遊戯王TAKEⅡ   作:レイレナード

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作者「どうも作者です」

龍可「ヤッホー! 龍可だよー!」

作者「前から思ってたけど5年の間に一体何があった。キャラ変わりすぎでしょう」

龍可「乙女にはいろいろあるんだよ」

作者「えー、気になるー」

龍可「……知りたい?」

作者「……真、バトンタッチ」

真「ここで!?」

龍可「ねえねえ、真ー。知りたいー? 聞きたいー? うふふふふふふふ」

真「さささ、作者バトンがえ――っていねえ!?」

龍可「ま・こ・と~」

真「ぐっ、ぐわああああああ!?」


龍可「始まるよ!」


Episode03 秀麗なる庭園 前編

 ところで、アイドル、というものを皆はどのように考えるだろうか。アイドルとは偶像という意味で、その名の通り人々の夢の体現者たる者のことだと俺は考えている。常に笑い続け、みんなに笑顔や夢を与える。時には体を張って困難に立ち向かわなければならない時だってあるだろう。しかし彼らはそれを物ともせず突破する。

 しかしそんな彼らは、いつも苦しみの中にいるのではないかと思う事がある。例えば握手会やサイン会。彼らは一体何人と握手し続け、一体どれほどのサインを書くのか。そんなことをしていたら、当然手には大きな負担が掛かるだろう。それこそ、腕を壊しかねないほどの。しかしそんな中でも彼らは笑っている。そんな苦しみを悟らせる者など一人もいない。それは他のバラエティーなどでも言えることだし、ライブなんかでもそうだろう。

 故に、俺は彼らを見ると尊敬すら持つことがある。一体どこからそれほどの力を出しているのか。だから今目の前にいる彼のことも俺は尊敬していた。もちろん今この瞬間も。

「……いや、まあ。だけどさ。限界はあるって」

 着地の際に嫌な音を立てた足をプルプルと震わせながら、決めポーズを維持してこちらに女性と見間違うほど秀麗な顔を向けはにかむ彼、庭瀬(にわせ)(しゅう)にどうしようもなく残念なものを見る目を向けながら俺は呟いた。

 

 

 

「お、おーい。足痛いんだろ? いい加減姿勢直せって」

 長い沈黙に耐えかね俺は渋々、突如として登場したこの残念な金髪イケメンに声をかける。てか、いい加減決め顔ヤメろよ、こっちが恥ずかしい。

「ふっ。限界など、超えるためにあるのさ!」

「いやカッコイイ台詞かもしんないけどカッコ悪いわ!」

 思わず、といった調子で遊司が突っ込んだ。うん。足を震わせながら両手を広げてそんなこと言われても格好良くもなんともないな。

「何を言うんだ遊司。これが僕のあり方、さ!」

「うっさいわ! ってかその仕草もやめろ! ここにはお前のファンいなしカッコつける必要ないから!」

「ふっ。気にする必用はないよ、遊司。ファンの有無は関係ない。常から僕はこうなのさ!」

「なら他所でやってくれよ……」

「つれないなあ。君と僕の中じゃないか☆」

「☆ヤメろ。あと変に意味深な言い方するな!」

 次々と行われるボケとツッコミ。素晴らしい切れだと言わざるを得ないが、このままではコントが終わりそうにない。俺は呆れつつ、こっそり龍可さんに聞くことにした。

「あの、龍可さん」

「え? ああ、呼び捨てで構わないよ。そっちのほうが慣れてるから」

「そっか。わかった。なら、俺のことも好きに呼んでくれて構わないよ」

 こ、これが噂の呼び捨て権利! 頂戴したぜ! じゃなくて。

「それで、あの人っていったい」

 軽くウザがられてるイケメンさんの方を見ながら言うと、龍可は納得して説明してくれた。

「彼はこのデュエルアカデミア・セントラル校の理事長の息子さんだよ。名前は庭瀬秀くん。いつもあんな感じで、学校のアイドルみたいに振舞ってるの。実際高等部入ってまだ2ヶ月だっていうのにファンも多いし、というかファンクラブもたくさんあるよ」

