遊戯王TAKEⅡ   作:レイレナード

11 / 15
後編です


Episode06 侵略は追い縋る火が如く 後編

(あの人たち、疲れないんでしょうか?)

 私の数倍の距離を走っておいて何故そんなに元気なのか。未だに痛みの残る自分の足を見て私はそう思った。……そう、だから仕方がないんです。お姫様抱っこだれて少し幸せだな~なんて思ってません。はい。全ては足が痛くて動けないから。

「モンスターをセット。カードを1枚セットしてターンエンド。ってあれ? もうここまで走ってきてたんだ?」

 そんな言葉が聞こえてきたので、慌てて思考を中断する。いつの間にか林を抜け、いつも船が行き来する埠頭にまで走ってきていた。

「フウ。どう? そろそろ体力的にきつくなってきたんじゃない?」

「こほっ。ご冗談を。……でなきゃ、この3日間逃げおおせていない! 俺のターン、ドロー!」

 それなりに疲れているらしい。見ると龍可さんも軽く汗をかいているように見えるし、遊司さんも若干息が激しくなっている気がする。……。

「……穴があったら亀になりたいです」

「突然どうした光!? 穴の意味がまるで無いぞ!?」

 私の分まで走ってくれているのだ、それはそれは体力を消耗することだろう。なのに自分はそれに甘え……。

「龍可さん。このデュエルが終わったら好きなだけ私に抱きついていいですよ」

「ほんと!?」

「やめろ光!? それ以上自分を卑下するんじゃない! 何か知らんが止めないといけない気がするんだ!?」

 ……若干、自分の甘さ加減につい欝になってしまった。遊司さんの言葉で何とか平静を取り戻すことに成功する。

「手札からフォトン・スラッシャーを特殊召喚! そして、ライトロード・アサシン ライデンを通常召喚する!」

「っ! チューナーモンスター……!」

 こちらに関係なくランニングデュエルは進む。真さんの場に現れたのは2体の光属性戦士族のモンスター。彼らは剣を構え、油断なくレーナ先輩のフィールドを見る。

「まずはライデンのモンスター効果発動! デッキの上からカードを2枚墓地へ送る。……落ちたのは終末の騎士とカオス・ソーサラーだ」

 ライデンが剣を掲げ効果が発動する。流石というべきか、墓地肥やしは念入りだ。余さず効果を使っている。……そういえば、真さんはシンクロ召喚を使えるのだろうか? 使ったところを1度も見ていない気がする。

「今回はシンクロではなくエクシーズで! レベル4のフォトン・スラッシャーとライデンでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 光臨、輝光子パラディオス!」

「そのカードは……!」

 やはり使うのはエクシーズ召喚。しかも凶悪な効果を持つパラディオスだった。真さんの情報をいくつか持っていたのだろう。レーナ先輩の顔が引き締まる。

「知ってるのなら話は早い! パラディオスのモンスター効果発動! オーバーレイユニットを2つ使うことで、選択したモンスターの攻撃力は0になり、効果も無効化される! 選択するのはワーム・ヴィクトリー! パワー・ディバイド!」

 パラディオスから電撃が発せられワーム・ヴィクトリーに直撃する。そして麻痺したかのように動きがぎこちなくなってしまう。

 

ワーム・ヴィクトリー

攻撃力500→0

 

「これで……! 行け、パラディオス! ワーム・ヴィクトリーに攻撃! フォトン・ディバイディング!」

 パラディオスの持つ剣から光弾が放たれワーム・ヴィクトリーに襲い掛かる。レーナ先輩のライフポイントは2000。これが決まれば真さんの勝ち!

「なんのなんのお! リバースオープン! 罠カード、W星雲隕石!」

 

W星雲隕石

フィールド上に裏側表示で存在するモンスターを全て表側表示にする。

このターンのエンドフェイズ時に自分フィールド上に表側表示で存在する爬虫類族・光属性モンスターを全て裏側表示にし、その枚数分だけ自分はデッキからカードをドローする。

その後、自分のデッキからレベル7以上の爬虫類族・光属性モンスター1体を特殊召喚することができる。

 

「フィールド上に裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示に! よってセットされているあたしのモンスターを反転! ワーム・ファルコ!」

「んなにい!?」

 

ワーム・ファルコ

星2 光属性 爬虫類族 リバース

攻撃力500 守備力800

リバース:このカード以外の自分フィールド上の「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスターを全て裏側表示にする。

 

 レーナ先輩による怒涛の連続発動に目を剥く真さん。反転されたのは鳥の姿をした、奇妙な声で鳴く気味の悪いモンスター。

「ワーム・ファルコの効果により、私の『ワーム』と名のつく全てのモンスター、つまりはワーム・ヴィクトリーは裏側守備表示に! そして、パラディオスの攻撃は続行されたまま!」

