IS 8号異界録   作:朽葉

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00 気がつけばそこは海の底でした。

「……此処は……」

 

何のきっかけも無く、不意に意識が覚醒していく。それと同時に、此方の意志に従うように、それまで完全に明りを失っていた室内に静かに光が灯りだす。

 

――システム起動。行動ログを提示。同時に現状を可能な限り調べ報告

 

意識を解してそう命じる事で、システムに命令を下す。

最初に表示されたのは行動ログ。要するに、今まで俺が何をしていたのかと言う記録だった。

 

「……そっか、俺は……」

 

それをチェックして、漸く自らの記憶が復旧するのを自覚した。

そう、思い出した。俺はあの時、目論見の失敗を悟り、ならばせめてもと特異点を取り込んで……。

そうして俺は、多次元宇宙の彼方へと旅立った……筈、なのだが。

 

軽く眉間をつまみながら、状況確認を命じたシステムから返ってきたデータをチェックしていく。と、どうやら此処は巨大な水の中――例えるなら海の中に居る、との事らしい。

まさかとは思いつつ、更に偵察機を飛ばして周辺の情報を測定して。

 

「……地球、だと?」

 

大気の組成、周囲の水質、天体など。それらの観測データから明らかになったのは、どうやら此処は地球らしいことだった。

 

「……でも、太陽系は第九惑星まで……これは、俺達の居た宇宙じゃないな」

 

唯そのデータは、元々持っていた天体データとは多々異なる点が存在していた。太陽系の惑星は9つまでが存在し、それ以降の天体は存在していない。

人類は存在する物の、外宇宙どころか地球から出ることも侭成らないという文明レベル。

――万に一つ、奥に一つ、もしかすれば、生まれた惑星に返ってこれたのかとも期待したのだが。結果は当然ながら違って。

此処は嘗てとは違う場所。嘗て居たのとは違う地球なのだろう。

 

――さすがに、クるモノが在る。

一万二千年近い年月を生きてはいたものの、さすがに見知らぬ異世界へいきなり放り出されるなんて経験は……いや、そういえば、あったか。

 

思い出して、クスリと笑う。

一万二千年前。嘗て俺が人だった頃、神と名乗る存在に出会った頃。

いきなり俺は人から人ではなくなり、強大な力を与えられ、ただ一人あの世界へと放り出されてしまったのだ。

 

「その頃に比べれば、今のなんと容易いことか」

 

何せ今の俺は、力の使い方を十全に学び、力を実際に運用することで実戦を学び、更に不足を補う為に艦を用意し、万全とは言えずとも十全な状況に在ることに違いない。

宗教ではないが、コレもまた神の試練なのだろうか。

そんなことを考えながら、とりあえず橋頭堡を得るべく人類に接触しようかな、などと考えて。

 

「とりあえず、外の世界に接触するなら、此処がどういう文明圏なのかを知らなきゃいけないんだが……ネットワークは存在する? 有り難い、なら文明の代表的な代物は……あいえす?」

 

あいえす、IS……。

何処かで聞いた事の在る言葉だな、なんて首を傾げつつ、頭の中と艦のデータベースを漁る。

あいえす、インフィニット・ストラトス、パワードスーツ、女性しか扱うことの出来ない究極の兵器……。

 

「マジデ、これは神の試練か」

 

そうして脳裏に蘇るのは、嘗て俺が人から外れる前、人であった頃の記憶。

一万二千年も経ってよくそんな記憶を思い出せたな、さすがはチートスペック、なんて感想を抱きつつ、それでもかなりあやふやになっている記憶を掘り起こし、システム上に記述していく。

 

確か、基本的なストーリーは、女性しか扱えないIS、それを起動させてしまった男子がIS学園だか学院だかに入学し、ハーレムを築くという何処のギャルゲだというような設定。

主人公の名前がイチカで、幼馴染がモッピー、ライバルヒロインに金髪ツンデレ、で、話が進むごとにセカンド幼馴染、ブヒ娘、ロリ軍人、ヒーローオタ、テンプレ謎の生徒会長とヒロインが増えていく話だった……筈。

 

で、この話の要点が、最強のIS乗り、ブリュンヒルデと、彼女の有人でヒロインのモップの姉の存在だったような。

ハッキングを掛けた現地ネットワークから情報を検索すると、一発でヒット。

インフィニット・ストラトスの生みの親、篠ノ之束博士と、最強のIS乗りにして初代ブリュンヒルデ織斑千冬。

 

後何か秘密結社くさいのがあったような気がするのだが、さすがにそんな細かい所まで覚えては居ない。

 

「女尊男卑の世界かぁ……ちょっと行動しにくい、かな?」

 