 あ、マジでデュエルアカデミアなんだ。へーそうなんだー。って、待て。

「アイドル?」

 丁寧に説明してくれた龍可には悪いが、俺は信じられないといったように秀を見た。いい加減ポーズはやめたようで、いつの間にかすぐそこで遊司と話している。

まあ、確かにその仕草は非常に優雅だし、顔も素晴らしく整っていてイケメンだ。しかしその台詞や時折りやるポーズがすべてを台無しにしている。例えばさっきの颯爽と登場したシーン(笑)とか。

「……あれに、ときめくのか?」

「……ギャップ萌え、かな」

 自信なさげに龍可は答えた。遊司がさっき言っていた通り、この場にファンはいないということだろう。

「ああ言えばこう言う……。それで! 結局お前は何しに来たんだ?」

 もはや諦めたというように声を上げる遊司。どうやら結局遊司が折れる形で話は進行したようだ。えっと、なんだ。お疲れ。とりあえず汗をぬぐってくれ。

「もちろん! 君たちの友情の輪に混ぜてもらおうと思ってね!」

 懐から薔薇を取り出して口にくわえる秀。様になっているのはいいが、頭の上の薔薇をまず何とかして欲しかった。

(っていうか。つまりどういうことなんだ?)

 友達になろうって意味だろうか。しかしさっきの言動から見ると、俺たちのデュエルを見てたってことだよな。でもって腕にはデュエルディスク。とくれば――

「つまり、デュエルしたいってことか?」

 導きかけていた答えを先に遊司が聞く。それに秀は不敵にと笑った。

「その通り! 先ほどのような華麗で素晴らしいデュエルを見せられては、僕のデュエリストとしての優美な魂が黙ってはいられなくてね。是非ともデュエルがしたくなったのさ!」

 華麗な仕草はそのままに、まるで子供のように目を輝かせ、そしてその視線は真っ直ぐに俺を射抜く。これの意味するところは簡単だ。

(俺をデュエルの相手にご所望ってわけか。へえ)

 こんな風に挑戦されては俺も無下にはできない。

 俺は一歩前に出て秀に対抗するように笑ってみせる。

「おもしろい! 相手になってやる!」

「ふっ、そうこなくては!」

 口にくわえていた薔薇を放り投げ、秀はデュエルディスクを掲げた。遊司が身を引いたのを確認し、俺もデュエルディスクを起動させて構える。

 デッキがオートシャッフルされ、5枚のカードを引き抜き、相手を見据える。さあ、本日2度目のデュエルだが、楽しませてもらおうか!

「「デュエル!」」

 薔薇が地に落ち、デュエルが開始された。

 ……うん。結構俺ものってきたしカッコいいかもだけどさ、いい加減頭の上の薔薇をどうにかしてくれ。指摘しろってか? この空気の中で? すまん。俺には無理だ。

 せっかくのデュエルだというのに妙に締まらない微妙な空気の中、俺はどうしようもない感情をデュエルにぶつけることにした。

 

 

「僕の先攻のようだね。さて……」

 手札を確認し、楽しむように思案する。1ターン目に秀がやるいつもの行動だ。そんな秀を見ながら龍可たちの隣まで来る。すると龍可の脇からひょっこりと顔を出して光が質問してきた。

「あの、遊司さんは秀さんとお知り合いなんですか?」

「ん? ああ。中等部の頃からの友達だ」

 俺は少し当時のことを思い出しながらその質問に答える。あの頃の俺は少し荒んでいて、周りとなかなか溶け込めずにいた。そんな時秀に声をかけられ、ツッコミを行っているうちにいつの間にか周囲に受け入れられていたのだ。狙ってやったことかどうかはさておき、あいつのおかげで今の俺があるんだよな。

「ところで、秀ってアイドルの噂はよく聞くけど、デュエリストとしてはどうなの?」

 龍可の質問に俺は、そうだろうな、と思う。秀は普段あまりデュエルをしない。というかアイドルとしての秀の印象が強すぎてデュエルの方はあまり知られていないのだ。

「強いよ。それもかなり、な」

 そう断言する俺に龍可は目を丸くする。しかしそれは直ぐに期待の色に変わっていった。

「へえ~。どんなデュエルするんだろ」

 楽しみで仕方がない、というように龍可は笑う。そんな彼女に応えるように秀は動いた。

「まずはこれで行くよ。ローズ・バードを攻撃表示で召喚!」

 秀の場に葉っぱが鳥を模したかのようなモンスターが現れる。頭の上に咲く薔薇が今の秀と重なって見えて思わず吹き出しそうになったが、なんとか持ちこたえた。

 