「や、やっべ!」

 ワーム・ヴィクトリーに襲い掛かった光弾は腕の1つにあっけなく弾かれ、その光弾は真さんに直撃する。しかし、更に恐ろしいのはここから。

 

2500-2000=500

真LP3500-500=3000

 

「くっ!」

「まだまだあ! ヴィクトリーは攻撃されたことで反転! リバース効果によりあんたのパラディオスは破壊よ!」

「こんちくしょうめ!」

 ブレード・ハート同様、パラディオスも凄まじい勢いで迫ってくる腕に貫かれ破壊されてしまう。先輩はやっぱり強い。派閥のトップであることも頷ける。

「一手でここまでとは……! パラディオスのモンスター効果発動。このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたため、1枚ドローできる。ドロー。……カードを1枚セット。ターン、エンドだ」

「フッフ~ン! そのエンドフェイズ時に、W星雲隕石の効果により私のワームたちは全て裏側守備表示となり、その数だけドローすることができる! ドロー!」

 見せ付けるようにドローするレーナ先輩を、真さんは頬を引くつかせて睨む。よほど悔しかったのか走る速度も若干落ちていた。

「グフ、グフフフフ! 更にドローした後、デッキからレベル7以上の爬虫類族、光属性モンスターを特殊召喚することもできる! 来なさい、ワーム・キング」

 上機嫌も上機嫌。レーナ先輩は更にモンスターを召喚する。現れたのは、いかにも強そうな4足4腕で胴体に大きな口を持つ金色の異形。まさに王、といった感じだ。

 

ワーム・キング

星8 光属性 爬虫類族

攻撃力2700 守備力1100

このカードは「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター1体をリリースして表側表示でアドバンス召喚できる。

また、自分フィールド上の「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター1体をリリースすることで、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

「こんのお、ワームめえ……!」

「そろそろ終幕だぜ! あたしのお~ファイナルターン! ドロー!」

「某ファイターに謝りやがってください」

「あんなにイラついた真は初めて見るな」

「そうだね。大丈夫かな真」

「いつもより苦戦してるように見えます」

 遊司さんの言葉に私と龍可さんが頷く。悪態をつくほど心に、というかデュエルに余裕がないのだろう。そしてそんな真さんとは裏腹に、レーナ先輩が勝負を決めにきたようだ。

「いくぜえええ!? ワーム・キングの効果発動! 自分フィールド上の『ワーム』と名のついた爬虫類族モンスター1体をリリースすることで、相手フィールド上のカード1枚を破壊できる! あたしはワーム・ファルコをリリースして、あたしから見て右のカードを破壊する!」

 レーナ先輩がそう宣言すると、ワーム・キングはワーム・ファルコを掴み胴体についている口で食べ始めた。私はもちろんレーナ先輩以外の面々も、目の前の光景に耐えられず視線を逸らす。……夢に出そうです。その後、何かを吐き出したかのような音と、カードが破壊された音が耳に届く。

「……破壊されたのは、光子化だ」

「ブラフ当てちゃったかな? ……まあいい、あたしが有利なのに変わりはない! あたしはワーム・カルタロスを通常召喚!」

 

ワーム・カルタロス

星4 光属性 爬虫類族 リバース

攻撃力1200 守備力500

リバース:デッキからレベル4以下の「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター1体を手札に加える。

 

 今度のワームは蛾のような羽を持った人型の怪物。その羽で空中を飛び、レーナ先輩の隣を並走する。

「さらにワーム・ヴィクトリーを反転! 墓地に『ワーム』は2体! 攻撃力が上昇するぜ!」

 

ワーム・ヴィクトリー

攻撃力0→1000

 

 総攻撃力は真さんのライフポイントを超えている。このままでは真さんが負けてしまう!

「バトル! まずはワーム・ヴィクトリーでダイレクトアタック!」

「ぐう!」

 ワーム・ヴィクトリーの腕が伸び真さんを襲う。前の攻撃とは威力が違ったのか、走る真さんは大きくよろめいてしまう。

 

真LP3000-1000=2000

 

「防がなかったてことはここで終わりと見た! 今度はワーム・カルタロスでダイレクトアタック!」

「うわ!?」

 嬉々として攻撃を命じるレーナ先輩。ワーム・カルタロスがその羽で大きな風を起こす。それを真さんは根性で耐えるも、走る足取りは若干重い。

 

真LP2000-1200=800

 

