女だらけの聖戦士伝説に召喚された  真・恋姫†有双……になるはずが(仮)番外編   作:生甘蕉

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3話

「うう……」

 目覚めは最悪、かな。

 あそこで終わっちゃうなんて、さ。

 せっかくレベルも爆上げしたのに。寝直したら続き見れないかな?

 

「……気がついたの?」

「…………え?」

 なんで華琳ちゃんの声が聞こえるんだろう?

 閉じたまぶたを再び開ける。

 

 目の前には見事な爆乳さんがいた。

「おおお、目覚めおったか」

 爆乳だけど小さい彼女は、ふよふよと飛んでいた。

 

 ……あれ?

「まだ目が覚めてない?」

「起きておるじゃろうが!」

 俺の呟きを拾った祭に怒鳴られた。

 うん。さっきの続きみたいだ。となれば……。

 

「華琳ちゃんは無事かっ!?」

 俺が受けたのはフレイボム。爆発するので、上手く華琳ちゃんへ攻撃を防げたか心配だったんだ。

 ベッドから上半身を起こして先程の声を探す。

 すぐに彼女は見つかった。ベッドそばの椅子に座ってこちらを見ている。

 

「……それはこちらの台詞よ。思ったよりも元気そうね」

「よかった……」

 見たところ、華琳ちゃんには火傷1つなさそう。髪も焦げてなどいない。

「なにを涙ぐんでいるのよ」

「だって……」

 俺は泣いていたようだ。

 俺がしたことが無駄になってなくて……死んでしまうはずの女の子が、俺の愛しい少女が無事なのが嬉しくて。

 

「祭も無事みたいだね」

「儂はついでか? ……どうやらお邪魔虫のようじゃのう。どれ、コウイチが起きたことを皆に知らせてこようぞ」

 変に気をきかせた祭が部屋から飛び出していってしまった。

「お邪魔虫……フェラリオが言うと自虐でしかないわね」

 いや、虫とは違うでしょ。

 

「かばってくれたことには一応、礼は言っておくわ。ありがとう」

「い、いえ……」

「まったく、無茶をして……私よりも早く動くなんて……」

 おや? 俯いて震えて、後半はなんだか悔しそう?

 俺にかばわれたのがそんなに屈辱なの?

 

「それは、俺のレベルが上がったから。そのおかげで早く動けたんだよ」

 あと、俺の行動値の数値は大きい。これも聖戦士伝説の主人公と同じみたい。

「コウイチは私よりもレベルが高いとでも言うの?」

 顔を上げた華琳ちゃんは真っ赤になっていた。

 

「うん。今の俺は92レベルだよ」

「92?」

 そう。ガロウ・ランとの決戦前は1レベルだった俺は92レベルになっていた。これはP-ドラグーンのブレスのおかげだ。

 

 聖戦士伝説の基本テクニックがある。複数の敵を同時に仕留めることで経験値が異常に増えることを利用した急速レベルアップだ。……バグじゃないよ、仕様だよ。他のバグが修正されたベスト版でも残ってたからね。

 

 今回はそれのおかげで経験値を多量に稼ぎ、俺は92レベルとなっていた。

 聖戦士伝説における本来の最高レベルは40でカンストなのだが、この技を使えばそれを超えることができる。まあ、あまり上げすぎるとステータスの表示がおかしくなるんだけどね。

「私は?」

「……4レベル。でも次には上がりそうだから!」

 華琳ちゃんのレベルはあった時から変わってなかった。NEXT経験値の値から次の戦闘でレベルアップするのは確実なんだけどね。

 

「信じられないけれど、コウイチから感じるそのオーラ力の強大さは、それを信じるに足る……」

 レベルやステータスが見えないからあのレベルアップ方法が普及してない。……急速レベル上げも条件を満たすのが大変だから気づかれないのだろう。一度に複数の敵を倒せるのって、強獣のブレス攻撃しかなかったわけだし。しかも、自分より強い相手をそれも複数、一度に倒さないといけない。普通にはありえないシチュエーションか。

