女だらけの聖戦士伝説に召喚された  真・恋姫†有双……になるはずが(仮)番外編   作:生甘蕉

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10話

 明命からの情報では、麗羽軍の秘密工場がいくつかゼラーナ隊に破壊されたらしい。

 けれど俺たちはそれにかまっている暇はなかった。

 強獣狩りやオーラバトラーの増産、巨大戦艦(オーラバトルシップ)の建造で忙しかったのだ。俺は地上土産の説明がいくつか発生してたし、子供の名前を考えて華琳ちゃんと相談したりしていた。

 

 そんな中、リの国の王華琳ちゃんへ書簡が2通届く。

 いまやアの国の王となった麗羽と、クの国の王、あのネコミミの美以ちゃんからの書簡。

 その内容はどちらも協力要請だった。

 

 麗羽の方は秘密工場の破壊を続けるゼラーナ隊をアのミラブロ山に誘き寄せて叩きたい。

 美以ちゃんの方は新型機のテストの模擬戦でリの騎団に相手になってほしい。

 

 両方には応じられない。どちらか片方、もしくは両方断るというのが選べる選択肢だ。

「ミラブロ山に行きなさい」

 華琳ちゃんが選んだのは、麗羽への協力だった。

 

「クの新型騎のテスト、強さを自慢したいのでしょう。模擬戦で圧勝しては可哀想よ」

 そうだね。クのオーラバトラー『ビアレス』やオーラバトラー『タンギー』は強い。特にビアレスは設定的にうちのブラウニーの発展型のようなものだ。でも、リのカンスト(オーバー)騎団の敵ではない。

 美以ちゃんを泣かしちゃ悪いよね。かといってリの騎団が負けたなんて吹聴されても困るので接待模擬戦なんてできるはずもない。

 

「ゼラーナ隊だけなら、こちらもバハムウト1艦で足りる。残りは建造中のヨルムーンガントの護衛に回してくれ」

 聖戦士伝説でのこのシナリオは騎団の留守中にラウにより、建造地が襲われるのだ。わかっているなら、むざむざ無防備にする必要はないわけで。

「そうね。建造の視察に行くつもりだったからその方がよさそうね」

 ならばなおさら戦力は残しておかないといけない。万が一にも華琳ちゃんが戦場に出ないようにね。

 

 ミラブロ山に行くのは俺と凪、沙和、斗詩、猪々子に決まった。

 バハムウトにダンバインとバストールを収納したら出発だ。オーラバトラーが少ないが、これには理由がある。

 別にゼラーナ隊なんてオーラバトラー2機で楽勝、なんて余裕ぶっこいてるわけではない。実際、撃退するだけなら余裕だけどさ。

 

「ほんとにこんなとこにいるんかねー?」

「おったぞ。干吉じゃ」

 俺たちは途中、マウンテンボンレスに寄り道する。

 七乃が持ってきた干吉との商談のためだ。

 美羽ちゃんの教育係だった七乃はやはり、ミュージィ・ポー担当のようだった。……久しぶりに美羽ちゃんと会った七乃はラース・ワウに戻らず、トルール城に居ついちゃったけどさ。自分の仕事は美羽ちゃんの面倒を見ることだって。

 

 干吉はオーラシップを着陸させて待っていた。

「これは、聖戦士コウイチ殿」

「華琳ちゃんはこれなかったけど、商談の決定権はあずかってきたから俺で勘弁してくれ」

「こちらとしては構いませんよ」

「悪いけど、麗羽殿の協力要請の途中だから短めに頼む」

 商談の内容もだいたい知ってるしね。

 干吉が売ろうとするモノで、1周目か2周目以降かがわかるはずだ。

 

「ではさっそく、私がお売りしたいというものは……」

「期待してますよ。うちのブラウニーより弱いオーラバトラーの開発技術や、量産に不向きの新型オーラバトラー1機だけだったらどうしようって、不安でしたから」

 駄目元で先制攻撃。

 聖戦士伝説なら1周目ではビランビーの開発技術、2周目ではオーラバトラー『ガドラム』を購入できる。ブラウニーがある以上、ビランビーなんていらないし、ガドラムは強いけど量産はできないんだよね。

 

