真・恋姫✝無双 新たなる外史   作:雷の人

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第九話:魏武の大剣VS軍神、孫家の次代

義勇軍に挨拶してくる、そういって陣を出た華琳が、妙にウキウキしているようなイキイキしているような感じで戻ってきた、ここしばらく無かったぐらい上機嫌だ。

 

「何だ、何かあったのか?」

 

春蘭、秋蘭、桂花、愛理、唯夏、季衣、瑠琉、真桜もいつもは見れないそんな上機嫌な姿に声をかけかねたらしく、蒼季が声をかける事になった。

 

「蒼季、青焔が生きていたわ」

 

その言葉に眼を見開いた蒼季、他の面子の殆どが首を傾げる、留守居の氷影や伯がいればまたちがった反応を見せただろうが。

 

「ちょっと待て!だってアイツは・・・・」

「ええ、私もてっきり党錮の禁で太傅と共に処断されたと思っていたのだけれどね、劉備軍に居たわ」

「あのー華琳様」

 

ちょこん、と手を挙げる春蘭。

 

「それは・・・・誰の事ですか?」

「ああ、そうか・・・・華琳、他の連中は知らんだろう」

「そう言えばそうね、氷影と伯ぐらいかしら、知っているのは」

 

「?」を頭の上に浮かべる一同。

 

「王泰文令、先代太傅陳蕃の懐刀と呼ばれた中央官吏よ」

「華琳や俺とは洛陽時代に知り合っててな」

「武、知ともに優れる・・・・・今一番欲しいわね人材としても・・・・一人の女としても」

 

最後の言葉で、春蘭が殺気立つ。

 

:昼

曹操軍側に持ちかけた取引、共に進軍する間の兵糧供給をお願いする。

あちらかの条件は、両軍将校の交流、まぁ得るものもあるだろうと思っていたのだが。

 

「愛理ちゃーん!」

「愛理ちゃんだぁ・・・・」

「え!?朱里ちゃん、雛里ちゃん!?」

 

駆け寄り、再会を喜ぶ朱里、雛里、愛理の水鏡塾組。

 

「凪!?」

「真桜!?」

 

どうやら同郷だったらしい凪と真桜。

 

そして・・・・・。

 

「私と勝負しろぉ!!!王泰ぃい!!!!」

「は?」

 

青焔は、春蘭に七星餓狼を向けられていた。

 

「おい華琳・・・・・」

「相手をしてあげて頂戴」

 

ふぅ、とため息を一つつくと。

 

「分かった」

 

色々と諦めた表情で、応諾するのだ。

 

:四半刻後

七星餓狼を構える春蘭、雲龍を肩に担ぐ青焔が、開けた場所で向き合っていた。

立会人は秋蘭と星の二人。

 

「ふはははは!!七星餓狼の錆にしてくれる!!」

「・・・・・気ィ進まねぇー」

「ほら青焔殿、始めますぞ」

「始め!!」

 

秋蘭の合図と同時に、七星餓狼を振りかぶってくる春蘭、その一撃を先ずは受け止める。

 

「ぐっ・・・・お・・・・・」

「ほう、私の一撃を受け止めるか・・・・そうでなくてはな!!」

 

続けざまに春蘭の攻撃が繰り出される、それを青焔が、最小限の動きで受け止め、流していく。

 

「姉者の攻撃が通らない・・・・・だと」

「流石は青焔殿」

 

驚愕の表情を浮かべる秋蘭と得意げな表情の星。

 

「そろそろ攻めますか」

「は?ってうわぁあっ!!?」

 

春蘭の上段からの攻撃を、一撃で弾き飛ばす。

 

「オラァ!!!覚悟しろ!!!」

 

乱雑に見えて春蘭の防御の隙を突くように繰り出される連撃に、次第に防戦一方になる春蘭、しかも時折攻撃が掠り始める。

 

「春蘭様が圧されてる!?」

「そんな・・・・・」

「ここまでとは・・・・」

「凄い、のだ・・・・」

 

更に加速し始める青焔の連撃に、ジリジリと春蘭が後ずさりを始める。

 

「・・・・正直」

「へ?」

「ん?」

「青焔と比べても春蘭の武は遜色無いと思っていたわ」

 

それどころか、春蘭のガードが揺ぎ始める。

 

「でもそれは大いなる見当違いだったわ」

「というと・・・」

「どういう事です?」

 

「っくぉおおおおおおおっ!!!」

 

苦し紛れに、春蘭が繰り出した袈裟斬り。

 

「青焔はそもそも規格外の更に上を行く存在だ、という事よ」

 

「ふんっ!!!」

 

振り下ろされた七星餓狼の横っ面を、雲龍で思いっきり叩きつければ、構えも何もかもが崩れた春蘭、その喉元に、雲龍の鋒が突き付けられる。

 

「・・・・・・俺の勝ちだな」

「・・・・・私の負けだ・・・」

 

ふぅ、と息を一つ吐けば、ゆっくりと大矛を降ろす。

 

「す、凄いです」

「我が上官殿は想像以上でございましたか」

「あれでは私との一騎打ちも本気では無かったという事か」

 

驚きを隠さない凪と六花、星。

 

「流石ですね、青焔さんは」

「うん、凄いよね」

「あれは・・・・」

「・・・・驚異的ですね」

 

四人の軍師も驚きを隠せない様子。

 

「流石ね、青焔」

「ったく、こういうのはこれっきりにしてくれ」

「約束は出来ないわね」

「なんでよ」

「ほら」

 

ちょいちょい、と指を差す華琳、その先には春蘭が。

 

「王泰!次は私が勝つからな!勝ち逃げなんて許さないからな!!」

「・・・・・・・分かった、期待して待っている」

 