 

「戦場で騎士が急に強くなることがあるという噂はこのことだったのかしら?」

「ブレス攻撃ができるP-ドラグーンを操るリの騎士ではありえるな」

「ならばその方法は私にも使えるのね」

 うん。これは主人公以外にも使えるテクニック。オーラマシンを使わないルートを選んでいたら、これで全員をレベル40オーバーにでもしていないとやっていられないし。

 

「そう。……コウイチ、身体の状態を確認するわ、脱ぎなさい」

 抵抗する間もなく、俺は華琳ちゃんに脱がされてしまった。……美少女に脱がされるってある意味興奮するよね。

 

「あの爆発で、この程度の火傷で済むなんて……それにほとんど治りかけているわ。……跡は残りそうね」

 俺に巻かれていた包帯が解かれると、肩や腕に少し大きな火傷ができていた。軽く動かしてみるとたしかに皮膚が少しつっぱる感じがするが、特に痛くはない。

「これは高レベルのおかげかな?」

 火傷が小さいのも、治りが早いのも大きくなった俺のオーラ力が影響しているのではないだろうか?

 バイストン・ウェルってオーラ力万能説っぽいとこがあったはずだ。聖闘士の小宇宙みたいなもんだ。オーラバトラーも性能じゃなくてパイロットのオーラ力で強さが決まる。

 

 華琳ちゃんが俺の火傷を触っていると、祭がみんなを連れて部屋にやってきて、すぐに出て行こうとする。

「なんじゃ、お取り込み中だったか。みな、あと30分は立ち入り禁止じゃ」

「誤解だ! ってかなに、その具体的な数字は? 説明を要求する!」

 慌てて上半身裸のまま部屋を飛び出し、誤解をとくことができた。

 ふう。誤解されたままだと春蘭に殺されたかもしれないもんな。だってさ、レベルアップで鋭くなった俺の感覚にびしびし殺気が感じられてるもん。

 あと、祭から所要時間の説明を受けて少女たちは赤くなり、稟は鼻血を噴いて倒れた。そういうキャラだったのか……。

 

 

 一通りみんなに回復を祝ってもらってから、現状の説明を受ける。

「あなたを攻撃したドロは春蘭が乗員ごと破壊してしまったので、誰の指示だったかは不明よ。まあ麗羽でしょうけど」

 聖戦士伝説ではゴード王の搬送で慌ててそのまま逃げられた狙撃手を見つけることができたのか。

「ドロを使ってるとこなんて他にはそうないだろうね」

「麗羽は自分の指示ではなく、盗まれたドロが使用されたと言いわけしてますね」

 鼻にティッシュらしき紙をつめたまま稟が言う。バイストン・ウェルにもティッシュあったんだっけ?

 

「ですから、麗羽さんたちがドロを盗まれたせいで聖戦士殿が傷を負ったとちらつかせ、オーラマシンの購入代金はかなり値切ることができましたよー」

「おかげで『機械の館』も大忙しや」

「機械の館が完成したのか」

 機械の館はオーラマシンの工房だ。オーラマシンの開発や生産、回復ができるゲームでも重要な施設だ。

 

「せや。今はリの国オリジナルのオーラバトラー、アルダムを開発中なんや!」

「アルダムか……」

 アルダムは聖戦士伝説オリジナルのオーラバトラーで性能は悪くはない。

 ゲドを元に開発したはずだが、外見と武装はダーナ・オシーっぽい。なにより、ゲームではオーラマシンの開発を選んでいると、ゲドを購入していなかったりする。

 

「アルダムはゲドよりも強くて悪くはないけど、完成しても量産はしないで、ドレ……麗羽のドラムロを購入した方がいいな」

「なんやて?」

 さっきからなんで真桜が反応するんだろう?

 機械の館の関係者に知り合いでもいるんだろうか?

