遊戯王TAKEⅡ   作:レイレナード

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作者「実に5年ぶりの投稿」

遊司「正直復活するとは思わなかった」

作者「いや一応ずっと書いてはいたんだよ。一年に一話くらいのペースで」

遊司「カエルか!」

作者「友人と一緒に書いてるだけはあって、なんだかんだ続けられてる」

遊司「そんなペースで一体いつ終わるんだよこれ」

作者「頑張りたい」

遊司「何にも信用できねー」

作者「そんなわけで、少しだけ書き溜めていたのをゆっくり投稿してみようかと思っています。世の中もうリンクなんて出てますが、ここではまだエクシーズが出たばかりってくらいの世界観なので少々古臭いデュエルになりますが、どうかお付き合いください」

遊司「今回はデュエルもない話だけど、まあよろしく」

作者「あと、昔描いた奴と今書いてる奴とで設定が変わった部分とかもあって、ちょっと矛盾が生じる場合もあると思うので、そこは気が付いたときに直していきたいです」

遊司「不安しかねえ」

作者「では、本編をどうぞ」


Episode07 戦前に嗤う札

 デュエルアカデミア・セントラル校のオーナーは現在、I2(インダストリアル・イリュージョン)社の2代目社長が納めている。本来はKC(海馬コーポレーション)によって設立された学校なのだが、前オーナーであるKCの社長、海馬瀬人の死と、それに伴うKCの衰退が原因で、KCの3代目社長がデュエルアカデミア・セントラル校の経営をI2社へと移行したのだ。(KCの2代目社長はわずか数年で社長の座を辞任しており、その背景が疑われている)なお、KCはネオ・ドミノシティ長官であるイェーガーの手で何とか回復の道をたどってはいるが、未だ全盛期には遠く及ばない。

 I2社がセントラル校を手に入れて間もなく、当時の校長が退職し、エスカレーター式に教頭が校長の座に就いた。同時に、実技最高責任者を務めていた彼女が、その肩書ともに教頭となり実に35年ぶりに、教頭と実技最高責任者の役職が被ることになる。それから早10年。その間に伝統行事として定着した、1つのイベントがある。教頭がその座についてすぐに発案されたそれは、生徒たちに良い刺激になるというとこで即座に採用され、今でも高い評価を得ていた。

 しかしそのイベントは新入生たちには直前まで知らせない決まりがある。なぜならこのイベントは1年生前期最後の1週間で行われるからだ。前期の最後、つまり高校生として切っても切れない期末テストというイベントを乗り越えて初めてそのイベントは成立する。つまり、事前に知らせることで生徒たちの集中を切らせないためだ。生徒の中には当然、お祭り好きな者もいるため、この配慮は大きな意味を持つ。

 

「の、はずだったけど……。これはまずいわよね」

 7枚のプリントを前に、教頭は頭を抱えていた。

 

 

 

「ふう、ようやくテストも終わったな」

「終わった? 二重の意味で?」

「違えよ!?」

 面倒なテストが終わったことを喜んでいたら心にグサリと来るボケを龍可にホザかれた。

 7月中旬。期末の筆記テストが終わり、もはやいつものメンバーと化した俺、真、龍可、光の4人は食堂にて昼食を食べていた。今回は寝坊もせず、テストを書き上げた後に何度もチェックした。隙はない……はず。

「本当にミスはないのか?」

「大丈夫だ。………大丈夫、だよな」

 真の確認に即座に答える。が、しかし何度も言われると逆に不安になってきた。確かにランニングデュエルとかのせいであまり勉強できてなかったし、ちょっと心配だ。

 でもほとんどの問題はちゃんと書いたし、空欄にした問題はない。当てずっぽうなのはブラック・ガーデンと一族の結束が発動中にモリンフェンを召喚すると攻撃力がどうなるかって問題とデュエルディスクに登録されている無限ループが発生した時にデュエルディスクがどの段階で強制終了するかって問題くらい。