ローズ・バード

星4 風属性 植物族

攻撃力1800 守備力1500

自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから植物族チューナー2体を表側守備表示で特殊召喚できる。

 

「僕はこれで、ターンエンド」

 そのまま何も伏せずにターンを終える秀。場にはローズ・バードが1体のみだ。これも秀が1ターン目によくやる動きだな。

「あ、私も使ってるモンスターだ」

 龍可がローズ・バードに反応する。

「そうか。龍可のデッキも植物系のモンスター多かったからな。秀と少しかぶってるところあるかも」

 思い返してみると、龍可の使うモンスターと秀の使うモンスターは同じのが何体かいたことに気づく。といっても、デッキコンセプトは全然違うが。

「ということは、秀さんは植物族デッキですか?」

「ああ。ま、内容は実際に見たほうが早いだろ」

 興味を持ったのか、そう聞いてくる光に俺は悪戯っぽく笑ってみせた。ま、秀のデッキは秀らしいデッキだから、すぐに得心がいくだろうけど。

「ローズ・バードか。俺のターン、ドロー!」

 続いて真のターン。ローズ・バートのことを気にしているようだ。

(もしかして、真のやつローズ・バードの効果を知ってるのか?)

 ローズ・バードはマイナーカードで使っている人も少ないから、その効果はあまり知られていないのだが。真の様子を見る限り、どうやら知っているようだ。そういえば俺とのデュエルでも俺の使ったカードのことは全部知っていたように見えた。

「……デュエルの知識量では真の方が上かもな」

「? 遊司、何か言った?」

 知らず口から出ていた言葉に龍可が反応するが、俺は「なんでもない」と誤魔化す。それよりも、効果を知っているのなら真がどう対処するかを見たい。俺は真の一挙一動に注意をはらい、デュエルの行方を見守ることにする。

「俺は極夜の騎士ガイアを召喚! さらに手札の幻蝶の刺客オオルリは戦士族モンスターの召喚に成功したとき、特殊召喚できる。オオルリを特殊召喚!」

 俺とのデュエルでも活躍した漆黒の騎士が人を惑わす蝶とともに姿を現す。これで真の場にはレベル4のモンスターが2体並んだ。こうなれば真のとる行動はひとつだろう。

「俺はレベル4のガイアとオオルリでオーバーレイ!」

 真の声に応えるように2体は雄叫びを上げ、光球となり、地面に現れた渦の中へ飛び込んでいく。

「誇り高き志を胸に、推参せよ! エクシーズ召喚! 忍びの魂、機甲忍者ブレード・ハート!」

 突如ビックバンが起こったかのような爆発を起こし、忍者の格好をした2つの刀を持つ戦士が現れた。俺とのデュエルでも最初に攻撃してきた、俺のデッキの癒やしであるそよ風の精霊を破壊した憎きエクシーズモンスター。ブレード・ハートだ。

「ゆ、遊司? なんか顔が怖いよ?」

 おっと、顔に出ていたようだ。深呼吸、深呼吸。

「ブレード・ハートのモンスター効果発動! オーバーレイユニットを1つ取り除き、『忍者』と名のつくモンスター1体を選択。選択したモンスターはこのターン2度攻撃できる! 俺はブレード・ハート自身を選択する!」

「! 痛いことをしてくれるね」

 ブレード・ハートが自身の周りを周っている光球を切ると、その身に赤いオーラを纏った。それを見た秀は少し顔をしかめる。

 そして俺は真の行動に、素直に賞賛を送った。これではローズ・バードの効果も半減するからな。

「行けブレード・ハート! ローズ・バードに攻撃! 電磁抜刀、カスミ切り!」

 ブレード・ハートはローズ・バードに向かって疾走し、その体を一刀のもとに切り裂く。

 

2200-1800=400

秀LP4000-400=3600

 

しかしローズ・バードは翼の先についていた2つの薔薇をその場に残していった。

「だがこの瞬間、ローズ・バードの効果を発動! 攻撃表示のこのカードが破壊され墓地へ送られたとき、デッキからレベル2以下の植物族チューナー2体を守備表示で特殊できる! 僕はウィードとナチュル・コスモスビートを特殊召喚!」