 

「うちらが丹精こめて造っとるアルダムやのうて、麗羽んとこのオーラバトラーがええん言うんか!?」

 真桜自身が関係者でした。あれ? 君、騎士だよね?

 戦闘で順番が回ってくるのが遅かったから、リの騎士最遅のラージャ・デスト担当だよね?

 

「真桜は機械に詳しいの。機械の館も担当することになったわ」

「主任は桂花やけどな」

 ふむ。桂花ってのがボウ・ダトラなわけか。ボウはかなり優秀で、購入してきた機体を『開発』して、すぐに――戦闘を1つ終えたら――リの国でも生産できるようにしてくれたっけ。量産機限定だったけど、すごいよね。

 

「ドラムロはかなり高性能なんだ。見た目は丸っこいけどさ」

 アニメではやられメカだったドラムロだが、聖戦士伝説では謎の優遇を受けていてアルダムよりも強い。もっというと主役メカであるダンバインよりも強い。まあ、ダンバインが不遇に弱いというべきなんだろうけどさ。

 後期型となっているにしても納得しにくい強さである。カオスルートを選ぶとこのザコメカ(ドラムロ)を中盤までの主力機にして、その後はいきなり最強量産機(ズワァース)というのがよくあるパターン。

 だってカオスルートでの他の機体の入手って遅いから。他のオーラバトラーに資金を使うぐらいだったら節約して高価すぎるズワァースのために貯金しておくべきだ。

 

「あ、研究開発はあとで活きてくると思うから続けた方がいい」

 真桜が落ち込みかけたのでフォローする。

 開発技術を研いておいて、できれば試作型や改良型を開発してほしい。聖戦士伝説では選んだルートによっては入手できない機体も多かったからね。

 

「ほな、ドロはどうすんねん?」

「あー、ドロも買ってあるのか」

 ドロか。オーラボムは4人乗りで、その分オーラ力が弱い兵士でも使うことができる。

 聖戦士伝説でもリの国オリジナルのオーラボムが出る予定だったらしく、オープニングにも登場している。ボツになったんで、本編には影も形もないけどさ。

 研究開発してもらえれば、それを作ることもできるかな?

 ……所詮はオーラボム。そこまでする価値はないか。オーラバトラー開発に力を注いでもらった方がいいだろう。

 

 ただ、今あるドロには弱いけど使い道はあるんだよね。

 

 

「俺が国王代理?」

「ええ。あなたが知る物語では国王になったのでしょう?」

「そうだけど、それはゴード王の遺命というかそんなので……華琳ちゃんは生きているからそんな必要ないじゃないか」

「それがですね、華琳さまが亡くなられたとの噂が出ているのですよ」

 眼鏡を手でくいっとキメながらの稟。まだ鼻ティッシュ状態なので様にはなってなかったが。

 

「猪々子には隊の者が怪我をしたので、華琳さまは会わずに帰るとしか告げてない。が、狙撃手は始末したが、斥候が他にいて暗殺の成否を確認していたのやもしれん。あの狙撃では貴様と華琳さまが両方火球を受けたようにも見えた」

「うむ。わたしも華琳さまがとカッとなって、捕まえるのを忘れてしまったのだ!」

 将軍姉妹が教えてくれる。

 そうか、むこうには華琳ちゃんも攻撃されたとしか情報がいってないのかも。

 

「それで華琳ちゃんが死んだことにする必要がよくわかんないんだけど……?」

「麗羽の出かたを確認するわ。コウイチの話と同じ状況にした方が、動きを予想しやすいわ」

「そうかもしれないけど、そこまでしなくても」

「それに……面白いでしょう?」

 面白いって……まさかそれが本当の理由? あんたはロマリアの王様か?