 テスト終了後に調べてみたがそれもちゃんと当たってた。……大丈夫、のはずだ。

「本っっっ当にミスはない?」

 さらに確認してくれるあたり、龍可も龍可で一応心配してくれているのだろうか。

「大丈夫だっての。今回は光にだって負けないぜ!」

「はい。でも私も負けませんよ!」

 どうにも不安が拭えないが、今回は全科目90点以上の自信があるのだ。無理やりにでもその自信を信じることにする。そんな思いでこのメンバーで最も安心して話すこのできる光に話を振ると、思った通りの純粋な答えが返ってきた。最近は光との会話が俺にとっての癒しになりつつあるような気がする。

「……もう正式に光の派閥に入ろうかな」

「ふえ!? え、いや、えっと……」

 半分本気で言ったら顔を真っ赤にして慌てはじめた。そんな様子に俺も慌てて訂正する。

「あー、冗談だ冗談。気にするな」

 まさかこんなに嫌がられるとは思わなかった。俺、何かしたかな。

「……そう、ですか。はい。そうですよね……」

「あれ?」

 と思ったら今度はものすごく落ち込み始めた。感情の移ろいが激しすぎる。いったいどうしたんだ。

「……はあ」

「これが鈍感の罪というものか」

「え?」

 そして龍可と真が肩を落として残念なものを見る眼で俺を見ていた。なんか最近こういうこと多いな。

 とその時、校内放送のチャイムが響いた。

『オベリスクブルー所属の空羽遊司さん。教頭先生がお待ちです。至急、職員室まで来てください。繰り返します。オベリスクブルー所属の――』

「………え゛」

 嫌な予感がぶり返した。

 

 

 職員室に行った遊司さんは「先に寮に戻ってる」というメールを残して戻ってこなかった。以降、何度メールを打っても返事はない。

 気になった私たちは寮まで行って、代表して真さんが話を聞きに行くことになり、合鍵を使って遊司さんの部屋に入って行った。

「ってなんで合鍵を真さんが!?」

「龍可ー!」

「真ー!」

「「イエーイ!」」(ハイタッチ)

「こんな場面前にも見ましたね!!」

 犯人は身近にいたようだ。っていうか真さんはこのためにわざわざ戻ってきたんですか!?

 私の全力の突っ込みをホクホク顔で受け止めながら真さんは再び遊司さんの部屋に入って行った。私の突込みってなにか可笑しいんでしょうか。

 そんな私をじっと見つめる気配に気付き隣を見ると、龍可さんが真剣な顔で私を見ていた。

「……ねえ、光ちゃん」

「な、なんですか?」

 いつになく真剣な声。なにか重要なことかと身構えていると、龍可さんはゆっくりと鍵を差し出してきた。さっき真さんが使っていたのと全く同じ形の鍵を。

「……いる?」

「いりません!」

 勢いで言ってハッとした。しまった! と。

(ってなんで後悔なんてするの~!!)

 顔が熱くなるのを感じる。そんな私を龍可さんはニヤニヤと撫でまわすように眺めていた。

「ふ~ん。ホントにいらないの~?」

「い、いいいいりますぇん!」

 ちらちらと合鍵らしきものをチラつかせながら龍可さんは舐めるように私を惑わす。思わず誘惑に負けそうになって変な言葉になってしまった。もらおうと動く手を必死に握りしめて抑える。

「そっか~。いらないのか~」

 龍可さんはもはや隠す気もないのか、堂々と合鍵を私の前で揺らしだす。あ、悪魔だ。私を欲望に染め上げる悪魔がいる……!!

「っ、~~」

 自分をぎりぎりで抑えつけるが、正直崩壊寸前だった。

「(いい加減やりすぎかな)でも、はい。あ・げ・る♪」

「……ふえ?」

 いつの間にか手に何か握らされていた。開いてみるとそこにはやはり例の合鍵が。

「だ、だからいらないって……」

「うん。ポケットにしまいながら言われても説得力ないからね」

 どうしたって体は正直だった。

 

 