「これで止め! 行きな! ワーム・キング!」

 そして、止めを刺さんとワーム・キングが真さん目掛けて突進する。私たちが息を飲む中、真さんはこの時を待っていたとばかりに動きだした。

「ここだ! 伏せカードオープン! 罠カード、ガード・ブロック!」

「んな!? あんた、まだそんなカードが……!」

 ワーム・キングの突進を薄いバリアのようなものが弾き返す。ワーム・キングは唸り声を上げて攻撃を止めた。

「戦闘ダメージを0にし、1枚ドロー!」

「まだまだやれそうだな、真の奴」

「でも、流石に冷や冷やしたね」

「そうですね。びっくりしました」

 安心したように息をつく私たち。余裕がないように見えたが、まだ余力を残していたようだ。すると、そんなしぶとさにレーナ先輩が声を荒げる。

「あ~もうしつこいなあ! いい加減に捕まるかとっとと負けやがれってんだ!」

「ハハハ、すみませんね。流石に負けて手駒になるのはちょっと」

「ムカッ! なら、さらに絶望させてあたしの派閥に下らせてやんぜ! あたしは、手札から融合を発動!」

「……は?」

 真さんの目が点になる。そして私も声には出さないが驚いた。レーナ先輩って融合を使うんだ。

 

融合

魔法

自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

 融合召喚。あらかじめ決められている融合素材モンスターを墓地へ送って、融合モンスターをエクストラデッキから特殊召喚する召喚方法の1つ。レーナ先輩と関わりを持ってことがある遊司さんと龍可さんはすごく驚いていた。どうやら知らなかったらしい。

「あたしが融合するのは手札のワーム・アポカリプス、イリダン、リンクス。そして場のワーム・キング、ヴィクトリー、カルタロス!」

「「「「はあ!?」」」」

 レーナ先輩の宣言に、ここにいる全員が信じられないとばかりに声を上げる。6体のモンスターを素材にする融合モンスターなんて聞いたことがない!

 

ワーム・アポカリプス

星1 光属性 爬虫類族 リバース

攻撃力300 守備力200

リバース:フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

 

ワーム・イリダン

星5 光属性 爬虫類族

攻撃力2000 守備力1800

自分フィールド上にカードがセットされる度に、このカードにワームカウンター1つ置く。

このカードに乗っているワームカウンターを2つ取り除くことで、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

ワーム・リンクス

星2 光属性 爬虫類族 リバース

攻撃力300 守備力1000

リバース・このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、お互いのエンドフェイズ毎に自分はデッキからカードを1枚ドローする。

「来たれ死の星! あらゆるモノを侵略し尽くせ! 融合召喚! 始まりにして終わりのワーム、ワーム・ゼロ!」

 空を覆うように巨大な穴がレーナ先輩の頭上に開く。その穴からゆっくりと、まさに灰色の星とも言うべき姿をした存在が現れ始めた。遊司さんと龍可さんが真さんと同じように引き攣った顔をする。かくいう私も。な、何か表面が蠢いてるのですが……。デュエルとはいえ、正直気持ち悪いです!

 

ワーム・ゼロ

星10 光属性 爬虫類族 融合

攻撃力? 守備力0

「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター×2体以上

このカードの攻撃力は、このカードの融合素材としたモンスターの種類×500ポイントになる。

またこのカードは融合素材としたモンスターの種類によって以下の効果を得る。

●2種類以上:1ターンに1度、自分の墓地の爬虫類族モンスター1体を選択し、裏側守備表示で特殊召喚できる。

●4種類以上:自分の墓地の爬虫類族モンスター1体をゲームから除外して発動できる。

フィールド上のモンスター1体を選択して墓地へ送る。

●6種類以上:1ターンに1度、デッキからカードを1枚ドローできる。

 

「未来融合なしで完全召喚とかマジかよ……!」

「ワーム・ゼロの攻撃力はこのカードの融合素材としたモンスターの種類×500ポイントとなる! 数は6種類! よって攻撃力は3000! ま、バトルフェイズは終了してるけど」

 

ワーム・ゼロ

攻撃力?→3000

 

「更に6種類を融合素材としたため、ワーム・ゼロは種類の数によって使える効果を全て使用できる! とことんやってやるから感謝しな! ワーム・ゼロの効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地の爬虫類族モンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚できる! あたしはワーム・ヴィクトリーを選択し、裏側守備表示で特殊召喚!」

「またそいつっすか……!」

 刻一刻と時間が経つほどに苦しくなる真さんの戦況。ワーム・ヴィクトリーが現れたことで、走る彼の顔が更に苦しげにゆがむ。

「どんどん行くぜ! ワーム・ゼロの効果発動! 1ターンに1度、カードを1枚ドローできる! ドロー! ……あたしはカードを2枚セットしてターンエンド。このターンではダメだったけど、次のターンはないと思ってね?」

 レーナ先輩が今のところ圧倒的に有利。だが真さんの目はその言葉を聞いても死んではいなかった。むしろその顔は、今まで見た中で一番楽しそうな顔だったかもしれない

 

 

 ただいまどこかの道を疾走中。考えるのは今の状況のみ。戦慄、とはまさにこのこと。ここで引くものを引かなければ、死の星とやらにただ蹂躙されるだけだ。

(……面白い!)