「……まずはこちらをご覧いただきたい。新型オーラバトラー、ガドラムにございます」

 ふむ。2周目だったのか。1周目の俺はどんなエンディングをむかえたのかな? 案内されたオーラシップ内でそれを確認する。

「ドラムロの強化型ですか。強そうですけど、量産できそうにありませんね」

「ええ。装甲に使われている強獣グラバスの甲羅は加工が困難でして。それでも1機でドラムロ4機分の性能を持っています」

 設定通りとはいえ、4倍とは大きく出たね。

 

「干吉殿のことだ。これだけではないんでしょう? こちらは安くない資金と物資を払うつもりですよ」

「……ふむ。聖戦士殿はなにかお目当ての品があるようですね。伺っても?」

 そうきたか。おれとしてはギトールか改良型ダンバインが引き出せればよかったんだけど……。

 

「では、開発中のオーラバトラー『ライネック』をいただきたい」

「ライネックをですか」

「ええ。アとクで共同開発中と聞きます。リとしては悔しい思いをしてましてね」

「なるほど。たしかに同盟国であるリにも共同開発を持ち掛けなかったのは麗羽殿の落ち度でしょう」

 お、信じてくれたか。ライネックをほしがったのは実はそんな理由じゃないんだけどね。カオスルートじゃ手に入らないオーラバトラーがほしかったから。なだけで。

 

「……わかりました。ライネック、完成次第お譲りいたしましょう」

「よかった。資金と物資は、そちらの言い値で構わないと王より承っております。これでライネックを早く完成させてください」

「聖戦士コウイチ、感謝します」

「いえ、よい関係が続けられそうでなにより。ガドラムは今、貰っていきますよ。それでは」

 ふう。予想以上に上手くいって逆にドキドキしてる。なんか裏があるんじゃないだろうな?

 

 ……いや、干吉は麗羽に隠れて他国とも商売をし、資金を集めて力を蓄えているだけか。

 どうせ敵になるんだし、悩んでも無駄だな、うん。

 ガドラムも貰ったし、さっさとミラブロ山に行こう。

 

「ガドラムは凪が使ってくれ」

「えー。あたいは?」

 不満そうなのは猪々子。麗羽のところをクビになったので、当然、オーラバトラーは所有していない。

「それはあとできっと手に入るから。今はフォウを使ってくれ」

「んー、よくわかんねえけど、わかったよ。斗詩ぃ、合体しようぜ!」

 いや、バストールはフォウと合体できないから。

 

 

「ここが麗羽軍の秘密工場か。先発隊は……」

「あんたはたしか、リの国の聖戦士やったな? ウチは張遼や」

「うん。俺はコウイチ」

 これがアレン・ブレディ担当なのか? 麗羽が新たに召喚したという地上人と同じ名前だし……。

 

「先発隊の指揮はウチが任されてる。よろしゅう頼むで」

「はい。期待してますよ」

 アレンは聖戦士伝説でも強い方の地上人だったからね。

「……さっそく来たようやな!」

 もう来ちゃったか。さすがゼラーナ隊は神出鬼没だ。

 

 張遼はやはり、ビランビーで出撃した。うん。アレンといったらビランビーだからね。

「サーバインは強力だ。用心してくれ」

「そっちはまかせるわ。ウチは関羽とやる!」

 関羽のボゾンの青龍偃月刀のような武器を手に、張遼のビランビーがつっこんでいく。

 彼女もやっぱり三国志の武将の人なんだろうか?

 

「撃墜よりも、工場の防衛を優先させるんだ」

 各機に指示を出す。麗羽軍の工場なんて減った方がいいのだが、今はまだこの工場が破壊されては困る。

 

「了解です!」

 乗ったばかりのガドラムを見事に操り、敵の攻撃を妨害する凪。

 ドラムロ以上に蟹っぽいガドラムだが、重装甲の癖に機動性も高い強力な機体だ。これで量産できればなあ……。

 

「邪魔をするな!」

 やはり仮面白馬の声には聞いた覚えがない。正体不明だ。

「邪魔するに決まってるでしょうが!」

 そしてやはり、サーバインの方がダンバインより性能が上のようだ。

 レベル差でカバーできているが、とても悔しい。……俺も乗りたかった。

 