「それにしても、やっぱり何かやらかしてたんだね。今回はどんなポカをやったのか」

「ま、まだそうと決まったわけでは……」

 お風呂にも入っていないのにのぼせたような感覚に翻弄されてしばらく。私と龍可さんは寮の前で遊司さんが閉じこもった理由を話す。

 合鍵? ポケットの中にありますよ。悪いですか。

「光ちゃん。どうしたの?」

「……何でもありません」

 自分の良心に対して開き直った言い訳をしていたらまた顔が熱くなってきた。平常心を保たねば。というか真面目に遊司さんのことを考えよう。

 さっき龍可さんに言った通り、まだテストのせいだと決まったわけではない。でもそれ以外の理由で急にこんなことになったのだとしたら、それは遊司さんにとってすごくまずい問題ということになる。……あれ? テストでポカしたって結果の方がいいのかな。

「あ、真!」

 私がそんなどうでもいいことに悩んでいると、いつの間にか真さんが戻ってきたようだ。

 さっそく、というように龍可さんが聞く。

「合鍵は?」

「取られた」

「って真っ先に聞くのはそっち!?」

 やはり2人はいつも通りだった。あと取られたのは当然だと思う。

 気を取り直し、改めて龍可さんが聞く。

「それで、何だったの?」

「テスト全部名前書いてなかったんだと」

「あー……」

 何とも言えない結果だった。

「一応先生全員に頭下げて回ったそうだけど、改めて名前を書かせてくれたのは5教科だけで、残りの2教科は0点だってさ」

「その2教科って?」

「英語とデュエルモンスターズ史」

「あー。あれの先生、遊司のことあんまり好きじゃなさそうだもんね」

 遊司さんが現在受けているテストのある授業は、国語、数学、科学、世界史、英語、デュエル総合、デュエルモンスターズ史、の7教科。そのほか体育と錬金術がある。話によれば今のところ遊司さんはどの教科も休んだことはなく、とても優秀で評価も高い。

 しかし英語とデュエルモンスターズ史の2人の先生はとても生徒に厳しい。というかわざと難しい問題を出したりするとても意地悪な先生で、そんな問題を遅刻してきた遊司さんに出したら軽々答えられたということがあったせいで嫌われているのだとか。

「ってそれ完全に逆恨みじゃないですか」

「どこにだっているもんさ、そんなの。ちなみにその2つは本来なら100点だったってさ」

「うわー」

 それは確かにへこむ。部屋に閉じこもりたくもなるだろう。

「何にしても、今は1人にしておいてあげよう? たぶん明日には元気になってると思うから。というか明日になれば確実に元気になるイベントがあるから」

「? なんだっけ」

 落ち込みぎみだった空気を龍可さんが軽くしてくれる。でも明日って何か特別なことがあるのかな。

「真はともかく、光ちゃんってやっぱりどこか抜けてるよね」

「うっ……」

「俺はともかくって……。いやその通りだけどさ」

 だ、だってがんばって勉強しないと成績維持できないし、だから新聞とか読んでる時間ないし。

「ま、何にしても明日になれば分かることだから。大丈夫だよ!」

「…そうですね。わかりました」

「んー。俺は気になるから後で秀にでも聞くかな」

 その後は、遊司もいないし今日は解散、ということで真さんとはそこで別れた。

「それにしても、遊司は相変わらずだねー」

 懐かしそうに龍可さんは言う。そう言えば、最初に会った時もテストに寝坊したんだっけ。その次の日に真さんが降ってきて。あれからもう1ヶ月半も経っているんだ。

「なんだかんだ真も定着したよね。もう一緒にいるのが当たり前って感じに」

「……そうですね。真さんだけでなく龍可さんや遊司さんとも。なんだかもっとずっと一緒にいたような気がします」

「あはは。確かに言われてみれば私も遊司とは3ヶ月も経たないくらいの付き合いだし、光ちゃんとも丁度2ヶ月くらいだね。そう考えると、真が来たあの時から、私達は一緒にいるようになったんだね」

 思い返すと、短い間にいろいろあった。瑠奈さんの事とか、レーナさんの事とか、派閥とか。みんなで一緒にいる時間はこれまでの人生の何よりも楽しくて、もはやそれのない生活など考えられないだろう。

「そういえば、光ちゃんはセントラル校の中等部から上がってきたんだよね。なのに遊司の事は知らなかったの?」

「っ……」

 何気ない質問。だけど、ほんの少しだけ胸がチクリと痛んだ。

「私、中等部の頃から勉強漬けでしたから。友達もいなかったし、早く帰らないといけなかったので」

 本当はそうしたくてそうなったんじゃない。そうならなければいけなかったんだ。だけどそれをここで言ったところで何にもならないし、意味なんてない。私の個人的な問題をこの場所に持ちこんじゃいけない。