 

「俺の話を信用してくれてるってことだから、断りづらい……」

「安心なさい。飽きたら、私が王に戻るわ」

「飽きたらって……」

 俺が飽きたらじゃなくて、華琳ちゃんが飽きたらってことだろうな。

 

「私は怪我で臥せていることにして、コウイチが王の代理。ほら、あなたが話した物語と同じよ」

「姿を見せない華琳さまが亡くなったと判断するのは麗羽さんの勝手なのです」

 むう、これって俺に選択肢はないわけか。王様代理、やるしかないのね……。

 

「わかった……。代理、やらせてもらいます……。できるだけ早く戻ってね!」

「そう、ならば……明命!」

「はっ!」

 華琳ちゃんに呼ばれて現れたのは、小柄な少女だった。

 

「お初にお目にかかります聖戦士様! 明命です、よろしくお願いします!」

「俺はコウイチ、こちらこそよろしくね」

 聖戦士伝説ならガロウ・ランのサーラ・ディップなんだろうけど、ガロウ・ランではなさそう。いや、見た目でガロウ・ランかどうかなんて俺にはわからないけどさ。

 

 サーラ・ディップも聖戦士伝説のガロウ・ランの女性らしく美人さんで、リの国唯一の女性キャラだ。……あ、フィナもいたか。ある意味ヒロイン候補なんだけど、舞台が地上に移ると出てこなくなる。置いてけぼりをくらったのかもしれないな。

 

「明命は細作。私の目となり耳となり情報を集めてくれるわ」

 やっぱりガロウ・ランじゃないのかな? でもなんとなく華琳ちゃんならガロウ・ランでもかまわなく雇用しそう。こんな胡散臭いおっさんを使っているぐらいだし。

「明命、しばらくはコウイチが王代理よ」

「はいっ、何か情報が入ったら随時連絡させてもらいます!」

 元気のいい返事だ。こんな素直そうな子に密偵なんて務まるのだろうか?

 

「次は桂花ね」

「はっ」

 出てきたのはやっぱり小柄な少女。ネコミミを模したと思われる頭巾をつけている。バイストン・ウェルにも猫っているのかな?

「桂花よ。機械の館を任されているわ。邪魔になるから、機械の館には近づくんじゃないわよ!」

「いや、あの、整備や回復、補充で行かないと困るんですけど」

「自分でなんとかしなさいよ!」

「無理だってば……」

 あれ? なんでこんなに嫌われてんの俺? この娘になにかしたっけ……桂花ちゃんたちが開発中のアルダムよりもドラムロの方がいいって言ったせい?

 

「桂花、コウイチはオーラマシンに詳しいわ。よく話を聞いておきなさい」

「そんなっ! 華琳さま、こんな男と話していたら妊娠してしまいますっ!」

「なんだそりゃ。俺は妊娠させたことなんて1度もないぞ! ……妊娠するようなことをしたことも1度もないけど」

 したいなあ、子作り。相手なんかいなかったけどさ。

 

「そう。ならば桂花に聖戦士の子を産んでもらいましょうか。聖戦士の血筋を残せればオーラマシンよりも貴重な戦力になるわ」

「華琳さまぁ!」

 あ、桂花ちゃん泣きそう。泣くほど俺とは嫌なんだろうなあ、やっぱり。

 

「華琳ちゃん、それぐらいにして。おじさんの方がダメージでかい」

 俺まで泣きたくなってきたよ。

「あら、桂花では不満?」

「嫌がる女の子を無理矢理ってのは、こっちが耐えられそうにない」

 だって俺、初めてだよ。初めてがそんなのって、あんまりじゃないか。

 

「ふむ。まあそれは後で考えるわ」

「あとでって……俺は好きな子としか、したくはないからね」

 だから風俗にも行かなかったんだし。

「乙女なのね」

「しかし、王となられたからには、後継者の準備も大事な仕事なのですよー」

 代理だから、風。

 

「華琳ちゃんが王に戻るんだから、後継者が必要なのは華琳ちゃんでしょ!」

「なるほど、聖戦士さまは華琳さまに後継者を産ませたいのですねー」

「なんでそうなるの!? 華琳ちゃんが俺の子をなんて!」

 不敬罪とかで怒られるでしょ。華琳ちゃんにまで嫌われたらどうするのさ!