 急接近するサーバインの間合いの外からオーラショットを命中させる。……致命傷にはならないか。剣での攻撃じゃないと駄目らしい。むこうとこちらの移動力の差で一方的に射撃だけするってこともできない。

 やるしかないか。

 どこを攻撃すれば回収後に修理しやすいかを考えていると、ゼラーナ隊が撤退を始める。無理には追わない。ここでゼラーナを墜としても麗羽が喜ぶだけだ。サーバインの入手はまた今度ね。

 

「ご苦労さん。おかげさまで工場は無事や」

「そちらこそ、あの関羽と互角に戦っていたようで、さすがです」

「よう見とんなあ、あんがとさん。そいでな、工場の中のレプラカーンを一騎、貰うてくれ。麗羽に言われとんねん。今回の謝礼や」

 待ってました! このために工場の防衛を優先してよかったよ。バハムウトの格納スペースも空けてある。

 

「それはありがたい。喜んで頂戴しましょう」

「あんたとなら、戦いが楽しめそうやな。また組もうや!」

 上機嫌の張遼に見送られて、俺たちはトルールへ戻った。

 ……でも、張遼も敵として戦うことになるんだよなあ。

 

 

「おかえりなさい。商談はどうだったのかしら?」

 帰城後すぐに華琳ちゃんに報告。華琳ちゃんのお腹は目立つほどではないがわずかに膨らみ、最近はゆったりとした服を着ている。

「ガドラムを買ってきたよ。あとライネックも手配してきた」

「そう。ミラブロ山は?」

「ゼラーナ隊はいつも通り。相変わらず逃げ足が速いよ。報酬としてレプラカーンを1機もらってきた」

「あの下品なオーラバトラーね」

 下品って……股間のオーラキャノンをいやらしい目で見るの、禁止!

 気になるのはわかるけどさ。うちの騎士たちにも不評だったし。

 

「2機とも機械の館に回して研究させなさい。その後はガドラムはそのまま凪に、レプラカーンは猪々子に預けましょう。斗詩と同じく、麗羽のところにいた時と同じオーラバトラーの方が面白い」

「それで活躍したら、それこそ麗羽の2人の使い方が悪かったって証明になるから?」

「駒の使い方を知らぬ愚か者に教えてやるのよ」

 華琳ちゃん楽しそうだなあ。胎教には微妙な気もするけど……。

 バストールとレプラカーン、パーツで強化しておくか。

 

「巨大戦艦の方はどう?」

「やはりラウの部隊がリの領土に侵入してきたわ」

「もちろん我らが追い払ったぞ! 巨大戦艦にも被害はなしだ!」

 春蘭将軍が胸をはる。ザラルの森の鉱山で産出した鉄で作ったオーラバトラー用の剣『カ・オスソード』を譲っておいてよかったよ。

 

 カ・オスソードは強力な剣なんだけど形が微妙。ショーテルっぽいんだけど、普通の真っ直ぐな剣の先っちょに三日月型の刃がついているという、変な剣だ。……強いけどかっこ悪いから譲ったなんて春蘭にばれたら怒られるだろうな。でも、役に立ったんならいいでしょ。

 

「襲ってきた中にボチューンがいたわ。回収した残骸と、この前、あなたたちとが回収したものを合わせれば、なんとか開発ができそうと真桜がはしゃいでいるのよ」

「ボチューンか」

 反ドレイク陣営の主力オーラバトラーなんだけど、聖戦士伝説ではそれほど強くないユニットだったりする。ボテューンってまぎらわしい名前の上位機種がいるせいだろうけど。

 

「ボチューンは、(オーラソード)にオーラ力を集中させる機能を持っているから、それを研究したらいいんじゃないかな」

 聖戦士伝説ではその設定が活かされてなかったけど、リのオーラバトラーに積み込むことができれば、かなり有効だと思う。レベルカンスト超でオーラ力の強い騎士たちばかりだからね。

 

 

 

 それからまたしばらく小競り合いが続く。

 各国は巨大戦艦の建造に力を注ぎ、そして他国の建造を邪魔しようとする。

 リの国も建造地の防衛隊を強化したよ。ドラムロの量産と兵の育成が進んでいるからね。

 母艦としてブル・ベガー級も数艦量産されているし。これでリの国の守りは問題ないだろう。

 