「……そっか。遊司ったら中等部の頃からポカやらかしてたそうだからね! 1位争いどころかデュエルする機会もなかったかあ」

 一瞬、龍可さんの表情が何かに気付いたように変わった気がした。もしかしたら気持ちを隠したことを悟られたのかもしれない。

 だけど龍可さんはそれを聞こうとはしなかった。聞かないでくれたのだ。そしてそれは、私にとって何よりもありがたいことでもあった。

(龍可さん、ありがt――)

「じゃあやっぱり遊司のことは一目惚れだったのかあ」

「ふぁ!?」

急激な方向転換に思考が一瞬止まる。そんな私をニヤニヤと見て、龍可さんは続けた。

「ねえねえ。せっかく2人きりなんだしガールズトークとしゃれ込もうよ! それでそれで? 遊司のどこが好きになったの?」

「いやあのえとだからpjvねpぁんbpぶmえgbそあdなおpwhkj!?」

「恥ずかしがらなくていいから♪ ほらほらあ」

「ちょ、やめ、ぱふぅ!」

 龍可さんは息を荒くしながら興奮気味に頬を突いてくる。

 一瞬でも感謝した私が馬鹿でした!! 誰かこの人を止めてくださーい!!

 

 

 

 翌朝。今日は土曜日で授業もないのだが、とりあえず朝の体操をするため遊司の様子を見に行くことにする。龍可からもらった合鍵その2を使って鍵を開け部屋に侵入すると、ちょうど遊司は着替えを終えたところだった。

「よう。少しは元気になったか?」

 聞けば遊司はあからさまにげんなりした顔を向けてきた。

「今少し元気じゃなくなった。……鍵かけてたはずなんだが」

「ああ。これ使った。意外と不用心だな、遊司」

「それは不用心とは呼ばねえよ!? つか、それをよこせえええええええ!!」

 俺が合鍵を指で持ち上げると、それに怒声を放ってくる遊司。昨日は無言で奪ってたし、やはりだいぶ持ち直したようだ。

「やはり龍可の仕業か。あのルカの蟲惑魔め」

「なにそれ欲しい」

 再び合鍵を強奪されたあと、遊司とともにいつもの崖へ向かう。余計な追いかけっこをしたせいで少し遅れてしまったが、怒ってないといいな。

「ちなみに効果は?」

「1ターンに1度デッキから『落とし穴』と名のつくカードを1枚選択し自分の魔法・罠ゾーンにセットすることができる。この時、相手はそのカードを確認できない」

「強すぎワロタ」

 遊司にとっての龍可がどれほどのものなのかが分かった気がした。

「というかお前も受け取るなよ。やめさせろ」

 まあそれが普通だろうな。だがな遊司。

「それ俺に言う意味あると思ってる?」

「ないだろうな! そうだろうな! 世界のバカヤロー!!」

 遊司は遠くの空に向かって叫ぶ。が、世界はせいぜいカモメの鳴き声で応えるくらいだった。世界とはいつだって理不尽で不平等なものなのだよ。

「ほら、馬鹿なことやってないで早く行こうぜ」

「わかってるよ……」

 これからも遊司は苦労人として生きていくのだろう。陰ながら応援してるぜ!

「お前が俺を苦労人にしてるんだろうがっ!」

「……おお!」

 盲点だった。しかしやめる気はさらさらない。

 

 

「あ。真ー! 遊司ー!」

 適当に話しているうちにいつの間にかあの場所までたどり着いていたようだ。見れば光ちゃんの傍で龍可が手を振っている。朝からいい笑顔、アザッス。

「悪い。少し遅れたか」

「まったくだよ! もう1時間近くは待ってたよ!」

「何時に来たの!?」

 あながち嘘じゃない可能性のある時間だけに微妙にリアクションに困る。

「あはは、そんなに待ってないですよ。私も一緒に来たので確かです」

「なんだ。でもやっぱ待たせたんだな。悪い」

 なんて言うか、律儀だよな。遊司って。苦労人なのもそんなところが所以だったりして。

 そこからはいつも通りにちょっと風変わりのラジオ体操を行う。最初こそ違和感があったが、これがこの世界式のラジオ体操なのだろうと勘違いしている間に定着してしまったので今更訂正する気も起きない。