 春蘭と稟と桂花がすごい表情でこっち睨んでる。斬られたりしなきゃいいなあ。

 

「おや、風は聖戦士さまの子とは言ってないのですよ」

「ぐっ。騙したな風」

「なんのことでしょー? 風には全くわからないのですよ。勘違いしたということは聖戦士さまにそんな考えがあるということなのです」

「だからちょっと待てってば。華琳ちゃんとは無理でしょ!」

「あら、なにが無理なのかしら?」

 ほら、華琳ちゃんが怒ってるじゃないか。

 

「ごめんなさい!」

 ここは謝罪するしかない。

「謝られても困るわ。なにが無理なのか説明なさい」

 土下座に入る前に説明を要求されてしまった。

 

「あのね、華琳ちゃんに俺の子を産んでもらうってのはないでしょ」

「私では不満だと言うのね」

「不満とかじゃなくて……」

「では、私に子供を産ませたいのね?」

 どう答えりゃいいんだ?

 不満だって答えると許してもらえそうにないし、産ませたいって答えると俺みたいなおっさんっがなに考えてんのって言われそう。

 イジメ? これイジメなの?

 

「ふ、不満はありません……」

「そう。ならばコウイチは私に子供を産んでほしいのね」

 うう、こうなりゃヤケだ。

「はい。華琳ちゃんと子作りしたいです!」

「なんだと貴様!」

 ほらやっぱり。春蘭将軍が剣を抜いちゃったと。

 斬られちゃうのかな? こんなのが夢の終わり?

 

「ならばよし!」

「へ? あ、あの華琳さま?」

「どうしたの春蘭、剣なんか抜いて」

 にっこりと微笑む華琳ちゃんに毒気を抜かれたのか、春蘭が慌てて剣を収める。

 

「おやおや。これは華琳さまが復活してすぐに産休というのもありそうですねー」

「風、あなた何を言っているの! 華琳さまがこんな男の子を孕むわけないじゃない!」

 桂花が風に文句を言っている。

 

「先程言ったように、後継者の準備は大事な仕事なのですよー。王だけではなく、家臣としても」

「そうね。聖戦士の血を王家に入れる。面白いわ」

「華琳さままで!?」

 桂花も遊ばれてるなあ。うん、嫌われちゃってるけどなんか同族意識が芽生えてきた。

 

「桂花、華琳ちゃんはからかっているだけだから」

「……コウイチは私のこと、嫌いなのね」

「そんなことはない!」

 遊ばれてるとはわかっていながら即座に否定する。

 ここまで親しくなった女の子を嫌うなんて俺には無理だ。

 

「というわけで、聖戦士様の王としてのお仕事、第1号は子作りとなりましたー」

「異議あり!」

 裁判じゃないけど言わせてもらった。

 

「現状で必要なのは富国強兵。っつーわけで、強獣の森に行ってきます。凪、沙和、真桜、あと桂花もきてくれ!」

「はあ? なんで私があんたなんかと。私にはオーラバトラーの開発があるの!」

「だからオーラ力が上がった方がいいでしょ」

「その娘たちのレベルアップをしてくるのね。お手並み拝見といきましょう」

 さすがに怪我で臥せってることになってる華琳ちゃんを連れて行くことはできない。春蘭と秋蘭も華琳ちゃんのそばを離れたくないというので、俺と5人で行くことに。ただし、P-ドラグーン5騎編成というわけではない。

 

「ドロ借りるから」

「ドロを? まあいいでしょう」

 許可が出たので、まだ騒ぎ続ける桂花を連れて俺たちは強獣の森に向かった。

 

 

 

 強獣の森。リの国にある強獣多発地点。

 最近なぜか強獣が増えているので、領土内に強獣の被害が及ばないようにこまめに強獣を間引く必要がある。聖戦士伝説では増えたり凶暴化してる理由は明かされなかったけど、原因はなんだろう。