「レプラカーンは量産せえへんの?」

「悪い機体じゃないんだけど、あの股間が不評でしょ」

「猪々子にもっとでかくしろって頼まれたで。粗末すぎるんやて」

 ああ、斗詩を嫁だというだけあって猪々子の感覚はよくわからんな。あっちの時は可愛いのに。

 

「コストパフォーマンスもメンテナンス性も悪い。移動力も低いから、ドラムロに慣れた後だと足が遅く感じるよ。新型のオーラ増幅器を搭載したドラムロでしばらくだいじょうぶでしょ」

「ボゾンならそれでもかまわへんけど、ボチューンになっとちいとキツイで」

 むう。一般兵にまで行き渡っているナの国ならともかく、ラウの国じゃまだボチューンが少なくて近衛兵クラスが扱っているから、性能以上に厄介な敵になってるのか。

 でもレプラカーンを量産するよりは貯蓄しておいて、ズワァースの予算を確保しておきたい。ドラムロの5倍以上の価格だから。最強の量産機なだけあって、価格分の性能はあるので妥協はできないんだよ。

「当面はボチューンの相手は騎士のブラウニーでするしかないか」

 ブラウニーならばボチューンに遅れはとらない。騎士の数を考えると重要拠点にしか回せないけどさ。

 

「騎士見習いや兵の中にも見所のある者がいるでしょう。その者たちのレベル上げを行いなさい」

 華琳ちゃんのこの命令で、俺は次代のリ軍主力を育て、彼女たちから教官と呼ばれることとなる。

 

 

「ずいぶんと鼻の下を伸ばしているわね、教官さん?」

 強獣の森から帰ってきて、会議室に呼ばれた俺への華琳ちゃんの一言目がそれだった。

「そんなことないって。鍛えてるのが女の子ばかりだったのはステータスを見てちゃんと選んだからで、他意はないって」

「本当にそうかしら? 可愛い子ばかりだったわ」

「華琳ちゃんほどじゃないよ」

 華琳ちゃんはだいぶお腹が目立ってきた。もちろん、あっちの方はご無沙汰だ。軽いスキンシップならよくするけどね。

 

「口も上手くなったのね」

「本心だってば。なにがあったの?」

「ライネックが届いたわ。真桜が解析中よ」

「ありがたい。これで戦力が拡充できるな」

 もうできたのか。渡した資金を有効活用して完成が早まったのかな?

 

「それと、麗羽のところから使者が来たわ。いつもの協力要請よ。ナブロの砦を攻めるようね」

「麗羽もラウと戦う準備ができたのか」

 ナブロの砦。ラウの国の要塞の1つ。巨大な奇岩をくり抜いて作られており、アの国との国境沿い、最前線でラウを守る砦だ。

「先鋒として出陣してほしいと言ってきたのだ」

 春蘭さん、嬉しそうだね。先陣を切るの好きだもんね。その様子に稟はため息。

「己の手駒を減らしたくない麗羽のやり口ですよ。喜んでどうするのです」

「援軍は送るって言ってましたが、書簡には記述されていない口約束ですねー」

 使者が勝手に言ったこととでも誤魔化すつもりか。

 

「たしかに麗羽に使われるのは癪に触るわ。けれど、ラウの国は幾度も我が国に攻撃を仕掛けている。見過ごすわけにはいかないでしょう」

「じゃあ予定通り」

「ええ。ラウの国を叩くわ。いい加減に、あの時の酒代を徴収しましょう」

 雪蓮に飲まれた地上の酒のことか……。彼女たち、どうしてるのかな?

 

「それに関係した話なのですが、報告があります。ゼラーナが多島海からナブロの砦へ航行中です」

 明命からの報告。

 ゼラーナ隊も麗羽がナブロを攻めることを知って援軍に向かうのだろう。

 

「ゼラーナがくるか。……となるとやっぱり試したいことがあるんだけど、いいかな?」

 前回、みんなに黙って地上に行ったらすごく怒られたので、今回は素直に作戦を話す。

 

「やる気になってる春蘭には悪いんだけど、さ。いや、駄目だっていうんなら諦めるよ」

「いいわ。やってごらんなさい」

「……ふん、華琳さまがこの状態で私が戦場に出られるか! 私は華琳さまをお守りするのだ!」

 よかった。春蘭も折れてくれたので、無事、作戦を決行できる。

 