 こんな健康的な朝を迎えるようになってからは以前よりも体の調子もいい気がする。雨でそれができなかった日など、なんとなく調子が悪いような気さえしたほどだ。今ではすっかり体が覚えて、雨の日は自室でやってから食堂に向かうようになってしまった。

 今日も体操を終えるといつも通り寮ではなく校舎にある食堂へ向かう。金がかかると言ってもどうせDPで払えるのだから問題はない。

「そういえば、今日って結局何があるんだ?」

「あれ? 秀に教えてもらったんじゃないの?」

「はぐらかされた」

 昨日Dパットを使って電話して聞いてみたら「明日になれば分かるんだから、お楽しみとして取っておいた方が後が楽しいと思うよ!」と言って速攻切られたのだ。おかげで昨日は気になってなかなか寝付けなかった。

「なんだ? 今日なんかあるのか?」

 遊司も話に食いついてきた。というかやっぱり遊司も知らないんだな。ここは世間知らずばっかりだ。……あ、俺もか。

「んー。たぶん12時くらいには発表されると思うから。それまで待とうよ」

「えー」

 不満はあるがそう言うなら仕方あるまい。今から昼までは少し長いが、待てないほどでもないしな。

 

 

 朝食を食べ終えるとやることも無いので購買にでも行ってみることになった。流石にこの時間では俺たち以外に客なんていない。

 普通のパックの表紙にモンスターが描かれてないってのはまだ慣れないな。入ってるカードや封入率も全く違うし。例えば、ゴキボールとチューニング・ウォリアーが同じパックに入ってたりだ。

「適当にパックでも買ってみるか」

 そんなことを考えていたからか、なんか面白いカードが当たりそうな予感がするので買ってみることにする。

「あ、ならみんなで買おうよ。その中でほしいカードがあったらトレードでもしてさ」

「おお、それいいかもな」

「欲しいカードが当たる可能性も高くなりますね」

 すると龍可の提案でその場にいる全員で買うことになった。とりあえず2パックずつくらいでいいだろうと適当に買う。

「みんな買ったか?」

「はい。誰からあけますか?」

「じゃあ私から行くよ!」

 どうやら1番手は龍可のようだ。ピリっとパック破いて中からカードを取り出す。

「な~にっかな~、な~にっかな~。今回はこれ!」

「何やってんの?」

「なんかやらなくちゃいけない衝動に駆られて」

 何か龍可が妙な怪電波を受信したようだ。まあそれは置いといて、龍可の手元を見てみる。

 

調和の宝札

暴風竜の防人

プーテン

たつのこ

チューナーズ・バリア

 

「チューナーパック?」

「いや、でもこのシンクロモンスター結構なレアカードじゃないか」

「そうですね。シンクロモンスター……のチューナー!?」

「シンクロチューナーってもう一般にカード化されたんだ。まあそんなに悪くないかもね」

 いや実際たつのこはやばいと思うが。それに暴風竜の防人と調和の宝札って。これがシグナーの運命力か……!

「じゃあもう1パック行くよー」

 

ナチュル・バタフライ

ナチュル・パルキオン

ラッコアラ

シャイニート・マジシャン

幻獣の角

 

「私のデッキに丁度いいカードばっかりだー♪」

「脱帽した! 龍可の運命力に脱帽した!!」

「これは……、凄まじいな。パルキオンは厄介だし」

「このエクシーズモンスターは硬いモンスターですね。突破するのに骨が折れそうです」

 地属性獣族デッキを作りなさいとでも言いたそうなパックだな。封入のされ方偏りすぎじゃね。

「次誰行く?」

「じゃあ俺が。まずはこっちから」

 次は遊司がパックを開けた。こいつも運命力高めだからいいカード当てるんだろうな。

 

天空勇士ネオ・パーシアス

ヴァイロン・マター

スキル・サクセサー

ホーリー・ナイト・ドラゴン

異怪の妖精 エルフォビア

 