そう答えて、ため息を一つつくのだ。

 

:淮南:孫堅・袁術連合軍本営

朝廷からの勅命に対し、人材の少ない袁術軍と兵の少ない孫堅軍、互いの短所を補うために連合軍として出兵する事を決めた両軍。

袁術軍からは美羽、七乃、祈の三人、孫堅軍は赤虎、雪蓮、蓮華、誾、雷刃、尚、思春、灰、夕姫、亞紗、香の十人が出陣した。

揚州、寿春の留守居は貞、冥琳を筆頭に孫堅軍の古株武官たち、袁術軍の若手武官たちが防衛戦の維持を勤める事になった。

 

「ここまでさしたる戦闘も無く来ましたね」

 

そう、呟いたのは尚だ。

 

「うむ、じゃが良い事なのであろ?」

 

その膝の上に座って頭を撫でられているのは美羽だ。

 

『・・・・・・』

 

その光景をジーッと見ながら、羨ましそうにするもの四名。

 

 

「ふむ・・・・なんなら全員引き取ってもらうか」

 

と、不穏当な事を呟く者一人。

 

揚州自体、黄巾本隊のいる穎川より遠いためか、もう少しで中原だというのに二、三度しか黄巾とぶつかっていない。

 

「だが各自気を抜くな、必要以上の弛緩は慢心を生む・・・・・・・特に赤虎様!雪蓮様!」

「俺?」

「えー、私?」

 

名を呼ばれた赤虎と雪蓮が不満げに声を挙げる。

 

「当たり前だ!赤虎様は護衛もつけずに本営を離れる!雪蓮様に至っては真昼間から酒をカッ喰らう始末!」

「赤虎様、それは君主として二流どころか三流ですよ?」

「姉様、次代の孫呉の当主として自覚をもってくださいとあれほど」

 

ジト目で見ながら言う祈と蓮華。

 

赤虎と雪蓮の乾いた笑いだけが、幕舎に響く。

 

:夕刻:諸葛謹幕舎

蝋燭の灯りで、本拠秣陵からの竹簡を読む尚。

 

「尚様、お疲れのようですが」

 

心配そうに声をかけてきたのは灰だ。

 

「いえ、大丈夫です・・・・本番は、これからですからね」

「そうですか・・・・そう言えば、雷刃様が先程こちらに参られまして」

「雷刃さんが・・・・ですか?」

「はい、また来る、と」

 

何の用だろうか?そうかんがえていた時、幕舎の外から声がかかる。

 

「おう尚、入るぞ?」

 

聞こえてきた声は雷刃のもの。

 

「ええ、どうぞ」

 

何気なしに、返事をすれば、雷刃どころか赤虎、雪蓮、蓮華、誾までが一緒に入ってくる。

 

「・・・・皆さんがお揃いとは」

「済まないな、内密な話しだったのだ」

 

笑いながら言う赤虎に、上座を譲れば、胡坐を用意し6人が座る。

 

「それで、どのようなご用件で」

「うむ・・・・」

 

僅かばかりの静寂、そして。

 

「俺は、この乱が終わったら隠居しようと思う」

『!?』

 

その言葉に、その場の全員が驚く。

 

「ちょっ父様!?」

「隠居は早いでしょ!?」

「・・・・確かにな、だが・・・・周りを見てみろ、曹操に劉備に袁紹に、若手連中が先頭に立って流れてる世の中だ、孫呉がこれから先生き残るためには、若い力が必要だ」

 

言いたい事は分かる、赤虎が悩んだのも、様子を見れば分かる。

 

「ついでに武官、文官、軍師の筆頭三職も総入れ替えする」

「これに関しては儂も承諾した」

「・・・・・誰を据えるおつもりでしょうか?」

「うむ、武官筆頭に雷刃、文官筆頭に冥琳、軍師筆頭に尚、御主を」

「な!?お待ちください!!私には・・・・」

「異論は許さん」

「いや、っつっても・・・・フツー、逆でしょう?」

「私もそう思います、父様」

「そうよねー、冥琳が軍師筆頭で文官筆頭が尚でしょ?」

 

どちらにしろ筆頭に据えられる事には納得はいかないものの、そこも気になっていた、自分は軍師というより文官、と思っている、周囲の認識もそんなものだろう。

 

「冥琳にあって尚には無いものがある」

『?』

「尚には人を育てる才能がある」

「?冥琳にもあるでしょ?」

「うむ、だが質が違う・・・・冥琳の教えは一定以上の能力がなければ到底、理解し得ぬものが多い、そして理解し得ぬ物言いをする」

「ふむ、確かにあやつはそういう節がある」

「だが尚は、無理に理解させぬ、命令、軍務、政務、相手のなし得る範囲からその者の才覚を育て上げる、それは今、この中華において誰も持たぬ稀有な才能だ」

「・・・・・・私、が」

「まぁ乱の収束まで時がある、よく、考える事だ」

 

何かを、考えているような尚。

 

「で」

『?』

 

思い出したような声。

 

「なんで俺が武官筆頭なんです?」

 

雷刃が、ようやくその質問をする。

 

「・・・・雷刃、爪を隠し研ぎ澄ますのはもう十分だろう」

「!」

 

赤虎の言葉に、息を飲む雷刃。

 

「その真名の如く、孫家の道を切り開く雷神となれ」

 

ああ、そうだ、自分はこの眼には弱いのだ、雪蓮にも言えることだが、そんな事を思い浮かべれば、スパァンッと音を立て拱手する雷刃。

 

この時は、誰も、この後に待ち受ける過酷な運命など、想像していなかったのだ・・・・・・




矢張り青焔は呂布並みかも知れません。そして最後に挿入した意味深な一文、それをどう扱い登場人物がどうなるか、全部作者次第です。
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