「まだ終われない! 俺のターン! ドロー!」

 余裕なんて正直なところ皆無に等しい。それでも戦うのは、戦えるのは思うところがあるからだ。

 俺は引いたカードに目を向ける。さて、引くものも引いた。後は精一杯今の状況を打破するのみ!

「俺はまだまだ戦える! まずは邪魔なヴィクトリーには退場してもらう! ライトロード・モンク エイリンを通常召喚!」

「エイリン!? しまった……!」

「エイリンでヴィクトリーを攻撃! エイリンのモンスター効果発動! エイリンが守備表示モンスターに攻撃した場合、ダメージ計算前にそのモンスターを持ち主のデッキに戻す! フォーシング・リターン!」

 エイリンは召喚された瞬間、ワーム・ヴィクトリーに疾走する。そして蹴りを叩き込む。だがワーム・ヴィクトリーは消える直前、エイリンに自らの腕を突き刺した。その一撃でエイリンは破壊されてしまう。ナイスファイト、エイリン!

「ワーム・ヴィクトリーはデッキに戻るが、そのリバース効果によりエイリンは破壊されてしまう」

「だがまだあたしにはワーム・ゼロが――」

「無論、残らせはしない! 更に俺は墓地の光属性モンスター、ライデンと闇属性モンスター、ダーク・グレファーを除外! カオス・ソーサラーを守備表示で特殊召喚!」

「な! ま、まさかさっき引いたのはそれ!?」

 そう、引いたのはこのカード。現れたのは闇と光の力を持つ魔法使い。破壊が無理なら、除外すればいいじゃない。これぞカオスの戦い方だ。

「カオス・ソーサラーのモンスター効果発動! 1ターンに1度、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を除外できる! 対象はもちろん、ワーム・ゼロ! ディメンション・プリズン!」

「そ、そんなあああ!?」

 カオス・ソーサラーの右手に光が、左手に闇が集まり集束、それを両手を広げるようにしてワーム・ゼロに放つ。混沌の球はワーム・ゼロの身体を貫通し、その後ろに現れた巨大な渦に飲み込まれていった。

「た、たった1ターンで……!」

「俺はカードを1枚セットしターンエンド。どうですか? 意外と何とかなるもんでしょ?」

「真すごーい!」

 敢えて何でもないように振る舞いレーナ先輩を挑発する。ふと後ろにいるレーナ先輩の、更に後ろを見ると、龍可が体全体で喜びの感情を表現していた。女子的に結構怖かったのだろう。あと遊司君、君にはそのお姫様抱っこしている光ちゃんについてお話があります。

「んぎぎぎぎ! いいぜいいじゃんやってやろうじゃんか! やり返してぎゃふんって言わせてやっからな!? あたしのターン、ドロー!」

 レーナ先輩が歯噛みしながらドローする、これで動揺してプレイングに支障が出来てくれたら御の字である。だが、このターンは乗り切ったが、俺の胸にはまだ嫌な予感とも言うべきものが渦巻いている。……怖いわあ。

「永続魔法、ワーム・コールを発動!」

 

ワーム・コール

永続魔法

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札から「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚する事ができる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないため、あたしは手札から『ワーム』と名のついた爬虫類族モンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚する事ができる! ワーム・ヴィクトリーを裏側守備表示で特殊召喚!」

「懲りないようでなにより……!」

 空中に出来た穴から場にセットされたのは、またもやワーム・ヴィクトリー。まったく、ほんとに懲りないワームさんである。俺は一体こいつに何回モンスターを破壊され、また何回破壊したんだったか。

「そんでリバースオープン! 罠カード、リビングデッドの呼び声! あたしは墓地のワーム・キングを選択して特殊召喚!」

「……ぎゃふん」

 僅か1ターンで前と同じ場をレーナ先輩が揃えてくる。これはぎゃふんと言うしかないではないか。

「さっきは手痛くやられたからな。慎重に行かしてもらうぜ! バトル! ワーム・キングでカオス・ソーサラーを攻撃!」

「ぬう……!?」

 ワーム・キングが自慢の腕を伸ばし、カオス・ソーサラーを問答無用で破壊する。守備表示にして正解だった。もうライフポイントを削られるわけには行かない。

「そんでもってワーム・キングの効果発動! 自身をリリースし、あたしから見て左のカードを破壊!」

「む……! 破壊されたのは、闇次元の開放だ」

 自身をリリースしてくるとは思わなかった俺はつい唸ってしまう。このままでは。ワーム・ヴィクトリーの効果でまたモンスターを一掃されてしまうだろう。

 

闇次元の開放

永続罠

ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択して特殊召喚する。

このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊してゲームから除外する。

そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

 

「あたしはこれでターンエンド。これでどうよ!」

「……俺のターン! ドロー!」

 引いたカードを確認して思わず顔がにやけてしまう。……これはいい引きだ。十代さんの霊でも取り憑いたのだろうか。死んでないだろうけど。まだまだまだ、行ける……!