記憶と世界情勢を照らし合わせ、どうやら記憶に間違いが少ないという事を確認する。

IS、インフィニットストラトスが世界に登場し、まだ時間はそれほど経っていない様だ。

白騎士事件といわれるソレは既に起こってしまったらしく、徐々に、けれども着実に、けれども長い坂を転がり始めたばかりのように、急速に加速しつつある変革の波。

この大波を乗りこなす事ができれば、先ず間違いなく後の一手に成りえるだろう。

 

「……やってみるか」

 

呟いて、小さく、そして一番最初の目的を決める。

 

「人類の宇宙進出、そして、来るべき刻への備え、かな」

 

ISモノとしてはテンプレな選択肢かもしれないが、俺の出身世界、一つ前の今の俺が生まれた世界の事を考えれば、大体この選択肢になってしまうのではないだろうか。

嘗ての世界は、所謂『宇宙怪獣』によって常に地球が狙われているような危機的状況に在る世界だったのだ。

そんな世界出身の俺としては、宇宙に対する備えと言うのは如何しても用意しておきたい。

太陽系防衛網、いや、せめて人類の月での生活圏の設立くらいは達成して見せたい。

何せこの世界、宇宙進出こそ遅れているが、それでも既にISと言う宇宙活動用のパワードスーツ自体は存在しているのだ。

ソレを利用し、社会を外宇宙進出へと煽ってやれば……まぁ、出来なくは無い、かな?

 

「と成れば早速現地人類に接触してみますか」

 

この世界の地球は、前の地球と違い地球が一つの国家として纏まっていない。

そんなこの世界。とりあえず降り立つのは、前の世界で最もかかわりの深かった文化圏である日本にすることに。

 

接触する目標としてねらい目なのが、IS関連事業に対して出遅れている企業。

この後の時代、間違いなくIS全盛期が訪れる。いや、もう既にそのIS全盛期は始まりを見せている。現時点でIS関連事業を始めても既に遅く、かといってIS関連事業ほど活発な市場は他に無い。

今さら下手に手を出せば自滅するのは目に見えているし、かといって手を打たずにいれば自然と衰退していくのは必須。

――と、そんな状況に追い詰められている中でも、中小ではなく、ある程度の大きさの企業こそが狙い目。政治的な影響力を持っていれば尚いい。そんな条件でネットの海を泳いで数十分。

 

「……ここだ」

 

そうして見つけた一つの会社。

『帝国重工株式会社』と銘打たれたそれ。ISが登場してからの市場戦略や、株式市場の推移なんかを見ていると、初期のIS市場に手を出さなかったことが禍してか徐々にその規模を衰退させつつある様子が見て取れた。

 

然し、如何やって接触を取るか?

正面から馬鹿正直に行っても、不審者の戯言程度にしか受け取られないだろう。

何か言い手段は無いかと考え、ふと幾つかの手段を思いつき、早速実行してみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、俺のところへ来た……と。よくもまぁ、俺のことまで調べられたなぁ?」

 

目の前に座る男性、名を新谷総一郎という。

彼は俺が目を付けた帝国重工の元幹部で、社長令嬢と駆け落ちしたというとんでもない人物、新谷総一郎と言う名の人物だった。

 

「貴方の名前、所によっては知る人ぞ知る、と言うものでしたから」

「俺ぁ極普通のサラリーマンだと思うんだがねぇ?」

 

そんなことを言う彼だが、その実はそんな生易しいものではない。

ISが出る以前から宇宙開発の必要性を説いていた彼。堅実且つ地道こそを至上とする帝国重工社長とは当然馬が合わない。然しそんな彼に引かれたのが帝国重工社長令嬢であった進藤円。

二人は交際を始めるも、彼女の父は当然反対。そんな彼女の父に切れたのは、新谷氏ではなく進藤令嬢。ある日忽然と二人はその姿を消して見せたのだ。

 

そうして姿を消した二人は即座に入籍。あっという間に企業を立ち上げ、ISが登場したその時にはいち早く市場に参入。ISから齎された最新技術を民生品に取り入れることで、短期間で一気に莫大な財産を得、同時に新参ながらも名の知られたベンチャー企業の社長として知られているのだ。

 

「話を戻しますが。このまま行けばあそこ……帝国重工は確実に潰れます」

「まぁ、それは俺も分ってる。地道なのも良いが、時には大胆さも必要――こんなのはあのオッサンだってわかってると思ったんだが……今さら言ってもなぁ」

 

口惜しそうに語る総一郎氏。何せ彼とて、意見の食い違いこそ在れど、別に妻の父を嫌っているわけではない。この衰退を退ける為に、例えば自らの会社を売りつければ何とかなるか、とも考えたものの、彼の会社はIS関連とはいえダイレクトにISを作っているわけではなく、ISのシステム面や関連技術を民生品に引っ張ってくるというのが主な仕事。

