ラブライブ! ~寡黙な男子高校生とµ’sの日常~ 作:孤独なcat
真姫「……おかしい」
花陽「おかしい?」
凛「絵里ちゃんが?」
昌信「まあおかしいっちゃおかしいな。」
1年組とオレは放課後ティータイム中である。
オレはホットコーヒーを飲みながら真姫の話を聞いていた。
真姫「変じゃない? 絵里があそこまで率先してラブソングに拘るなんて」
花陽「それだけラブライブに出たいんじゃないかな?」
真姫「だったら逆に止めるべきよ。どう考えたって今までの曲をやった方が完成度は高いんだし。」
凛「希ちゃんの言葉を信じてるとか?」
真姫「あんなに拘るところ、今まで見たことある?」
昌信「ないな…」
実際、今日の絵里はいつもと違う感じがした。みんなの意見を尊重しつつ、それを踏まえて意見を言っていた。だが、今回の絵里は何かに執着しているようにしか見えない。
花陽「じゃあ何で……」
真姫「それは、分からないけど……」
凛「……ハッ! もしかして! 『わーるかったわねえ。今まで騙して』とか!」
花陽「ハラショー…」
昌信「とりあえず座らんかい。」
凛は絵里がA-RISEに寝返るのでは考えたようだが、それはないだろ。
凛「あの3人に絵里ちゃんが加わったら絶対勝てないにゃー!」
冗談でもやめてほしい
真姫「何想像してるのよ。あり得ないでしょ」
花陽「じゃあ…」
真姫「分からないけど、何か理由があるような気がする」
昌信「ふーむ…」
真姫「どう思う?昌信」
昌信「いや、まあ、ちょっとした仮説ならあるが。」
真姫「何?」
昌信「まず、絵里はラブソングに拘るってよりかは希に拘ってるのでは、って思う。」
真姫「まあ…そうね。」
昌信「そんで…お前ら3人にとって、希はどういう存在だ?」
花陽「それは…」
凛「μ’sの名づけ親?」
真姫「面倒な人…かしら」
面倒な人って…なかなかひでえ物言いだな。
昌信「オレからしたら…『側らから見守る存在』って感じがするわけよ。」
まきりんぱな「「「ああ~…」」」
勿論、希自身は困ったときに助け船を差し出してくれる、これはμ’sに加入する前も後も変わらない。れも基本的なポジションは側らから見守る存在って感じに思う。
昌信「そんで、いつも側らから見守っていた希がついに自ら意見を言った。それで絵里は希の意見を実現させようと頑張っている。」
真姫「…」
昌信「まあ絵里と希は生徒会やってたこともあって仲がめちゃくちゃ良い。絵里が希の性格分かってても不思議ではない。そんな希のために絵里はラブソングに拘ってんのかなって思うわけだ。まああくまで仮説だが。」
オレの仮説を聞いてみんな黙りこくってる。あれ、あんまり理解してもらってねえ感じ?
