真・恋姫✝無双 新たなる外史   作:雷の人

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プロローグ:劉備軍
第一話:王泰と一刀と劉備


182年、この年は忘れられない年、当時洛陽・・・否、漢帝国全土の悪政の根源となっていた十常侍、その弾劾に無謀にも挑むも、失敗。この義挙に乗ってくれた陳蕃様を始めとした多くの忠臣が処刑された、俺は官職を剥がれ、その日の内に紫牙と共に洛陽を脱出した。

 

党錮の禁 、宦官の手により、大将軍竇武、大傅陳蕃を始めとした外戚が一掃され、この時より、漢帝国の疲弊は加速の一路を辿る。

 

あれから二年、世には黄巾党なる匪賊が横行するが、官軍の殆どが機能しておらず、民は略取され続けていた。

 

あの日洛陽を逃げた俺たちは、冀州の東端にある農村にたどり着く。

 

見ず知らずの俺たちを助け、住む場所まで与えてくれた恩義に報いるべく、自警団を組織し、開墾などに関し自分が持ち得る知識を総動員し助力している。

 

この日、俺は鍬を片手に畑を耕していた。

 

「おぅ青焔、そろそろ飯の時間だぞ」

「ああ、もうそんな時間か」

 

俺の名は王泰、字を文令、真名を青焔という。俺に今声をかけてきたのが周倉、真名を単、この村で俺に出来た親友であり村の若者のまとめ役である。

 

「そういやぁよ、黄巾賊が結構近くまで来てるみたいだぜ」

「・・・、本当か」

「ああ、南皮の城がこの間襲撃を受けたらしい」

「・・・それなりの備えをしなけりゃならないか」

 

道端で考え込む二人、するとそこに・・・

 

「あの~、ちょーっと宜しいですか?」

 

少女の声、に二人が同時に振り向く。緋色の髪をした・・・歳の頃は紫牙と同じぐらいであろう少女がいる。

 

「見ない顔だが・・・どうした?」

 

と、真っ先に単が反応する。

 

「はい、この村に王泰さん、って方がいると聞いて訪ねて来たんですけど」

 

その言葉に、顔を見合わせる二人、少し間を空けてから青焔が少女へと向き合う。

 

「俺が王泰だが・・・まぁこんなところで立ち話も何だ、今から飯にするところだから良ければ来ると良い」

「え?良いんですか?あ、でも・・・」

「どうした?」

 

ちょっと迷っているらしい少女に問いかけると。

 

「村の外に皆を待たせてて・・・」

「何だ、連れがいるのか・・・なら連れてくると良い」

「ホントに良いんですか?」

「構わない、話なら飯のあとでも聞けるだろう」

「でも・・・」

 

どこか遠慮がちに言う少女、しかしグゥウウウ、と、腹の音がその場に響けば、顔を真っ赤にする少女。

 

「腹は正直だな」

「う、わ、分かりました」

 

それから四半刻後、王泰の家。

 

「夜の分まで見込んで作ったつもりでしたが・・・まさか全て平らげられるとは」

 

驚いた表情をしているのは名を法正、字を孝直、真名を紫牙。洛陽官吏だった頃から付き従ってくれている、言わば弟のような存在だ。力仕事が苦手なので家事全般を受け持ってもらっている。

 

「申し訳ありません、うちの大食らいが・・・」

 

と、申し訳なさそうに頭を下げる黒い長髪が印象的な少女は関羽、と名乗っていた。

 

「ほら鈴々、ちゃんとお礼を言わないと」

 

と、傍らの小柄な大食らい少女に声をかけている少年が北郷一刀と名乗る、彼ら曰く天の御使いなる存在らしい。

 

「ごちそうさまなのだ!」

 

と元気に言う赤髪の小柄な大食らいが張飛と言っていた。

 

「すみません、ご馳走になってしまって・・・」

 

と、こちらもまた申し訳なさそうに言うのは諸葛亮と名乗っていた少女だ。

 

「でも、その、美味しかったです」

 

と、はにかみながら言うのが鳳統という少女だ。

 

「うんうん、すんごい美味しかったよ」

 

と、かなり満足げに語るのが先に会った劉備と名乗る少女だ。

 

「さて、本題に入って貰おうか」

 

片付けを紫牙に任せれば、青焔は六人へと向き合い、単刀直入に話題を切り出す。

 

「あ、はい」

 

どうやら、劉備が仲間内の一番上らしく、声の調子を整え語りだす。

 

「王泰さんは今の世の中をどう思いますか?」

「どう、とはまた大まかな話だが・・・嘆かわしい、としか言えないな。官が民を搾取し搾取された民が黄巾を被り同じ民を搾取する、負の連鎖だ」

 

と、思っていた通りの事を語る。

 

「はい、私たちもそう思います・・・だからこそ、なんとかしたいと思うんです」

「ふむ」

「力の弱い民たちが虐げられる今の世の中を変えるために、私たちはこれまで戦ってきました、でも私たちだけの力じゃどうしても足りないんです、もっともっと、多くの民を助けるために、もっと力が欲しいんです」

「それで」

「実は私、以前に洛陽の盧植先生の下で学んでいた時期があったんです」

 

その言葉に、わずかながら驚きを覚える。

 

「盧植先生の門下だったか」

 

盧植は学者でありながら将としても有能であり、実直なその性格から宦官らも党錮の禁では処断せず将軍位に座らせている程の人物だ。

 

「はい、それで少し前に先生に意見を聞きにいった事があったんです」

「ふむ、それで」

「その時に盧植先生から言われたんです」

 