 まあ、オーラマシンの素材になる強獣が多く獲れるんで、有難い資源地なんだけどね。

 それだけじゃなくて、レベル上げもできるしさ。

 

「隊長、本当にだいじょうぶなのですか?」

 ドロの指揮席(プラットホーム)――と言えば聞こえはいいが、機体の上、申し訳程度の防御板と手すりがついただけの足場――に立っている凪が俺を心配する。

「うん。準備ができたら合図するから、それまでは離れてて。俺がどんなに攻撃されてもこないでくれ」

「でも……」

「だいじょうぶだから」

 レベルカンスト(オーバー)の実力を信じなさいって。

 

 聖戦士伝説では、パイロットによってなぜか搭乗機の耐久値(DP)も上昇する。オーラマシンはオーラ力が高ければその分、強く、頑丈になるってことなんだろうけど、不思議なことにP-ドラグーンも同様だ。

 レベルカンスト超の俺の場合はDPが8割増し。これは聖戦士伝説の主人公と同じ値。

 そんなにDPが増えていて、なおかつ敵の攻撃はほとんど当たらず、当たってもほとんどのダメージは1。俺がやられるわけがない。

 

 まあそれでもブレスは2桁ダメージいっちゃうかと思いなおして、気を引き締めて戦闘を開始する。

 敵はガッターが6頭。第1章の頃より数も増え、レベルも上がってる。こいつらを上手く誘導して削らないといけない。

 4人が乗ったドロは作戦通りに、戦闘領域ギリギリで待機している。待ってくれ、美味しく下拵えしておくからね。

 

「たしかこんな感じで……」

 記憶の通りに自竜を移動させ、軽くライフルで一撃。うん、さすが92レベル。ちゃんと当たるなあ。って今のエフェクトはクリティカルじゃないか。

 そうだった。命中、回避やクリティカルの判定もレベルの数値がそのまま使用されているみたいで、本来のカンストの40レベルよりもクリティカルが出やすいんじゃないかっていわれてたのを忘れていた。

 迂闊にトドメを差さないように注意しないと……。逆の意味で戦闘が厳しくなったな。

 

 ガッターのブレスをかわしながらライフルで削り続けて数ターン。強獣の陣形は完成し、DPもちょうどいい数値になった。

 俺はドロに合図を送る。

 響き渡る俺の乗ったP-ドラグーンの咆哮。これが合図。だってP-ドラグーンには通信機ついてないから。

 

 ふよふよとドロが近づいてきて、俺の真後ろに配置。

「隊長!」

「うん、準備はできた。あのガッターを狙ってくれ」

 俺が指差したガッターは1頭だけ行動バーの色が違う。あいつがこの戦闘における敵騎団長だ。

 

「行きます!」

 凪の掛け声と同時に、ドロは触手の先から火球(フレイボム)を発射。その爆発は見事にガッター4頭を殲滅する。

 高らかに鳴り響くレベルアップ音。うん、成功だ。

 

「よし、あとは残るガッターを始末して城に帰ろう」

 生き残った2頭のガッターも俺と同じくカンスト超えをしたドロの前にはなす術もなかった。

 

 

「ふむ。ドロなら4人同時にレベルアップできるのね」

 聖戦士伝説では1人乗りで、そんなことはできなかったけどね。試してみたらできてしまった。妙なところでアニメ準拠だ。

 ドロは多人数が乗れて、しかも複数同時攻撃ができる。レベルアップ用の機体として活躍できるだろう。

「もっとも、攻撃力が低くてP-ドラグーン以下だから、俺みたいに敵のDPもわかるやつじゃないと、一発で倒せるように準備できないと思う」

「そう。量産の必要はないのね」

「オーラボムを作るならオーラバトラーの方がいい」

 動かすのに4人も必要なのに、1人乗りのオーラバトラーの方が強いってのを考えたらねえ。

 

「その驚異的なレベルアップに必要な条件は?」

 稟が眼鏡を光らせている。これは次は稟もレベルアップさせろってことか?