 薔薇は膨らみその花弁を大きく広げる。するとそこから雑草に手足や顔をつけたかのようなモンスターと、鞠のような身体に頭の上にコスモスの花を生やしたモンスターがそれぞれ現れた。

 

ウィード

星2 地属性 植物族 チューナー

攻撃力1200 守備力400

フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体を破壊できる。

 

ナチュル・コスモスビート

星2 地属性 植物族 チューナー

攻撃力1000 守備力700

相手がモンスターの通常召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚できる。

 

「ま、そうくるよな。ナチュル・コスモスビートに攻撃!」

 しかしやはり予想していたように真は冷静にそれに対処する。ブレード・ハートはその場で体の向きを変え、コスモスビートを切り裂いた。「ああ、せっかく可愛かったのに」なんて光が言っているが、……まあ、デュエルなんだし。仕方がない。

「カードを1枚セット、ターンエンド!」

「流石だね。僕のターン、ドロー!」

 そんな俺たちに関係なくデュエルは進む。秀もどうやら真がローズ・バードの効果を知っていてそれに対処してきたことに気づいているようだ。しかしそこには悔しさよりも嬉しさがあるように俺には見えた。

「レベル2以下の植物族モンスターであるウィードをリリースし、手札から超栄養太陽を発動! リリースしたモンスターのレベル+3以下の植物族モンスター1体をデッキから特殊召喚する。僕はレベル3のローンファイア・ブロッサムを守備表示で特殊召喚するよ!」

「げっ!?」

 

超栄養太陽

永続魔法

自分フィールド上のレベル2以下の植物族モンスター1体をリリースして発動できる。

リリースしたモンスターのレベル+3以下のレベルを持つ植物族モンスター1体を、手札・デッキから特殊召喚する。

このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

そのモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。

 

ローンファイア・ブロッサム

星3 炎属性 植物族

攻撃力500 守備力1400

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体をリリースして発動できる。

デッキから植物族モンスター1体を特殊召喚する。

 

 秀がカードを発動すると手と目のある不思議な太陽が現れた。さらにウィードが消え、代わりに小さな芽がその場に残される。芽は火の光を浴びて急速に成長し、やがて実のようなものを先端につけた橙色の蔓のような植物に成長した。

 それを見た真が嫌なものを見たように声を上げるが、正直俺もあの場に立っていたら同じ反応をしただろう。

「さらに僕は手札のスポーアを通常召喚するよ。このカードは墓地に送っておきたいしね」

 さらに秀は残していた召喚権を使って綿のようなモンスターを召喚する。

 

スポーア

星1 風属性 植物族

チューナー

攻撃力400 守備力800

このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の植物族モンスター1体をゲームから除外して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚し、この効果を発動するために除外したモンスターのレベル分だけこのカードのレベルを上げる。

「スポーア」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

 

「あ、スポーアだ」

 再び自分の使うモンスターが出たからだろう。龍可は嬉しそうに笑う。

「あれも強いよな」

「自己蘇生効果は便利ですし、その上チューナーですからね」

 しかし俺と光の観点は龍可とは違い、その性能だった。実際強い。かなり強い。

「行くよ、真。君に僕のデッキのエース、我が姫君の1人を紹介しよう!」

「っ!」

「……姫?」

 意気込んで両手を広げる秀に対し「姫君」という言葉に真は警戒を、龍可と光は疑問の表情を浮かべた。

「来るぞ。ここからがあいつのデッキの本領発揮だ」

 そんな3人に、俺はここからが注目だと教える。さあ、秀。お前自慢のデッキの力を見せてみろ。

「僕はローンファイア・ブロッサムの効果を発動! 自分フィールドの植物族モンスターをリリースし、デッキから植物族モンスターを特殊召喚する! 僕はスポーアをリリース!」

 スポーアが光となり、ローンファイア・ブロッサムに吸収されると、その実から種を飛ばす。それは秀のモンスターゾーンの1つの落ち、急速に成長し始めた。

「赤い情熱を胸に、咲き出でよ! 椿姫(つばき)ティタニアル!」

 巨大な葉と赤い蕾。それはゆっくりと広がって花を咲かせ、その中から1人の女性が姿を現した。

「これが僕のデュエルを彩る姫君の1人さ!」

 椿の花を咲かせるそのモンスターは、秀の言葉に応えるように一礼し、秀の前に立った。

 