 

 今回派遣されるのはバハムウト1艦のみ。足が早くないと困るからね。

 少ない戦力だが問題はない。

 ナブロへ向かうゼラーナも放置。繰り返すが問題はない。

 だって初めから砦を落とすつもりがないんだから。今回は、ね。

 

「いいんですか? ゼラーナを放置して」

「うん。ナブロに来てくれないと『嵐の玉』に行けないんだ」

 そう、なのに聖戦士伝説で唯一発売された攻略本にはこの情報が記載されておらず、何度やり直すことになったか。

 

「隊長は地上に行くのではないのですか?」

「違うよ。嵐の玉だよ。安心して。ちゃんと戻ってくるから」

「本当なの?」

「約束するよ」

 地上に行ったきり、帰ってこないのを心配されているのか、何度も確認される俺。この前地上で買い物してきた時はよほど心配をかけたのだろう。

 

「だから、俺が消えても動揺しないで、上手く撤退してね」

「了解です!」

「わかったのー!」

 別に俺がいなくなっても、バハムウトの戦力だけでナブロの砦は落とせそうなんだけどね。斗詩と猪々子もいるし。

「アニキ、ちゃんと帰ってこいよなー。次はあたいたちの番なんだからなー」

「ご、ご無事で」

「ありがとう。2人も気をつけてね」

 俺がいなくなっても、この2人は麗羽のとこには戻らないでいてくれると思う。この2人を編成したってことは華琳ちゃんは試したいのかな? 麗羽が苦戦してる時にどうでるか。

 

 予定の地点で麗羽軍と合流し、オーラバトラーを展開してナブロの砦へと向かう。

「あれがナブロの砦か」

 知ってはいたが、実際に見るとすごいな。あんな巨岩、どうやって削ったんだろ?

「来おったぞ!」

「早いな。もう少しじっくりと眺めたかった!」

 祭の注目してる先にはゼラーナ。そして青龍偃月刀を手にしたボゾン。

 

「ナブロの砦を落とさせはしないっ!」

 関羽か。北郷の代わりとしてサーバインの仮面白馬が出てくるとも思ったが。

 まっすぐこちらへと向かってくるボゾン。移動力が低いはずなのにそれを感じさせないのは、関羽の力だろう。

「一騎打ちのつもりのようじゃのう」

「こっちとしてもそのつもりだ!」

 ……けど、剣でさえ強敵だったのに得意の獲物に持ち替えた関羽ってのはマジで怖いな。

 

「ダンバインで桃香さまの前に現れるな! それは一刀のだっ!」

「いや、元は季衣ちゃんのだから。だいたい、サーバインならいいのか? 色はあっちの方が似てるだろう!」

 すごい敵意かと思ったらそんな理由?

 北郷もゼラーナ隊には慕われていたのか。……美少年だったし、ハーレム状態だったのかもしれないな。

 

「始まったようじゃな」

 必死にボゾンの攻撃を回避していると、機体が輝き出した。光に気を取られた隙に青龍偃月刀が迫るがそれはなんとか剣で受け止める。関羽も光に気づいたらしく、攻撃からは力が抜けていた。

「これは……あの時の光?」

 光に包まれる俺たち。前もってわかっていたので気を張っていたが効果はなかったようで、やはり俺は意識を失うのだった。

 

 

「……コウイチ、起きんか!」

 祭に頬をペチペチはたかられて俺は目覚める。サイズのわりに結構痛かったのは祭のオーラ力のせい?