「さあ、行くぞ! 手札から魔法カード、戦士の生還を発動! 戻れ、宵闇の使者!」

「ちっ! 手札に加えやがったってことは……!」

「これが、カオスの力だ! 光属性と闇属性の数は同数! よって俺は墓地の光属性モンスターをすべて除外し、出でよ。宵闇からの使者! 正道を通り顕現せよ! 切り開け! カオス・ソルジャー -宵闇の使者-!」

 フィールドに光点が現れ広がっていく。そこから闇が溢れ四散する。そこには左右で白と黒の色違いの鎧をつけた戦士が、主である俺の命令を静かに待っていた。

「宵闇の使者のモンスター効果発動! 特殊召喚するために除外したモンスターの属性により発動する効果は異なる。除外したモンスターは光属性! よって、フィールド上のモンスター1体を選択して除外する効果となる!」

「なんだと!?」

「行け、宵闇の使者よ! 宵闇、時空列斬!」

 宵闇の使者の構えた剣に混沌の光が集い、一閃。セットされていたワーム・ヴィクトリーに剣の軌跡を刻み、その軌跡はワーム・ヴィクトリーの体を吸い込んで消滅した。あれ、何気に効果を使ったのはこれが初めてではないだろうか?

「ま、またあたしのワーム・ヴィクトリーが……」

「効果を発動したターン、バトルフェイズは行えない。俺は魔法カード、混沌の種を発動。自分フィールド上に光及び闇属性モンスターが存在する場合、除外されている自分の光または闇属性の戦士族モンスター1体を選択して手札に加えることができる。宵闇の使者は光属性としても扱えるため発動可能。ライトロード・モンク エイリンを回収してターンエンド」

 このターンも終了。さて、何が来る?

 

 

 戦い始めてどれくらいだろうか。埠頭は遠くに、また林の中へと戦いの場は移っていた。絶えず走るものだからさすがに体力も残り少ない。光をお姫様抱っこしているから尚更だ。

いや、別に重いとかそういう訳ではないのだが。……いかん、意識するな恥ずかしくなってくる。

「……さねえ」

「え?」

「ただで帰れると、お・も・う・な・よ!?」

「え、えええええええ……!?」

 怒りのあまり、髪についていた木の葉を勢いよく地面に叩きつける先輩。そんな先輩の怒りように、真がどうしてとばかりに悲鳴をあげ走る速度を上げる。

「……光、首が痛い」

「へ? ……ふぁう!?」

 怖かったのか、光が俺の首に無意識に抱きついて来たので注意しておく。……コホン、隣を並走する龍可の温かい目(誤字に非ず)が激しくうざいが、今は放っておく。

「グルルル……! トニカク、アンタ、ツブス」

「ひい!? ちょ、ま」

「問答拒否!! あたしのターン! ドロー!!」

「拒まないで!?」

「ワーム・ゼクスを通常召喚!」

 見ようによっては英字のXに見えるワーム、ワーム・ゼクスがレーナ先輩の近くに召喚される。

 

ワーム・ゼクス

星4 光属性 爬虫類族

攻撃力1800 守備力1000

このカードが召喚に成功した時、デッキから「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。

自分フィールド上に「ワーム・ヤガン」が存在する場合、このカードは戦闘では破壊されない。

 

「ワーム・ゼクスの効果発動! このカードが召喚に成功した時、デッキから『ワーム』と名のついた爬虫類族モンスター1体を墓地へ送ることができる! 落とすのはワーム・ヤガン!」

「っ! っすよねー」

 俺たちはワームの効果について知らないものばかりだが、真は当然とばかりにレーナ先輩に頷いて見せた。ほんと、知識量がすごいな。

 

ワーム・ヤガン

星4 光属性 爬虫類族

攻撃力1000 守備力1800

自分フィールド上のモンスターが「ワーム・ゼクス」1体のみの場合、このカードを墓地から裏側守備表示で特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド場から離れた場合ゲームから除外される。

このカードがリバースした時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して持ち主の手札に戻す。

 

「墓地のワーム・ヤガンの効果発動! 自分フィールド上のモンスターが『ワーム・ゼクス』1体のみの場合、このカードを墓地から裏側守備表示で特殊召喚できる! 来な、ワーム・ヤガン!」

 今度は英字のYに見えるワーム、ワーム・ヤガンがワーム・ゼクスの隣にセットされた。それを見て真が微かに嫌な顔をしていたが、強力な効果でもあるのだろうか?