「経験値は高いレベルのやつで計算されるみたいだから、乗り手のレベルを合わせた方がいいかな」

「何レベルになったの?」

「2レベルだったのが62レベル。これでオーラマシンの開発も捗るでしょ」

 3騎士はあとちょっとで3レベルになってたから、もしそうなってたら53レベルだったんだけどね。

 

「そんなに……次は私もお願いするわね」

「あー……華琳ちゃんはもう少し待ってほしい」

「城の外に出るなら変装ぐらいするわ」

 華琳ちゃんの存在を隠して死んだと思わせたいだけならそれでもいいんだけどね。

「そうじゃなくって、強獣の方が華琳ちゃんよりもレベルが低い。この方法が使えない」

 第2章となった現在、強獣の森で1度に戦闘に出るガッターは3レベルが2頭。2レベルが4頭。これではレベル4の華琳ちゃんでは経験値が稼げない。

 ブレスやフレイボムの限界である5頭まとめて倒せれば、90レベル台になれるはずだが、俺が計算を間違ってたりすると、レベルが上がりすぎてステータス表示がおかしくなりマイナスレベルになったりして、逆に能力が下がってしまう場合があるのだ。

 そんな危険を冒すわけにはいかない。

 

「第3章になれば強獣のレベルも上がるからさ、それまでは戦闘に参加しないでいてくれると嬉しいんだけど」

「……戦闘に参加するだけでも、その参加ボーナスで私はレベルアップしてしまう。仕方ないわね」

 一切攻撃に参加してなくても戦闘が終わるまでいれば貰えるのが参加ボーナス。これは敵の数によって決まる。

 しかし、レベルが上がってしまうと、さらにもらえる経験値が下がってしまうので、レベル爆上げ作業中は、必要ないメンバーは出撃させないほうがいい。

 

「それまでにアルダムを完成させてみせます、華琳さま!」

 アルダムじゃフレイボムがないから経験値荒稼ぎできないんだけど、桂花の前では言うのを止めておくか。

 

 

 

「それでは、報告も終わったことだし閨へ行きましょう」

「ちょ、ちょっと待って! 明命、報告があるでしょ?」

「は、はい。マウンテンキャスウェルにガロウ・ランの残党が立て篭っています」

 やっぱりこれも聖戦士伝説と同じか。

 

「ほら、討伐に行かないと」

「春蘭、ガロウ・ランの残党ごときに聖戦士の力が必要かしら?」

「はっ。コウイチなどいなくてもわたしたちだけで十分です!」

 俺を睨みながらの春蘭。高レベルになって感覚も鋭くなったのか、殺気まで感じられるようになっちゃててビビる俺。

 

「だそうよ。凪たちも高いレベルになったのだし、その働き、期待してるわ」

「はっ!」

 ……あのフリーシナリオはレベル上げをしていないP-ドラウゲンだけでもなんとかなるから心配はないか。

 

「華琳さま! ゲドを動かしたデータがほしいので聖戦士をお借りしたいのですが」

 どうにかして邪魔したいらしい桂花がそんな要求をする。

「桂花、あなたもレベルが上がっているでしょう? オーラ力が高まっているわ。ゲドならあなたでも動かせるわね?」

「で、ですが」

「で、き、る、わ、ね?」

「は、はい……」

 泣きながら引き下がる桂花。華琳ちゃんはちょっと楽しそう。……もしかしてSなのかな。

 

「これでもう、問題はないわね?」

「う、うん」

「儂は一杯やってくる。華琳殿、コウイチを頼んだぞ」

「まかせなさい」

 祭にまで逃げ道を塞がれた俺は、華琳ちゃんと2人で閨に向かうのだった。

 

 パターンで行くと、いざ、ことに及ばんとした時に目が覚めちゃうんだけど……せめて終わるまではこの夢を見ていたいなぁ。

 

 

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