのか…)

 

 あーもうほんと、なんで穏やかに過ごせないかなぁ…私はただデュエルが好きな女子高生…いや、いまは女子中学生だってのに。

 

「遊馬。飛行船を使ってカードの在処をつかむまで、どれくらいかかる?」

「そうだな…半日あれば出来るはずだ」

「ならそれまでは各自準備しておく方がいいだろう」

 

 カイトがいうと、璃緒が「そうですわね」と頷いた。

 

「相手は私たちにとって未知の敵ですものね」

「ああ、しっかり準備しておいたほうが良いだろう」

「俺様のファンサービスをたっぷりと味わわせてやるか!」

 

 おお…みんなやる気だ…!!

 

「じゃあ明日の朝10時にまたここにするか?」

「おう!」

 

 正直なところ、姫個人としては巻き込まれずに過ごしたい、けど…

 

(ま、乗りかかった船だしなぁ)

 

 ここは協力しますか!!

 となると、やることはたくさんある。

 

 まずはデッキの調整だ。早速帰ったら、あるカードを全部確認しないと。

 一般人相手なら、融合・シンクロならともかく、ペンデュラム召喚は反則だが、相手がセブンシンスなら反則とか言ってられないし…

 

(あ、でもこのデュエルディスク…Dパッドで動くのかな…?)

 

 などと考えていた。

 

 

 

 

 

(このときの私は、思いもしなかった)

 

 この先、セブンシンスとの戦いが、私に何をもたらすのか。何を見せるのか。 

 そして、私がこの世界にきた本当の意味と理由。

 そのすべてを知ったときーーー…わたしには、残酷な選択が迫られることになるなんて。

 この時の私は、まだ思いもしなかった。

 

..

 




長らくお待たせして申し訳ないです!
なんとか一話お届け出来ました…!

ところでmpatdgp


→続きはあまりの更新の遅さにブチ切れたホープさんによって、ホープ剣・スラッシュ☆されました。
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