「祭? ……無事に嵐の玉についたのかな?」

「そのようじゃのう。ほれ」

 ダンバインの目の前には強獣がいた。

 

「ガロウ・ランか。やっぱり生きていたか」

 巨大な強獣ルグウの上には何度か戦った、見覚えのあるガロウ・ランの少女たち。

 どうやらやる気のようで、こちらに向かってきている。

 

「いくらルグウが大きいとはいえ、3人乗り?」

 彼女たちはルグウの頭の上、寄り添い支えあうように密着して乗っていた。

「ああいうのはやりにくいのう」

「たしかに。なんとかルグウだけを倒すよ」

 聖戦士伝説ではガロウ・ランの出番はこれが最後だから、今までは死ななかった彼女たちも今回は殺しちゃうかもしれない。それだけは避けたい。

 

 できるだけ低い高度で戦うようにしながらルグウの背後に回り、攻撃を与えていく。

「これでどうだっ!」

 エフェクトとともにダンバインの攻撃。クリティカルヒットをくらったルグウはあっさりと倒れた。

 

「無事か?」

 ルグウの頭部付近に向かうと、元気そうな3人の少女がいる。

「なんてことすんのよっ!」

「襲ってきたのはそっちだろう」

「姉さん、聖戦士の言う通りよ」

「聖戦士?」

 ふむ。どうやらこの3人は姉妹のようだ。あまり似てない気もするけど、似てない姉妹なんて珍しくもない。

 

「俺はリの聖戦士コウイチ」

 いまだに自分で名乗ると照れくさいな。

「げっ……なんでこんなところに」

「ちぃちゃん、まずは自己紹介だよ。わたしは天和、一番上の姉だよ」

「……地和。次女よ」

「人和、三女です」

 ルグウを失った彼女たちは、もう戦う考えはないようで、素直に名乗ってくれた。それにしても、3人とも可愛いな。

 

「コウイチさん、この嵐の玉から出るのに協力してくれませんか?」

「ルグウを倒しちゃった責任とってください!」

「ちぃたちを傷物にした責任をとりなさい!」

「傷物って、人聞きが悪いんですが」

 ルグウ墜落時に怪我しちゃったみたいだけど、せいぜい打ち身とかすり傷ぐらいに見える。わかってて言ってるんだろうな、たぶん。まともに話になりそうなのは、三女、眼鏡の人和ちゃんだけか。

 

「見捨てるつもりはないけど、他にもいるんでしょ、この嵐の玉にさ」

「……ええ。でも、どこにいるかはわかりません」

 ああ、逃げられちゃったんだっけ。

 

「ここにおるぞ!」

「ミ・フェラリオじゃと?」

 現れたのはミ・フェラリオ。祭と同じく熟女な妖精だった。

 エンディングのヌードで有名なエル・フィノ担当なんだろうけど、やはりフェラリオらしくないこの熟れたムチムチの身体でそんなことをやられたら放送禁止になりそうだ。

 

「わしは桔梗。こやつらはわしらを追っておったのよ」

「聞いていたかもしれないけど、俺はコウイチ」

「祭じゃ」

「うむ。リの聖戦士だな。案内する。ついてきてくれ」

 飛んでいく桔梗の後を追うように俺たちはついていく。3姉妹もちゃんとついてきてくれるみたいだ。

 

「あのオーラバトラーを奪えばいいんじゃない?」

「ダンバインは聖戦士にしか動かせないという話よ」

「じゃあ、色仕掛けで」

「えー、あのおじさんを? ちぃ、パス」

「悪くないと思うけどなー。お姉ちゃんがもらっちゃうねー」

 聞こえてるんですが。悪巧みならせめてひそひそ話にしてほしい。

 途中、足を痛めているのか、人和ちゃんがつらそうにしていたのでダンバインの腕に抱えるようにして座らせる。

 

「あ、ありがとうございます」

「いいよ。足、だいじょうぶ?」

「ちょっと痛いだけですから」

 気になるけど状態を確認するために触りでもしたら、それこそなにを言われるかわかったもんじゃない。

 人和ちゃんの言葉を信じて、そのままでいることにした。

 

「月さま、助けてくれそうな者をお連れしましたぞ!」

 桔梗に呼ばれて姿を現したのは、小さくそして儚げな少女。この子がシーラ・ラパーナ担当なの?