椿姫ティタニアル

星8 風属性 植物族

攻撃力2800 守備力2600

自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体をリリースして発動できる。

フィールド上のカードを対象にする魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。

 

「綺麗なモンスターね」

 その優麗な姿に龍可は見とれたように呟く。初見なら俺もそうだったろうが、その強さを知っている身としてはそんな龍可に思わず苦笑してしまった。

「植物族最上級の姫の名を持つモンスター……。遊司さん、秀さんのデッキって――」

「ああ。通称、姫君の庭園デッキ。俺と同じで次々と上級モンスターを呼んで行くスタイルだな。って言っても、展開の仕方やアドのとり方は全然違うけど」

 まあ、ロンファが出た以上そんなこと言わなくても分かるだろうけどな。あのカードを起点とすれば植物族デッキはなんだって化けるし。

 しかし真は苦い顔をしているが、どこか安心したようにも見える。まるでまだいくらでも対処可能だとでも言いたげだ。

 その考えを肯定するかのように、真は秀を挑発する。

「ティタニアルか。随分と厄介なモンスターを呼んできたじゃないか」

 しかし秀はそんな挑発を受けても笑ってみせた。

「ふっ、君が彼女にどう対処するか、見せてもらうよ!」

 秀は頭に乗っていた薔薇を手に取り、流れるような動作でそれをブレード・ハートに向ける。

「ティタニアルで機甲忍者ブレード・ハートに攻撃! スプリング・ウインド!」

(ってその薔薇使うのかよ! っていうか薔薇が頭に乗ってたの気づいてたのかよ!!)

 心の中で全力で突っ込むが、そんなものは残念ながらデュエルには関係ない。ティタニアルの生み出した暖かくも鋭い風はブレード・ハートを幾重にも切り裂いていく。

 しかし、そこで真が動いた。

「伏せカードオープン! 罠カード、死力のタッグ・チェンジ!」

 セットされていたカードが表になる。同時にブレード・ハートが破壊されてしまうが、真にダメージは届かなかった。俺とのデュエルでも真の身を護った罠だ。

「破壊は免れないが、このカードの効果により戦士族モンスターの戦闘によって発生する自分へのダメージを0にし、その後手札からレベル4以下の戦士族モンスターを特殊召喚する! 俺が特殊召喚するのはこれだ! 来い、異次元の女戦士!」

 掛け声とともに真のフィールドに光の剣を携えた銀色の鎧を着込む女性が姿を現す。その姿に、今度は秀が苦々しい表情を作った。

 

異次元の女戦士

星4 光属性 戦士族

攻撃力1500 守備力1600

このカードが相手モンスターと戦闘を行った時、そのモンスターとこのカードをゲームから除外できる。

 

「っ、君も嫌なカードを出すねえ。僕はこれでターンエンドだよ」

 そしてそれは俺たちも同じだった。異次元の女戦士はそれだけ有名なカードで、尚且つ非常に厄介で嫌な効果を持っているのだ。

 そしてそれを操る真は一転して非常に良い笑顔である。

「俺のターン、ドロー!」

 真は引いたカードを見てさらにニヤリと笑った。いったい何を企んでんだ?

「俺はライトロード・アサシン ライデンを攻撃表示で召喚! さらに効果発動!」

 現れたのは短剣を持つライトロードの戦士。ライデンが短剣を天に掲げると剣から光が放たれた。

「デッキの上から2枚墓地に送る。送られたのは……トラブル・ダイバーと最強の盾だ。ライトロードじゃないから攻撃力は変わらない」

 光が収まるが、フィールドに変化はない。しかし真には気にした様子はなかった。

「行くぜ! 異次元の女戦士でティタニアルに攻撃!」

「自爆特攻!? あ、でもそっか」

「そう。真のフィールドにはあれがある」

 いきなり攻撃力の低い女戦士で攻撃したことに龍可が驚くが、どうやらすぐに真の狙いに気づいたようだ。俺も既に表になっている真の罠カードを見ながら、それに答える。そして真はその通りに動いた。