「バトル! ワーム・ゼクスで宵闇の使者に攻撃!」

「何だって?」

「攻撃力が低いのに、攻撃?」

「何か企んでるのかな?」

「攻撃? ……やっべまさか!?」

 レーナ先輩の行動に俺たちは首を傾げる。だが真は伏せてあるカードに目を向けると表情を一転させ、何かがわかったらしく焦り始める。

「その瞬間、リバースオープン! 罠カード、ダメージ=レプトル!」

「やっぱりか!」

 

ダメージ=レプトル

永続罠

1ターンに1度、爬虫類族モンスターの戦闘によって自分が戦闘ダメージを受けた時に発動できる。

その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ爬虫類族モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

 

「1ターンに1度、爬虫類族モンスターの戦闘によって自分がダメージを受けた時に発動できる! その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ爬虫類族モンスター1体をデッキから特殊召喚する! ぐう!」

 ワーム・ゼクスが宵闇の使者に飛び掛るも、宵闇の使者は徐に剣を構えワーム・ゼクスを一瞬のうちに破壊する。そしてその余波はレーナ先輩に当たり走る速度が遅くなる。

 

レーナLP2000-1200=800

 

「来な、毒蛇の王! アンタにふさわしい場がここにある! 豪誕、毒蛇王ヴェノミノン!」

 大量の蛇がダメージ=レプトルのカードから吐き出され、その蛇たちが徐々に形を成し、紅いマントと黒い服を着た蛇、毒蛇の王が姿を現した。

 

毒蛇王ヴェノミノン

星8 闇属性 爬虫類族

攻撃力0 守備力0

このカードはこのカード以外の効果モンスターの効果では特殊召喚できない。

このカードの攻撃力は、自分の墓地の爬虫類族モンスターの数×500ポイントアップする。

このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、「ヴェノム・スワンプ」の効果を受けない。

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカード以外の自分の墓地の爬虫類族モンスター1体をゲームから除外する事で、このカードを特殊召喚する。

 

「まだこんなものを……!」

「ワーム・ゼクスはそのまま破壊される。ヴェノミノンは墓地の爬虫類族モンスターの数×500攻撃力がアップする。あたしの墓地の爬虫類族モンスターの数は、破壊されたワーム・ゼクスを入れて8体! よって攻撃力は――」

 

毒蛇王ヴェノミノン

攻撃力0→4000

 

「4000! 真の宵闇の使者を上回ってきた!」

「すげえ……!」

「すごい、ですけど。ちょっと怖いです……」

「さあこれでお仕舞いだよ! 行きなヴェノミノン! 宵闇の使者に攻撃! ヴェノム・ブロー!」

 ヴェノミノンが宵闇の使者に向けて、腕に巻きついている蛇から毒の液体が発射される。だが、真は宵闇の使者が破壊されるというのにも関わらず、何事か決意した目で宵闇の使者を見る。

「俺はまだ、死力を尽くしてはいない! 伏せカードオープン! 罠カード、死力のタッグ・チェンジ!」

「そんな、まだ!?」

「すまない宵闇の使者……! 自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが戦闘によって破壊されるダメージ計算時、その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる!」

 宵闇の使者が体全体を使って、真に危害が及ばぬよう毒液を喰らってしまう。その後、爆発と共に宵闇の使者は破壊された。

「くっ! 更にそのダメージステップ終了時に、手札からレベル4以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する事ができる! 来い、エイリン!」

 真の手札からエイリンが特殊召喚される。切り札を破壊されてでも、真はまた次に繋いだ。その姿が、俺にはちょっとかっこ良く見えた。

「……なんで? あんたがそこまで諦めない理由って何さ!? そんなにあたしの派閥に入るのが嫌なわけ!?」

「……今はちょっと違います」

「え?」

「確かに派閥に入るのはいやだけどさ、そのために頑張ってるんじゃないんですよ」

 レーナ先輩が悲しそうな目で真を見る。だが真は、ただ楽しそうに、けど決意に満ちた笑顔を向けた。

「ただ諦めろ、なんていうのが嫌。……それだけです」

 諦めたくない。それだけのこと。デュエリストなら当たり前のことだ。だが何だろうか? 真の言葉には俺たちが口を出すことが出来ない、予想以上の重みがあるように思えた。

「……これだけやったのに、あんた、すごいね。あたしはこれでターンエンド。……あたしとしたことが、ちょっと、見誤ってたかな?」

「え?」

「なんでもない。……さあ、精一杯やろうじゃない!」

「もちろん! 俺の、ターン!」

 俺には予感がした。これが最後のターンになるような、そんな予感が。

「ドロー!」

 

 

 諦めたくない。何もこのデュエルに限ったことではない。

 元の世界に返ること。これは、ただ諦めろで済む話ではない。居るのだ、大切な家族が。友人が。人が物が、俺の全てがそこには。

 目標はどでかいのだ、これしきのことで諦めていたらこの世界では探し歩くことすら困難だ。だから――

「……行きますよ先輩!」

「来な! 後輩!」

 レーナ先輩が笑って答えてくれた。まずは一歩。その侵略、ここで断ち切らせていただきます!

