女だらけの聖戦士伝説に召喚された  真・恋姫†有双……になるはずが(仮)番外編   作:生甘蕉

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12話

 ラウの王城、タータラ城を麗羽は手に入れた。

 今は麗羽軍の拠点として補給ができるようになっている。

 そこに到着した俺は麗羽と会うよりも先に、疲弊した騎団の修理、補給の名目で機械の館へと急いだ。

 

 よかった。聖戦士伝説と同じだ。

 そこではオーラバトラーが販売されている。いいのか、こんなの売ってという最新型のシロモノまでも。

「ズワァースとビアレスとズロン……ついでだ、ビランビーとタンギーもくれ!」

 オーラマシンを色々と購入。本来なら必要のない機種もこれを逃したら手に入らないかも、とつい買ってしまった。戦力目当てというより、コレクター気質というか、マニアの業というか。

 

「帰りはオーラバトラーで飛んでいかなきゃ駄目か」

 調子に乗って買いすぎたので、オーラシップに全機を搭載できない。回収した敵の新型(ゼルバイン)もある。グリムリーを捕獲しておけばよかったか。

「その必要はないで」

「真桜? どうしてここに?」

「ウチは先触れや。リの巨大戦艦(オーラバトルシップ)のな」

「ついに完成したのか!」

 聖戦士伝説だともっと完成が遅かったはずなんだけど、他国からの攻撃の被害がなかったり、俺の地上土産で技術革新が進んだおかげもあって早まったのだろう。

 

「今こっちに向かっているとこや」

「そうか。あ、敵の新型オーラバトラー入手してるよ」

「それ聞いたからウチが先にきたんや。はよ見せてな!」

 なるほどね。ここにきたのも俺への報告じゃなくて、麗羽軍の新型を見にきたんだろうなあ。

 

 

 少しして、リの巨大戦艦(オーラバトルシップ)ヨルムーンガントがタータラ城に到着した。巨大戦艦が2艦もいると威圧感が半端ないな。

「上手く進んでいるようね」

 ヨルムーンガントの艦橋(ブリッジ)にはリの国の王様がいた。

「華琳ちゃん? なんでトルール城で待っていないのさ」

「この艦の護衛にほとんどのオーラマシンを連れてきたわ。城にいるよりも安全よ」

「だからって……」

 妊婦さんは危険なのに。……フラグ的な意味で。俺、死ぬんじゃないだろうか?

 

「私が造ったヨルムーンガントよ。危険なんてあるわけないでしょう!」

 桂花もいるってことは、この艦内に機械の館もあるわけか。聖戦士伝説のと同じわけだな。

「艦長は秋蘭。頼むわね」

「はっ」

 秋蘭なら華琳ちゃんに気を使った操艦をしてくれるはず。

 でもやっぱり心配だなあ。

 

「麗羽が到着しました」

「通しますねー」

 稟と風もいるのか。トルール城は今、どうなってるんだろう? 政務は……まさかこの艦でするの?

 

「華琳さんが動けないというので、わざわざきてさし上げましたわ! おーっほっほっほ!」

 妊婦の華琳ちゃんをウィル・ウィプスやタータラ城になんかやれるか。

 どんな危険があるかわかったもんじゃない。

「直接会うのは久しぶりね、麗羽」

「そうですわね。華琳さん、ちょっと見ない間にずいぶんとぽっこりなさったのね?」

「ふふふふ……」

「おーっほっほっほ……」

 なにこの雰囲気。2人とも目が笑ってないよ。ううっ、胃が痛くなりそう。

 

 

 王城を落とされはしたがラウが負けたわけではないと、ゴラオンを反抗の旗印にしているラウ軍。戦力をカラカラに集結している。

「次はゴラオンを墜とすのね」

「そうですわ。蓮華さんに引導をくれてさし上げるのですわ!」

 会議は終わったか。蓮華さんてのがラウの王様。たしか雪蓮の妹だったよな。彼女がいたから安心して国を出られたって、あの時の酔っ払い元王は言ってたっけ。

 

「麗羽、せっかく来たのだから風呂に入っていきなさい。今回だけ特別に入らせてあげるわ」

「お風呂? ゆっくり手足を伸ばせない水溜まりに興味はありませんわ」

「あら、この艦の大浴場には地上の技術を再現したジャグジーやサウナの他……説明してもあなたには理解できないかしら? 残念ね、今回だけしかそれを知る機会がないというのに」