「ダメージ計算時、死力のタッグ・チェンジの効果発動! 戦闘ダメージを0に! さらに異次元の女戦士も効果発動だ! ダメージ計算終了後、戦闘行った相手モンスターをこのカードと共に除外する! ディメンション・バインド!」

 女戦士がティタニアルに斬りかかるが、ティタニアルの起こす風によって逆に破壊されそうになる。だが女戦士は最後の力を振り絞りその剣で空間を切り裂く。ティタニアルは女戦士とともにその空間の穴に吸い込まれていった。

「さらに死力のタッグ・チェンジの効果により、手札のライトロード・モンク エイリンを攻撃表示で特殊召喚だ!」

「な!?」

 さらにタック・チェンジの効果で召喚された白い服を着たライトロードの女武道家は、気合の声をともにライデンの隣に立つ。

 

ライトロード・モンク エイリン

星4 光属性 戦士族

攻撃力1600 守備力1000

このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算前にそのモンスターを持ち主のデッキに戻す。

また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。

 

「行くぞ! エイリンでローンファイア・ブロッサムに攻撃! そしてこの瞬間エイリンのモンスター効果発動! 守備表示モンスターを攻撃した場合、そのモンスターをデッキに戻す! フォーシング・リターン!」

「っ、やってくれたね」

 エイリンに蹴られたロンファは吹き飛ばされ秀のデッキに戻っていった。同時に秀の場にあった太陽もその姿を消す。

 このコンボに俺は嫌な汗が流れるのを感じた。女戦士による除外からタッグ・チェンジによるダメージ0と後続の召喚。それがエイリンなら守備モンスターも無意味。

(俺のデュエルで使われなくて良かった……)

 思わず脱力してしまう俺だった。

「まだ行くぜ! ライデンでダイレクトアタック!」

「くっ!」

 

秀LP3600-1700=1900

 

「エンドフェイズ、エイリンとライデンの効果によりデッキから合計5枚のカードを墓地に送る。 送られるのは……、ライトロード・モンク エイリン、明と宵の逆転、フォトン・スラッシャー、ガード・ブロック、死者蘇生。……死者蘇生よ、お前は俺が嫌いなのか?」

 

ガード・ブロック

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動することができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 そういえばさっきのデュエルでも死者蘇生は墓地に送られていたな。真、どんまい! ってそんなことより。

「あれ? 真、エクシーズしないんだ」

 俺の思った疑問を龍可が先に言ってくれた。俺もそれに同意する。

「だな。それにライデンはチューナーだから、レベル8シンクロも出来たはずなんだけど……」

「たぶん、ライトロードの効果で一気に墓地にモンスターを溜めておきたかったんだと思います。カオスデッキは墓地の闇属性と光属性のモンスターが多い方がいいですから」

 光の指摘に、なるほどな、と感心する。身近にカオスモンスターを使うやつがいなかったから新鮮なんだよな。

「さすが光だな。わからないとこがあったら聞いてもいいか?」

「え!? は、はい! 任せてください!」

 あれ? 気軽に言ったつもりなのに、なんかやる気が半端ないんですけど。え、どうしよう。ってこら龍可なに笑ってやがる! ええい、とにかくデュエルだデュエル!

 

 

 なんだか外野が賑やかだね。遊司の周りはいつも笑顔がある。素晴らしいことだ。

 ま、今はこっちに集中しなくちゃね……。真もまた、素晴らしいデュエリストだ。ここまでのデュエルで真はこちらのカードの効果をすべて把握していたようだし、しっかりと対処してきている。それだけの知識と経験が彼にはあるということだ。

「ふふ、やってくれたね。でも僕もこんな程度じゃ終わらないよ!」

 そう意気込んでみるものの、ローンファイア・ブロッサムがデッキに戻されたのは痛い。このドローで引くか、あるいは何らかの手段を呼び込まなければ……。

「僕のターン、ドロー!」

 ドローしたカードを確認し、すぐにそれをデュエルディスクに差し込む。

「僕は手札からおろかな埋葬を発動! デッキからモンスター1体を墓地へ送る。僕はローンファイア・ブロッサムを墓地へ」

 

おろかな埋葬

魔法

デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

 

 それを見た真はさっきまでの笑顔とは真逆の嫌そうな顔をした。ふふふ。わかってるようだね。でも容赦はしない!