昌信「ま、とりあえず日曜日に集まるわけだからそこで最終判断を下す。そこで何も進展がなければ既存の曲でやっていくことにすればいい。」
真姫「そうね。日曜日の様子で判断した方が良さそうね。」
そんな感じで解散になった。
~*~
場所は穂乃果の家
穂乃果「好きだ! 愛してる!」
そう言ったのは穂乃果。
もちろんラブソングを作る手がかりのための演技だ。
だがみんなの反応はいまいち。
穂乃果「んあー! こんなんじゃないよね~!!」
絵里「ま、まあ、間違ってはないわよね……」
穂乃果「はあ……ラブソングって難しいんだねえ……」
絵里「ラブソングは結局のところ、好きという気持ちをどう表現するかだから、ストレートな穂乃果には難しいかもね」
穂乃果をさりげなくフォローする絵里を見る。 ふと真姫を見ると、真姫も絵里を訝しむように見ている。気持ちは分かるが不自然すぎる。ガン見しすぎて目付きがいつもの数倍鋭くなっている。……いつもだな。
にこ「ストレートというより、単純なだけよ」
希「と言ってるにこっちもノート真っ白やん」
にこ「これから書くのよ!」
オレもちらっと見たが完全に真っ白だ。
陽翔「とりあえず映画やドラマでも見てみたらどうだ?」
ことり「実は、参考になるかなって思って恋愛映画持ってきたの。見てみない?」
陽翔「お、ナイス★」
とりあえずことりが選んだ恋愛映画とやらを見ることになった。
~*~
昌信「白黒でしかも字幕映画か……」
一応邦画であるようだが、何故か白黒で音声なしの字幕と、今を生きる現代娘のことりがこんなマイナーな映画を選んだことが1番の謎である。
音声無しだから何を言ってるのか分らんしマジで眠くなりそう。
今の状況を軽く説明すると。
穂乃果と凛は後ろで寄り添いながら寝ている。まあそうなるだろうとは思ってた。テレビの前で感動しているのは絵里、ことり、花陽でグスグス言ってる。にこはハンカチ持ちながら思いっきり泣いてる。
にこ「う、うぅっ……何よ……安っぽいストーリーねえ……!」
希「涙出とるよ」
言動と表情が見事に嚙み合っていない。隣にいる真姫も呆れながらにこを見ている。
極め付けに映画をまともに見ていないのは穂乃果と凛の他にもう1人いる。
海未「うぅぅぅぅぅ~……」
座布団で耳と視界を塞いでいる。しかし音声はないのでほとんど意味を成していない。
ことり「何で隠れてるの? 怖い映画じゃないよ?」
絵里「そうよぉ……こんな感動的なシーンなのにぃ……」
ことりの優しさが何だか小さい子供を宥めるような言い方に聞こえるのは何故だ?確かに今の海未からは幼さが感じられるが。絵里は案の定グズグズ声だ。
海未「分かってます……! けど、恥ずかしい……はっぁぁぁああああ……!」
チラッとテレビに目を移すと、クライマックスシーン、つまりキスシーンだった。
シーンは進む。
唇が重なりそうになる瞬間。
オレはふと思った。海未はこれを一番見たくなかったのではないかと。
しかし時すでに遅し。
海未「うぅぁぁああああああッ!!」
海未の叫びと共にリモコンによってテレビは消され、雰囲気を保っていた部屋の明かりが点けられた。
叫ぶ必要はあったのか置いておこう。
ことり「海未ちゃん!」
クライマックスだったので何で消したの!って聞くかのように叫ぶことり。
海未「恥ずかしすぎます! ハレンチです!!」
花陽「そうかなぁ」
海未「そうです! そもそもこういうことは人前ですべきことではありません!!」
昌信「はぁ…」
オレは頭を抱える。そもそもこれは映画だから人前とかそういう問題ではないだろう。
穂乃果「ほぇ……?」
凛「終わったにゃ……?」
ことり「穂乃果ちゃん、開始3分で寝てたよね……」
このバカ2人は映画もまともに見れないのか。開始3分で寝る方がすごいわ。
穂乃果「ごめ~ん、のんびりしてる映画だなって思ったら眠くなっちゃって……」
昌信「全く…おい、西島。」
西島は起きて……
いなかった。
丁寧にデカデカとした目のシールを張って起きているかのように見せていた。
そのシールを剝したら案の定寝ていた。
昌信「提案した本人が寝てるとは随分と度胸あるなぁ、おい。」
陽翔「いやー。すまんすまん。オレはアニメかSFかMAR〇ELしか見ねえからさ。」