 華琳ちゃん、地上で宿泊したホテルのお風呂、一般的なもんだと思ってないよね? あそこはすごい高いところなんだからね。

「……そこまでおっしゃるなら入ってさし上げますわ!」

「では風が案内しますねー」

 麗羽は風に連れられてブリッジを去った。

 

「いいの? 麗羽に使わせちゃって」

「ええ。コウイチは行かないのかしら? 今なら混浴を許可するわよ」

「行かない。混浴なんて恥ずかしい」

 そりゃ豪華な大浴場には興味あるけどね。……あと、ちょっとだけ麗羽の爆乳にも。あの大きさでマジで天然ものなのか気にはなる。

 

「そう? まあいいでしょう」

「でもこれで、浴場のような戦闘にあまり関係なさそうなものに力を入れた艦って、麗羽がこのヨルムーンガントをなめてくれるようになるかもね」

「なめているのはどちらかしら」

 大きなため息のあとにそんなことを言われる。その意味を理解したのは、ウィル・ウィプスの改装が行われると聞いた時だった。

 

「もう改装するなんて不具合でも見つかったの?」

「いえ、艦内設備の見直しです。お風呂場の改修らしく……」

 入手した図面を見せてくれる明命。

「お風呂場って、まさか……」

「ええ。この艦に負けてられないと張り合っているのでしょうね」

 ふふっ、と微笑んでいる華琳ちゃん。

 

「そんなことしてる場合じゃないよね? 早いうちに仕掛けないとむこうも戦力を整えて、それこそ未完成だったゴラオンが完成しちゃうよ」

「それよりも重要なのでしょう。麗羽にとっては」

「……この前、麗羽をお風呂に入れたのはこのため?」

「どうかしらね?」

 こんなことなら混浴して麗羽の様子を観察しておくんだったか。

 

 改装にあまりにも時間がかかっていたので、華琳ちゃんが麗羽を急かす。

「このままヨルムーンガントだけでラウを手に入れてもいいのよ」

「くっ、また抜け駆けして美味しいところを持っていくつもりですのね、華琳さん!」

「ナのグラン・ガランが発進したという情報も届いてるでしょう? 合流される前にゴラオンを墜とすわ。先鋒はこのヨルムーンガント。麗羽は後詰めを。改装など、あとでなさい」

 通信を切ってから「できればだけど」と呟く華琳ちゃん。

 待ちきれなくなったから出撃しようとするのではなく、こちらの準備が整ったから行動に出ただけなのだ。

 

 思いもよらずにできた時間で、桂花と真桜たちはヨルムーンガントでのズワァースの量産化に成功した。

 ズワァース。全高はあまり高くはないが、大型のコンバーターと重装甲によってそれ以上のボリュームを感じさせるオーラバトラーだ。

 股間にオーラキャノン、頭部にバルカン、コンバーターに連装フレイボム、シールド一体型の3連装オーラショットと武装も充実しており、まさしく最強の量産機といえよう。

 聖戦士ダンバインでも黒騎士の愛機として知られ、黒騎士はこれを使ってる時の方が強かった気がするのはスパロボの影響か?

 

 まさに最終型量産機なのだが、その分値段も高い。これを量産するために強獣狩りで稼ぎ、ブラウニーで粘ったのだ。……当初はドラムロでがんばるつもりだったから、それよりはマシだったけどね。

 強獣素材が艦内にたっぷりと備蓄されていたのも大きいだろう。

「ただ量産しただけやないで。ウチをなめんといて」

「もしかして……強化型ズワァース、造ったのか?」

「もちろんや! 見たって!」

 誇らしげな真桜の後ろには真っ赤なズワァースが。

 ……見てとは言うけど、聖戦士伝説の隠しユニットともいうべき『○○型』のオーラバトラーって色以外の違いがないんだよね。見てもよくわからなかったりする。

 

 強化型ズワァースは聖戦士伝説最強機の一角で、カオスルートではこれを主人公機にした人も多いはずだ。ラストでちょっとしか使えないんだけどね。それがもう使えちゃうの?