「なんかものすごいレアカード来たー!!」

「ホーリー・ナイトは大切にしまっておこう」

「他のカードも悪くないね。ネオ・パーシアスなんて遊司のデッキにぴったりだし」

「というかホーリー・ナイトだけ無駄に異質ですね」

 ある意味いい感じにばらけてるな。この方がカードパックっぽくていいわ。龍可のあれは何かおかしかったんだ。

「2つ目はっと」

 

電光千鳥

H-C エクスカリバー

恐牙狼 ダイヤウルフ

竜魔人 クィーン・ドラグーン

ワイト

 

「……は?」

「ひょ?」

「え、ちょ……」

「ワイトが異質すぎて恐いです」

 皆の顔から表情が消えたのは言うまでもない。とりあえず遊司よ。そのエクスカリバーをこっちに寄越せ!!

「え、っと。次は私が行きますね」

 

神竜 アポカリプス

バーバリアン・レイジ

メリアスの木霊

天空の使者 ゼラディアス

神秘の妖精 エルフィリア

 

「うん。普通な感じ。というか、いい感じに交換できそうなカードが出てきてるな」

「光、後でゼラディアス交換してくれ」

「私も! メリアスの木霊、後でトレードしよう!」

「はい。わかりました」

 っていうか光のデッキってどんなデッキなんだろ。そういや今までデュエルしたこともしてるところを見たことも無いな。

「2つ目行きます」

 

明鏡止水の心

テラ・フィーミング

フォトン・サンクチュアリ

毒蛇神ヴェノミナーガ

アルティメット・インセクトLV1

 

「………」

「はずれパックじゃね? いろんな意味で」

「下の2つは何かの嫌がらせなのだろうか」

「でも使えそうなカードもあるよ。(それに光ちゃん。なんだか真剣にカード見てたし、欲しいカードでも手に入ったのかな)」

 さて、最後は俺か。この流れならいいカードが出てくれるんじゃないだろうか。こういう瞬間はいつもワクテカする。

「じゃ行くぞー」

 

火霊使いヒータ

風霊使いウィン

地霊使いアウス

光霊使いライナ

水霊使いエリア

 

「………」

「………」

「………」

「わ、わお。……つ、次に行こう」

 

白魔導士ピケル

黒魔導士クラン

カードエクスクルーダー

召喚師セームベル

サイ・ガール

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 無言でもう1パック買ってみる。さすがにこの2つはなかったことにしたい。いや決して弱いなんて言わないし使えるカードでもあるんだけどこれはちょっときつい。主に精神的に。

 まるでドリアードのように祈りながら新たに買ったパックを開封する。

 

憑依装着-ヒータ

憑依装着-ウィン

憑依装着-アウス

憑依装着-エリア

不幸を告げる黒猫

 

「………」

「………」

「………」

「………おうふ」

 これ以上、何か言うことがあるだろうか……。

 ふと誰かが俺のわきに立った。

「少年よ。これが絶望だ」(キリッ)

 どや顔のレーナ先輩が俺を見ていた。いたんですね先輩。めっちゃウザいですね先輩。

 

 この後、みんなから慰めのカードをもらった。わいわいとカードを交換するみんなの声がやけに遠く聞こえた。

 

 

 

「あ、もう11時過ぎてるね。そろそろ食堂に戻らない?」

「そうだな。……真ー。起きてるかー」

「起きてるよ。とりあえず昼食はみんなの分奢らせてくれ」

「え!? そんな悪いですよ!」

「いいんだ。きっとこれは何かの啓示なんだ。何かして打破せねば……」

 意気消沈している真が痛々しいけど、正直かける言葉が浮かばない。さすがにあれはないでしょう。1パックだけならからかうネタになったかもしれないけど、3パック全てとなるとさすがに。3パック目なんて憑依装着できたから最後はライナかと思ったら黒猫とか……。