昌信「そーいう問題じゃねえ。」
西島のことは置いといて、オレは1つの決断を下した。
絵里「中々映画のようにはいかないわよね。じゃあ、もう一度みんなで言葉を出し合って―――、」
真姫「待って」
ここで真姫が割って入ってきた。
多分痺れを切らしたのだろう。本題に入るつもりだ。
真姫「もう諦めた方がいいんじゃない? 今から曲を作って、振り付けも歌の練習もこれからなんて、完成度が低くなるだけよ!」
絵里「でも―――、」
海未「実は私も思ってました。ラブソングに頼らなくても、私達には私達の歌がある」
穂乃果「そうだよね……」
にこ「相手はA-RISE。下手な小細工は通用しないわよ」
1人が切り出せば、賛同の意見は次々と出てくる。
絵里「……でも―――、昌信と陽翔は?」
絵里は助け船を求めるかの如くオレと西島に意見を聞く。しかし残念ながらオレは
昌信「すまんが真姫に同じくだ。現時点でこの調子だとあまりにもリスクが高い。」
陽翔「さっきまで寝てたオレが言うのもアレだが、オレだったら打ち止めにするな。既存の曲なら今からでも余裕で間に合うぜ。」
絵里「うぅ…」
希「確かにみんなの言う通りや。今までの曲で全力注いで頑張ろ?」
絵里「……希?」
希「今見たらカードもそれが良いって」
絵里「待って希……あなた……」
希「ええんや。1番大切なのは、μ'sやろ?」
やはり、というか、これで確信した。
この件には希も1関わっていたようだ。だけど、希自身がたった今それを放棄した。
絵里の表情、希の諭すような言動から判断して、オレの仮説は完全に間違っているわけではなさそうだな。
ここまで来たなら真実を掴みたいところだ。
穂乃果ほのか「どうかしたの?」
希「ううん、何でもない。じゃあ今日は解散して、明日からみんなで練習やね」
~*~
穂乃果「じゃーねー!」
穂乃果の家を出て今日は解散となった。
だけど、オレは絵里と希が気になってしょうがない。
真姫「花陽、凛、先帰ってて」
真姫も何か気付いたらしく、絵里達を追いかけるつもりだろう。
昌信「待て。真姫」
真姫「昌信……」
お互い考えることは同じようだ。
昌信「希ってホントに面倒な人だな。」
真姫「ええ。全くよ。」
これに関しては夏の合宿の時から思っていた。
希は真姫以上に面倒だ。
昌信「行くか。」
オレと真姫は希と絵里の後をつけることにした。
~*~
絵里と希は穂乃果の家で解散した後、二人で帰路に就いていた。
絵里「…本当にいいの?」
絵里自身、希の希望を叶えたかったため今回の件に関して不満のようだ。
希「いいって言ったやろ」
しかし希はあれで満足しているようだ。本当かどうかは分からないが。
絵里「ちゃんと言うべきよ。希が言えばみんな絶対協力してくれる」
希「ウチにはこれがあれば十分なんよ」
希はカードを見せる。
絵里「……いじっぱり」
希「エリチに言われたくないなー」
そろそろさよならする場所まで来た。
希「じゃ、また明日。」
絵里「希……」
絵里にとっては歯切れの悪い別れになろうとしていた。
しかしそうはさせたくない人が後ろからやってきた。
真姫「待って!」
真姫と達川である。
「前に私に言ったわよね。めんどくさい人間だって」
「そうやったっけ~?」
夏の合宿の時、3人で買い出しに行ったあの夕陽が綺麗だった日。希は真姫を面倒なタイプだと言った。
しかしオレ自身はお互い様だと思った。
なので、オレも真姫もこの際に言っておこう。
真姫「自分の方がよっぽどめんどくさいじゃない」
昌信「意見言わずに側らから見守る存在って、ありがてえけど、それと同時に身内からしたら得たいが知れないからな。…面倒だ。希」
絵里も納得したのかオレたちに続ける。
絵里「気が合うわね。同意見よ」
昌信「オレと真姫は希がラブソングを提案した時から腑に落ちない点がいくつかあった。希と絵里に関してな。この際じっくり聞かせてもらうぞ。」
意味は伝わったようで、希は半ば諦めたように溜め息を軽く吐いて、告げた。
希「じゃあ、立ち話もなんやし……ウチの家に行こっか」
昌信「おう、すまんな。」
こうしてオレと真姫は希の自宅へ初めて伺うことになった。
次回で希の望み編ラスト…だと信じたい。