「ただでさえ手間がかかるズワァースが、倍率ドン、さらに倍、てなぐらい面倒なって、1騎しかできてへんけどな」

「それでもすごいって!」

 いいなあ。これ乗りたいなあ。俺には改良型に換装が済んだダンバインがあるけどさ。

 

「これはわたしのだ! 本来なら華琳さま用なのだが、今は乗れないからとわたしに下さったのだ!」

 そうか。春蘭か。なら仕方がないか。

 ……いいなぁ。得意気に鼻をふくらます春蘭が羨ましい。

 

「隊長にはこっちや!」

「え?」

「こんなこともあろうかと、ちゃんと用意してあるんや」

 まさか強化型ライネック? たしかにあれも強いけど、移動力考えると強化型ズワァースや改良型ダンバインの方が使いやすいよ。

 

「ふっふっふ! こんなこともあろうかと!」

 言いたかったのであろうその台詞を繰り返しながら、真桜が見せてくれたその機体は。ズワァースとは違い、スリムで高機動型と一目でわかるそのシルエットは。

 

 強化型ライネックなどではなかった。

「どや! あのゼルバインを改良したんや!」

 ああ、なるほど。量産型からその試作機を逆開発、っていうGジェネ的な進化が行われたのか。

「でも、ビルバインじゃなくてヴェルビンなのか?」

「ビルバイン? ヴェルビン? これ、改良型ゼルバインやないんか?」

 ビルバインは聖戦士ダンバインの後半の主役オーラバトラーで、ウィングキャリバーに変形もできる最強のオーラバトラーだ。

 その能力の高さはスパロボでも知られている。というか、あっちの方が活躍してるね。

 

 他のオーラバトラーと違うメカメカしいラインで、オーラバトラーらしくないと嫌われることもあるビルバイン。

 そのビルバインがオーラバトラーっぽくアレンジされたのが、オーラファンタズム版ビルバインことヴェルビンだ。

 人気も高いオーラバトラーなのだが、なぜか聖戦士伝説には登場しなかった。かわりに、迷彩ビルバインがビルバインとは別の機体として登場したりする。

 

「接近戦の好きな隊長の為にコンバーターを大型のもんと交換したんや。オーラキャノンはのうなってしまったけどな、機動性はばっちしやで!」

 一番威力が強い攻撃だから格闘戦ばかりしてたのに。あと弾代ケチってたってのもあるけどね。

「ゼルバインのオーラライフルはあるんだよな?」

「それはそのまんまや」

 ビルバインのオーラソードライフルとほぼ同じ物だが、ビームソードにはならない。ダンバインのオーラショットと違って手が塞がれてしまうけど、ないよりはマシだろう。

 

 でも、この機体もいいかもしれない。俺もヴェルビン好きだし。

「オーラ増幅器は?」

「ゼルバインには元からついてへん。だから隊長たちと戦った時も出せへんかったんやろな」

 ふむ。オーラ力の強いパイロット向けだったのか。たしかに聖戦士伝説でも必要オーラ力はそこそこ大きかった。敵として登場するのが僅かに4マップしかないのもパイロット不足が理由だったのかもしれないな。

 うん、いけるな。使ってみるか。

 

「じゃあ、おっちゃんの使ってたダンバイン、ボクにちょーだい!」

 季衣ちゃん、ダンバインとは相性が悪かったんじゃなかったっけ。

 それでも試しに乗ってもらったら、ダンバインがしっかりと能力を発揮している。

「改良型になったせい?」

「真桜ちゃんは、おっちゃんがダンバインを使い込んで慣らしたせいじゃないかって。なんか、ボクもダンバインもおっちゃんがオトナにしたから適正も近くなったって言ってたよ」

 誤解を招く言い方は……誤解でもないのか? 季衣ちゃんの初めては俺が貰ってるわけだし……。

 

「そんなことってあるのか?」

「ボクっ子がええ感じにダンバイン使えとんのが証拠やろ」

 ダンバインの適正ってよくわからないんだよなあ。再現されているゲームがないから、弱い機体になってることが多いぐらいで。

 