「ダーク・グレファーを通常召喚! そして、レベル4のダーク・グレファーとエイリンで、オーバーレイ! 戦士たちの思いを武器に、戦地を切り裂け! エクシーズ召喚! 出陣、ズババジェネラル!」

 正真正銘最後の攻撃。俺が召喚したのは愛嬌のある目をした大柄な騎士将軍、ズババジェネラル。

 

ズババジェネラル

ランク4 地属性 戦士族

攻撃力2000 守備力1000

レベル4モンスター×2

1ターン1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

手札から戦士族モンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

このカードの攻撃力は、この効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。

 

「ズババジェネラルのモンスター効果、発動! 1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ使うことで、手札から戦士族モンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードの攻撃力は、この効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。俺が装備するのは――」

 そういって俺は最後に残った手札を開帳する。運命ってのはあるものだね。そのカードは――

「宵闇の使者!? そんな……!?」

「こいつのこんなところが、俺は大好きだ! ズババジェネラルの攻撃力は宵闇の使者の攻撃力分アップ! よって攻撃力は――」

 虚空から宵闇の使者の持っていた剣が現れ、ズババジェネラルはそれを装備し二刀流となる。

 

ズババジェネラル

攻撃力2000→5000

 

「攻撃力、5000……!」

「戦士の魂は受け継がれた! 行け、ズババジェネラル! 毒蛇王ヴェノミノンに攻撃!」

 混沌の力が宵闇の使者の剣からズババジェネラルの持っていた剣にも現れる。そしてズババジェネラルはヴェノミノンを見据え、素早い動きで大ジャンプしヴェノミノンの上を取った。

将軍式(ジェネラル)双破斬(カオス・ブレード)!」

 急降下し力の乗った両手の剣を、ヴェノミノンに向けてズババジェネラルが上から下に叩き込む。混沌の力も合わさったその一撃はヴェノミノンをあっさりと3枚に卸し、大爆発と共に破壊した。

「きゃあああ!?」

 

5000-4000=1000

レーナLP800-1000=-200

 

 その衝撃でレーナ先輩は転んでしまうが、しっかりと受身を取っていた。

 立ち止まり、一呼吸。さて、俺は今まで暖めていたセリフを言う。この世界で生き、この世界で探すため、歩むためのセリフを。この世界はありえなかった第二の人生。テイクツーだ。

 指をチョキの形にし、映画の撮影に使うあの道具、カチンコのように指をくっつける。

「カット! 良いデュエルを、ありがとう!」

 この場面(デュエル)はここでお仕舞い。だがまだ俺の物語は始まったばかり。また「アクション!」と言われることもありそうだ。

 ま、ただの決めセリフ。そこまで深く考えることもないだろう。……結構、恥ずかしいなこれ。

 

 

「痛いよう。痛いよう。胃潰瘍(いかいよう)

 あのデュエルから翌日、昼休みとなった教室にて。俺は机にうつ伏せになりながら呻き声をあげる。今までアドレナリンが大量分泌でもしていたのか、今日になって筋肉痛が凄まじいことになっていたのだ。……途中からは逃げるのではなく、ただ走ってるだけの普通のデュエルになってたような……気のせいだよねきっと!

 教室に到着するまでにも、腕が僅かでも動けば激痛が走り、足を少しでも曲げれば激痛が走った。その有様に、鴇矢先生には保健室を薦められたほどだ。強制的にロボットごっこをさせられている気分である。オカシイナ、昨日調子二乗リスギタカ?

「真、大丈夫?」

「アア~楽ニナルゼ」

「……そのしゃべりかた何?」

 そんな俺に、隣に来た龍可が俺の手や腰を軽くマッサージしてくれる。ランニングデュエルを提案した自分に少々負い目を感じているらしい。別に気にすることでもないと言ったのだが。……まあ龍可の手さばきは気持ちいいので、もう少しこのままマッサージを続けてもらうことに。周りの目なんか知らん! 恨みのこもった目なんて見てないね!