曰く、党錮の禁を逃れた者に王泰という者がいる。天下に挑むならば彼の者の力を得るべし、と。

 

「お願いします!私たちには王泰さんのお力が必要なんです!」

 

深々と、土下座までする劉備。そこまで自分を評価してくれている、その事は純粋に嬉しい、だが自分にも今の生活がある、自分が今いなくなればこの村はどうなる、そう、考えた結果。

 

「・・・頭を上げてくれ、俺はそんなに立派な人間じゃあ無い、申し訳ないが他を当たってくれ」

「・・・ダメ、なんですか?」

 

ようやく頭を上げた劉備。

 

「すまないがお断りさせて貰おう」

「・・・分かりました、あ、でも私たちしばらくこの近辺に滞在してますから、気が変わったら来てくださいね!」

「・・・まぁ、心には留めて置こう」

 

断ったというのに天真爛漫な笑みでそういわれ、一瞬戸惑いを覚えるが、社交辞令みたいなものだ、とその時は思っていた。

 

あれから三日たった頃、今度は北郷一刀が訪ねて来た。

 

「迷惑、じゃなかったかな」

 

今日は雨、どの道農作業も出来ず暇を持て余していたので。

 

「構わんさ、丁度暇していたところだ」

 

と俺は答えた。

 

「そう言えば前回は聞かなかったが・・・何故君は劉備たちと行動を共にしている?」

 

前回少し疑問に思った事を問いかけてみた。

 

「あー、実は・・・」

 

北郷の口から語られる。曰く自分は何百年も未来から来たという事、曰く劉備たちと出会ったのはまったくの偶然だと言う事、そして・・・

 

「でもさ、今は本気で桃香・・・劉備たちの力になりたいと思ってる」

 

彼の思いもまた本物である、と知った。それでも・・・

 

「以前と変わらないさ、俺はこの村に恩義がある、その恩を返しきれたとは思っていない、だから・・・」

「そっか・・・んじゃあまた来てみるよ」

 

と、笑いながら去っていった北郷。

 

「俺は・・・」

 

北郷が帰った後の自宅にて、床下からかつて使っていた大矛を取り出す、手入れだけは欠かしていないので、錆びる事も無く、かつてのままの輝きを保っている。

 

「・・・・・・・・・」

 

その姿を、窓から覗いていたのは隣家の男性だ、その後、真っ直ぐに村長の家へと入っていった。

 

それから更に四日たった頃、劉備と北郷が連れ立って来た。

 

この日は農作業の予定も無く、家でのんびりしていた。

 

「根気強いものだな」

 

と、苦笑しながら招き入れる、紫牙も慣れたもので三人分の白湯を出し、下がる。

 

「でも、今回で最後にしようと思います」

「ほう?」

「昨日話し合ってさ、無理に誘い続けてもダメだ、って話になって」

「成程な」

「それで王泰さん・・・」

「申し訳ないが俺の気持ちは変わらん・・・俺は・・・」

「行きたいんだろ?」

 

三度目の断りを入れようとした途端、口を挟んできたのは単だった、いつの間にか入口に立っている。

 

「何を言う、俺は・・・」

「とっくに村の皆は気づいているんだぜ?お前がどこか燻ってるってな・・・・それに・・・外に出てみな」

「外?」

 

単の言葉に、外へと出れば、村人のほとんどが集まっていた、自警団の連中もいる。

 

「青焔さん!行きたけりゃ行っていいんだぞ!?」

「俺らは十分助けてもらった!青焔さんはもっとでっけぇものも助けられるはずだ!」

「青焔さんが心配しなくてもこの村ぁ俺らが護ります!!」

 

口々に感謝の言葉と後押しの言葉を言う村人たち。

 

「皆・・・」

「御主が思うとるよりこの村ぁ強いんじゃぞ?」

「周延さん」

 

村長の、単の父が村人をかきわけ現れる。

 

「御主はわしらのために尽くしてくれた、そろそろ、御主自身のために生きるべきじゃ」

「・・・」

「行きたいんじゃろ?」

 

何時も見せてくれた、安心するような笑みを浮かべる周延の顔を見、一度頷けば北郷と劉備へと振り向く。

 

「北郷一刀様、劉備玄徳様」

 

その場に膝をつき、深々と頭を下げる。

 

「この不肖者を二度ならず三度もお訪ね頂き先ずはありがとうございます、そのご厚誼にお答えすべくこの王文令、及ばずながらお力添え致します」

『・・・・・!』

 

一瞬、ポカーンとしてから顔を見合わせる北郷と劉備

 

『ありがとうございます!』

 

と見事に同じ動作、セリフを言う。

 

「紫牙、付いて来てくれるな?」

「はい、無論」

 

コクリと頷く紫牙

 

「こいつは法正孝直、俺の元部下だが今も付き従ってくれている、出来れば連れて行きたいんだが・・・」

「歓迎ですよ!」

「そうだな、今は一人でも優秀な人が欲しいし」

 

二つ返事で了承されれば、特に持っていくモノも無く、大矛だけを背負い村を出ようとする、と・・・

 

「よう、待ってたぜ」

 

単がそこにいた。

 

「単!?どうしたってんだ・・・」

「親父の命令でな、村を代表してお前についてって恩返ししてこい、ってさ」

 

笑いながら歩み寄る。

 

「劉備殿、本郷殿、許可、してもらえるか?」

 

と、問いかける単の言葉に返されるのは紫牙の時と同じだった。




以前の時には無かった青焔参入の話ですね、前と違って紫牙も既にこの時には青焔の下にいるわけです。ここを皮切りにドンドン話を広げていこうと思います。
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