「これで、コウイチがヴェルビン、季衣と流琉がダンバインね」

 ふむ。だいぶ戦力が強化されたな。

 ヨルムーンガント(秋蘭+華琳ちゃん他)。

 ヴェルビン(俺)、改良型ダンバイン赤(季衣ちゃん)、改良型ダンバイン青(流琉ちゃん)。

 強化型ズワァース(春蘭)、ガドラム(凪)、ズワァース(真桜)、ズワァース(沙和)。

 ズワァース(猪々子)、ズワァース(斗詩)。

 沙和は艦長から、真桜は開発からパイロットに戻ってきてもらった。最終戦向け最強部隊だ。

 これにスカルマ(明命)と、ライネック(俺の教え子たち)、ブラウニー(リの国騎士)、ドラムロ(リの国兵士)が何機もいる。ヨルムーンガントの護りも固いな。

 

 うん、これなら地上界に追放されないで済みそうだ。

 態勢を整える時間を得たのが俺たちだけじゃないのが少し不安ではあるけれど。

 明命からの情報で、関羽と馬超がラース・ワウを襲撃。エ・フェラリオの紫苑の救出に成功したことを知る。

 ということは彼女たちはフェラリオの長、ジャコバ・アオン担当と会ってるか。その後はナの国に行って、月ちゃんにも。……もうビルバインを入手してるはず。オーラバトラーが強化されたのは俺たちだけじゃないか。

 ジャコバ担当が決着がつかないのに焦れて、オーラマシンを排除するのを早める可能性もある。

 たしかにこれ以上待つわけにはいかない。

 

 

 

 

 ゴラオンのオーラノヴァ砲を警戒しながらカラカラを攻める。

 聖戦士伝説ではあの後は使われることはなかったが、この世界でもそうなるのかはわからない。用心した方がいいだろう。

 

「ゼラーナはいないようじゃのう」

「まだ修理が終わってないのか?」

 前回の戦いで撃沈寸前まで凪が追い込んでいたもんなあ。あれからけっこう経つけど、ゼラーナは独自規格が多いから修理に手間取っているのかもしれん。

「けどほら、ビルバイン……新型オーラバトラーがいる。この強いオーラ力は関羽だろうね」

 このへんは聖戦士伝説と同じか。けど、うちの騎団が超強化されてるだけに、敵の改変もありえる。油断はできない。ゼラーナが伏兵として潜んでいる可能性もある。

 

「戦闘開始!」

 通信機から流れる華琳ちゃんの号令とともに、俺はヴェルビンを突貫させた。

 

「あの新型オーラバトラー、ビルバインのオーラキャノンに注意してくれ!」

 騎団の仲間に通信してる最中にも、麗羽軍のブル・ベガーが爆発する。

 関羽め、ウィル・ウィプスを狙うつもりか。聖戦士ダンバインのビルバイン入手直後のショウみたいに、ビルバインならできるって思いこんでいる状態?

 

「……ビルバインは麗羽軍にまかせよう」

「儂らはゴラオンを叩く!」

 あ、サーバインも麗羽軍に向かっていった。速いな。このヴェルビンなら追えるけど、あれも麗羽軍に押しつけよう。麗羽軍の戦力もとんでもない数だから削っておいてもらえると助かる。

 

 聖戦士伝説では、この戦闘ではラウ軍のオーラバトラーはボゾンだけだったが、やはり補給の時間を与えてしまったらしい。ボチューンがかなり混じっている。

「なんや、ゼルバインやボテューンは出てこないんか。戦ってるとこ見たかったんやけどなあ」

「そいつらがいたら動かしているのはかなりの使い手だぞ」

「でもズワァースの方が強いの!」

 真桜と沙和は久しぶりのオーラバトラーでの戦闘で心配だったけど、けっこう余裕ありそう?

 

「ふん、このような輸送艦など!」

 春蘭のズワァースがグリムリーを沈める。慣れない新型で久しぶりの戦闘のはずだけど、関係なさそうだな。

 

 猪々子と斗詩は息のあったコンビネーションで次々とボゾンを墜としていく。

「火力が違うんだよ、火力が!」

「無駄弾を撃ちすぎだってば!」

 ……まあ、弾切れでもズワァースならだいじょうぶでしょ。

 

 対空砲火をかわしながらゴラオンに接近し、……剣で切るだけで巨大戦艦が墜ちるのか悩みつつも攻撃。クリティカルのエフェクトとともに確かな手応え。

「強いな、このヴェルビン!」

 パワーはあの強力な改良型ダンバインを上回っている。それでも、ゴラオンには大したダメージではないようだけどさ。

 