 まあでも、せっかくだから奢ってもらっちゃおっかな♪

「それにあれを聞けば、たぶん真も元気になるだろうしね」

「ん? 12時にあるっていう発表の事か?」

「そ。とりあえず真が元気になる前に奢ってもらっちゃおう!」

「ひどいやつだなお前!」

 と言いつつ真からDパットを借りている遊司はなんだかんだ言って同類だと思う。

 そうこうしているうちに食堂につき、少し早目の昼食をとることに。ここぞとばかりに高いものを光ちゃんに奢ってあげようとするが全力で止められた。手を掴んで足止めされたり必死な顔で遠慮されたり、それだけで大変満足な私はきっと間違ってない。

「重症過ぎんだろ」

 遊司が引いているが気にしない。むしろ光ちゃんにこんなに思われてるのに全く気付かない遊司はとっとと秀とくっつけばいいと思う。

「なんでだよ!? っていうか、光がなんだって?」

「る、龍可さん!?」

「あれ? 私、口に出してた?」

 と、ここでいつも乗ってくる声がないことに気付く。真は未だに意気消沈中だ。

(やっぱり重症だね~。えっと時間は……、うん。そろそろ立ち直るかな)

「じゃ、そろそろ静かにしよっか。放送も近いだろうし」

「ん、もうそんな時間か。真! お前の分もとってきたから食べとけ」

「恒例のドローパンですね。今日はなんでしょう」

 ふっ、光ちゃんが食べようとしているのは私が渾身の思いでドローしたドローパン! さあ、黄金の卵パンよ、姿を現しなさい!

「! こ、これは……!」

 来たか!?

「ゲソのイチゴジャム和えパンでした。うう……」

「マジか。ドローパンの中に1つしか入ってない奴だろそれ。一番まずいと有名な」

「なん……だと……っ!?」

 ちなみに私のは大学芋パンだった。もさもさしてて食べ辛すぎる。

「ところで遊司さんのは?」

「苦味しか感じられない小豆パン」

「なにそれ微妙」

 と、そこで校内放送のチャイムが鳴った。話を一旦やめ、放送に耳を傾ける。

 

 

『1年生のみんなに連絡があるわ。みんながデュエルアカデミアに入学してからもう4ヶ月が経とうとしてるけど、もうここでの生活には慣れたかしら? 無事期末テストも終えて、あとは夏休みを待つばかり。本校に残る生徒もいれば、帰省する生徒もいるでしょう。でもその前に、毎年恒例のイベントがある事を知ってるかしら? 期末テストが終わってから夏休みに入るまでの2週間。その半分を使って開催される大会。新入生対抗デュエル大会の開催を、ここに宣言する!!』

 

『新入生全員参加で来週1週間を使って開催するわ! ルールは普段の試験デュエルと同じ。寮など関係なくランダムに組まれた予選を勝ち抜き、決勝トーナメントで優勝を目指せ! 優勝賞品は何と10000DPに加え、I2社よりプレミアムカードを1枚プレゼント! そしてトーナメントの結果はプロデュエリストへの道の大きな一歩となるのは間違いないわ! 今日から大会が終わるまでの間は全ての授業が休講となるので悔いの残らないよう、デッキの最終調整を忘れないように! それじゃみんな! 優勝目指して、頑張りなさい! デュエル、スタンバイ!』

 

 

 ずいぶんハイテンションな放送だった。これ本当にあの教頭か?

 だがしかし、そんなことは今は関係ない。

「なるほどな。これはテンションが上がらざるを得ない!」

 デュエル大会だと? それを聞いてテンションが上がらないデュエリストなんてデュエリストじゃない! 

「でしょ? これなら絶対元気になると思ったんだ。ね? ま・こ・と?」

 龍可が楽しそうに真に呼びかけると、真はテーブルにうつ伏せになっていた体を起こした。

「ふっふっふっ、面白い。狩らせてもらおう、その優勝賞品のプレミアカードごと! それでさっきの悲惨なパックをなかったことにしてやる……!」

 妙なテンションの上がり方をしていた。そして真よ、あれをなかったことにはできないと思うぞ。

「あはは……。でもプレミアムカードは気になりますね。いったいなんでしょう」

「そうだねえ。できれば可愛いカードがいいな~」

 光と龍可も俺たちほどではないにしてもどこかソワソワしていた。やっぱみんなデュエリストだな。

 それにこの2人のデュエルは俺も見てみたい。龍可のデュエルは1回だけ見たことがあるけど、手の内を全てさらしたようには見えなかったし、光に至っては1度も見たことがないのだ。