「昨日はすごかったからな、色々と。まあお疲れさん」

「無理もないですよ。……筋肉痛。そんな恐ろしい重病にかかるくらい、今まで大変だったんですね。お疲れ様です」

「光さん? 労わってくれるのはうれしいんだけど、何か違和感があるんだ」

 遊司と光ちゃんも疲れた顔をしながらこちらに寄ってきた。というか光ちゃんが何かおかしい気がする。どんだけ体力がないんだろうかこの子。

「だって、ほんの数m走っただけで体の節々が痛くなるんですよ? ……こんなの絶対おかしいです」

 小さな頬を、まるで「私、納得行きません!」とでも言うように軽く膨らませる光ちゃん。教室のいたるところから「ドンガラガッシャーン」という、椅子の倒れる音が聞こえてくる。龍可はマッサージしていた手を止め光ちゃんを抱きしめ始め、遊司はいきなりの物音に驚いていた。……また「ロ」で始まり「ン」で終わる紳士が量産されてしまうではないか、いいぞもっとやれ。あと、おかしいのは君です光さん。

「よーっす真!」

「アンビシャス!!?」

 突然俺の背中が凄まじい力で叩かれる。途端全身に電撃が走ったかのように痛みが広がった。せ、背中が崩れ落ちるように痛いいいい!?

「だ、誰、だ?」

「やっほー」

 息も絶え絶えに後ろを振り向くと、そこにはレーナ先輩が元気に手を上げてあいさつしていた。え、何故にこのお人こんなに元気なん? チート? 二刀流でも扱いけるの?

「レ、レーナ先輩」

「あ~気にしてないから、そんなに怖がんなくてもいいよ後輩ども。もうあんたたちをあたしの派閥に無理に入れようとはしないさ。真とのデュエルでわかったからね」

「え?」

 遊司、龍可、光ちゃん、俺が順に強張った顔をすると、レーナ先輩はまるで憑き物が落ちたような晴れやかな笑顔でそう言った。俺とのデュエルで、とはどういうことなのだろうか?

「あたしの器じゃあんたたちを御しきれない。やっと、そう悟ったのさ」

「それは……」

 俺たちは顔を見合わせる。つまりそれは、俺たちが強いから身を引く、という事なのだろうか? もっと深い意味合いがありそうだが。

「じゃあ、俺にはもう関わら――」

「そこで、だ!」

 突然レーナ先輩は大声を出して俺の言葉を遮ると、徐に自身のポケットから小さな名刺サイズの紙を取り出した。そして、俺に読めとばかりに押し付けてくる。

「え~何々? 『真派閥募集! 求む強者』……おっふ」

「「「へ?」」」

「ふふふ~ん!」

 その内容に俺は吐血しかける。遊司たちは目を点にし俺と紙を交互に比べ、レーナ先輩はどや顔をこれでもかと披露していた。

「え、どゆこと!? 俺の派閥って何やねん! てかさっき『御しきれない』とか言ってましたやん!」

「え? 別にあたしが真の派閥を作って、そこで牙を研がないとか言ってないよね? てへぺろ?」

 レーナ先輩のその言葉に口が引き攣る。嫌に具体的で隠れ蓑にする気満々なのが何か腹立つ。

「というわけで、真派閥をよろしくね?」

「真……」

「哀れな……」

「今度、ジュースを奢ってあげますね……」

「……何でさああああ!?」

 ご無体なお言葉に、俺は初めてこの世界で慟哭した。




今回のNGシーン
「こ、このターンは、えほっ。お、おとなしい、ハア、動き、ですね、こほっ」
「ひ、光? 大丈夫か?」
 光ちゃんが苦しそうに話すのを、隣で並走している遊司が心配する。そういえば光ちゃん、体力なかったっけ。これは失敗した。
「しょうがないか。文句は後でいくらでも聞くからなっと」
「へ? ……へへう!?」
 遊司はそう言うと走ったまま光ちゃんを抱き寄せ、自然な動きでお姫様抱っこした。……さすが遊司、恥ずかしいことを平然とやってのける。された側である光ちゃんの顔は真っ赤に染まり、今にも火が吹き出そうだ。超、可愛いです。
「ゆ、ゆゆゆゆゆゆうじさん!? ここここここの格好はさすがにあの!?」
「ん? そうか? じゃこれで」
「遊司それ俵運びのつもり?」
「だめ?」
「……」
「光ちゃん不満そうだよ」
「……いえ、あの別にそういうわけでは……」
「あとそれまるで幼女をさらってる危ない人みた――」
「ようし変えよう、今すぐ変えよう。ならばこれでどうだ!」
 そう言うと、遊司は光ちゃんを担ぎ上げ、自分の首の後ろに座らせてその両足を掴み体勢を整えた。ようするに肩車だ。
「……、なんか違う!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。