 そこへ、対空砲火とは別方向からの銃撃。ボチューンのバルカンだ。回避して反撃に移ろうとしたら、そのボチューンは2機のダンバインに斬られて爆散した。

 

「おっちゃんっ、ボクたちを置いてかないでよっ!」

「1人じゃ無茶です!」

 ……新型機で増長してたのは俺も同じらしい。

 ロリっ子2人に怒られてしまった。

 

「ごめん、助かったよ」

「あとでいっしょにお風呂入ろうねっ!」

「季衣っ?」

 そんな会話を続けながらもボチューンを倒し、ゴラオンにダメージを与えていく俺たち。

 

 

 機銃や機関砲を破壊し、機関部へと攻撃を移した時、ゴラオンから多くのオーラマシンが飛び出した。その中にはやたらに目立つ1機のオーラバトラー。

 他のボチューンよりも鮮やかな真紅の機体。手に持つは……あれはタータラの剣?

 ボチューンの群れはウィル・ウィプスを目指し、残りは戦場から離れていく。

 

「あのオーラ力は雪蓮か」

「そのようじゃの」

「ゴラオンが撤退するための時間稼ぎ? いや、ゴラオンも機関を停止したか。……ブリッジに突入する。ダンバイン、援護してくれ」

 聖戦士伝説と同じなら、ラウの王と艦長はまだ残っているはずだ。もしかしたら小蓮ちゃんも残っているかもしれない。

 このままではウィル・ウィプスに砲撃されてゴラオンと命運を共にすることになるだろう。

 だけど、知っている娘が死ぬのはなんとなく嫌だ。

 

「さんざんボチューンを墜としといてなに考えているんだか……」

 自虐的に呟きながらゴラオン上部のメインブリッジを覗くと、やはり人影が。避難するつもりはないようで俺を睨んでいる

 窓を破ってそこに侵入。気圧差で強い風が流れる。誰も吹き飛ばされないように注意しながらヴェルビンの風防(キャノピー)を開けて名乗る。

「俺はコウイチ!」

「リの聖戦士じゃ」

「そんなこと知ってるわよ! そっちは祭でしょ!」

 あ、小蓮ちゃんもいたか。怒って頬をふくらませている。

 

「私は蓮華。ラウの王よ」

「……思春。ゴラオン艦長だ」

 雪蓮に似たこの少女がラウの王様か。で、俺に剣を向けている少女が艦長さんね。

「この首を取りにきたか」

「いや、救助にきた……ってのも変か。おとなしく捕獲されてくれないか? 悪いようにはしない」

「虜囚の恥をさらせと言うの?」

「君が生きてたら、ラウの兵も無駄な戦いをしないで済む」

 人質ってわけじゃないけど、残存兵はできる限り吸収したい。王が生きていたらこっちにつく兵も多いでしょ?

 

「だが……」

『コウイチ、逃げなさい!』

 通信機からの華琳ちゃんの焦った声。

 直後、ブリッジが激しく揺れて蓮華が指揮所から下に落下してしまう。ゴラオンブリッジの特殊な構造が災いしたか。

「お姉ちゃん!」

「蓮華さま!」

 これはウィル・ウィプスからの砲撃か? 爆発が続く中、急いで3人を抱えるようにしてゴラオンから脱出した。

 

「おっちゃん!」

「無事ですか?」

「俺は無事だけど蓮華が危ない。ナースを準備しておいてくれ!」

 砲撃され続けるゴラオンから離れ、ヨルムーンガントに着艦。

 格納庫のナースのそばに蓮華を寝かせる。意識がなく顔色も悪い。

 

「お姉ちゃんを助けて!」

「まかせてくれ!」

 オーラシップ治療の幻覚作用が不安なんて言ってる余裕はなさそうだ。俺は急いでナースのブリッジに駆け上がり、『回復』を行う。

 頼む。治ってくれ!