「コウイチです」

「月です」

 月ちゃんか。やはり美少女だ。そういえば、シーラ・ラパーナもダンバインでは数少ない美少女だったな。

 

「コウイチさんはリの聖戦士ですか?」

「うん。そう呼ばれているよ。月ちゃんは天和たちに騙されて、この嵐の玉にきちゃったんだよね?」

 無言でコクッと頷く月ちゃん。小動物ちっくで可愛い。

 

「よく知っているようだな。まさかお主が手配したのか?」

 桔梗からは疑いのまなざし。

「いや、ここにきたのは偶然かな?」

 本当は予定通りなんだけどね。

 でも、天和たちを手引きしたわけじゃないから、嘘はついていない。

 

「それでどうする? 月ちゃんはナの国の王なんだよね? 俺を説得してみる?」

「貴様、そこまで知っているとはやはり!」

「だから偶然だってば」

 再び、コクッと頷く月ちゃん。

「月さま?」

「これも……私の天命だと思うから」

「天命って、俺と会ったことが?」

 コクッと頷かれる。運命的な出会い? 照れるな。あと、女の子たちになんか言われそう。

 

「コウイチ、頬が赤いぞ」

「い、いや緊張してね?」

 なにを言ってるんだ、俺。月ちゃんを挑発したつもりが、墓穴を掘ったかもしれない。

 だいたい、聖戦士伝説のシーラの説得はリの国王にむけてだ。今の俺はそこまでの権力はないんだよね。

 

「なぜ……麗羽さんの野望に力を貸すのですか?」

「麗羽にじゃないよ。俺を拾ってくれた華琳ちゃんのために働いているんだ」

「同じことだ。麗羽の悪しき力はバイストン・ウェルに災いを呼んでおる。貴様はそれを助長しておるではないか」

 桔梗にそんなに言われるほど麗羽軍には協力してないんだけどな。やってることといったらゼラーナ隊の相手ぐらいだし。

 

「麗羽を倒すのが聖戦士の使命、世界の救済と言いたいんだろうね。華琳ちゃんはいずれは麗羽も倒すよ」

 フルフルと首をふって拒絶を示す月ちゃん。うう、可愛い。俺がリの王になってなくてよかったよ。もしそうなってたら、ここで月ちゃんに説得されてロウルートにいっちゃったかもしれない。

「よく聞いてほしい。もし、最後の戦いでね……」

 

 俺は彼女たちに秘密を告げる。

 フェラリオの長がオーラマシンの力に脅威を感じていること。このまま戦乱が続けば、フェラリオの長によってバイストン・ウェルからオーラマシンごと排除されること。

 俺たちはバイストン・ウェルで戦いを終わらせたいこと、それから……。

「信じられるか、そのようなこと!」

「俺は月ちゃんが嵐の玉に捕らわれることを知っていたよ。だからここに来たんだ。月ちゃんは信じてくれる?」

 今度はフルフルではなくコクッ。やばいな、華琳ちゃんが一緒だったらお持ち帰りしそうだ。

 

「今の話を……ボゾン! やはり来ていたか!」

「……戦うのですか?」

「それでもいいんだけど……いや、運ぶのを手伝ってもらうか」

 月ちゃんだけならともかく、3姉妹もいるしなあ。

 関羽とはあまり話してないけど、問答無用で殺されたりはしないでしょ。

 

「コウイチ!」

「関羽、今の俺に戦うつもりはない」

 俺はダンバインの剣を抜かず、かわりに風防(キャノピー)を開け放ち、戦う意思がないことを示す。

 怖いけど、無抵抗の者を斬ったんじゃ、正義を掲げている立場としてはまずいからたぶんだいじょうぶ。……だいじょうぶだいじょうぶ……でもやっぱり怖い。

 

「なにを企んでいる?」

 関羽もキャノピーを開けて俺を睨んだ。よかった、話は聞いてくれるみたいだ。

「ここがどこだかわかっているのか? 協力してここを脱出しよう!」

「そんな話……いや、貴様は以前、あの光とともに消えてからも戻ってきた。聞いてみる価値はあるか」

 色違いながら、マーベルのと同じ形状の兜を外した彼女の表情は悔しげだった。北郷は戻れなかったのに、とでも思っているのだろうか?

 

「ここは嵐の玉。他と隔絶された空間だ。ここから脱出させたい子達がいる。手を貸してくれ」

「……わかった」

 月ちゃんたちに気づいたのか、関羽も承諾してくれた。

 

「……一刀との時もここにきたのか?」

「いや、前回は地上だ。……もしかしてここに来てからずっと北郷を探していたのか?」

「……ああ」

 ううっ、気まずい。

 そんなに北郷に会いたいのか。もしかして恋人だったり?