「そして手札より永続魔法、増草剤を発動! このカードは1ターンに1度通常召喚権を放棄する代わりに、墓地の植物族モンスターを特殊召喚できる」

 

増草剤

永続魔法

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に、自分の墓地の植物族モンスター1体を選択して特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚するターン、自分はモンスターを通常召喚できない。

この効果で特殊召喚したモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。

 

「くっ、この状況で蘇生するカードなんて決まってるよな……!」

 フィールドに現れたスプレー缶に警戒する真。その言葉に応えるように僕は高らかにその対象を宣言する。

「当然、蘇生するのはローンファイア・ブロッサム!」

 スプレーが吹かるとフィールドから1つの芽が出て、さらにそれが急成長していく。するとそれは、先端に丸い実をつけた橙色の蔓のような植物へと成長した。

 ローンファイア・ブロッサム。このデッキの初動キーとなるモンスターだ。

「さらに墓地より、スポーアの効果発動! 墓地の植物族モンスター、ウィードを除外し、スポーアを特殊召喚する!」

 さらにスポーアの効果を発動し、再びローンファイア・ブロッサムと並び立たせる。そのレベルは3となり、このままならレベル6シンクロが可能だが今やるべきはそれではない。

「そしてローンファイア・ブロッサムの効果発動! 再びスポーアをリリースし、次なる姫君を舞台へ!」

(今やるべきこと。それはさらなる動きへの布石!)

 スポーアを吸収したローンファイア・ブロッサムが落とした種が成長を遂げ、巨大な向日葵がその花を咲かせる。

「太陽の恵みの下、咲き誇れ! 姫葵(ひまり)マリーナ!」

 現れた女性は得意げに微笑むと、心強く僕の前に立った。

 

姫葵マリーナ

星8 炎属性 植物族

攻撃力2800 守備力1600

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外の自分フィールド上の植物族モンスター1体が戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる。

 

「っ! またきっついのが出て来たな」

 やはり彼は彼女の効果も知っているようだ。ふふ、その知識量、面白いね。

「さて、君の手札にはまだモンスターがあるかな? バトル! マリーナでライトロード・モンク エイリンに攻撃! サンライト・エミッション!」

 マリーナの花に太陽の光が吸収され、僕の声に合わせて放たれる。その熱量に耐え切れず、エイリンは悲鳴とともに破壊された。

 

2800-1600=1200

真LP4000-1200=2800

 

「くっ!」

 ダメージが入り、モンスターも出てこない。ということは

「どうやらもう出せるモンスターはいないようだね。僕はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 後続がもういないことに少しホッとする。しかし警戒は怠らない。彼のことだ。すぐにでも逆転の可能性を引き当てることだろう。

「俺のターン、ドロー!」

(! このカードならもしかしたら)

「俺はカードを1枚セット! そしてエンドフェイズ、ライデンのモンスター効果でデッキからカードを2枚墓地へ送る。……増援と白夜の騎士だ」

 

増援

魔法

デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える。

 

 予想に反し、真はカードを伏せただけだった。しかしライデンは攻撃表示のまま。ということは、やはりあの伏せカードには何かあるということだろう。

(……ふむ。どうしようかな)

 

 

「あれ? 攻撃しないの?」

「できなかったのさ。マリーナの効果は自身以外の植物族モンスターが破壊された時に相手の場のカードを1枚破壊する効果がある。下手にロンファを破壊したらライデンも破壊されて、次のターンのダイレクトアタックで終わっちまう」

 真の行動の意味が分からず疑問を口にすると、すぐに遊司が答えてくれた。って、マリーナにはそんな効果があるの!? ……あれ?