「2人のデュエルも楽しみにしてるからな! 特に光!」

「え!? は、はい!」

 突然の指名に光が跳ね上がって驚く。ほんといつもリアクションが大袈裟だよな。でも今回はそこに突っ込みはしない。それよりも気になることがあるからな。

「学年1位の実力。見せてもらうぜ! デュエルすることになったらよろしくな!」

「! ……はい。もちろんです」

 俺の宣言に真剣な表情で答える光。期待に応えて見せる、って感じか。気負わせてしまったのなら少し悪い気もするが、でも楽しみにしてよう。

 そして宣言と言えば忘れちゃいけないやつがもう1人!

「あと真! リベンジしてやるから俺と当たるまで負けんじゃねえぞ!」

「! ったく、熱いやつだな。……その挑戦、受けて立つ! 当方に迎撃の用意あり、ってな!」

 不敵に笑って見せる真に、俺も同じ顔で目線を交差させる。デュエリストとして、負けっぱなしじゃ格好悪い。大会という最高の舞台で、今度は絶対に勝って見せる!

「……あれ? 私には何かないの?」

「ん? もちろん龍可も、いいデュエルしようぜ!」

「他の2人と随分差があるような気がするのは気のせいかな」

 きっと気のせいだ。龍可と戦うのだって楽しみなのは本当だしな。

「さて! それじゃあさっそくデッキ調整でもするか! 今日当たったカードもデッキに組み込めるしな!」

「おっと、そうだったな。ついに俺のEXデッキにエクスカリバーが……!」

 せっかくあげたんだから大事にしてほしいものだ。

「私も少し調整しよっかな」

「そうですね。それじゃあ今日はここで解散しましょうか」

 そこで俺たちは別れ、それぞれ寮に向かって歩き出す。

 大会は4日後。最高のデッキにしないとな!

「の前に、遊司は補習があるんじゃないの?」

「……1日だけだし、大丈夫だ。大丈夫、だよ、な……?」

 

 

「ところで真。お前のドローパンは何だったんだ?」

「ん? 金色のイナゴパンだったが?」

「金色のイナゴて……」

 ドローパンってかなり絶妙な食材持ってきてるな。実は作るのに結構金掛かってんじゃねえの? 変な方向にだけど。

 

 

 

「トーナメントか。面白いね。実に面白い。優勝するためにも、もっと努力しないとね」

「では、やはり」

「ああ。行くよ。もっとカードがいるからね」

 

 

 

「へっ! 俺の真の実力を見せてやるよ! もう誰にもヤリザなんて呼ばせねえ!」

「「がんばってください! ヤリザさん!」」

「………」

 

 

 

「……私の剣がどこまで届くか。試させてもらおう」

 

 

 

「我が道場のためにも、必ず勝つ! そうだ、どんな手を使ってでも……!」

 

 

 

 それぞれが様々な思いと覚悟を抱き、大会は始まる。それは俺たちにとっての始まりであり、1つの区切り。

 そしてある者にとっては、最後の試験のようなものだった。

 

「……さて。どうなるのか、期待しているよ。2人とも、ね」

 




今回のNGシーン

『新入生全員参加で来週1週間を使って開催するわ! ルールは普段の試験デュエルと同じ。寮など関係なくランダムに組まれた予選を勝ち抜き、決勝トーナメントで優勝を目指せ! 優勝賞品は何と10000DPに加え、I2社よりプレミアムカードを1枚プレゼント! そしてトーナメントの結果はプロデュエリストへの道の大きな一歩となるのは間違いないわ! 今日から大会が終わるまでの間は全ての授業が休講となるので悔いの残らないよう、デッキの最終調整を忘れないように! それじゃみんな! 優勝目指して、頑張りなさい! ジュエル、スタンバイ!』
「あ」
「噛んだ」
「噛んだね」
「そうですね」
「放送、普通に終わってるな」
「なかったことにしたのかな」
「これ以上指摘しない方がいいですね」
「「「うん」」」
 上がりかけたテンションは、非常に微妙なところでつっかえったのだった。
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