大企業に組み込むとなればコレだけでは絶対に足りない。

市場の開拓、新たな技術の研究、技術の転用、技術を実際に示す宣伝などなど。

中小であるからこそ総一郎氏の会社は十分な利益を得ているが、大企業に組み込むともなれば焼け石に水は必死だろう。

 

「そこで、俺を雇ってもらいたい」

「宇宙人である君を雇うねぇ……でもそれ、本当に利益はあるのかい?」

 

問い掛けてくる総一郎に、ニヤリと笑いながら彼を引き連れ、外へと足を運ぶ。

因みに現在、俺は総一郎氏の自宅へとお邪魔させてもらっている。一応アポは会社のほうで取ったのだが、何故か自宅に案内されておれ自身も少し驚いていたり。

 

そうして連れ出した彼の自宅、その庭にて。

一戸建てに中々広い庭付き。ブルジョワジー!

 

「で、何を見せてくれるんだい、宇宙人クン」

「先ず最初に、ワープから」

 

途端、空間がパリンと砕け、その中から一機のロボットが飛び出してくる。

 

「!?」

「そして登場したコレ、我々の世界で作業用ロボットとして用いられているものです」

 

四角くデカイ頭に、ちょこんとした胴体がくっ付いたそのロボット。型式番号はEVO-3として登録されているソレは、嘗ての世界では途轍もないレベルで広く普及していた作業用のロボットだ。

本来コイツにワープ機能は無いのだが、艦のほうのシステムを少し使い、遠隔操作で此処へ飛ばして見せたのだ。

 

「因みにコイツ、汎用性が馬鹿みたいに高くて、地上でも宇宙でも活動可能。操作性も高く、生産設備さえ整えば車一台分くらいの値段で大量生産できますよ」

「!!」

 

目を輝かせる総一郎氏。何せ俺のいう事が真実だとすれば、彼にとってこれはまさにお宝に他ならないのだから。

 

「コレを交渉材料に、帝国重工に交渉する……どうですか?」

「……その話、引き受ければ当然俺も一口噛ませてもらえるんだろうな?」

「勿論。というか、俺は自分の目的さえかなえられれば、後の利益は別に不要なんだけど」

 

ソッチで好きにやってくれてもいい、というのを言外に伝えると、総一郎氏の目がきらりと輝いた。……この人、お金儲けが好きなんだろう。

 

「よし任せろ、この仕事、確かに引き受けた!!」

 

そういってニヤリと笑う総一郎氏。その笑顔を見て、内心で小さく安堵の息を吐いたのだった。

 

「そうそう、後一つ」

「なんです?」

「君の事は何て呼べばいいのかな?」

 

その問い掛けに、思わず目を剥く。そういえば俺、自己紹介してなかったか。

為らば、折角なので、正式な名乗りでも上げてみるか。

 

「第六世代型恒星間航行決戦兵器・バスターマシン8号です。よろしく」

 

その名乗りにぽかんと此方を見る総一郎氏を見て、にやりと笑みを見せておくのだった。

 




※バスターマシン8号
嘗ての神様転生の際、「バスターマシン7号の能力を拡大解釈したもの」を望み、その結果生まれた存在。結果として存在しない筈のバスターマシン8号として転生した。機能的にはバスターマシン7号(ノノ)の機能に大体等しいが、規模的にはそれを大きく上回る。
本来は起動しなかった7号のサブ・代替ユニット。その為7号に継ぐ指揮権を持つ。活動開始はトップをねらえ! から少し時間の経過したnext generationから。ボディーは存在しない物の、AIとして密かに行動を開始。地球帝国→銀河帝国→地球帝国の推移を見守り、人類の太陽系引篭もりを最期に地球圏の公式記録から姿を消す。
後にヱグゼリオ重力変動源との決戦において再び姿をあらわし、結末を変える為に独自戦力を持って参戦する。が、力及ばず、7号の変わりに特異点を奪取、そのまま多次元宇宙へ消える。

※現時点保有戦力
・バスターマシン8号――基本的に7号と同等の筈が、7号の凍結期間中の自己進化により、何処のDG細胞という有様。
・アーク――8号の用意した機動母艦。8号やBM軍団では対処のし辛い人命救助や拠点としての役割に建造された。ヱルトリウムと同等の技術を使用しているが、操縦は8号単独で可能という仕様。その真の目的は、後世に技術を伝える為のメモリーボックス。
・バスター軍団――直衛のビーゴン級(コレダー)、ベムバスター(近衛)級数機のみ。後はダイバスターへの増援に送り出した。
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