 

「彼は今、地上で暮らしているはずだ」

「生きているのか?」

「地上界に出てからは北郷とは全く接触していないから詳しくは知らないが、俺がバイストン・ウェルに戻ってくる時は生きていた。地上界はそんなに危険じゃないから無事だろう」

 拷問や解剖はされてないだろ。監禁や隔離はされたりしてるかもしれないけどさ。

 ……いや、暴れてないなら危険視されずに、マスコミの前に出まくってバイストン・ウェルのことを話しているかもしれない。目立っている方が安全だと思う。

 

「そうか……」

 北郷め。関羽のような美少女にこんな表情をさせるなんて……。いや、原因は俺にあるけどね。地上界から戻るのに北郷を誘わなかったっていう。

 ……やめやめ。これ以上考えていると北郷が帰ってきそうだ。

 

「俺の話が信じられないかもしれないが、今はここからの脱出を考えてくれ」

「……いや、ここからならば一刀は私たちの元へ帰ってきたはずだ。貴様の話を信じるしかあるまい」

「ありがとう」

 ふう。これでなんとか、みんなで脱出できそうだ。

 フォウを置いていけば、ダンバインのコクピットでシーラ担当の子と密着できるかもって下心を発動させたのはミスだったよなあ。

 

 

 俺のダンバインと関羽のボゾンで、月ちゃんと三姉妹を運ぶ。2人ずつに分かれてもらった。俺は月ちゃんと天和だ。さすがに3人乗りは無理なので、オーラバトラーで両脇に抱える形に。

「月ちゃんは関羽のとこの方がいいんじゃないか?」

「……信じてます」

 くぅっ、お持ち帰りしたい。信じてくれてる娘相手にそんなことはできないけどさ。

 月ちゃんが怖そうにしていたので、キャノピーを開ける。上半身をコクピットに潜り込ませて俺にしがみつくように指示すると、天和もしがみついてきた。

「天和は強獣の上でこんなの慣れてるでしょ」

「ルグウとはちがうもん」

 立派なおっぱいをそんなに押しつけないでほしい。鎧のおかげでその柔らかさを堪能できないのに、ボゾンから怒りのオーラ力を感じるのだ。

 

「なにをやっている?」

 通信機から流れる関羽の声、確実に怒っている……。

「いや、彼女たちが怖くないようにしたかったんだけど」

「どうだか。……まったく、ダンバイン乗りというのは皆そうなのですか!」

 ってことは北郷もこんな状況になったというのか。

 

「月ちゃん、出口は?」

「……へぅ。上昇を……あの壁を抜けてください」

「わかった。しっかり掴まっててね。関羽、行くよ!」

 月ちゃんや天和に聞きながらなんとか俺たちは嵐の玉の脱出に成功した。

 

「2人ともだいじょうぶ?」

「うん!」

 天和からは元気な返事。月ちゃんはコクッと頭を動かすのを感じた。

 ボゾンと地和、人和も健在のようだ。

 

「ここは?」

「ミヤランの海の近くだ」

 一緒にダンバインの乗ってさらに操縦席密度を上げていた桔梗が教えてくれた。

 

「無事に抜けられたようだな」

「ああ。月ちゃんをそっちに渡す。ナのウロポロス城に届けてあげてくれ」

 本音をいうとお持ち帰りしたいけど。

「戦わないのか?」

「お互い、そんな気分じゃないだろう」

「……そうだな」

 陸地まで飛んで、いったん着地。2人を降ろす。

 

「月ちゃん、さっき言ったことをよく考えておいてくれ」

 コクッ。これを見るのが最後にならないことを祈ろう。

「天和たちはどうする?」

「コウイチといっしょに行く!」

「そうですね。ここに置き去りにされたらナの兵に捕まりますね」

「ちぃたちを傷物にした責任を取りなさい!」

 だからその言い方は……げっ、関羽の怒りのオーラがまた増している?

 

「やはり貴様は……!」

「さ、みんな乗ってくれ。ナの兵がくる前にここから移動しよう!」

 俺は逃げるようにトルール城へと帰った。月ちゃんではなく、3姉妹をお持ち帰りで。

 

「コウイチ! 次に会うときは必ず倒す!」

 関羽さん、怒りのオーラでハイパー化しないといいけど……。

 

 

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