「でもそれならなんで攻撃表示で……。そっか、攻撃を誘ってるんだ」

 さらに浮かんだ疑問の答えを今度は自分で気づく。確かに私もそういったことをやった経験がある。

「もしくはそう見せかけることで攻撃できないようにしているのか。何れにせよ、真も賭けに出ないといけない状態ってことかもな」

 遊司の言葉に私は頷く。とにかく真が追い込まれ出したってことは私でもわかるから。

「僕のターン、ドロー! ふふ、君の考えは分からないけど、僕は全力で行かせてもらうよ!」

 心底楽しそうに笑う秀はドローしたカードを確認するとそれを手札に加え、即座にフィールドに手をかざした。

「増草剤の効果発動! 墓地よりスポーアを特殊召喚し、ローンファイア・ブロッサムの効果を発動! 3度スポーアをリリースし、さらなる姫を舞台に招け!」

 これまでと同じ1連の流れで一気に上級モンスターを展開していく。さっき遊司が言っていた通り遊司とは全く違う動きだけど、倒しても倒しても上級モンスターが途切れないのは相手にとって本当に脅威だ。

 増草剤の効果で特殊召喚したスポーアが破壊フィールドを離れたことで像草剤が姿を消す。そしてローンファイア・ブロッサムによって発芽した今回の芽は、大きな木となったあとその葉を紅く染め散り始める。それは幾重にも重なり、やがてまるで花が咲くように大きく開いた。

「散りゆく草木の願いの下、舞い落ちよ! 紅姫(あき)チルビメ!」

 そこにいたのは紅葉を着飾った華麗なる姫君。彼女は幽美に微笑み、マリーナに並んだ。

 

紅姫チルビメ

星8 地属性 植物族

攻撃力1800 守備力2800

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は他の植物族モンスターを攻撃対象に選択できない。

また、このカードが相手によって墓地へ送られた場合、デッキから「紅姫チルビメ」以外の植物族モンスター1体を特殊召喚できる。

 

「っ、チルビメか。だが、守備表示?」

「念には念をってね。このターンで倒せるとは思っていないよ。さあ、バトルだ!」

 真はチルビメが攻撃表示ではなかったことに疑問を口にする。秀はそれに肩をすくめて答えると、すぐにバトルフェイズに入った。

「マリーナでライデンに攻撃! サンライト・エミッション!」

 再びマリーナが光を集め、ライデンに向かって放射する。真はそれに対し苦い顔で対応する。

「くっ、正解だ! 伏せカードオープン! 罠カード、光子化(フォトナイズ)! 相手モンスターの攻撃を無効にし、その攻撃力を次の俺のターンのエンドフェイズまで俺の場の光属性モンスターの攻撃力に加える!」

 真が発動したのは遊司とのでは破壊されてしまった罠カード。ライデンを囲うように展開された半透明のバリアがマリーナの放った光を吸収し、ライデンに集まっていく。その力を受け、ライデンの攻撃力が急上昇した。

 

ライトロード・アサシン ライデン

攻撃力1700→4500

 

「! 確かに正解だったようだ。僕はこのままターンエンド」

「くっ……」

 かの有名な幻のモンスター、青眼の究極龍(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)と同じ攻撃力にまで上がったライデンを前にして、驚きつつも余裕そうに返す秀。真はそんな秀に悔しそうな視線を送る。

「……これは、厳しいな」

 それを見ていた遊司もまた、真と同じように苦い顔をしていた。

「え? ライデンの攻撃力は4500もあるんだから、マリーナを倒せばいいんじゃないの?」

「龍可さん。チルビメがいる限り、真さんはチルビメにしか攻撃できないんです」

 なぜそんなに厳しい状況なのか分からず聞くと、光ちゃんが答えてくれた。その効果を聞き、私も状況を理解する。

「え!? それってつまり真はチルビメしか倒せなくて、しかもそれをしちゃうとマリーナの効果でカードを破壊されちゃうってこと!?」

 さらに遊司が「それだけじゃない」と補足するように言う。

「チルビメは戦闘で破壊されたときデッキから植物族モンスター1体を特殊召喚する効果もある」

「それじゃあ真は攻撃できないじゃない!」

 攻撃できるのはチルビメに対してのみ。しかもチルビメの破壊は新たなモンスターの展開を許し、同時に真のカード1枚が破壊される。これでは攻撃しても状況を悪くするだけで、せっかくの攻撃力も何の意味もなさないということだ。

 真を見ると、彼にもそれが分かっているのだろう、緊張した様子で自分のデッキを見ていた。しかしその行動は諦めではない。まだ勝てる可能性を信じている証でもあった。

(……真。がんばって!)

 そんな真に私は心の中でエールを送る。

 どんな状況になろうと諦めないその姿が、遊司や遊星に重なって見えた。

 




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