 

 

 

『蓮華の様子はどう?』

「意識はまだ戻らないけど、傷は治ったよ。そっちは?」

 ブリッジにはむかわずにヴェルビンのコクピットから通信機で話す。戦況によってはまだ出撃しなくては。

『雪蓮がまだ戦っているわ。麗羽のところの地上人が相手をしているけれど、関羽たちもがんばっているから梃子摺っているようね。華雄がやられたわ』

「そうか……俺も出るよ」

『春蘭と季衣、流琉もむかわせるわ。残りは救助にあたって』

 まだビルバインやサーバインが撤退していないのなら、麗羽軍の手には余るだろう。

 聖戦士伝説では、ゴラオンが沈んでそれで戦闘が終わったはずだが、どうやら違うらしい。ここでウィル・ウィプスに沈んでもらってもいいが、そうなると関羽たちが勢いづく。麗羽軍よりもあっちの方が脅威な気がする……か。

 

「いや、季衣ちゃんと流琉ちゃんは待機。ヨルムーンガントの護衛に回ってくれ」

 ゼラーナの動きが気になる。だから2人には残っていてもらいたい。まだ馬超が出てきてないはずだ。

 

 

 発進した俺は麗羽軍のドラムロを蹴散らす真紅のボチューンと遭遇する。

「邪魔すると死ぬわよ!」

 ……雪蓮のボチューン、これマジにボチューン?

 関羽の時にもそう思ったけど、スピードもパワーも全然違う。オーラバトラーは乗り手に左右されすぎる。

「受け止めるなんてさすが聖戦士ね」

「ヴェルビンじゃなかったら、やばかったかも?」

 真桜に感謝だ。っと、感謝する前に鍔迫り合いを解除してボチューンから離れる。直後、ボチューンのバルカンが火を噴いていた。

 太ももなんて変な位置にあるボチューン唯一の射撃武器だけど、斬り合っていても使えるというのはずるいな。

 

「勘がいいわね」

「それはこっちの台詞だ。なんでこうもかわせるかな」

 正面からは危険なので背後を取るしかないのだが、ボチューンは機動性に優れたオーラバトラーだ。なかなか攻撃を当てることができない。

 

「蓮華王たちは無事だ。投降してくれ」

「そう……蓮華たちのことは礼を言うわ。でも、それはできない」

 礼を口にしながらも、鋭い攻撃が続く。

 

『隊長、敵の増援なの! ナの巨大戦艦が来たの!』

 沙和からの緊急通信。

「グラン・ガランか……雪蓮の目的はこの時間稼ぎ?」

「ゴラオンを相手に疲弊したあなたたちの態勢、整えさせたりはしない!」

「そのために自国の巨大戦艦を使い潰すか。正義ってやつのために!」

「その通りよ!」

 通信機からはいったん集結するように指示がきているけど、そんな余裕はない。ここで雪蓮を倒しておかなければ、麗羽軍のみならずリ軍にも被害が出る。

 

「本気でいかせてもらう!」

「良いでしょう。ラウの守護神の名を持つタータラの剣、その切れ味を味わわせてあげる」

 やっぱりタータラの剣か。味わわなくてもその性能は知ってるっての。聖戦士伝説で2番目に強い剣。地上界に出てない以上、最強のオーラソードでしょ!

 

「本当は麗羽軍との決戦までにとっておくつもりだったけれど使うしかないか」

 まあ、関羽のビルバイン相手には使わなければいけなさそうだし、いいか。

「もらった!」

 背後から雪蓮のオーラ力が迫る。だが、それをくらうわけにはいかない。

「なっ!?」

 目前には雪蓮機の背中。爆発の危険が高いコンバーターを避けて、頭部を狙う。寝かせた剣をボチューンの首に突き入れた。

 耐え切れずに頭部が胴体から離れていく。

 

「うん。上手くできたな」

 オーラバトラーの頭部はただの飾りではない。頭部はオーラバトラーを制御するためのバイオコンピューター――猿に似た強獣の脳を利用したもの――があるのだ。つまり、操縦席、コンバーターと並んで重要不可欠な部品である。

 制御脳を失っても、パイロットのオーラ力で動かないこともないらしいが、戦闘は無理だ。

 

 制御を失い、自由落下を始めたボチューンを捕獲する。

「いきなり消えるなんて……いったいなにをしたの?」

「オフ・シュートってやつだ」

 スパロボでよく使われる分身回避技である。聖戦士伝説にはそんなものは存在しないのだが練習を重ねた結果、使えるようになってしまった。

 ダブル・フィギュアってのもあるけど違いは忘れた。

「な、なんてインチキなの……」

「おとなしくしててくれ」

 首なしのボチューンとともに、俺はヨルムーンガントに合流する。

 

 

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